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PS Vita用アプリ「ニコニコ」が目指すゲームプレイ動画の新しいスタイル。ドワンゴ開発チームインタビュー
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印刷2011/12/16 12:01

インタビュー

PS Vita用アプリ「ニコニコ」が目指すゲームプレイ動画の新しいスタイル。ドワンゴ開発チームインタビュー

 2011年9月14日の「SCEJ Press Conference」にて発表された,「ニコニコ動画」「ニコニコ生放送」が利用可能となるPlayStation Vita用アプリ「ニコニコ」。

画像集#010のサムネイル/PS Vita用アプリ「ニコニコ」が目指すゲームプレイ動画の新しいスタイル。ドワンゴ開発チームインタビュー

「ニコニコ」オフィシャルサイト


 2011年12月17日に予定されるローンチ時点では視聴しか行えないが,後々のアップデートにより,PS Vitaのインカメラを用いた動画撮影や投稿が可能になり,その後,プレイ動画を直接配信する機能などを,ゲームに組み込むライブラリとして開発し,ニコニコ動画とゲームがより密接に連動する仕組みも盛り込んでいく予定だという。

 今回4Gamerでは,そんな本アプリの制作を手がけるドワンゴの開発チームにインタビューする機会を得て,開発を取り仕切る鈴木慎之介氏らに,いろいろな話を聞いてみた。ニコニコ動画内でも,一大ジャンルといっていいゲームのプレイ動画(生放送)だが,そのあり方は,PS Vitaという新たなデバイスを得て,今後どういった形へと変化していくのだろうか。

画像集#006のサムネイル/PS Vita用アプリ「ニコニコ」が目指すゲームプレイ動画の新しいスタイル。ドワンゴ開発チームインタビュー
ドワンゴ ニコニコ事業本部 企画開発部 担当部長 鈴木慎之介氏
画像集#007のサムネイル/PS Vita用アプリ「ニコニコ」が目指すゲームプレイ動画の新しいスタイル。ドワンゴ開発チームインタビュー
ドワンゴ ニコニコ事業本部 モバイル事業部 第一企画セクション 高橋大樹氏
画像集#005のサムネイル/PS Vita用アプリ「ニコニコ」が目指すゲームプレイ動画の新しいスタイル。ドワンゴ開発チームインタビュー
ドワンゴ ニコニコ事業本部 企画開発部 第七セクションマネージャー 溝口正仁氏


「ニコニコ」の機能を無料のライブラリとしてメーカーに提供


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずは,PS Vitaに参入するまでの経緯についてお聞かせください。

鈴木慎之介氏(以下,鈴木氏):
 一番最初は,ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下,SCE)さんが新しいゲーム機を出されるということで,うちの川上(川上量生氏)などがSCEさんへお邪魔したことがキッカケですね。PS Vitaは3G通信や有機ELディスプレイなど,動画を観ることに適した「ニコニコ動画とも親和性の高いハードウェア」という話だったので,「ぜひやりましょう」ということになりました。

4Gamer:
 それはいつ頃のことでしょう?

鈴木氏:
 SCEさんが「NGP」として新ハードを発表した後,今年の2月頃ですね。

4Gamer:
 ニコニコ動画内でゲームのカテゴリが盛り上がっているから,PS Vitaでも何かやろうみたいな現場サイドの話ではなく,どちらかというとトップダウンの判断で決まったのでしょうか。

画像集#017のサムネイル/PS Vita用アプリ「ニコニコ」が目指すゲームプレイ動画の新しいスタイル。ドワンゴ開発チームインタビュー
鈴木氏:
 まぁ,上層部から「やろう」という声があったのは確かですが,ニコニコ動画がゲームととても相性がよいこともあって,現場としても「やろうやろう」みたいなノリで。

4Gamer:
 SCE側からは,何か要望などはあったんですか?

