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ゲームクリエイターになるためのどこよりもためになる“勉強会”こと,サイバーコネクトツー 単独会社説明会 IN 東京 2012をレポート
サイバーコネクトツーの会社説明会は,将来ゲームクリエイターを目指している学生および社会人を対象に,同社が求める人物像を具体的な選考基準まで説明するというもの。
4Gamerでは,2010年にも同社の会社説明会をレポートしたことがあるが,ゲーム会社に就職してプロのゲームクリエイターになるには,どのような資質が求められるのか,何をすればいいのかという“答え”を教えてくれるという,稀有な体験ができる場である。本稿では,その内容の要所をまとめてレポートしよう。
サイバーコネクトツー公式サイト
サイバーコネクトツー公式サイト内採用情報ページ
また同社は,パブリッシャが持ち込んだ企画を具体化するような仕事は今までしたことはなく,創立以来17年間,自分達のやりたいことを企画してパブリッシャに提案する“企画提案型”のデベロッパであることにも言及した。
ただし,そうしたスタイルについては,その時々の流れによって変化する“場合”もある。
たとえば,2010年の会社説明会では,松山氏自身が“ゲームは子供のためのもの,少年少女の夢”という考えに基づき,パチンコ/パチスロ関連の仕事は受けない,大規模な体制でのゲーム開発を志向している会社なので,モバイルアプリの開発は現段階ではお断りしている,と話していた。
しかし現在,同社ではスマートフォン用RPG「ギルティドラゴン 罪竜と八つの呪い」(iOS/Android)の開発に取り組んでいる。
これについて松山氏は,個人的にソーシャルゲームのビジネスモデルは大嫌いだと前置きしたうえで,「嫌いなものを嫌いと言うだけなら誰にもできます。スマートフォンがこれだけ普及して,そこにお客様がいるのであれば,ゲーム会社として“本物”を提供しようという取り組みです」と,スマートフォン向けのゲーム開発を行っている理由を説明した。
松山氏曰く,「ギルティドラゴン」は「.hack」シリーズの世界観を採用したタイトルで,サービスは2012年秋頃を予定しているそうである。松山氏の口ぶりから察するに,同タイトルは無料プレイの範囲内でも十分楽しめるものになっているようだ。
なお同社が手がけている「NARUTO−ナルト− ナルティメット」シリーズについては,販売本数が全世界で累計980万本を突破したとのこと。次回作「NARUTO−ナルト− 疾風伝 ナルティメットストーム3」(PS3/Xbox 360)が2013年春に発売されれば,シリーズ累計1000万本を達成するのは確実だろう。
また,2013年発売予定のPS3用ソフト「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」についても紹介。松山氏は,さまざまな場所で「ジョジョの奇妙な冒険」をはじめとした荒木飛呂彦作品に対する自身の情熱を語っているが,この説明会でも「25年間恋焦がれて,ようやく実現しました」と,その思いのたけを話していた。
「ギルティドラゴン 罪竜と八つの呪い」公式サイト
「NARUTO−ナルト− 疾風伝 ナルティメットストーム3」公式サイト
「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」公式サイト
サイバーコネクトツー手帳は,もともと松山氏や社員で使うために作ったのだが,反響が大きく一般販売されるようにもなったそうだ。2013年度版は前年度版よりも増産されたことで,1300円まで価格が下がったとのこと。
アーティスト部門:エフェクトはゲーム画面の見栄えをよりよくするための“化粧”のようなもの
両氏とも,他メーカーでの勤務経験を経たあとにサイバーコネクトツーに入社した,中途採用者である。2人は,入社を志望した理由として,同社が“演出にこだわる”企業であることや,映像制作チーム「sai−サイ−」の存在を挙げていた。
両氏は演出について,「“面白いものをより面白くすることで,多くの人に幸せを与える”というCC2の使命を実現する手段」と表現する。
その演出の要となるエフェクトは,グラフィックス/アニメーション/サウンド/プログラム/ゲームデザインと,ゲームのあらゆる要素に関わるため,エフェクトアーティストはゲームに関するあらゆる職種の知識を持ち,物事を俯瞰で見られるような人材こそふさわしいと池田氏は述べる。
