業界動向
スクウェア・エニックスが「ドラゴンクエストXに関する報道」について正式にコメント
「ドラゴンクエストX」に関する一部報道について
該当する記事で指摘された見解というのは,概ね以下のようなもの
・「ドラゴンクエストX」にはチャット機能の一つとして,「ダイス!」と入力すると数値がランダムに表示されるというお遊び機能がある。これを利用しゲーム内賭博を行っているプレイヤーがおり,大きな問題となっている
・この問題をリアルマネートレード(RMT)の問題と絡めると,それは実質的に賭博行為であり,その環境を容認しているスクウェア・エニックスは,賭博罪・賭博開帳罪に問われる可能性があるのではないか
――という話である。
これに対するスクウェア・エニックスの見解は,以下の通りだ。
昨日(8月29日)、一部報道機関において、当社が提供するゲーム「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」(以下「ドラゴンクエストX」)におけるダイス機能につき、やや踏み込んだ論及がありました。本件について、当社の見解をお知らせいたします。
ここで言うダイス機能とは、ゲーム本編に直接関わる要素ではありません。様々な仕草をしたり、チャットをしたりする機能と同じく、お客様に自由な遊びを作り出していただくためのものです。
「ドラゴンクエストX」におけるゲーム内アイテム、ゲーム内通貨は無償で提供されているものであります。また、お客様同士のアイテム等の交換行為は、当社が主体的に実施しているものではなく、かつ、外部ウェブサイトでのアイテム等の売買は利用規約において禁止しております。したがいまして、当社が賭博罪・賭博開帳罪に問われる可能性はないと認識しています。
また、「ドラゴンクエストX」は、インターネットを介して他のプレイヤーと一緒に遊んでいただくゲームです。利用規約を守っていただけないお客様や、他のお客様に対するマナー違反を行っているお客様については、専任スタッフを配置し都度対応しています。
今後も、お客様に安心して遊んでいただけるゲームを提供する取り組みを継続してまいります。
上記のコメントにも書いてあるが,スクウェア・エニックスが賭博罪・賭博開帳罪に問われる可能性は極めて低いと思われる。
……そもそも発端となった記事を見る限り,「ダイスという確率を利用した機能がRMTと密接に結びついて,それが刑法の定める賭博罪の成立要件を満たす」というのは,飛躍が過ぎる。例えるならば「包丁売ってる店はみんな殺人幇助罪ね」と言っているようなものだ。
そもそも,賭博罪かどうかを決めるのは「法」の判断であり,仮にこれが賭博罪の成立要件を満たすということになっても,それが解決に至るまでには,サーバー上のデータを法律上でどう取り扱うのかという部分を含めて,いくつかの争点を順番にクリアにしていく必要がある。にも関わらず,RMTとゲーム内のランダム要素を単純に結びつけて,今の時点でそういった極論ともとれる可能性に言及するのは,議論として見るならばあまりに稚拙だ。
読み解くまでもなく理解できることだが「ダイスという確率を利用した機能がRMTと密接に結びついて,それが刑法の定める賭博罪の成立要件を満たす」のが真であれば,昨今話題の「ガチャ+レアカード」には,まごうことなくすべて賭博罪が適用されることになる。しかしそうはなっていない。
何にせよ,もう少し確度の高いことであればまだしも,この程度の可能性/憶測でネガティブな記事を書かれては,さすがにたまらない――ということで,当のスクウェア・エニックスがオフィシャルでアナウンスを出したという形なのだろう。
ただ,あえて一つの視点を提示させてもらうとするならば,発端の記事にも書かれていた「ゲーム上で使用することができるアイテム等その他の経済上の利益を提供するとき」という消費者庁の見解が,非常に大きい影響を与えていると言わざるを得ない。
ガチャを取り巻く一連の騒動は,確率や価格といった数字の部分ばかりがクローズアップされがちで,なぜかこの点に対する思慮が欠落しがちなのだが,この見解が何を意味するのかというと「ゲーム内のアイテム取り引き/ゲーム内マネー取り引きが,経済上の利益に当たる」という解釈が,行政サイドからなされたということだ(逆にいうと,経済上の利益という判断が成されたからこそ景表法が適用されることになったということだ)。まだ効力は狭い範囲に過ぎないが,このオフィシャルな解釈は,非常に大きい。法の効力が,ついにゲームの中にまで踏み込んできたのだから。
この解釈をやや誇張気味に拡大していくと,ユーザーが所有するゲーム内マネーには当然経済的価値が認められることとなるし,それを詐欺などで奪い取れば,現実世界の刑法が適用されることになってもおかしくない。一方で,RMTと呼ばれオンラインゲームの世界では問題視される「ゲーム外での金銭取り引き」については,(それを売るなどの“権利”がユーザー側に発生することになることにより)事実上認定されることにもつながる。さらに話を進めるならば,仮にゲームのサービスが終わる場合に,そのゲーム内にあるユーザーの「財産」がどのように処分されるのか,といった問題に,現実の法が踏み込んでくることにもなると考えられる。
上記の見解というのは,今後長きにわたって業界に影響を及ぼす,重大なターニングポイントとなるのかもしれないものなのだ。
これら世の潮流の変化を,当のスクウェア・エニックスは目の当たりにしているわけで,若干センシティブながらも,反応せざるを得なかったということだろう。
オンラインゲームにまつわる諸問題というものは,対応が非常に難しいのは確かだし,何十万人ものプレイヤーが参加するゲームでは,何かしらのトラブルが発生するのが避けられないのもまた事実だろう。ただ,だからといって,オンラインゲーム=悪ではないはずだし,数あるオンラインゲームの中でも,過去にもほとんど例を見ないほどの盛り上がりを見せる「ドラゴンクエストX」が,こうした心ない報道によってネガティブな印象を持たれることは,非常に残念であり,甚だ遺憾だ。
非行,引きこもり,そしてゲーム脳など,時代と共にいろいろな批判にさらされてきたゲーム業界だが,真の意味で今後の成長を考えるならば,より良いイメージを作り上げていく努力を重ねることが必要だろう。にもかかわらず,ある意味ゲーム業界内で誤解をばらまき,ネガティブなイメージを与える稚拙な議論が生じたことは,かえすがえすも残念なことだ。
それにしても……,今回の争点である「ダイス」は,太古の昔,13年ほど前の「EverQuest」のころより,MMORPGには普通に組み込まれていた機能だ。むろん,あれから時間も経ち,ユーザー層も変化し,ましてや国民的IPとも呼べるドラクエと比較するようなものでもないが,いまさらながらにそういう問題が起こることの方が,古くからのオンラインゲーマーにとっては新鮮な驚きなのではないか。
この規模のIPがオンラインゲーム化されて盛り上がるのは,かつての「FINAL FANTASY XI」以来なわけだが,あのころ感じた「オンラインゲームそのものの変化」は,いまなお綿々と続いていた。
むろん,それを否定するわけではない。時代と共に,価値や思想は変わっていくものだ。だが,作り手の多くは,古い時代のオンラインゲーマーだったことだろうし,それらの人々の作品に,想像もしなかった苦労が待ち受けていることだろう。今回のスクウェア・エニックスの対応はその一つの表れであったが,ゲーム業界,そしてオンラインゲームという視点からそれぞれ俯瞰して見ると,実に大人の対応だったように思う。
「ドラゴンクエストX」に関する一部報道について
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(C)2012-2017 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.
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