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印刷2011/06/03 12:25

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[COMPUTEX]Microsoft,x86とARMの両方で動作する「Windows 8」を披露。タブレット向けの新UIや一部ハードウェア要件も明らかに

 台湾時間2011年6月2日,Microsoftは,台北市内のホテル「W Hotel Taipei」で,同社のパートナー向けとなる次世代製品プレビューイベント「Microsoft Partner Preview COMPUTEX 2011」を開催した。
 「次世代製品」とは,開発コードネームが「Windows 8」だと北米時間2011年6月1日に明らかとなった次世代Windowsだ。

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タブレットでの使い勝手に配慮し

タッチ操作に最適化したWindows 8


 最初に登壇したTami Reller最高財務責任者は,次世代WindowsのコードネームがWindows 8であることを公表。続いて登壇したMichael Angiulo副社長が,その概要紹介やデモを行った。

開発コードネームWindows 8。仮にこれが正式名へと昇格しないのだとしたら何になるのだろうか
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Tami Reller氏(CFO, Corporate Vice Presidient, Windows and Windows Live Division, Microsoft Corporation)
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Michael Angiulo氏(Corporate Vice Resident, Windows Planning, Hardware and PC Ecosystem, Microsoft Corporation)

公開された,Windows 8の開発リファレンスシステム
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 Angiulo氏は,「Windowsは常に,PC業界の新しい時代を切り開く存在として重要な役割を担ってきた」と,過去には16bit時代を終わらせて32bit全盛時代を切り開いたことや,MIPSやAlphaなどの幅広いハードウェアへの対応展開を行った事例を紹介。さらに現行のWindows 7では,ノートPCの機動性を,性能グレードの範囲で最大限に引き出せるようになったと自画自賛しつつ振り返り,Windows 8について次のように述べた。
 「今,コンピューティングのトレンドは大きな変革を迎えている。これに対応すべく,Microsoftが総力を挙げて開発に取り組んでいるのがWindows 8である」

 「変革」とは何なのか。Angiulo氏は具体的に,次の2つを挙げている。

  • タッチインタフェースを採用した新しいスタイルのPCが台頭してきていること
  • アプリケーションやサービスのベースプラットフォームがWebになってきていること

 誤解を覚悟で断定的に表現してしまえば,前者はタブレット,後者はHTML5やCSS,WebGL,Javaなどのことをそれぞれ指しているのだと思われる。


Windows 8の新GUIが動作デモ付きで公開に

「スタート」はボタンからスクリーンへ


 Angiulo氏は,「本日お見せするのは,実際に動作する,開発中の,本物のWindows 8だ」として,Windows 8の動作を実際にデモンストレーションしてみせた。イベントはビデオの撮影が許可されなかったため,YouTubeムービーを掲載してある6月2日の記事と併せて読み進めてもらえればと思う。

 さて,氏が最初に見せたのは,指をスライドさせて画面を左右にスクロールさせる操作。Windows 8は,GUIが完全にGPUアクセラレーションされて描画されるものとなり,ゲーム画面のように流れるようなスクロールレスポンスを返す。

スタートスクリーン
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天気予報を起動したところ。実はこれ,HTML5ベースだ
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タッチスライドで高速スクロールしているところを撮影した

 「Start」と左上に出ている画面は,スタートメニューならぬ,「スタートスクリーン」。Windows 8特有の画面で,ここには,ユーザーが最もよく使うアプリケーション(以下,アプリ)や,よくコミュニケーションする友人や,一番知りたい情報などが表示される。

アプリは基本的には全画面で表示される。ウィンドウフレームなどは表示されない
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 スタートスクリーンは,ハードウェアの画面解像度やカスタマイズ状態によっては複数面で構成されることもあり,その場合は優先順位が高いアプリや情報などが最初のページに掲載されるとのこと。スタートスクリーンの次ページを見たいときには,指をスライドさせてスクロールさせればいい。
 項目をタッチすればアプリが起動するのだが,注目したいのは,そのときウィンドウのフレームは表示されず,アプリが全画面表示されること。「Windows 8では,画面の全域を使ってアプリの情報を表示するようなデザインに努めた」(Angiulo氏)とのことだ。