またエフェクトはゲーム画面の見栄えをよりよくするための“化粧”のようなものであり,女性に向いているかもしれないとも話していた。
優れている側は,最初に爆発の光,次に爆煙と衝撃波が発生し,最後に内部の色が赤から黒に変わるといったように,“起承転結”がハッキリしていると説明。池田氏は,こうした順を追った処理を行うことが,ゲームプレイ中の処理速度を保つ結果にも繋がると付け加えた。
さらに両氏は,“かっちょいい映像”を作るエフェクトの要素として,分解/再構築が可能な「再現性」,起承転結のある「ドラマ性」,一見しただけで何が起きているのか理解させる「キャラクター性」を挙げる。
曰く,「一流と呼ばれる映画監督/映像作家は,例外なく膨大な数の映像を観ており,かつそれぞれに詳しいです」とのことで,まずは数多くの映像を鑑賞することを薦めていた。
次の“真似る”という言葉について,池田氏は抵抗のある人もいるかもしれないと前置きしつつ,「模倣は最大の賞賛なり」と表現。感銘を受けたものを真似ることは決して悪いことではないとした。
そして,実際に作ってみることが重要なのはいうまでもないことだが,その作品を他者に見てもらい評価を受けることが最も重要であると,池田氏は強調する。他者から「どこがいい」「どこが悪い」という評価を受けて初めて,クオリティの高い作品を作るにはどうしたらいいか,“考える”ことができるというわけである。
なお,エフェクトアーティストを目指す人に向けて,両氏がオススメする参考資料は以下のとおり。
中でも「シナリオの基礎技術」は,上記で言及されたエフェクトのドラマ性に関連し,物語を構築する手順を学べる書籍として挙げられている。また「死ぬまでに観たい映画1001本」は,優れた映像を鑑賞するための一つの指針として挙げられた。
・雑誌「CGWORLD 2012年8月号 vol.168」分冊付録「CGプロダクション年鑑2012」
・書籍「特殊効果アニメーションの世界 - エレメンタルマジック」
・書籍「シナリオの基礎技術」
・書籍「死ぬまでに観たい映画1001本」
・サイト「HALLUCINO」
とくに最後の一つについて池田氏は,人間の心理を知ることで,より深いコミュニケーションを図ることが可能となると説明。ゲーム開発上においても,コミュニケーションを深めることで,ディレクターをはじめとした各職種のスタッフの意向をより汲み取りやすくなり,ひいては優れたゲームを作ることにも繋がると述べていた。
最後に池田氏と山口氏は,サイバーコネクトツーは1年で他社の5年分くらいの経験を積める会社であるとアピール。同社のアーティストの中でも,とくにエフェクトアーティストの人材を求めているので,ぜひ応募してほしいとコメントして締めくくった。
プログラマー部門:「分かりやすいソースコード」と「オブジェクト指向プログラミング」
両氏は,サイバーコネクトツーのプログラマーに求められる能力として,「プログラム(C++/C#)を使って物を作りきる」ことを挙げた。すなわち,どんなに壮大な構想であったとしても,作りきることができければ意味がない,というわけである。
原氏は,自身の就職活動時を振り返り,応募作品を制作するときのコツとして,「分かりやすいソースコード」と「オブジェクト指向プログラミング」にとくに配慮していたと話す。
原氏の言うソースコードの分かりやすさとは,誰が見ても動作や構造が理解できるコードであり,平たく言えば,関数/変数/クラスに分かりやすい名前を付けようということである。
たとえば,SEという名前を付けたとすると,それが「SoundEffect」の略なのか,キャラクターの状態に関わる「StatusEffect」の略なのか,一見しただけでは(作成した本人以外)区別がつかない。そのため,名前を付けるときは具体的な単語を使うべきだと説明。同様に,接頭辞や接尾辞もきちんと使い,その関数が具体的に何に関連したものなのかを分かりやすく示すべきであるとした。
ただし,名前が長すぎると見にくくなるので,適切な文字数に抑えるほうがいいと原氏は補足し,だいたい6〜20字くらいになるよう心がけるといいのではないか,とまとめた。
言うまでもなく,プロの現場ではチームでプログラムを組むわけで,ソースコードを組んだ本人以外理解しにくいものでは,バグが発生したときなどの原因の特定と解決に時間がかかってしまう。ひいては納期にも影響しかねないので,プログラムを組む段階から,誰でも分かりやすいものにする配慮が重要だというわけだ。
