インタビュー
「ファンタシースターオンライン2」“EPISODE5”実装直前インタビュー。5周年を迎えたPSO2はどこに向かうのか,酒井智史氏&濱﨑大輝氏に聞いた
サービス5周年の節目を迎え,今なお驚きを提供してくれるPSO2だが,EPISODE5ではどんな冒険が待っているのか。そして,6年目からのPSO2はどこに向かおうとしているのか。アークスの誰もが気になるところを酒井智史氏と濱﨑大輝氏に聞いてきた。
「ファンタシースターオンライン2」EPISODE5 特設ページ
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4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
まずは5周年,おめでとうございます。ちょうど1年前,EPISODE4の開幕直前にもお話をうかがっていますが,そこからの1年を振り返っていただけますか。
実は前期,PSO2は過去最高の収益をあげることができました。PS4版のサービスインが大きかったですし,コラボもたくさん実施しました。そういった流れで5年目に入れたのが良かったですね。
「PSO2の思い出」となると,どうしてもハードディスクデータ削除やDDoS攻撃の話は外せないのですが,そういった出来事があったにもかかわらず,5周年を迎えられたことが感慨深いですね。アークスの皆さんには感謝しかありません。ありがとう!
4Gamer:
この5年間は長かったのでしょうか。
酒井氏:
どうなのかな……。「まるで一瞬だった」と感じつつ,つねに苦労は多いので「まだ5年なのか」という感覚もあります。不思議ですね。
4Gamer:
ここまでの歩みを自己採点すると?
酒井氏:
「PSO2にしかできないこと」を実現してきたのは,評価してもいいのかなと。コラボにしても配信ペースにしても,セガのゲームとしては考えられなかったことができました。もちろん,そういったことができる環境があり,それを楽しんでくれるユーザーが存在してくれたことが大きいですね。
反省点としては,新しいことをしようとして,逆にユーザーを混乱させてしまったことがありましたので,今後もチャレンジはしていくと思いますが,同じ失敗をしないように頑張っていきたいです。
濱﨑氏:
「フットワークが軽く,フィーリングでやっているのが,PSO2のいいところでもあり,ダメなところでもある」と,ユーザーさんに言われたこともありますが(苦笑)。バランス調整やコンテンツの遊びやすさといった面で,うまくいかなかった部分を反省しつつ,フットワークを活かして,新しいことにチャレンジし続けたいと思います。
4Gamer:
現在「ファンタシースター感謝祭2017」を開催されていますが,オフラインイベントに足を運ぶファン層に変化はありますか。
酒井氏:
前回(2016年)の感謝祭は,前々回(2014年)と比べると来場者が減ってしまったんですけれど,今回はここまで3回実施しましたが,2014年とほぼ変わらないか,むしろ増えている会場のほうが多いですね。気になって調べてみたら,新しいユーザーがすごく増えていましたね。新規の人が会場まで足を運ぶというのは,相当なエネルギーが必要でしょうから,とても感謝しています。
4Gamer:
やはりPS4版でスタートしたユーザーが多かったということでしょうか
酒井氏:
そうですね。3〜4割はPS4版でスタートした新規ユーザーのようです。定着率の高さに驚きもありましたが,それ以前からプレイしている人と最近になって始めた人の意識の違いは,ここ半年で明瞭になってきました。いま,その対策を考えているところです。
4Gamer:
「意識の違い」とは?