 Windows 8では,画面の端を指で触れるとメニューバーなどを呼び出せるようになっている。右端ならシステム関連,上下なら現在表示しているアプリケーションのメニューバーがそれぞれ出てくるといった具合だ。また,左端に触れると,起動中のアプリをサムネイル表示した状態でつまみ出せるようになっており,ここで指をスライドさせると,つまみ出したサムネイル状態のアプリが全画面表示される。Windows 7の「ライブタスクバープレビュー」操作を[Alt]+[Tab]キー的に実装してきたイメージだ。

既に表示しているアプリと,サムネイルをつまんできたアプリは,任意の大きさ比で同時表示が可能
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 なお,この操作系においては,アプリのウィンドウを2つ同時に表示させることも可能になっている。
 つまみ出したアプリのサムネイルを画面上の適当な位置で静止させると,そこで画面が左右に区切られ,2つのアプリがサイドバイサイドの横並びで表示されるようになる。2つのアプリの境界線付近をタッチしてスライドさせれば,2つあるウィンドウの大小を自在に調整可能だ。
 さらに,サイドバイサイド状態で別のアプリをつまむと,2ウィンドウ状態から片方だけ別のアプリへ切り替えることもできる。

 マウス操作を指タッチに置き換えただけの操作系ではなく,「指タッチで快適に操作できるインタフェースとしてはどんなものなのか」を徹底的に研究して設計されたという手応えの感じられたデモだ。

 続いて,このタッチパネル型インタフェースを用いて「Internet Explorer 10」を使う操作系も公開された。

IE10の画面
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 Windows 8に搭載されるIEは,「Internet Explorer 10」(以下,IE10)になる見込みで,グラフィックス描画はすべてGPUアクセラレーションが効くように設計されている。前述してきたWindows 8そのものの高速レスポンス性はIE10でも発揮されており,Angiulo氏によればActiveXやFlashなどもGPUアクセラレーションが効いてサクサクと動くという。

 実際にAngiulo氏は,画面の上部に触れると各Webページのタブがサムネイルで表示されることと,これらに触れると,表示されるページが瞬間的に別タブの内容へ切り替わることを示してみせた。

 さて,URLやフォームなどへのキー入力は,タッチ型インタフェースを使う以上,ソフトウェアキーボードを用いて行うことになるわけだが,Windows 8では,ここにもユニークな工夫が垣間見られる。
 ソフトウェアキーボードは,一般的な,QWERTY配列のものが画面下半分などを覆うような動作モードでも利用できるのだが,キーボードが左右に分割され,タブレットを両手で持ったとき,左右の親指で操作しやすくなるスプリットキーボードモードも利用できるようになっているのだ。

左はよく見慣れたソフトウェアキーボード。右がWindows 8のスプリット型ソフトウェアキーボードだ。タブレットを両手持ちにしているときに便利
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従来型のWindowsデスクトップも

同時に利用できる


 というわけで,ここまではタブレット向けに最適化された操作系やインタフェースが紹介されてきたわけだが,「Windows 8が従来どおりPC用OSであることは変わっていない」とAngiulo氏。
 Angiulo氏は,スタートスクリーンにある「DEKSTOP」にタッチし,従来からのWindowsユーザーに馴染み深いデスクトップ画面へスイッチしてみせた。当然,この従来型のWindowsデスクトップ画面への移行も瞬間的に行える。

従来型のWindowsデスクトップを表示させたところ
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 ここでAngiulo氏が訴えていたのは,“タブレットモード”と“PCモード”を切り替えているわけではないということ。「タブレット的なインタフェースと,従来のWindows的なデスクトップは完全に統合されているのだ」とAngiulo氏は断言する。
 その証拠に,Angiulo氏は,タブレット的インタフェースと従来型デスクトップとをサイドバイサイドで画面分割表示させたり,あるいはタブレット的インタフェース画面と従来型デスクトップの両方を駆使してファイル選択したりといった,Windows 8ならではのオペレーションをやってみせていた。