ただ,原氏自身も理路整然としたソースコードを書けるわけではないため,自身の場合,まずは“汚い”コードでもいいのでとりあえず実装してみて,そこからコードを綺麗に書き換えていくという段階を踏んでいるそうである。
分かりやすいソースコードにおける2つ目のポイントは,コードを複雑化/巨大化させないことである。
具体的には,ネストを浅くすること,巨大な式は分割すること,関数名などに似たような名前を付けないことの3つを挙げていた。
ネストを浅くするというのは,「AがBという状態のときにCが発生する」というような式にするよりは,「Aでなければreturn」「Bでなければreturn」というように,早めのreturnを心がけたり,別のメソッドに移したりしたほうがいいということである。巨大な式を分割することも含めて,これらの配慮を行うことで式が見やすくなり,バグが発生しても特定と解決がしやすくなると,原氏はコメントした。
また,バグが取れない原因となるので,クラスや関数名の名前が同じで数字をつけるというような,“似たもの”を作らないことも大切だと述べた。
そして,3つ目のポイントは,「コメント」で自分の考えをソースコードの読み手に伝えることである。
原氏は,ゲームクリエイターはエンターテイナーであることから,コードを書くにあたって他人に見せることを前提に,“おもてなしの心”を忘れないようにするといいのではないかと話していた。
ソースコードを分かりやすく書かないと,結果としてバグが発生した時の要因が分かりにくくなり,チームの作業効率が落ち,修正が辛くなって帰りが遅くなり,最終的にはチームの雰囲気が険悪になるといった負のスパイラルに陥り,結果として作っているゲームの仕上がりも悪くなると指摘する。
また原氏は,先輩プログラマーから,ボーイスカウトの規則が大事だと言われたことがあると話す。これは,「キャンプ場を,来たときよりも綺麗にすること!」というもので,他人が書いたコードに汚い部分を見つけたら放置せず,綺麗に書き替えるように心がけているそうである。
また,サイバーコネクトツーでは,プロジェクトが終わるごとにチームを解散して,新規プロジェクトや進行中のチームに編入することが当たり前に行われるので,誰もが対応できる柔軟に環境を構築しておくことも求められるわけだ。
次に出た話題は,オブジェクト指向プログラミングについてだ。
なぜオブジェクト指向プログラミングを推奨するかというと,その柔軟さがゲーム開発の現場に最適であると原氏は説明する。
仕様変更や予期せぬ不具合の発生,要素の追加など,“変わること”はゲームクリエイターにとっては日常茶飯事であるため,変更や追加があっても大丈夫なような柔軟なプログラムを組むことが大事だというわけだ。
ただ,なんでもかんでもオブジェクト指向がいいというわけではなく,状況に応じて最適な方法を考えることも重要だと,原氏は補足していた。
また原氏は,Jeff Bayの9つのコーディングルールにチャレンジすると,オブジェクト指向プログラミングの理解を深められ,本当に勉強になると述べていた。
最後に原氏は,お勧めの参考書籍として「リーダブルコード ―より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック」と「オブジェクト指向でなぜつくるのか」の2冊を紹介して締めくくった。
続いては長坂氏が,デザインパターンを使ったプログラム設計の事例を紹介した。
デザインパターンとは,プログラム設計でよく使われるテンプレート群を指し,会場では,StateパターンとMediatorパターンの2つが紹介された。
Stateパターンはキャラクターの状態制御などに使われる。プログラムを勉強している人は,Switch文でもいいんじゃないかと思うかもしれないが,長坂氏は,状態数が多くなると,1クラスの処理がコンパクトになるStateのほうが分かりやすいと説明。
また,処理する場所が個別に分かれているため構造を把握しやすいことや,メモリ領域の追加/破棄を細かく行いやすくなるといったことを,メリットとして挙げていた。
たとえば,プレイヤーキャラクターに加えて,敵キャラ2体,味方キャラ1体,ステージのギミックが1つという計5つのオブジェクトがある場合,リアクションが発生する可能性がある対象がそれぞれ4つあるため,合計で20パターンになる。