酒井氏:
「ゲームだから本気でやらなきゃいけない」層と「ゲームだからライトに楽しみたい」層,それぞれの考え方ですね。PS4からスタートした新規ユーザーが定着した結果とも言えますが,なかなか難しいところです。
4Gamer:
自分は後者の「エンジョイ勢」ですが,その感覚は分かります。
酒井氏:
ユーザーの住み分けを考えて,「エキスパートブロック」を作ってみたのですが,その反応はバラバラですね。
濱﨑氏:
初期から遊んでいる方の次に,PS4版でスタートした方が多いので,両者のスタンスの違いがはっきり感じられるようになっていると思います。EPISODE5の新コンテンツ「バスタークエスト」では,このあたりの対策を少しですが行いました。
4Gamer:
なるほど。
それでは,7月26日に開幕するEPISODE5の話を聞きたいと思います。まずは「中世ファンタジー風の世界」を舞台に選んだ理由を教えていただけますか。
濱﨑氏:
EPSIODE4は「現代的な地球」を舞台にしましたが,「PSO2が行ったことのない,もっと面白い世界はどこか?」と考えたときに浮かんだのが「中世」だったんです。PSO2はSFファンタジーですから,中世を避けてきたのですが,5周年という節目のタイミングなので「やるなら,今しかない」と。
4Gamer:
「ファンタシースターIII」は関係ないんですね。
濱﨑氏:
ないです(笑)。
すでに「ルーサー」の登場を発表していますが,「なぜそんなところにいるのか?」というのがポイントです。EPISODE5の舞台は,これまでのファンタシースターの世界を包括した世界になっているんですよ。
つまり,これまでに登場したキャラクターが違う役割で現れる可能性があります。「シオン」のアカシックレコードがごちゃごちゃになっていて,その整理の過程でさまざまなキャラクターが出てくる。しかも,その役割もごちゃごちゃになっているというわけです。
4Gamer:
ルーサーが仲間になったりするんですか。
酒井氏:
それは,本編を見てのお楽しみです!
「アリサ」と「ルツ」も登場しますが,ちゃんとストーリーに絡んできます。7月15日の感謝祭で公開した「ゲッテムハルト」や「メルフォンシーナ」といったキャラクターも,意外な役割で出てくるので楽しんでもらえると思いますね。
4Gamer:
新クラスの「ヒーロー」にも注目が集まっています。これまでの発表内容を見ていると,「既存のクラスをまとめる」という意図を感じたのですが,実際にはどうなのでしょうか。
濱﨑氏:
通常クラスを増やしても,差別化が難しくなっていることは事実です。どうしても分散してしまいます。
「サモナー」は頑張って実装したので,思い入れが強いのですが,もちろんプレイしていない方もおられます。そういうことであれば,複数のクラスを内包する上位クラスを実装することで,各々が好きな武器で遊びながら,ほかの武器も試してくれるのではないかと考えました。
ユーザーの反応はいかがでしょう。
濱﨑氏:
ヒーローを楽しみにしているという声が多く,今のところは受け入れられていると思います。
酒井氏:
ポジティブに受け取ってもらえているようで嬉しいですね。「ヒーローが登場することで,自分のクラスの存在価値が低くなるの?」というご意見が,もっと多いかと思っていましたが,上級クラスによって「これまではできなかったことにトライできる」と感じてもらえたのか,ネガティブな意見は予想していたより少なかったですね。
4Gamer:
ムービーでは「タリスがつかみにくいのではないか」と感じたのですが,ヒーローのタリスはどういった感じになりますか。
濱﨑氏:
ヒーローはテクニックも使えますが,ヒーローの投げるタリスはこれまでのタリス(タリスファストスロー)よりも速く,位置調整が難しいです。「PA+ロッド+タリス」「PAの使える法撃武器」というイメージに近いと思ってください。
バスタークエストについて
4Gamer:
それでは新コンテンツ「バスタークエスト」について,あらためて解説をお願いします。
8人マルチパーティーで,「陣地を守る戦い」と「魔神城を攻める戦い」を交互に繰り返すコンテンツです。「防衛戦」に攻めの要素とレイドボスの要素を加えました。ある程度はプレイヤー同士で役割分担しないと,大変なことになるかもしれません。
難度としては,グレードが3段階に分かれています。グレード1は練習みたいなもので,グレード3はエクストラハード相当です。防衛戦の終焉よりも簡単になっていると思います。
酒井氏:
グレードを上げていく要素とレベル帯を合わせる要素があり,グレード1から「バスタークエストとは何か?」を学んでいける構成ですね。徐々にルールやセオリーを覚えてからグレード3に入れるので,「いきなりとんでもないところに来ちゃった……」といったことにはならないです。