タブレット的インタフェースと,従来型デスクトップとは相互に連携して利用が可能
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 「Windows 8は『タブレットのために作られたWindows』ではない。すべてのPCで使ってもらえるOSであり,PCごとに最適な使い勝手を提供し,同時にユーザーが使いやすい使い方を選べる革新的なOSなのである」(Angiulo氏)

Windows 8はすべてのタイプのPCに適合可能
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Windows 7から大きくは変わらない

Windows 8の動作要件


 話題は,Windows 7からWindows 8へのアップグレードに関する話題へと移る。
 まずは気になるハードウェアシステム要件だが,基本的にはWindows 7から大きくは変更なく,Windows 7が動作するPCには,問題なくWindows 8をインストールできるとのことだ。
 アップグレードインストーラは賢くできており,そのPCに搭載されているハードウェアを分析して,そのPCに最も適したユーザーインタフェースの在り方を自動的に決定してくれるという。

ごく普通のノートPCへWindows 8をインストールした事例
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 Angiulo氏は,何台かの発売済みPCに,Windows 8をインストールした事例を紹介した。
 例えばタッチインタフェースがない大多数のPCだとどうなるかだが,もちろん,普通にマウスとキーボードで使えるデスクトップ環境がセットアップされる。ただし,[Windows]キーを使えば,タブレット型インタフェースとの交互往来は問題なく可能だ。

4:3アスペクトのタブレットへWindows 8をインストールした事例
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 タッチインタフェースを搭載するか4:3アスペクト画面のPCにインストールしたケースでは,アプリのサイドバイサイド表示モードが機能せず,選択したアプリが必ず全画面表示になるさまが示された。「4:3アスペクトのサイドバイサイドは,アプリ画面が小さくなって見づらいから」という配慮のようだ。

Windows 8がインストールされたVAIO L
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 続いて紹介されたのはVAIO Lにインストールしたケース。VAIO Lのようなタッチインタフェース採用型オールインワンPCでは,Windows 8が持つタブレット向けGUI機能の各種がフルスペックで動作する。ある意味,Windows 8へのアップグレードが最も望まれるPC形態といえるかもしれない。


ARM版Windows 8の真実


 そして,Angiulo氏は,ユーザーやハードウェアメーカーが期待する新機能でもあるARMアーキテクチャへの対応について言及した。

Windows 8はARMアーキテクチャをサポート
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 現在,Windows 8の開発現場では,ARMアーキテクチャをベースとするハードウェアへの対応に力を注いでおり,「これまで主流ハードウェアだったx86系プラットフォームに見劣りしない,妥協なしのWindows体験がARMプラットフォームで実現される見込み」(Angiulo氏)という。
 Angiulo氏は,Qualcommの「Snapdragon」をベースとした開発者向けのリファレンスタブレット端末を手に取り,本イベントでここまで紹介されてきたWindows 8の機能をARMアーキテクチャでもすべて実現できているとアピールした。

Angiulo氏が左手で持っているのはQualcommのARMベースSoC,Snapdragon(型番:MSM8660)。Windows 8が実際に動作している
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 また,「Smartbook」が盛大にコけたことで,現在は「ARMプラットフォーム=タブレット」というイメージがあるが,Angiulo氏は,「ARMプラットフォームでも,高性能なものであればフルスペックのノートPCを実現できる」とし,NVIDIAが試作した「Kal-El」(カルエル,開発コードネーム)ベースのノートPCを手に取った。同試作機ではWindows 8が動作していたが,氏はそれだけでなく,画面のキャプチャをプリンタへ印刷してみせるデモも披露した。これは,ARMプラットフォームへも,プリンタをはじめとした周辺機器用のWindowsドライバが提供されることのアピールに相当する。