しかし,すべてのオブジェクトの処理をMediatorを通じて監視する形にすれば,構造がシンプルになり,オブジェクト同士の干渉を少なくする効果が見込めるというわけである。
ただ,もともとシンプルなコードにデザインパターンを使うと,逆にわざわざ構造を複雑にしているようなものなので,なんでもかんでもデザインパターンを適用するのではなく,使いどころを見極めることが重要だと長坂氏はまとめた。
最後に長坂氏は,オススメの参考書籍として「オブジェクト指向における再利用のためのデザインパターン」を紹介。また会場のプログラマー志望者には,今回説明したようなことが応募作品のソースコードに含まれていると,採用担当者の目に留まりやすくなるとアドバイスしていた。
余談だが,原氏と長坂氏のプレゼンテーションは,ほかの部門に引けをとらない堂々としたもので,とても2011年の新卒とは思えないほどだった。少なくとも,筆者が社会人1〜2年目で同様のことをやれと言われても,ここまでのことができたとは思えない。先にアーティスト部門で池田氏が述べていたとおり,1年で他社の5倍の経験を積めるという話を思い出し,妙に納得してしまった。
ゲームデザイナー部門:“現場で求められる”ゲームデザイナー像とは
下田氏はまず,ゲームデザイナーとは「ゲームを設計し,制作を進行する人」だと定義づけ,「ゲームデザイナーに求められる能力」について,サイバーコネクトツー社内でアンケートを取った結果,3位が「一貫性」,2位が「論理性」,1位が「コミュニケーション能力」となったと紹介。
まとめると,ゲームの完成形とターゲット層をしっかりと頭の中にイメージして,そのイメージを論理的に形作り,チームメンバーと意思統一を行える能力が,ゲームデザイナーには求められるということだろう。
とくにコミュニケーション能力については,「情報を正しく伝える」ことだけでなく,「情報を正しく受け取れる」こともできないと,そのゲームに必要なものが作られていなかったり,自分の意図と異なるものを作らせてしまうようなことが起きると述べていた。
たとえば,「Aみたいなものを作りたい」と伝えたとして,相手が「それってBみたいな感じですよね」という会話があった場合,AとBが異なっていたら,まったくかみ合わないものができ上がることになる。
いわば,相手に理解できるように説明する能力だけでなく,情報が意図したとおりに伝わっているかどうかまで判断できることが,ゲームデザイナーに求められるコミュニケーション能力といったところだろうか。
続いて,ゲームを設計する流れの一例が紹介された。
まずは,A4用紙1枚程度で“ゲームの面白さ”をまとめたアイデア書を作るという。これは,テレビCMなら15秒/30秒で,雑誌広告なら1〜2ページでそのゲームの面白さを伝えるように,A4用紙1枚でも“面白さの正体”は伝えられるというコンセプトにのっとったもの。長々と説明しないと面白さが伝えられないようでは,そもそもユーザーに伝わるはずがないという話である。
次の段階は企画書で,これはA4用紙で10枚程度が目安になるそうだ。企画書では,ゲームの根幹を形作るような要素をすべて詰め込むだけではなく,たとえば「アクションゲームにはオンライン対戦モードがあったほうが売れる」というように,“勝算”もすべて詰め込むとのこと。もちろん,アイデア書と同様に必要最低限の情報量で伝えることが求められる。
その次は,仕様書の作成となる。この段階では,遊びの仕組みと要素,その関係まで詳細に記述することになる。
いわば,仕様書はゲームの設計図ともいえるため,ゲームシステムや進行のフローといった大枠から,メニュー画面の項目といった細部まで,スタッフが実作業を始められるような形になっていることが,仕様書には求められるのだろう。
なお下田氏は,仕様書はゲームの特性によって適切な形は変わるため,具体的な部分まで盛り込んであれば,特定の形式にこだわる必要はないとも話していた。
ここで,ゲームデザイナーを志望する学生にありがちな“マズい”例が紹介された。
まず「作品が少ない」というのは,その人がコンスタントに実力を発揮できるかどうか判断できないのでよくないとのこと。
サイバーコネクトツーでは,プロとして継続的に仕事をする以上,応募作品がどれだけ素晴らしいものであっても“一発屋”では困るため,一定以上のクオリティを満たす複数の作品を作れるかどうか判断できるよう,応募作品は多いに越したことはないとのこと。
