インタビュー
「ケリ姫スイーツ」プロデューサーの西村氏とディレクターの齋藤氏に聞いた,2周年までの道のりと今後の展望。新システム「覚醒」や新エリアなどの展開も判明
今回4Gamerでは,「ケリ姫スイーツ」のプロデューサーを務めるガンホーの西村大介氏とディレクターの齋藤和寛氏に,これまでの歩みの振り返りと今後の展望について,いろいろと話を聞いてきた。
3年めの展開に向け,さらなる広がりを予感させる話をいろいろと聞けたので,現役プレイヤーはもちろん,「ケリ姫スイーツ」を休止してしまった人も最後まで読んでほしい。
「ケリ姫スイーツ」公式サイト
iOS版「ケリ姫スイーツ」ダウンロードページ
Android版「ケリ姫スイーツ」ダウンロードページ
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
今回は,「ケリ姫スイーツ」が2周年を迎えたということで,これまでの歩みをお聞きしたいと思っているのですが,まずは最初にお二人の経歴をあらためて教えてもらえますか?
西村大介氏(以下,西村氏):
私はもともと,PCオンラインゲーム開発に携わっていたのですが,スマートフォンアプリの開発に移り,数本手がけたあとに「ケリ姫クエスト」「ケリ姫スイーツ」のプロデュースを担当して,現在に至っています。
齋藤和寛氏(以下,齋藤氏):
私は,「ケリ姫スイーツ」がサービスインしてから「ケリ姫」チームに合流したのですが,それまではずっとPCオンラインゲームの運営に携わっていました。一時期は開発もやっていたので,今はその経験を「ケリ姫スイーツ」に活かしているという感じですね。
4Gamer:
お二人とも,PCオンラインゲームからスマホ向けゲームの開発に移ったとのことですが,実際に開発に携わってから,オンラインゲームと違うと感じた部分はありましたか?
まず,スピード感が全然違いましたね。PCオンラインゲームは,ローンチまで2〜3年かけて開発するものですが,当時のスマートフォン向けゲームは,半年かけずに開発するのが当たり前でした。加えて,ゲーム内イベントの展開もスマートフォン向けゲームのほうがペースが早いです。
ほかにも,PCオンラインゲームではコミュニケーションを第一に考えますが,スマートフォン向けゲームの場合は個人で楽しむことが前提だったり,細かいところでは,スマートフォンだとタッチ操作が基本なので画面を活かしたユーザーインターフェイス(UI)を考える必要があったりと,思想がまったく違いました。
私自身に関して言えば,「ケリ姫スイーツ」の途中から運営開発に参加したので,それほど苦労しなかった印象です。基本的に,お客様を楽しませることを目的とするデータの分析などが仕事の中心なので,やることはあまり変わっていませんし。
西村氏:
実を言うと,「ケリ姫スイーツ」のローンチ時は,チームにオンラインゲームの運営経験が長いスタッフがいなかったこともあって,ゲーム内イベントなどの展開がうまくいかないところがあったんです。齋藤が2013年4月からチームに合流してから,ゲーム内イベントなどを積極的に展開するスタイルの運営に大きく舵を切ることができたんです。
それから,アップデートで気を遣っているのが,アイテムなど内包するコンテンツが増えても総容量が増えないようにするという点ですね。スマートフォンアプリの場合は,容量が大きいと端末から削除されてしまう理由になりますから。
4Gamer:
現在,「ケリ姫スイーツ」のアイテムは全部でどのくらいあるんですか?
