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[GDC 2012]48時間で制作された驚愕のゲーム「Glitchhiker」は,誕生から6時間後に消滅していた
そのときのテーマは「滅亡」だったのだが,オランダのラミ・イスマイル(Rami Ismail)氏を始めとするユトレヒト美術大学の6人組が生み出した「Glitchhiker」という作品は,最終的にゲームそのものが消滅してしまうという,ある意味究極的に,このテーマに沿ったゲームだった。今回のGDCでは,「Experimental Gameplay Session」(実験的ゲームプレイのセッション)というセッションで,前年の代表的な実験的ゲーム作品10作が紹介されたが,このGlitchhikerは,それらの中でも突出した実験的ゲームである。
すでに,数枚のスクリーンショットと,手持ちビデオカメラで撮影された短いムービーしか存在しないゲームだが,Glitchhikerの概要を軽く紹介しておこう。このゲームは,グレーと黒の2色のブロックが出現する画面の中で,自分のキャラクターを移動させながら,緑のコインを次々と取って行くというゲームだ。取ったコインの近くにグレーのブロックがあれば,それらはコインに変化するが,何もしない状態だとグレーのブロックはやがて黒くなってしまい,以降色が変化することはない。この黒いブロックは,画面にときおりノイズ(グリッジ)を走らせ,その線上にあるブロックやコイン,そしてキャラクターをすべて消してしまう。
このゲームはクライアント側とサーバー側に別れており,サーバー側のゲームのライフポイントは100のみ。コイン100枚を集めるとサーバー側のライフポイントが1点加算されるが,それがゼロに近付くに連れて,ノイズが画面だけでなくサウンドにも混じるようになり,最後はプログラムがロックされて,以降ゲームへのアクセスが不可能になってしまう。
なお,このゲームが完成してからゲームが消滅するまで,6時間しかかからなかったそうだ。最後は開発チームが食事に出かけている間に,イスマイル氏によると“カナダの酔っ払い”が終わらせてしまったという。自分達でルールを作った開発チームだったが,実際にゲームが消滅したことを知ったとき,中には泣き崩れてしまうメンバーもいたそうだ。
このような“ゲームジャム”と呼ばれるイベントは,最近では各地で盛んに行われるようになっており,これが今のインディーズゲームシーンをより強固なものにしているのだろうと思う。実験的な作品ばかりなので,そのまま商業的なリリースにこぎ着けられるケースは少ないだろうが,こういう場が増えることで,より画期的なアイデアが生まれる可能性も高まっていくのではないだろうか。
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