インタビュー
田中公平氏とヒャダインこと前山田健一氏の対談が実現。前山田氏が「このままじゃ大丈夫じゃないことが分かりました」と語った訳は……?
田中公平氏といえば,「エスパー魔美」「トップをねらえ!」「勇者王ガオガイガー」「ワンピース」といったアニメ,そして「天外魔境」シリーズや「サクラ大戦」シリーズ, 最近では「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動」といったゲームの音楽を手がけてきた人物だ。たとえアニメやゲームに詳しくなくとも,日本で暮らす人ならば,一度くらいは田中氏の生み出した音楽に触れたことがあるのでは,そう言っても,決して誇張にはならないだろう。
この,前山田氏からの提案を断る理由など何一つない。即座に日程を調整し,1月24日に収録したのが今回の対談である。当初,収録には2時間程度を想定していたのだが,お二人のやりとりは途切れることなく続き,気付けば2時間半をオーバー。場所の都合で半ば無理やり切り上げる形になってしまったのが残念だが,本稿ではその内容を,ほぼ余すところなくまとめてみた。
内容は,お二人の生い立ちから,二次創作文化への思い,現在の音楽業界について,職業論,プロとしての処世術に至るまで多岐にわたっている。そのため,記事のボリュームも相当なものになっているが,とくに田中氏の言葉からは,前山田氏がそうであったように,何かしら得るものがあるはず。ひとまずはブラウザのお気に入りに登録して,時間のあるときにじっくり読んでいただけると幸いだ。
田中公平氏 1954年生まれ。作曲家,編曲家,歌手。東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。ビクター音楽産業に3年間勤務したのち,ボストンにあるバークリー音楽院に2年間留学し,帰国後から作曲家としての活動を本格的に開始。「エスパー魔美」「トップをねらえ!」「勇者王ガオガイガー」「ワンピース」といったアニメ,「天外魔境」シリーズや「サクラ大戦」シリーズ,「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動」などのゲームで,音楽を担当している。2008年には歌手としての活動も開始。最近では,4月スタートのアニメ「氷菓」で音楽を担当している 「田中公平のブログ My Quest for Beauty」 | 前山田健一氏 1980年生まれ。作曲家,作詞家,編曲家,歌手。自身曰く「鳴かず飛ばずの時代」(2007年〜)に,ヒャダイン名義でゲームのアレンジ曲をニコニコ動画で発表し,話題を呼ぶ。2010年5月に,ヒャダインがプロであることを告白。これまでに,東方神起,月島きらり starring 久住小春,麻生夏子,ゆいかおり,ももいろクローバー(Z),でんぱ組.incなどの楽曲を手がけている。ヒャダイン名義で歌手活動も行っており,5月9日(水)には4thシングル「Start it right away」(TVアニメ「黒子のバスケ」のEDテーマ)を発売予定。2012年1月からテレビ朝日系列「musicる TV」のMCを務めるなど,地上波タレントとしての一面も見せる 「ヒャダインのチョベリグエブリデイ」 |
「ニコニコ動画」が大好きで
ヒャダインに会ってみたかった(田中氏)
4Gamer:
今日はよろしくお願いします。
いちおう,こういう流れを考えてみたんですが……(と,想定している話題を書いたメモを田中氏に渡す)。
あ,とりあえずね。そんなのなくていいです。
4Gamer:
(´・ω・`)
前山田健一氏(以下,前山田氏):
(爆笑)。
田中氏:
いやもうね,今日は前山田君に会っていろいろ聞いてみたかったんですよ。
4Gamer:
田中さんから前山田さんに「会いましょう」という連絡をされたんですよね。それが今回の対談につながったという。
前山田氏:
そうなんです。直接お目にかかるのは今日が初めてなんですけど,とある方を介してちょっと前からメールのやりとりだけはさせていただいていまして。
で,田中さんから「会いましょう」と声をかけていただいたんですが,その場限りで終わらせてしまうのはもったいないと思って,4Gamerさんで対談という形にしてもらいました。
4Gamer:
急にそのお話をいただいたときは,正直なところびっくりしました。
そもそも田中さんは,何をきっかけに前山田さんに興味を持たれたんでしょうか?