齋藤氏:
だいたい3500くらいです。ですから,アップデートのたびにプログラマーが頭を抱えています。
4Gamer:
アプリの総容量を増やさない秘訣はありますか。
西村氏:
シンプルに,イベントステージなどは必要になときにダウンロードする形にして,期間が終わったら使わないものは削除する,といった手法を採用しています。本当は大変な作業なんですけど,口で説明すると簡単に聞こえちゃいますね(笑)。プログラマーにはいつも頭がさがる思いです。
「ケリ姫スイーツ」は「ケリ姫クエスト」の続編として2012年11月にリリースされましたが,「ケリ姫クエスト」は,2012年7月時点で200万ダウンロードを超えていたと記憶しています。なぜ人気のあった「ケリ姫クエスト」をアップデートするのではなく,新たなアプリとして提供することにしたのでしょうか。
西村氏:
理由は二つあるのですが,一つは「ケリ姫クエスト」では実現できなかったシステムを導入するため,もう一つは,定期的なアップデートやゲーム内イベントを開催するためです。
「ケリ姫クエスト」は,もともと落とし切り型のゲームとして設計されたものだったので,そういった展開に向いていないシステムだったんですよ。
アップデートで新キャラクターや新ステージが追加されるだけでなく,システム面を含めたゲーム内容を変更できるのがすごいと,とくにVer.3.0.0以降で感じていたのですが,企画当初からそれを見越して,変更可能な設計にしていたから実現できたことだったんですね。
西村氏:
もともとガンホーはオンラインゲームの会社ですから,長くサービスを続けていく前提で企画開発を進めていきますし,設計時も,そのときどきのユーザーさんのニーズや市場の流れに合わせた仕様変更が必要になることを見越していますから。それでも,「ケリ姫スイーツ」が2年でここまで大きく変わることまでは予想できませんでしたが(笑)。
4Gamer:
「ケリ姫スイーツ」はリリース後,2か月で累計150万ダウンロードを突破したのを皮切りに,順調に数字を伸ばしてきました。中でも2013年は,8月17日に累計400万ダウンロードを,9月14日に累計500万ダウンロードを達成するなど,急激な伸びを見せました。この伸びは何が決め手になったのでしょうか。
西村氏:
理由としては,より多くのお客様を受け入れる土壌がその時期にできたことが挙げられます。その時期にテレビCMも展開していたので,新規のお客様にアピールできた部分もあったと思います。
「ケリ姫スイーツ」は,武器や装備アイテムに経験値を溜めて主人公を成長させていく,という部分が一般的なRPGとは違っているので,初めてのお客様には分かりにくいところがあります。そこで,チュートリアルの内容を見直すなど,分かりやすくなるように努めました。
また,それまでは「ひと通り遊んだら終わり」という印象を持たれがちだったのですが,イベントなどを積極的に展開して新しい遊びを追加することで,ユーザーさんにもっと遊んでもらえるようになりました。
4Gamer:
実際のところ,プレイヤーの継続率はどうなっているのでしょう。
西村氏:
最近はカジュアルに遊ぶ方も増えているのですが,サービスイン当初から今でも継続して遊んでくださっているお客様が多いですね。そういう意味では,ゲーム好きのお客様に好まれていると言っていいかもしれません。
4Gamer:
あらためてお聞きしますが,「ケリ姫スイーツ」の企画を立ち上げる際,どのような点を重視したのでしょうか。
西村氏:
まず「ケリ姫クエスト」のときに,主人公以外のメンバーも育てたいというリクエストをお客様から頂戴していたので,メンバー全員を育成できるようにしました。また,姫をドレスアップ可能にしたり,武器に強化の概念を導入したりすることで,遊びの幅を広げています。
4Gamer:
「ケリ姫スイーツ」は,端末の縦持ちと横持ちの両方に対応しているだけでなく,プレイしている最中にいつでも切り替えられるというのは,今でもかなり類を見ない仕様ですよね。
西村氏:
その仕様なんですが,実は当時のディレクターが秘密裏に進めていて,途中まで私も知らなかったんですよ。
「素材は縦持ちでも横持ちでも同じものを使えて,あとはプログラムで処理できるから余計な工数はかからない」と言われて実装を進めていたのですが,UIのレイアウトなども縦持ちと横持ちで変わりますから,実際の工数は結果的に増えてしまうんですけど(笑)。
とはいえ,縦持ちで遊んでくださる方も多くいらっしゃいますし,ユーザーさんに楽しんでいただくのが一番ですから,結果的には良かったと捉えています。
4Gamer:
「ケリ姫スイーツ」は,スタミナや所持アイテム数の上限といった制限がなく,ずっと遊び続けられるのが大きな特徴ですよね。
西村氏:
「ケリ姫クエスト」にもそういった制限はありませんでしたから,「ケリ姫スイーツ」でスタミナ制を採用して待ち時間が発生すると,お客様にストレスを与えてしまいます。ですから「ケリ姫スイーツ」でスタミナの概念は入れないことは,企画の早い段階で決まっていました。
4Gamer:
ビジネス的に考えると,スタミナ回復も重要な課金要素だと思うのですが,「ケリ姫スイーツ」では,どうやって収益を上げる計画だったのでしょうか。
西村氏:
基本的に今と変わらないのですが,PCオンラインゲームの経験からすると,武器や姫のドレスといったアバター的な要素だけでも,十分ビジネスとして成立するだろうと考えていました。
むしろ,ゲームにプレイの制限がないことは,今のほうが深刻な問題なんですよね……。
4Gamer:
それはどういうことですか?