鈴木氏:
 SCEの現場の方とお話をさせていただきながら「こういうサービスを乗せましょう」と具体的なお話をしたんですが,SCEさんからは「ニコニコ生放送の機能を乗せたい」という要望がありました。我々としても,そこは同じ気持ちでしたので,動画に加え生放送も強く意識したサービスに仕上げました。

4Gamer:
 ゲーム実況連携について,SCEとドワンゴの役割分担に関しては,どういった形になっているのでしょう。メーカーさんとの仲介などは,SCEさんが担当するような形だったのですか?

鈴木氏:
 いえ,そうではなくて,我々としては,あくまで動画の投稿や生放送を配信するための機能をライブラリという形で提供して,メーカーさんに活用して頂くという感じですね。

4Gamer:
 ゲームメーカーさんへの相談もすでに進められているんですか?

鈴木氏:
 これまで数社にうかがっています。今のところ,「面白そうですね,やりましょう」と好意的に受けとっていただくことが多いですね。

4Gamer:
 対応タイトルが出始めるのはいつ頃になるんでしょう?

鈴木氏:
 ゲーム実況の連動機能用のSDKをメーカーさんに提供し始めるのが,2012年夏ごろになります。なので,実際に対応タイトルがリリースされ始めるのはそれ以降になるんじゃないかなと。

4Gamer:
 では現在は,まだメーカーさんとの調整やヒアリングを行っている段階で,ドワンゴとしては,2012年夏に向けてSDKの開発を粛々と進めていくという感じですね。

鈴木氏:
 そうですね。あと,これはユーザーさん向けの機能となりますが,2012年4月にはPS Vitaのインカメラで撮影した動画の投稿・生放送機能が先に実装されます。

4Gamer:
 ちなみに,ゲームメーカーがSDKを使用する際の契約はどういった形になるんでしょうか。

鈴木氏:
 細かい形態までは決まっていません。唯一決まっているのは,このライブラリは無料配布だということだけです(笑)。

高橋大樹氏(以下,高橋氏):
 そうですね。あと,我々がかっちりとライブラリの仕様を決めるようなことは絶対にしたくないと思っています。やはり,ゲームによって仕様のニーズも違うと思うんです。なので,具体的な仕様まで絡んでお話しさせていただくようなメーカーさんを,随時募集しています。


視聴者が生放送中のゲームに介入できる仕掛け


4Gamer:
 PS Vitaからゲームプレイを配信する場合,何か特別な機能を実装する予定はあるんですか?

鈴木氏:
 PS Vitaから生放送を行った場合,例えば,視聴者が打ったコメントによってゲーム内の敵をやっつけたりとか,再生数がゲーム内のパラメータとしてフィードバックされたりとか,そういったインタラクティブな仕掛けのアイデアは出ています。

画像集#022のサムネイル/PS Vita用アプリ「ニコニコ」が目指すゲームプレイ動画の新しいスタイル。ドワンゴ開発チームインタビュー
高橋氏:
 ニコニコ生放送の視聴画面にゲーム側からアンケートが出てきたりとか。「このプレイヤーにおしおきしますか?」「1.はい」「2.いいえ」と出て,「はい」が多数を占めると,ゲームの障害になるようなペナルティをそのプレイヤーにくらわせられる――みたいなアイデアもあります。


4Gamer:
 視聴者がゲームプレイに介入できる仕組み,ですか。それはちょっと面白そうですね。

高橋氏:
 フラグ機能を強化しようと思っていまして。テキストアドベンチャーゲームなどの場合には,内容のネタバレがありますから,ゲームプレイ実況にはそぐわないとされています。そういったタイトルにも対応できるように,第1章と第2章だけをゲームプレイ実況できるようにフラグを設定したりとか,あるいは,真相に迫ったらいきなり画面が暗くなって音だけ聞こえるようになるとか。あとはオンラインアップデートで,時期が進むにつれて,第1章,第2章,第3章と,各章のゲーム実況のフラグが解除されていくとか。そういった機能をいま考えていますね。

