インタビュー
会員数150万人を誇るソーシャルゲーム「喧嘩番長 全国制覇」を成功に導いた,チュンソフトの二人のキーマンにインタビュー。“ボンタン狩り”や新プロジェクトの話題も……?
PCとモバイルの100%連動は,先を見据えた上での戦略
今後のアップデートでは団体戦に加え,ボンタン狩りも!?
先ほどもチラっと出ましたが,モバイル版とPC版の100%データ連動というのは,まだまだ少ないのが実情なんですか?
本橋氏:
はい。やはりソーシャルゲームの市場というのは歴史が浅いですし,100%連動はまだまだ少ない……というか,ほとんど見たことがないですよね。もっと色々なところが連動してくるのかなと思ったんですけど,Yahoo!モバゲーのラインナップをチェックしても,やってきている作品はないに等しいです。
ライフスタイルに応じた“遊び”を提供したい,というのが私達の考え方なので,喧嘩番長に関しては,徹底して全部一緒(100%連動)にしています。
4Gamer:
100%連動が未だに登場していない理由というのは,どこにあると思いますか?
本橋氏:
大人の理由で説明するなら,事業で結果を出している会社がまだないから,だと思います。あと,これは推測でしかないんですけど,技術的にもデータ管理的にも簡単ではないですしね。
ただ今回,なぜチュンソフトがそれを押し切ったかというと,ゆくゆくはPCやモバイル,そしてコンシューマのゲーム機も含めて,すべてのプラットフォームはボーダーレスになっていくと思うんですよ。なので,まずは比較的相性のいいモバイルとPCから,100%連動を実現するべきかなと考えました。
なるほど。そこの部分に先行投資をしておけば,市場が変化したときにも対応しやすいだろうということですね。
では,喧嘩番長の今後の展開についても,お話を聞かせてください。
本橋氏:
今は個人戦がメインなんですけど,プラスαで違う遊びの軸を盛り込む予定です。たとえば不良ならではの“抗争”であるとか,あとはボンタン狩りですとか(笑)。
4Gamer:
ボンタン狩りですか。懐かしい……。若い世代には刺さらないかもしれませんが,一定以上の年齢のプレイヤーには,相当興味深いコンテンツでしょうね。ちなみにそれは,アバターアイテムを奪い合うようなイメージですか?
本橋氏:
そういう収集系の遊びとして考えてはいます。10月25日にはβ機能として団体戦を実装する予定なのですが,収集系機能は現在企画中で,もうちょっと先の話になります。
ゲーム特性とプラットフォームを見極めた選択が基本戦略
iPhoneを初めとしたスマートフォンも当然視野に!?
4Gamer:
ではここで,喧嘩番長とは離れて,チュンソフトのモバイルを含む,オンライン事業自体の今後の方針などを,可能な範囲でお聞かせください。
本橋氏:
タイトル単位になりますが,ディー・エヌ・エーのみならず,さまざまなソーシャルゲームプラットフォームと協業して,マルチプラットフォーム展開で事業を進めていきたいなと思っています。
4Gamer:
なるほど。とくにモバゲー/Yahoo!モバゲーに絞ってコンテンツ事業を展開していくわけではないんですね。
本橋氏:
はい。その通りです。現段階であれば,バトルものといえばディー・エヌ・エーが強いですから,バトルものであれば,優先的に考えるのはモバゲー/Yahoo!モバゲーということになります。
ただ,チュンソフト全体のコンテンツでいえば,バトルだけが得意なわけではなく,RPGやアドベンチャー系も強いですからね。要は,コンテンツに応じてプラットフォームを見極めていこうということです。まだお話できませんが,現在,実際に開発を始めているものもありますよ。
4Gamer:
では,「チュンソフトといえばこれ!」という誰もが知っているシリーズに関しても,すでにプロジェクトが動いていると……?
本橋氏:
ノーコメントです(笑)。明確なことは,まだ言えないです。
あと,無視できないのはスマートフォン系ですね。とくにアドベンチャーゲームって,タッチパネルと相性がいいと,私は考えておりますので……。
4Gamer:
アドベンチャーゲームって言いましたね,今……。どういったタイトルを準備しているか,分かる人には分かってしまいますね(笑)。
本橋氏:
そこもノーコメントです(笑)。先ほども言ったように,我々の方針としてはコンテンツに合わせてプラットフォームを決めます。もしアドベンチャーゲームでも,ソーシャルゲームに合うものだったらソーシャルゲームを考えますし,タッチパネルに合うものであれば,スマートフォンを選択するということです。すべてはゲーム性との相性が大切ということですね。
4Gamer:
これは興味深い話が聞けました。個人的にもアドベンチャーゲームは大好きなので,大いに期待しています。
ちなみに,ほかのスパイク作品なども,ブラウザゲームとして展開することを視野に入れているのでしょうか?