「教えられたままの書類フォーマット」「既存のゲームの要素を混ぜただけ」がダメというのは,ここまで読み進めた人なら分かるとは思うが,内容を生かすための工夫や思考が深くないことが読み取れてしまう応募作品では,多数の応募作品の中に埋もれてしまう。要するに採用を勝ち取れるわけがないということだ。
下田氏は,「埋もれないための三か条」として,「新しい」「面白い」「売れそう」という3点を挙げ,これらを企画書全体を通して伝えることこそが,就職戦線を勝ち抜き,プロのゲームクリエイターとして活躍するためには必要だと述べた。また下田氏は,アーティスト部門やプログラマー部門のプレゼンでも話題に上がったように,人に評価してもらうことが重要であり,知人や友人に見せて意見をもらい,内容を修正しておくべきだと付け加えた。
なお,ゲームデザイナーというジャンルではとくに,経験者の中途採用のほうが多い傾向にあるため,そもそも新卒者には不利な状況である。近年では,Unityのようなツールや「ツクール」シリーズなど,アマチュアでも比較的簡単にゲームを開発できる環境があるのだから,企画書だけではなく,ゲーム作品の実例や仕様書などのプラスαがあったほうが望ましいと,下田氏は話していた。
下田氏がお勧めした,ゲームデザイナー志望者向けの参考資料は以下のとおり。
・雑誌「CGWORLD 2012年8月号 vol.168」分冊付録「CGプロダクション年鑑2012」
・「ゲーム 企画職」で検索してヒットするサイト全部
・コミック「逆境ナイン」
「CGプロダクション年鑑2012」について下田氏は,他社が現在どんな取り組みを行っているかを確認できる点をメリットとして挙げていた。たとえば,仮に自社だけでは実現できないアイデアだとしても,他社のスタッフに相談したり,あるいはコラボレーションしたりといった,さまざまな手段を講じることは可能なので,そのための資料として有用なのだという。
「ゲーム 企画職」でヒットするサイトをなぜ下田氏が挙げたかというと,世の中にはゲームの企画職として働いている人達が,ブログなどで自分の経験や知識に基づいた“生の知恵”を書きつづっていて,そういったものを読んで学ぶことが大切ということだろう。また,「ゲーム 企画職」で検索してヒットするサイトは星の数ほどあるが,そうした膨大なデータから有用な情報をピックアップできるのも,ゲームデザイナーの資質の一つとのことだ。
なお「逆境ナイン」は,二転三転は当たり前,ときには朝令暮改も起きるゲーム開発の現場において,“折れない心”を養うためのバイブルなのだという。
その理由は,同社の設定資料集には,ボツ案を含めた設定やイラスト,ゲームのプロトタイプ案など,ゲームができ上がるまでのほぼすべてが詰め込まれているからである。ファンとしての目線ではなく,ボツ案と製品版を比較して「なぜそうなったのか」を考えれば企画上の大きなヒントになると,下田氏は話していた。
結局のところ,うまくいかないことを誰かのせいにした瞬間,自分自身の成長は止まってしまうだろうし,普通なら「できない」ことを,あらゆる手を尽くしてできるようにするのが,ゲームクリエイターの役割というわけである。
最後に下田氏は,これらの考え方をすべて一人で実践しようとするのではなく,頼れる仲間を見つけることも重要だとまとめた。
なお,インターンシップの実態などの情報は,CC2インターンシップブログにて公開されているので,興味のある人はチェックしてみてほしい。
第3部では,来場者向けの質疑応答の時間が設けられ,松山氏をはじめとする登壇者が,さまざまな疑問に答えた。ここでは,その中の話題をいくつか取り上げよう。
まずもっとも興味深かったのは,BG(背景)モデラーに関する話題だ。
来場者の中には,はっきりと背景モデラーを志望する人が何人もいたが,松山氏は,背景はゲームの中で重要な要素ではあるが,これから背景モデラーをはじめとしたグラフィックモデラー全般になるのは茨の道で,かなり厳しい道のりだと述べる。
というのも,現在は,背景やキャラクター/クリーチャーといったモデリングは,コストの安い中国などに外注するのが一般的になってきており,実際にサイバーコネクトツーでも,「NARUTO−ナルト− ナルティメット」シリーズのような“日本人にしかできないもの”以外は,中国に発注している部分も多くあるそうである。
イメージボードをCGモデルにするような“作業”は“誰でもできること”であるため,コストが安いほうがいいのは自明である。しかも中国には,海外のAAAクラスの有名タイトルのモデリングを制作しているようなスタジオもあるため,クオリティも必要十分に満たすことができる。つまり,少数のトップクラスの人材以外のリソースは,海外のスタジオでこと足りてしまうわけだ。
