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ひょっとすると「憑依ドン!」になっていた?「ゴースト トリック」のブロガーイベントで,開発秘話やiPhone/iPod touch版のアップデート情報が明らかに
またイベントでは,近日中に配信を予定している,iPhone/iPod touch版のアップデート情報も公開された。
「ゴースト トリック」公式サイト
iPhone/iPod touch版「ゴースト トリック」紹介ページ(iTunesが起動します)
なお2004年当時,巧氏は大まかなストーリーを作っていたそうだが,2007年の時点であらためて書き直しているとのこと。新たなストーリーは,エピソードごとにどう見せればより分かりやすい内容となるか熟慮されており,最初のストーリーとは大きく異なるそうだ。
巧氏は,「2004年に開発に携わっていたスタッフは内容の違いに驚いたかもしれません」と述べつつ,良いストーリーに仕上がったと自信を覗かせた。
本作には,30人近い登場人物のエピソードが同時進行していくという,ゲームならではの演出が盛り込まれている。そのため,メモに書かれた文字情報だけでは,ゲーム内容をさっぱり把握できなかったと,竹下氏は当時を振り返っていた。
また巧氏は,そのような,さまざまな登場人物のエピソードが絡み合っていく部分を楽しんでもらえるよう,配慮したという。そのため,膨大な量の作業が発生し,時間がいくらあっても足りない状況に陥ってしまった。スケジュール管理を行う竹下氏もかなり苦労したようだ。
iPhone/iPod touch版については,そもそも開発チームにガジェット好きが多く,「リリースできたら面白いね」という話が出ていたという。
しかし,竹下氏も巧氏もこういったデバイスなどにはあまり詳しくないとのこと。巧氏は,NDS版のリリース前後に自らTwitterを使ったプロモーションを行っていたが,ハッシュタグの使い方を理解するのに1か月近くかかったというエピソードを
披露した。
続いて,このようなイベントに出演することについてどう考えているか尋ねられた巧氏は,実際にゲームをプレイした人達と直接話ができるところが良いと述べた。巧氏は,ネット上の感想にも目をとおしているそうだが,直接言葉を交わすことで「がんばってよかった」と強く感じるという。
次に竹下氏は,本作が「E3 2010」で高い評価を獲得したことや,平成22年度文化庁メディア芸術祭のエンターテインメント部門 審査委員会推薦作品に選出されたことを紹介。さらに巧氏は,企画当初から海外展開を意識していたことを明かし,特定の国や文化圏をイメージさせないよう,キャラクターのデザインや名前にも配慮したと付け加えた。背景に文字情報が一切含まれていないのも,そのためだそうだ。
パズルを解く面白さや,ハードボイルド/サスペンス要素といった本作の魅力を列挙しつつ,「ミステリー作品のいいとこ取りになっています」と賞賛していた。
その一方で,ゲーム冒頭の旗を使って移動するシーンでつまづいたことを指摘し,「コツが分かるまでしんどい」と述べると,巧氏は「実は作り直したい部分です」と返していた。
また有栖川さんは以前,他社の作品でゲーム開発に携わったことがあるが,そのときの仕事は小説を書き起こすだけだったため,「自分がゲーム作りに参加した」という意識は希薄だったそうだ。
それを聞いた竹下氏と巧氏が,機会があればぜひ参加してほしいと述べると,有栖川さんは「ギャグをやってみたい」と答えた。というのも,有栖川さんは,普段の会話に駄洒落などを織り交ぜる巧氏から影響を受けているそうで,「巧さんはギャグが冴えている」と評していた。
続いて,ゴースト トリックのストーリーを賞賛する感想が多いことについて,巧氏は,「もともとミステリーが好きなんです。ゲームでミステリーを表現したかったので,そのように評価されて嬉しく思います」と語った。
有栖川さんは,こうしたミステリーを取り入れたゲームについて,2010年に話題となった電子書籍と絡めて言及し,これまでのように読み進めるだけではない新しい楽しみ方が生まれるのではないかと期待を覗かせた。
このことに関連して,有栖川さんも巧氏も,小説では残りのページ数,映画では残り時間でどんでん返しがあるかどうか予想できてしまうが,ゲームにはそれがないので,作り手として可能性を感じると述べる。その一方,今後は,本ならでは,ゲームならではの面白さの追求も一層なされるはずだと予測する。
また竹下氏は,iPhone/iPod touch版の開発にあたって,表現の幅を広げたり,顧客層を広げたりすることにもチャレンジしたと述べた。
次にトークは,逆転裁判シリーズに続き,ゴースト トリックが宝塚歌劇団によって舞台化されるのではないかというテーマに。
