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[GDC 2015]Imaginationがレイトレ対応GPU「PowerVR Wizard」の特徴や性能を明らかに。PowerVRのVulkan対応も宣言
時間的に,そのすべてをお伝えすることはできないので,本稿では3日午前に行われた基調講演「Latest De
Rogue世代PowerVRの新情報はとくになし
最初に,PowerVRシリーズのGPU IPコアラインナップを整理しておこう。現在,Imaginationでは,
これらSeries6とSeries7は同じアーキテクチャに基づいているため,
ただ,セッションの案内に書かれていたハードウェアとソフトウェアのロードマップに関する話題はなし。Series7以降の新情報が出るのではと期待していた筆者からすると,いきなり肩すかしを食った感じである。
それはさておき,Johnstone氏は,Rogue世代GPUのアーキテクチャ概要から説明を始めた。氏によれば,前世代に当たる「PowerVR Series5」とRogueで最も大きく異なる点は,シェーダプロセッサにあたる「Unified Shading Cluster」(以下,USC)がスカラーベースの演算ユニットに変えられたことと,USCを増量することでシェーダの規模を柔軟に変えられるようになったことだという。
Series6とSeries7の各製品は,このUSCをいくつか搭載した「Unified Shading Cluster Array」(以下,USC Array)で構成されているわけだ。
Series6までは,FP16〜FP32対応ALUしか搭載していなかったRogueだが,
もう1つ,ハードウェアベースのテッセレーションユニット「Tessellation Co-Processor」を搭載したことで,Series7がテッセレーションをサポートできるようになったことも押さえておきたい。
ただし,Series7の全製品がこれらを標準搭載するわけではない。FP64対応ALUとTessellation Co-Processorを標準搭載しているのは,上位モデルに当たる「PowerVR Series7XT」で,下位モデルの「PowerVR Series7XE」では,どちらもオプション機能扱いとされている。
PowerVRの切り札となるか
RTUの概要と性能が明らかに
基調講演でJohnstone氏が,PowerVRにおける非常に大きな特徴として挙げていたのが,ハードウェアによるレイトレーシングエンジン「Ray Tracing Unit」(以下,RTU)だ。RTUについては,2014年3月に掲載された西川善司氏によるGDC 2014レポート記事に詳しくあるので,細かい説明は割愛し,本稿では要点だけ説明しよう。
Imaginationは,RTUを開発していたCaustic Graphicsを2010年12月に買収しており,その後,基礎設計から最適化したバージョンのRTUをSeries6と組み合わせた。それが,GPU IPコアの「PowerVR Wizard」である。製品としては「Po
順に説明していこう。1つめのFixed-function Ray-Box and Ray-Triangle testersとは,CG空間にレイ(ray,光)を投げて,ボックステストやトライアングルテストを行う固定機能ハードウェアのこと。レイが何かに衝突したかといった計算を固定機能ハードウェアで行うわけだ。これにより,USCで同じ処理を行う場合と比べて,44倍もの高速化が可能になっているという。
2つめのCoherence-Driven Task-Forming and Schedulingとは,コヒーレント光をもとにタスクの生成やスケジューリングを行う機能だ。……と説明しても何のことだかよく分からないと思うが,おおざっぱにいえば,「同じレイなら同時に処理できる」,といった感じだ。これもまたレンダリング時間の短縮につながる機能といえる。
最後のStreaming Scene Hierarchy Generatorは,シーンを構成するオブジェクトの階層を生成してくれるハードウェア機能である。
これらの機能を備えたPowerVR GR6500のRTUは,3億レイ/sのスループットを実現できるという。数字だけ見るとすごそうだが,「ただ,『1080pで60fps』という,ゲームを想定したシーンをレイトレーシングだけで描画するには,これでもまだ性能が不足している」(Johnstone氏)。氏によると,フルHD解像度で描画するゲームをレイトレーシングだけで描くには,現在の10倍にあたる30億レイ/sの性能が必要となるそうだ。
そこでImaginationが提案しているのが,ラスタベースのレンダリングとレイトレーシングを併用したハイブリッドレンダリングである。
基調講演ではいくつか簡単に実例が挙げられた程度だったが,Imaginationはハイブリッドレンダリングの解説で独立したセッションを用意するなど,レイトレーシングをゲーム開発者に活用してもらおうと非常に力を入れている様子が窺えた。
新API「Vulkan」にPowerVRが早くも対応
基調講演の後半ではPowerVRのソフトウェア技術がテーマとなったが,その中でも注目すべきトピックは,Khronos Groupが策定した新世代グラフィックスAPIである「Vulkan」(ヴァルカン)に,PowerVRシリーズが早くも対応するという話題だ(関連する公式Blogのポスト)。
基調講演の概要は以上となる。今後のロードマップといった派手な新情報はなかったものの,PowerVR Wizardによるレイトレーシングエンジンの性能や活用法といった具体的な情報が出てきたことは,注目すべきポイントといえそうだ。また,新世代APIであるVulkanにも着々と取り組んでいることが明かされたことなどからも,Imaginationが先端的な製品開発に積極的な取り組みを見せているのが分かる。
ImaginationとPowerVRの動きは,今後も要チェックという印象を受けた講演であった。
Imagination Technologies 公式Webサイト
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