Windows 8が動くするARMベースのタブレットにて内蔵カメラを起動し,周辺デバイスが動作していることをアピール(左)。右はKal-ElベースのノートPC
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 プリンタやカメラ以外にも,ARMベースの製品では,さまざまな周辺デバイスが組みまれた製品の登場が予想される。そのためMicrosoftでは,そうした周辺機器のドライバ整備を急ピッチで進めているという。GPSセンサー,加速度センサー,電子コンパスなどは,現行のタブレット端末でも多く内蔵されているが,そうしたデバイス群までをもWindows 8環境で効果的に利用できる環境やAPIの整備が進められているようだ。
 これらの実現にはUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)などが利用されると見込まれる。

多彩な周辺機器をどうサポートするかがARM版Windows 8の課題。これについてはUEFIが大きな役割を果たすか?
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 UEFIでは,ホストプロセッサに依存しない周辺デバイスの利用が可能であるため,OSブートアップ時のドライバ組み込みが不要になる。同一ハードウェアで比較した場合,BIOS+Windows 7の起動時間よりもUEFI+Windows 8のほうが起動時間は40%も高速化できたそうで,「最終的な製品では,完全なコールドスタートでも,Windows 8は約6〜7秒で起動するのではないか」,とAngiulo氏は予想していた。

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Qualcomm製の開発者向けリファレンスタブレット
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Texas Instruments製の開発者向けリファレンスタブレット

 さらにAngiulo氏は,x86系プラットフォームにはない,ARMプラットフォームならではの利便性についても言及。ARMプラットフォームでは,ネットワーク機能までが1チップに統合されているため,システムがスタンバイ状態でも常にネットワークに接続した状態を維持できるとした。
 要するに,スタンバイ状態でもメールなどの受信が可能というわけだ。


Windows 8は単なる

アップグレードOSではない


Windows 8においては16:9アスペクトが推奨される。サイドバイサイド表示のサポートは1366×768ドットから
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 Windows 8は,Windows 7時代のハードウェアに問題なくインストールできるOSとなるが,Windows 8向けに最適化されたハードウェアであればもっと使い勝手が向上する。
 分かりやすい例として挙げられるのは,前述した画面アスペクト。4:3アスペクトではサイドバイサイド表示を利用できないので,Windows 8向けPCは16:9アスペクトの採用が奨励される。また,ワイドアスペクトであっても1024×600ドットでは解像度が足りないため,やはりサイドバイサイドは利用できない。

パネル外周部のタッチ感度がWindows 8のタッチインタフェースでは極めて重要になる
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 また,Windows 8のタブレット的なインタフェースでは,画面の端に触れる機会が多くなるため,画面のベゼル部分に段差があっては操作がしづらくなる。よってタッチインタフェースを主体にする場合は,映像表示面とベゼル部分のシームレスな加工が推奨される。
 また,既存のタッチセンサー一体型液晶ディスプレイは,外周付近の感度に弱点を抱えるものが多いのだが,外周部を触りまくることになるWindows 8では,この部分の妥協は勧められない。


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Windows開発者向けカンファレンスであるBuild開催のお知らせ
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VAIO LにインストールしたWindows 8(左)と,ARMベースタブレットで動作するWindows 8(右)で,同一のアプリが動作しているところに注目
 Angiulo氏は「Windows 8の開発進捗度はかなりのところまで来ているが,ハードウェアベンダやソフトウェアベンダとの細かい連携を図りながらの開発最終フェーズは,まだ始まったばかりである」と結び,9月13日から16日まで開催される開発者カンファレンス「Build」の告知を最後に行った。

 Buildは,Windows関連開発者向けカンファレンスであるWinHECとPDC,MIXのすべてを統合した新しいカンファレンスになる見込みで,当然,メインテーマはWindows 8ということになる。
 おそらく,今回のプレビューイベントで明かされたこと以上に深いWindows 8の話題が出てくることだろう。ゲーマーとしては次世代DirectXや,Windows 8のユーザーインタフェースを活用したタイトルの動向が気になるが,はたして……。

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