松山氏は,グラフィックモデラーを目指すなら,単なるモデラーではなく,エフェクトもできる,アニメーションも作れるというような,他人が真似できないプラスアルファの“武器”を持ったエリートを目指してほしいとアドバイスを送った。
そのほか,「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」のエンジンである「JOJO・シェーディング・レクイエム」のエピソードも話題に上った。このエンジンは,荒木飛呂彦さんの絵のタッチを完全再現するために開発され,第1部から第7部までの年代ごとのタッチの差をも吸収し,“誰が見てもジョジョ”と思えるグラフィックスを実現している。実は「JOJO・シェーディング・レクイエム」は,「ASURA'S WRATH」で使われたエンジンをベースに,1か月ほどで完成させたのだという。
また“いつでも誰とでも繋がって遊べる”ゲームも,今の時代を象徴しているとし,“今までになかった新しい体験を提供できる”ツールとして,同社としてもスマートフォンのゲームにも取り組んでいくと述べた。なお松山氏は,サイバーコネクトツーが作るからには,「普通の」「ほかの会社でも作れる」スマートフォン用ゲームアプリには“ならない”と発言していたことも付け加えておこう。
さらに松山氏は,今後も同社が映像にこだわり続ける会社,やりたいことだけをやり続ける会社であり続けることを強調。そのために,さらなる“新しい若い力”を求めていると来場者に呼びかけた。というのも,今後のエンターテイメントは,さらに若い世代に向けて提供することとなるからだと述べる。
そして松山氏は,ゲームが本当に“好き”である人が──いわば“本物”こそが業界を真の意味で進展させると述べ,再度,CC2は“若く新しい感性”を求めているとし,以下の言葉をもって会社説明会を締めくくった。
皆さんは,これからクリエイターとして生きていくことになります。間違いなく,ゲーム業界に入ってください。それが無理でもエンターテイメント業界に入ってください。“楽しむ”ということは大事なことなんです。動物は娯楽がなくとも生きていけますが,“楽しみながら生きる”のが人間です。
そして娯楽には,すごいパワーがあります。時と場合によっては,医療で治せない病気を治してしまうこともあるんです。1本のゲームに生きる勇気や明日の希望を与えてもらったという人もいます。そういう人達から感謝されると,それがまたモノ作りの糧となります。モノを作って人に喜んでもらえることは,すごく素敵なことです。
皆さんは,私の考える世界で一番素敵な仕事に,これから就こうとしています。ですから,絶対にあきらめないでください。あきらめなければ,そして誰よりもゲームが好きならば,間違いなくゲームクリエイターになれます。ぜひ一緒に,エンターテイメントで世界中をハッピーにしていきましょう。
以上が,「サイバーコネクトツー単独会社説明会 IN 東京 2012」の主だった内容である。
2010年のレポートと比較しても,「会社を大きくするのが目的ではなく,やりたいことだけをやるために一定の規模を保ちたい」「そのために一緒に仕事をする人材を厳選したい」という,人材雇用に関する基本的な姿勢は変わっていない。しかし,現在はスマートフォン向けのタイトル提供など,時代の変化に合わせて柔軟な対応を取っていることも感じ取れたのではないだろうか。
同社の公式サイトを見れば分かるが,募集中の職種ごとに求められるスキルが具体的に記載されているので,自分が就きたい職種で最低限どういった技能が必要かは,ある程度把握できるはずだ。また,採用にあたって新卒者/経験者の区別はなく国籍も不問。募集も随時行われている。
なお同社では,2012年6月に実施された「サイバーコネクトツー単独会社説明会 IN 九州 2012」の模様を動画で公開している。より詳しく知りたいという人は,こちらもチェックしておこう。
単独会社説明会 IN 九州 2012(2012年6月16日開催)
第1部(会社概要,アーティスト講演)[47分10秒]
第2部(プログラマー,ゲームデザイナー,インターンシップについて)[58分34秒]
第3部(質疑応答,告知)[53分28秒]
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