巧氏は,「最初はビックリしたが,よくよく考えると宝塚のファンタジーと『逆転裁判』の相性はよかった」と述べ,ゴースト トリックにも“舞台での見せ方”を取り入れたと明かした。
また有栖川さんが,同じ舞台なら今度は歌舞伎にしてみるのはどうかと提案すると,巧氏も「いいですね」と同意。竹下氏は「がんばります」と,どこまで本気か分からない(?)返答をしていた。
続いて,来場者や,Ustreamを用いた生中継番組の視聴者から寄せられた質問に答える「Q&Aコーナー」がスタートした。
最初の質問は,「ゴースト トリック」というタイトルの由来について。これは巧氏が最初に決めたものだが,もっとキャッチーで分かりやすいものにすべきとの声が上がり,「ゴゴゴゴゴースト」「憑依ドン!」といったタイトルが候補になったことが明かされた。
また,一度は「トリツク」というシンプルなタイトルに決まりかけたものの,権利上の理由から見送られ,結局「ゴースト トリック」に落ち着いたという。
なお,有栖川さんも最初に題名を決めてから作品の執筆に取り掛かるそうだ。有栖川さんは,題名に沿って書いていくと,ブレることなく作業を進められると話していた。
次に,主人公“シセル”の情けない死にざまがフィーチャーされたNDS版のパッケージについて,巧氏は「主人公がカッコよく立っているものにしたくなかった」と説明する。
なお竹下氏によると,パッケージイラストについて賛否があるのは確かだが,賛成派ほどゴースト トリックをこよなく愛している傾向があるとのことだ。
ゲーム音楽の制作は,基本的に,巧氏からのオーダーに沿って担当者が進める方式だが,担当者からの逆提案もあり,かなり頻繁にやりとりが行われたという。
巧氏のシナリオ制作作業が遅れたため,音楽を先行して作らなければならなかったことを竹下氏が明かすと,巧氏は,人気キャラの“ミサイル”のテーマ曲などに当初の予定とは違う曲を割り当てたことを告白していた。
また巧氏によると,本作の大きな特徴となるキャラクターのアニメーションの制作には,あえてモーションキャプチャーを用いず,“見ていて楽しい”ものを一つずつ作り込んでいったという。例えば,“カバネラ警部”が歩くときのアニメーションは,1か月近くかけて作られているそうだ。
そのほか,巧氏が,お茶の飲み方一つとっても,そのキャラクターの特徴に合わせて細かく作り込んでいったと述べると,有栖川さんは「小説でも,登場人物のしゃべり方が決まらないとその先を書くことはできない」と同意した。
なお巧氏曰く,登場人物は「全員,浮世離れした人にしよう」と決めていたとのこと。一つ一つの動きを作るにあたって参考にした人はいるが,基本的にはまったく架空のキャラクターだそうである。
iPhone/iPod touch版を作るにあたっては,グラフィックスの解像度こそ上がっているが,プレイフィールはNDS版と差が生まれないように最大限配慮したとのこと。
竹下氏によると,制作期間は研究を含め3か月程度で,その中でも印象に残っているのは,「マルチタスク」機能への対応だったという。常に1本のタイトルがタスクを占有するゲーム機と異なり,iPhoneでは電話が掛かってきたり,ほかのアプリが動作したりといった割り込みが生じる。このような割り込みへの対応を通じ,大きな経験を得たと述べていた。
気になる続編については,未定とのこと。竹下氏は,この1月にリリースされた海外版の評価が鍵になると述べる一方,iPhone/iPod touch版が好評なことを踏まえ,「いい形に繋げたい」と前向きな姿勢を見せていた。
イベントの終盤では,1月〜2月上旬に配信予定のiPhone/iPod touch版のアップデート内容が紹介された。まず一つはユニバーサルアプリ化で,これにより,iPadでもきれいな画面で楽しめるとのことだ。
また新コンテンツとして,「みさいるおみくじ」「ゴースト パズル」が追加される。みさいるおみくじは,1日1回,ミサイルがおみくじを引いてくれるという内容。
ゴーストパズルはいわゆるスライドパズルで,3種類の絵柄が用意されており,それぞれ,3×3,4×4,5×5のいずれかを選択してプレイできる。絵柄が動くのが大きな特徴で,見事クリアすると壁紙が獲得できる。
最後に竹下氏と巧氏は,今回,より多くの人に遊んでもらえるよう,iPhone/iPod touch版の制作に踏み切った結果,これまでのNDS版のプレイヤーとは異なる層にもアピールできたとし,今後もさらにプレイヤー層を広げていきたいと展望を述べた。
また有栖川さんは,今後も,ゲーム開発者と小説家が刺激し合ったり,協力し合ったりすることで,面白いものを世に送り出していきたいと述べ,イベントをしめくくった。
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ゴースト トリック(2010年版)
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