田中氏:
私はネットの巡回をよくしますし,「ニコニコ動画」も大好きという,著作権者には珍しいタイプなんですね。
4Gamer:
確かに著作権者の中には,苦々しい思いをしている人も多いと思います。
田中氏:
でもね,他人の著作物を勝手に使うな,権利を守れ! ってどんなに声を上げても,この流れは止められないですから,使ってもらったうえで,それが新しい文化の創造につながったり,新たなプラットフォームが生まれたりして,そこから少し印税が入ってくるようなシステム作りをしたほうがいいと思うんです。
4Gamer:
ただ規制を厳しくするだけではなく,プラスに活用するべきということですね。
田中氏:
……っていう話を,著作権協会で分科委員になっていた時期に言い続けていたら,クビになっちゃったんですけど(笑)。
で,そんな中で前山田君はヒャダインという名前で凄く面白いことをやっていたんです。当時はヒャダインという奴の素性が分からなかったので,誰だこいつ? 訴えられたらどうすんだ? なんて思いながら見ていて。その頃から一度会ってみたいと思っていたんですが,その正体が前山田健一君だというじゃないですか。
前山田君といったら,「ワンピース」の「Share the World」を書いたイヤな奴じゃないか! って(笑)。
前山田氏:
そんな!(笑)
4Gamer:
ワンピースの最初の主題歌を作ったのは田中さんでしたね。
田中氏:
まあ,それ以外に作ってるものも凄くセンスがあると思っていたら,今度は歌まで歌い始めてね。「カカカ」(※「ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C」)って。こっちは,「ガガガ」(※「勇者王ガオガイガー」の音楽を田中氏が担当していた)ですからね。ガガガ対カカカが,今回のテーマ(笑)。
それでまあ,ヒャダインと前山田君が自分の中で一致したあと,ネットで調べていったら,大阪星光学院の出身だということが分かったんです。私と同じ母校なんですよ。そこからさらに調べていったら,上山善治郎先生の教え子だったという。
前山田氏:
えええええ? あの上山先生ですか?
田中氏:
その上山先生です。先日も会ってきて,前山田君の話もいっぱい聞いてきましたよ。
前山田氏:
上山先生,もうけっこうなお年ですよね?
田中氏:
今,68歳だけど,65歳で定年となってからも,嘱託という形で週に3回,地理を教えてらっしゃいます。
でね,上山先生が一番最初に担任として受け持ったクラスに,私がいたんです。17期でね。だから上山先生は,私達の学年のことは全員覚えているんですよ。先生も当時はまだ教職に就いて3年目ぐらいで,僕らとは10歳しか離れていないんで,アニキみたいな感じでした。
前山田氏:
僕は44期ですし,さすがに当時の上山先生もアニキっていう感じではありませんでした。
田中氏:
時々,飲みに行くんだけど,「今度は前山田も呼べ」と厳命されているので,いずれ連絡します。
前山田氏:
僕のこと覚えててくれました?
田中氏:
さすがに長いこと教師をやっているから,受け持った全生徒のことは覚えてないそうですが,「あいつ京都大学行ったよな。頭良かったで」って言ってましたね。
前山田氏:
覚えていてくれたんだ!
田中氏:
上山先生に「今度,前山田が同じ業界に入ってきまして」って言ったら,そのことも知ってました。
前山田氏:
意外ですねぇ。びっくりしました。僕も上山先生は好きだったんで,本当に嬉しいです。
田中氏:
「担任だったわけじゃないんだけど,前山田はええ奴だから,面倒見たって」ともおっしゃってましたよ(笑)。
4Gamer:
では今日は,音楽家としてだけでなく中高の先輩から,後輩に向けてのアドバイスなども聞かせていただけそうですね。
前山田氏:
ぜひ,よろしくお願いします!
- 関連タイトル:
GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動
- 関連タイトル:
拡散性ミリオンアーサー
- 関連タイトル:
拡散性ミリオンアーサー
- この記事のURL:
キーワード
(C)2012 Sony Computer Entertainment Inc.
(C) 2012 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
Developed by Mighty Craft Co.
(C) 2012 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. Developed by Mighty Craft Co.