西村氏:
以前は,「いつでも好きなだけ遊べること」がセールスポイントになっていたのは確かなのですが,今のようにさまざまなスマートフォン向けゲームが多いと,「いつでも遊べるから,あとでいいや」となってしまう恐れがあるんですよ。
4Gamer:
無料ダウンロードできるアプリは,気軽に始められる半面,すぐに止められてしまうところもありますから,簡単ではないですよね。
西村氏:
そういった部分は,PCオンラインゲームによく似ていると感じますし,イベントの運営などサービス面では応用できるノウハウも多いです。
お客様は新しいコンテンツを求める傾向にありますから,定期的に要素を追加するのはもちろん,イベントステージやコラボステージなど,リクエストの声にお応えする必要があります。2014年後半は,その部分をとくに注力してきました。
メンバーやアイテムはただ修正するのではなく,新しく活躍できる場を作り出す
4Gamer:
サービスイン以降,新メンバーや新エリアなど,新要素が毎月のように追加されてきましたが,プレイヤーの反響が大きいのは,どのコンテンツが追加されたときなのでしょうか。
西村氏:
反響がもっとも大きいのは新エリアですね。イベントボスや新メンバーの追加も大きな反響がありますが,新エリアはステージが7つあって比較的長く遊べますし,新しいギミックも導入していますから,そういった部分を評価していただけているんじゃないでしょうか。
4Gamer:
お二人にとって,これまで実装されたエリアの中で,一番印象に残っているのはどれですか?
齋藤氏:
2013年7月に実装した「転生霊鳥ユーリンチー 登場!!」ですね。お客様からは,ユーリンチーはもちろん,バランスを含めたすべてに高い評価をいただけて,作った甲斐があったと感慨ひとしおでした。
4Gamer:
新メンバーも定期的に追加されてきましたが,最近は少しペースが落ちてきた印象があります。これ以上の追加は難しいのでしょうか?
西村氏:
ペースが落ちているように見えるのは,コラボが増えたからですね。基本的に1〜2か月に1体のペースで追加するというのは今でも変わっていません。コラボの場合,キャラクター数体をまとめて追加するので,オリジナルキャラと並行して追加するのは,工数の関係で難しいところがあるんです。
先ほども少しお話ししましたが,今はとくに,多くのお客様にコラボを望んでいただいていることもあって,コラボに注力しているという状況です。ただ,これは永続的に続くわけではなくて,今後のお客様の意向によってはまた変わってくると思います。
4Gamer:
実装されたときの反響が一番大きかったメンバーは誰ですか?
やはり,「メカニック」の反響が一番大きかったですね。正直に言えば,我々としては厳しいと感じる部分もあるくらい,性能的に突き抜けていましたから。
4Gamer:
そのような認識があったのに,実装にGOサインを出したのはなぜなのでしょう。
西村氏:
お客様が本当に何を望んでいるかを考えたとき,中途半端な性能のものを出しても意味がないという判断したからです。
ゲーム的には,メカニックが活躍できるエリアもあればそうでないエリアもあるという形で,それぞれのキャラに活躍の場を与えていくのが私達の仕事ですし,お客様が話題にしてくださったので,結果的には良かったかなと考えています。
4Gamer:
メンバーの中には,ガードや演奏家など,攻撃スキルがない特化型のキャラもいますよね。実装直後は使いどころが難しいと個人的に感じていたのですが,当時のプレイヤーの評判はどうでしたか?
西村氏:
開発時は,近接攻撃,遠距離攻撃,多段攻撃といったメンバーを作っていく中で,RPGのクラスのように,ガードや回復に特化したメンバーも必要になるだろうと考えて実装したんです。
ただ当時は,演奏家やガードの能力を活かせるステージの実装が後手後手に回っていたことで,評判はあまり良くありませんでした。その後,さまざまなステージを追加していったことで,ガードや演奏家が活躍できる場がようやく生まれた感じですね。
4Gamer:
「ケリ姫スイーツ」では,メンバーが増えると遊びの幅が広がるので,可能ならコンプリートしたいのですが,ガチャのシステムでメンバーを29体も手に入れるのは,正直に言って厳しいところがあります。
たとえば,制限付きでもいいので,仲間にいないメンバーの武器を主人公が装備して,使えるようになったりしませんか?