4Gamer:
 他に,話し合いの中で出てきたアイデアってどのようなものがあるんでしょう。

溝口正仁氏(以下,溝口氏):
 天気情報とか,リアルからゲームへ何かしらのフィードバックがあると,ゲームに幅をもたせることができるんじゃないか,みたいな話はありました。

4Gamer:
 そのあたりは,もうWebサービスとかに近い発想ですよね。

画像集#003のサムネイル/PS Vita用アプリ「ニコニコ」が目指すゲームプレイ動画の新しいスタイル。ドワンゴ開発チームインタビュー
溝口氏:
 今までのゲームって,どうしても固定された環境というか,あくまでも遊びの要素はゲームの中で完結したものが多かったと思うんですが,そういう外のデータを上手く活用できると,もっと新しいことを考えられるんじゃないかって話は結構あって。
 そういった意味で,ニコニコのコメントだとか,ランキングに上がっている傾向であるとか,そういったものをゲームに反映させるといったことは可能だと思います。

鈴木氏:
 ただ一方で,ニコニコ動画側からゲーム内にパラメータをフィードバックするというアイデアに関しては,一部のメーカーさんから「既に完成しているゲームに,予測不能なパラメータを投入するとバランスが崩れてしまう」といった意見もいただいていまして。それもそのとおりだとも思うんです。

4Gamer:
 確かに。でも,ニコニコ動画の視聴者と連動したゲームは見てみたいですけどね。

溝口氏:
 PS Vita自体のフレンド機能を活用した機能も検討はしています。今のところ対応は未定なのですが,「友達が何かを配信している」とか,「こういう動画を観ている」とか,そういった要素は考えられるんじゃないかと。

高橋氏:
 そういう機能があると,生放送をしながらの「対戦相手募集」とかも,よりシームレスにできるようになりそうですよね。

画像集#008のサムネイル/PS Vita用アプリ「ニコニコ」が目指すゲームプレイ動画の新しいスタイル。ドワンゴ開発チームインタビュー


ゲームと動画の新しい関係を考えてみる


4Gamer:
 しかし,お話を聞いていて思ったのですが,ニコニコでしかできない仕掛けであるとか,ニコニコを使うことで初めて広がっていく新しい面白味とか,その新たな形みたいなものを考えていくと,クリエイターさんは逆に「どう使ったものやら」となってしまうのではありませんか。

鈴木氏:
 それはありますね。

高橋氏:
 ゲームメーカーさんとニコニコ生放送の連動機能などについてお話をしていると,「これを本格的にゲームに絡めていくとなると,これ用にゲームを作っていかなきゃダメだ」みたいな話にはなってしまいますね。一つのモードではなくて,それ専用のゲームになってしまうよね,と。

4Gamer:
 そこまでいくと逆にメーカーさんの負担も大きくなってしまうので,順序で言うと,指標になるまでにはいかない利用方法がまずあって,一歩踏み込んだところに,初音ミクみたいなブレイクの可能性がある――みたいな。そういう二段構えの形が理想なんですかねぇ……。

画像集#019のサムネイル/PS Vita用アプリ「ニコニコ」が目指すゲームプレイ動画の新しいスタイル。ドワンゴ開発チームインタビュー
鈴木氏:
 逆に質問になってしまうんですけれど,ニコニコのアプリにどういった機能があったら面白いと思います?

4Gamer:
 そうですね……。ゲーム系のコミュニケーションツールというと,やっぱりXbox LIVEやSteamとかで,友達が遊んでいるゲームのリストが出てすぐに参加できるとか,あるいは「いま遊んでいるからちょっと来いよ」と呼んだりみたいなやりとりが,最初はとても新鮮に感じたんです。
 だからその意味で言うと,一般的な需要があるかどうかわからないですけど,知り合いがゲームをやっているときに,相手に生放送を“配信させる機能”が欲しいです(笑)。

鈴木氏:
 おお(笑)。

4Gamer:
 「俺がお金払うから配信やって」みたいな(笑)。

高橋氏:
 それは観て楽しむんですか?

