レビュー
システムを一新し,よりピュアなホラーが楽しめるようになったファン必見の地獄絵図
コープスパーティー Book of Shadows
本稿では実際にプレイした感想を交えつつ,ゲームの魅力について紹介していこう。なお,「コープスパーティー」をよく知らないという人には,ぜひとも「こちら」のレビューをチェックしてほしい。
「コープスパーティー Book of Shadows」公式サイト
繰り返される絶望と狂気
“天神小学校”の悪夢再び
初のコンシューマタイトルとなった前作「コープスパーティーBR」は,CEROレーティング「D」(17歳以上対象)とは思えないほどの陰惨なシナリオやビジュアルが話題となり,発売後に全国で品薄状態が続くほどの人気を博した。
バッドエンドだらけの救われないマルチエンディングシステムがシリーズ最大の特徴であり,これまでに多くのプレイヤーの心に癒えない傷を残してきたコープスパーティーだが,システムが一新された本作でも,その鬼畜外道っぷりは変わっていない。記事冒頭でもお伝えしたように,全7話からなるオムニバス形式で構成されている本作には,前作同様,それぞれのエピソードにいくつもの専用バッドエンドが用意されているのである。同人ゲーム時代からシリーズに慣れ親しんでいるプレイヤーでも,第1話から絶望の洗礼を受ける覚悟をしておいたほうがいい。
もちろん,各章には“ベストエンド”も用意されているのだが,ベストだからといって「幸福なエンディング」であるとは限らない点が,実にコープスパーティーらしい。苦労してベストエンドにたどり着いたはいいが,結果的にはどのバッドエンドよりも悲惨な末路を迎えてしま……なんてことがざらにあるのだ。クリアしたという達成感のあとに訪れるのは,最悪にクソッタレな余韻(褒めてます)。でも,そんなところが不思議と病み付きになるのは,秀逸なシナリオに引き込まれているせいなのか,筆者がドMだからなのか……。
ちなみに本作のシナリオは,基本的に前作をプレイしていることを前提とした作りになっている。そういった意味ではファンディスク的な側面が強く,新規プレイヤーにはちょっとオススメしづらいところがある。「コープスパーティー」に興味があるならば,まずは「コープスパーティーBR」からプレイしてほしいところだ。
何者かに縛られ,放置プレイ中の女の子。彼女は確か,前作のエクストラチャプターに出ていたような……? |
教え子に対してあられもない姿を晒す結衣先生。これは一体何ごとか! 羨ましい! |
その分,前作をクリアしたプレイヤーにとっては非常に興味深い内容になっており,各エピソードでは中嶋直美,鈴本 繭,宍戸結衣,大上さやか,森繁朔太郎,持田由香,霧崎凍孤の7名がメインキャラクターを張っている。それぞれの過去や現在の出来事を通じて,キャラクターの掘り下げが行われているのだ。中には前作エンディング後の物語が描かれているエピソードもあり,ファンにとっては感慨深い展開が用意されている。……そりゃもう,感慨深すぎて吐き気を催すくらいだ。というか,プロローグから「うわぁ……」ってなること受け合い。プレイヤーに多少なりとも人情というものがあるならば,「救いはないんですか!?」と思わず叫んでしまうはずである。シナリオを手がけた祁答院 慎氏は,そうとう精神汚染(後述)が進んでいるに違いない……。
コンセプトはそのままにシステムを一新
プレイ感覚は,前作の見下ろし型2D RPG的なものとは打って変わって,一般的な(ちょっとレトロな感じの)アドベンチャーゲームに近づいている。シナリオの進行フラグを立てるために総当り的な移動や調査を繰り返す場面が多く,いい意味でも悪い意味でも,少々懐かしい印象を受けるのだ。
とはいえコープスパーティーの場合,どこかノスタルジックなプレイ感覚を再現することも,ゲームデザインに盛り込まれているような気がする。そこかしこにしかけられた恐怖の罠におびえつつも,怪しい場所を手当たり次第に探索しなければならないこの感覚は,得体の知れない場所に監禁され,必死に生き延びようとするキャラクター達の心情とうまいことシンクロするので,恐怖感も倍増するのだろう。
コープスパーティーは,攻略するうえで念入りな探索が必要とされるゲームだが,本作ではこの精神汚染度/黒化という要素が盛り込まれているため,むやみやたらに調べまくっていると,自分の首を絞めることになるかもしれないのだ。本作においては,好奇心は人を殺すのである。
ちなみに本作は,オプションモードも充実している。ゲーム中に登場したグラフィックスを観賞できる“心霊写真館”や,BGMを聴ける“電動演奏機”など,アドベンチャーゲームにつきもののオマケモードは一とおり揃っている。さらに,ゲームの進行度に合わせて出演声優の音声コメントが追加されていく“言霊集”や,ダミーヘッドマイクで収録した3D音声が聞ける“心霊音声劇場”といったファンサービス的な要素も嬉しい。この辺は,アドベンチャーゲームを得意とする5pb.の“らしさ”が出ている部分だろう。
相変わらずのインディーズ精神
分かるヤツには分かる妖しい魅力を満喫せよ
来るもの逃さず,去る者追えず。やり過ぎ感のあるホラー作品ゆえ,コープスパーティーシリーズは決して万人にオススメできるような作品ではないが,特定のコアなファン層を虜にして離さない妖しい魅力を持った作品として,これから先もずっと評価されていくだろう。コミックや小説といったメディアミックス展開も含め,この恐怖がどのような広がりを見せてくれるのか,今後とも注目していきたいタイトルだ。
なお「こちら」でも紹介しているように,本作の体験版がPlayStation Storeにて配信されている。購入を検討しているホラーファンは,ぜひ一度体験版をプレイしてみよう。
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