4Gamer:
バスタークエストでは自動的にパラメータの調整が行われるとのことですが,グレードによって仕様が異なるのでしょうか。
濱﨑氏:
グレード1はレベル20相当の難易度になっているので,そこにレベル75のユーザーが入った場合,レベル20より少し強いくらいのパラメータに自動的に下方調整されます。極端に強い人がグレード1に入ってくると,何も分からないうちにエネミーが倒れてしまったりして,ルールを覚えるどころではなくなりますよね。
グレード3はエクストラハード相当なので,パラメータが下がることはないのですが,逆に最低ラインまでパラメータを引き上げる処理が入ります。といっても,しっかりとキャラクターを鍛えている人には及ばないもので,微々たる調整ですよ。
4Gamer:
「グレード3だと下方調整はされない」という認識でいいですか。
濱﨑氏:
はい。グレード1と2はルールを学ぶために,パラメータの調整が入ると考えてください。
4Gamer:
EPISODE5に合わせて復帰しようという人もいると思いますが,ここまでの発表内容を見ていると現役ユーザー向けのコンテンツばかりに感じられます。復帰ユーザー向けの施策はあるのでしょうか。
濱﨑氏:
EPISODE4は新規ユーザーをメインターゲットに定めていたのですが,EPISODE5はユーザーの成熟に合わせています。ただ,長く遊んでいる人とそうでない人の知識量の差は認識していますので,実装直後ではないですが,復帰ユーザー向けの施策を予定しています。
例えば,復帰したユーザーがヒーローになりやすくなるとか,「いま,何をすればいいのか?」をレクチャーするようなことですね。EPISODE5の中期あたりになるでしょうか。
4Gamer:
個人的には久しぶりにログインしたときに,エキスパートブロックの条件が変わっていて戸惑ったことがありました。
濱﨑氏:
エキスパートブロックの条件は難しいですね。「これでいい」という人もいれば,「これだと緩い」という人もいます。「よく一緒に遊んでいた人とのプレイ回数が減りました」という話も聞いているので,バスタークエストでは複数のブロックを対象にマッチングを行います。
今後の緊急クエストでも,クエストを選ぶときに「エキスパートのみ」にチェックを入れなければ,ブロックが異なるユーザーと遊べますので。また,この実装に合わせてエキスパートブロックを廃止いたします。
4Gamer:
マッチング仕様の変更は「緊急クエスト待ち」を減らすという目的もあるのでしょうか。
濱﨑氏:
そうですね。これまでよりは少し減ると思っていますが,実装してからでないと分からない部分でもあります。
4Gamer:
バランス調整についてはいかがでしょう。下方修正が中心になっているように見えますが。
濱﨑氏:
元々問題があったものの,「皆さんが楽しんでいるから」ということでスルーしていた部分を調整しています。いびつになっている部分を修正して,高難度クエストがちゃんと高難度クエストとして機能するようにしたり,大技なのにダメージが通常攻撃より少々大きいだけといったところを見直しました。
下方修正と思われる部分ですが,より使いやすくしたり,スキルツリーの自由度を上げたりと全体的なバランスを見直しています。
4Gamer:
なるほど。
これも個人的な興味からお聞きしますが,テクターはザンバースとシフタとデバンドとレスタの合間に通常攻撃を当てる仕事から解放されますか。そして,バウンサーとの壮絶なザンバース合戦からも……。
濱﨑氏:
ザンバースについてはスキルと潜在能力が乗らなくなるので,揉め事になる要素が減ります。バウンサーとテクターの人がいるときも安心してください。ウィークバレットより気軽に使えるような調整になっていると思います。
4Gamer:
以前もお聞きしたと思いますが,テクターにPAは実装されないでしょうか。
酒井氏:
感謝祭でも「テクターのザンバースが弱くなっちゃうので,何かPAをください」という声がありましたね。
濱﨑氏:
ただ,現状では実装予定はないですね。
4Gamer:
ところで,オメガにはフリーフィールドがないそうですが,ギャザリングも拡張されないということですか。
いまのところ,フリーフィールドを予定していないんですが,オメガをフリーフィールド的に遊べる要素を検討しています。ただ,ギャザリングはアイテムを増やしても,集めるのが大変になってしまうので,既存のギャザリングアイテムを活用できる形にしたいと考えています。
酒井氏:
フリーフィールドがあると“新しい遊び”を作りにくく,結果としてすぐに飽きられてしまい,「費用対効果が薄いのでは?」という部分があったので,今回はバスタークエストにリソースを割きました。目先を少し変えてみようと「ライディングクエスト」を入れてみましたが,操作性の問題もあり,あまり受け入れられなかったという理由もあります。
4Gamer:
“スクショ勢”の立場からもフリーフィールドはロケーションとして欲しいところです。
濱﨑氏:
部内でも「オメガでスクリーンショットを撮る場所はどこですか?」と質問されました(笑)。バスタークエスト以外でもオメガで遊べるようにしようと考えていますが,しばらくはバスタークエストのフリーマッチに集まってもらう形でお願いします。
4Gamer:
それから撮影機能の追加も気になります。
濱﨑氏:
EPISODE5の開幕時ではありませんが,今後の追加予定はあります。さまざまな意見を集めつつ,検証している段階ですね。どこまでできるのかは分かりませんが,スクショ撮影をもっと楽しめるようにしたいと思います。
4Gamer:
撮影用の小部屋みたいなものがあると嬉しいです。背景を変えたり,メインライトとフィルインライトが置けたりするといいですね。
濱﨑氏:
確かにライトは好きなところに置きたいですよね。
4Gamer:
はい。期待しています。
話は変わりますが,「今後のPSO2でやってみたい」と思っていることを教えていただけますか。あくまで希望ということで構いませんので。
酒井氏:
そうですね。「モンスターハンター」シリーズとコラボをしてみたいですね。何かと大変だと思いますが,やっぱり楽しそうじゃないですか。
4Gamer:
アークスがリオレウスと対峙する構図は見てみたいですね。「あいつ,降りてこねーぞ!」とか言いたいです(笑)。
それから,PSO2は5周年を迎えましたが,ファンタシースターシリーズも今年で30周年になります。この機会にライブを開催したいですね。それも「シンパシー」とは違う形で,何かできないかと考えているところです。
濱﨑氏:
本当に「やってみたい」と思っているだけなんですが,ライドロイドでレースをしたいんですよ。
酒井氏:
馬でレースじゃないの?
濱﨑氏:
馬でもいいんですけど,ライドロイドのほうが……。言ってみただけですけど(笑)。そのうち,実現できればいいですね。
バトルアリーナを実装するときにも考えていたんですが,いまはそっとしておこうかなと。操作性やカメラ酔い,同期ズレの問題が解決できたら,きっと満を持して登場しますよ(笑)。
4Gamer:
「デイトナUSA」のようなオーバルコースでレースができると楽しそうですね。ぜひ,“あの歌”も再録をお願いします。
濱﨑氏:
あとは「ニャウ」のグッズを作りたいです。
酒井氏:
作らないよ! 人気ないもん!
(一同笑)
4Gamer:
それでは最後に,今年の感謝祭のフィナーレを飾る決勝会場(8月12日/有明コロシアムの見どころをお願いします。今回もコミケと日程が重なっていて,個人的には大変なのですが……(編注:本稿執筆者は3日目の東T-15bに出展予定だそうです)。
酒井氏:
むしろ,地方から来られる方のためにコミケとカブるようにしていますから(笑)。なぜかこのタイミングにすると,雨がほとんど降らないんですよね……。東京に来られている方は,コミケ2日目の帰りにぜひ立ち寄ってください。
今年の感謝祭は「アークスバトルトーナメント」の決勝大会が最大の見どころですね。我々は「e-Sports」とは謳っていませんが,1万人を収容できる会場で1つのタイトルの全国大会を開催するということは,実はすごいんじゃないでしょうか。対戦コンテンツとしての楽しさをアピールできると思います。
4Gamer:
アークスバトルトーナメントを見ていると,試合が終わったらハイタッチがあったりして。e-Sportsともちょっと違う,部活みたいな雰囲気がありますね。
酒井氏:
友情のようなものが芽生えたり,仲間同士で声を掛け合ったりと,タイムアタックの大会とは違った雰囲気になっていますね。「お互いにカバーしよう」という意識が強く,仲間と協力する楽しさが伝わってきます。そのあたりに注目すると,楽しく観戦できると思います。声をしっかり出しているチームが勝ちますから(笑)。
濱﨑氏:
EPISODE5の開幕後のタイミングになりますが,会場が騒然とするような新情報も用意していますので,ぜひ会場に足を運んでほしいですね。
酒井氏:
決勝会場が初登場となるグッズなどもありますので,こちらも楽しみにしていてください。8月12日,有明コロシアムでお会いしましょう!
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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