4Gamer:
 自分でプレイするのが面倒くさいので……。

(一同笑)

高橋氏:
 ある種,究極系という感じがしますよね。やらなくてもいいゲーム(笑)。

4Gamer:
 ただ,対戦ゲームなどでは,わりとそういう「観る文化」というのが定着しているんですよ。

鈴木氏:
 ゲーセンとかで,凄い人たちのプレイを後ろから覗くことってあるじゃないですか。あれですよね。

4Gamer:
 そうです。それに,友達の家とかに遊びにいって,知人のプレイを後ろで見ているのって面白いですよね。あの面白さをネット側に拡張したのが,ゲームプレイの生放送なんだろうと思うんです。

溝口氏:
 ちょっと話がずれるかもしれませんけど,Xbox 360の「プロジェクトゴッサム」というレースゲームでは,いまオンラインで行われているレースの模様が,ゲームのタイトル画面でずっと表示されるんですよ。

4Gamer:
 ああ,ありましたね。

画像集#011のサムネイル/PS Vita用アプリ「ニコニコ」が目指すゲームプレイ動画の新しいスタイル。ドワンゴ開発チームインタビュー
溝口氏:
 ゲームメーカーさんと相談させて頂いている中で出てきた話題なんですけど,「このステージはニコニコ生放送で勝手に配信されていて,誰かに観られていますよ」だとか,そういう演出があるだけでも,プレイヤーさんの緊張感が高まるじゃないかって意見があったんです。僕も,そういう使い方はちょっと面白そうだなと。

4Gamer:
 確かに。能動的に配信するだけじゃなくて,「勝手に配信される」という仕組みは,いろいろ可能性ありそうですよね。

鈴木氏:
 配信するハードルも凄く低くなりますしね。

高橋氏:
 ゲームプレイ中に死にそうになったら勝手に録画が始まってしまって,「死に方まとめ動画」みたいなのがアップされたりとか(笑)。

4Gamer:
 観られているとか,死に様がアップされてしまうとか,何かしら緊張感を演出するエッセンスがあるだけで,ゲームの楽しみというか,接し方みたいなものが変わるかもしれない。

鈴木氏:
 誰かに見られてるって意識があると,カッコイイ魅せプレイをしちゃったりするしね。

高橋氏:
 「TIGER & BUNNY」の世界観ができるじゃん,みたいな話ですよね。自分がよりカッコよくゲームをプレイしていれば視聴者が集まるし,ヘボいプレイをしていればどんどん人がいなくなっていく,みたいな。

鈴木氏:
 ゲームプレイヤーがステージの上でアーティストのように振る舞えるような世界,みたいな方向もありですよね。実際,そういうプロのゲーマーもいますし。

4Gamer:
 多分,ニコニコを介した面白味っていう意味ですと,いわゆるフレンド登録した人だけが相手ではないという気がするんですよ。フレンドとのやり取りはもちろんあるのかもしれないけど,ニコニコのコミュニティにいる不特定多数の人が観てざわついている――という感覚を,何かの形で再現するなり,そこに盛り込んでいくという方向こそが「ニコニコらしさ」というか。

鈴木氏:
 「オーディエンス」の存在ですよね。

4Gamer:
 その辺に絡めた具体的なアイデアってほかにありますか?

鈴木氏:
 ニコファーレとの連動もあり得るかなと思っています。PS Vitaを通じて,持っている人たちの顔がニコファーレのLEDの観客席に映る――みたいな。顔出しが嫌な人はアバターにすればいいんですけど。ニコファーレの前方にはゲーム画面が映って,「バーチャルゲーセン」みたいなものを。

高橋氏:
 あとは単純にゲームプレイ限定では,来ている人の数をゲーム内の画面で視聴者のグラフィックとして描き込むというのができるのではないかと。

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