本橋氏:
さらにノーコメントということで(笑)。
4Gamer:
あっ,これは何か動いてますね。こっそり期待しています(笑)。
本橋氏:
まぁ,僕は何も言ってないですよ(笑)。さて,真面目な話で言うと,私達の話で恐縮ですが,チュンソフトって,ソーシャルゲームを提供している会社の中でも,ゲーム作りが上手な者が多く,さすが老舗と誇れる実績もあります。なので私達としては,その部分をどう活かすかということを考えています。企画を考え,運営を考え,そして最適なプラットフォームを通じて,より多くのユーザーに楽しんでいただくというのが,私達の仕事だと思っております。
すでに,ゲーム=パッケージ販売という時代でもなくなってきていますし,いいゲームであれば黙っていても売れる,という話も聞かなくなりました。ゲームの中身だけでなく,集客とマネタイズをいかに有機的に連動させるか,各ゲームメーカーも本格的に考え始めてきている印象を受けますね。
本橋氏:
その通りですね。幸運なことに,「喧嘩番長 全国制覇」ではそれが一番いい具合に融合し,成功したタイトルだと思います。ただ,最近ソーシャルゲーム市場への参入障壁が下がってきたことで,コンテンツとしての作りが荒く,「ユーザーさんに対して,これは明らかに失礼だろう」というタイトルが増えてきている印象もあります。
4Gamer:
逆に,素材は素晴らしいのに,プロモーションやマネタイズの部分で損をしているタイトルもちらほら見かけますね。そしてゲーム部分はイマイチでも,ほかの部分で成功を収めているタイトルも出てきている。
植松氏:
ニンテンドーDSをめぐる市場の動きは,いいサンプルですね。メーカーからプレイヤーの顔が見えなくなって,結果どういう人がゲームを買っているのかが分からなくなってしまった。ゲーマーからすれば「なんでこんがゲームが売れているの?」と思ってしまうようなタイトルが,ミリオンの売り上げを記録したりもする。ユーザーの求める価値観や遊び方も,大きく変わっているのでしょう。
ソーシャルゲーム市場にもそういう部分はありますが,モバイルとの連係を考えると,NDSの例よりははるかに見晴らしがいい。我々は,実際に遊んでくれているプレイヤーの声に真摯に耳を傾け,今後も当たり前のことを当たり前にやっていきたいと考えています。
他社の動向にも当然注目。とくに気になるのは
タイトーとスクウェア・エニックス
ところで,現在はコンシューマゲーム市場に軸足を置くメーカーが,ソーシャルゲームへ積極的に参入してきていますが,チュンソフトとして,気になるメーカーはどこですか?
本橋氏:
まずは,スクウェア・エニックスですね。がっつりなMMOタイプではありますが,「ファイナルファンタジーXI」でやっていることって,コンテンツとコミュニティの融合じゃないですか。あのノウハウは,ソーシャルゲームを展開するうえで,大きな武器になると思います。
4Gamer:
なるほど。植松さんはどうです?
植松氏:
私もスクウェア・エニックスは気になりますね。ただ,最近ビックリしたのは,KONAMIがGREEで出した「ドラゴンコレクション」というタイトルが,いきなりランキングのトップに上がってきたんですよ。
これまでソーシャルゲームに注力してきた印象は受けないのに,ポッと出したのがいきなりトップですからね。一瞬何が起こったのか分からなかったです(笑)。でも実際にそのゲームを見てみたら,イラストのインパクトも凄くて,UIも非常に良くできていたんです。さすがKONAMIだなぁと。今後目が離せないなと思いましたね。
本橋氏:
あと,スクウェア・エニックスがパッと出ましたが,厳密にいうと,タイトーのほうが気になります。iPhoneで出した「スペースインベーダーインフィニティジーン」もかなり成功してましたよね。
さらに,iPhoneだけじゃなくソーシャルでも,バトル系のソーシャルゲームやパズルゲーム,恋愛ゲームのコンテンツもあったりしますから。ラインナップがすごい。絶対にノウハウを溜めこんでいると思います。加えて,スクウェア・エニックスさんとタイトーさんはグループなので,今後色々な連携を図ってくるかもしれませんし。
なるほど。コーエーやバンダイナムコオンラインなども,Yahoo!モバゲーに参入してきていますが,どのメーカーがどのプラットフォームで大きな成功を収めるかで,ソーシャルゲーム界隈の勢力図も激変しそうですね。チュンソフトの今後の展開も含めて,楽しみにしております。
では最後に,読者へ向けてのメッセージをお願いします。
植松氏:
喧嘩番長はこれから,仲間意識をもっともっと強めていけるようなコンテンツにしていきたいと思っていますので,皆さんでどんどん盛り上げてください。リアル不良世代直撃の,ボンタン狩りもお楽しみに。
本橋氏:
喧嘩番長については,今後も遊びの要素をどんどん入れていきますので,楽しみにしていてください。チュンソフトのオンライン事業展開に関しては,「チュンソフトのファンであれば容易に想像できるコンテンツ」と,「たしかな“遊び”に基づく新コンテンツ」の2軸を,頑張って実現していきたいなぁと考えております。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「喧嘩番長 全国制覇」公式サイト
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