齋藤氏:
チーム内でもアイデアとしては挙がるのですが,主人公が装備できてしまうと,メンバーは手に入らなくてもいいということにもなりかねませんし,なかなか難しいんですよ。どうすればいいのか,慎重に考えているところです。
欲しいメンバーをお客様が手に入れにくいということに関しては,我々も以前から課題として検討していました。このインタビューが掲載される頃には実装されていると思いますが,その対応として,メンバーだけしか出ない「ゴールドスロット」の実装を決めました。
今回は,休止されていたお客様向けのカムバックキャンペーンとして,12月5日までの期間限定で実施するのですが,1日1回だけ入場できるイベントステージをクリアしてアイテムを集めると,新しいメンバーが獲得できる「ゴールドスロット」を回せるようになります。
齋藤氏:
もちろん,普段からプレイしていただいているお客様も利用可能です。またゴールドスロットは,お客様が所持していないメンバーが優先して的中するようになっています。すべてのメンバーを所持されている場合は,プラス値の低いメンバーが優先される仕様です。
4Gamer:
被りなし,しかも無料で新メンバーが手に入るというのは嬉しいですね。
何をしたらお客様に喜んでいただけるのかを考えたときに,やはり「持っていないメンバーがもらえる」というのがいいんじゃないかと。
イベントステージの「宝物庫」は,報酬をプレゼントするためだけのようなステージなので,基本的にはものすごく簡単なのですが,Rank 5だけは気を付けてください。私とプランナーが考えた,ちょっとだけ意地悪なギミックが入っているので。
西村氏:
Rank 5のクリア方法を知っているのは,「ケリ姫スイーツ」チームの中でも4人くらいしかいないんですよ。検証チームからも「Rank 5の宝箱が開けられない」と不具合報告が上がってきたくらいでしたから(笑)。最初は私も教えてもらえませんでしたし。
齋藤氏:
まあ,一度くらいは前情報なしで楽しんでみてください(笑)。そこまで難しい仕掛けではないので,いつもとは違ったことをやってみたり,メンバーを変えてみたりと,何回か試せばクリア方法は分かると思います。
4Gamer:
姫のドレスではいろいろな追加効果を付与できますが,金箱のドロップ率上昇以外だと,どのドレスが人気なのでしょうか。
今だと,会心効果を付与するものですね。とくに「闘士」と組み合わせると高確率でクリティカルを出せて,かつ敵の防御力を無視できるというのが大きいと思います。これは,防御力の高い敵が出現するステージが増えたということの裏返しでもあるのですが。
西村氏:
これも,メンバー追加の話と考え方は同じなんです。たとえばドレスは,攻撃力や会心率を上げるといったバトル中に活きるものと,金箱ドロップ率や獲得コイン量が上昇するバトル後に活きるものに大別されます。
これまでのお客様の動向で言うと,バトル後に活きるドレスが求められる傾向にあって,バトル中に活きるドレスの人気が芳しくありませんでした。ですので,お客様がドレスを有効利用できる状況を作り出すことにしたんです。
4Gamer:
単純にパラメータを調整するのではなく,新しい価値を付与することが大切なんですね。
西村氏:
はい。私達はそれがオンラインコンテンツというものだと捉えています。お客様がせっかく手に入れたアイテムを使い道がないものにしてしまうのは失礼ですし,安易にパラメータをいじるだけではダメだろうということですね。
これまでのアップデートで言うと,2014年4月に属性の相関関係が4すくみから「グー」「チョキ」「パー」の3すくみに変わったのが大きいですよね。
西村氏:
属性で3すくみ+1ペアという定番フォーマットを外したのは,「ケリ姫スイーツ」のキャラクター数や当時のディレクターの意向などが理由でした。ですが実装したあと,「斬・打・射・魔」の4すくみだと,複雑でなかなか覚えてもらえないことが浮き彫りになってきたんです。
そこで,属性の相関関係に手を入れることを決めたのですが,どうせ変えるなら,3すくみ+1ペアよりも,シンプルで分かりやすい3すくみだけにしようと考えたんです。
4Gamer:
それでジャンケンを採用したわけですか。確かに,ジャンケンなら3すくみを間違える人はまずいないですよね。
西村氏:
ほかのゲームだとイメージ的に難しいかもしれませんが,「ケリ姫」のちょっとシュールな世界観なら,ジャンケンをそのまま入れても大丈夫だろうと(笑)。
4Gamer:
4すくみから3すくみになったことで,違う属性にシフトされたメンバーもいましたが,振り直しはどのような基準で行ったのでしょう。
齋藤氏:
単純に置き換えるだけだとバランスが悪かったので,全体的なバランスを考えながら,いろいろと入れ替えました。中には,プランナーが「攻撃方法や見た目からチョキが連想できるからチョキ」みたいな決め方をして,ほかのスタッフが首をかしげることもありましたけど(笑)。
4Gamer:
そして,2014年10月には,テクニカルバトルよりも難度が高い「エクストラバトル」が実装されましたね。
ええ。もともとテクニカルバトルはバトルのバランスをゆるめに設定していたので,レベルが高くなると,属性の相性があっても火力で押し切れるようになっていきます。そこで,属性重視の方向性をより強く打ち出したエクストラバトルを実装したんです。
西村氏:
テクニカルバトルやエクストラバトルを実装した意図としては,かつては1軍だったけど2軍落ちしてしまったメンバーに活躍の場を与えてあげたい,だったらそのメンバーが活躍できるステージを作ろう,というものなんです。
4Gamer:
属性の影響が大きくなるということは,メンバーの選定が重要になるとも言えますよね。今後,スロットでメンバーを増やさないとクリアできないようなステージが出てきたりしませんか?
齋藤氏:
一定以上のレベルに達していないと厳しいところはありますけど,基本的にはどのステージも,最初のメンバー4人でクリアできるように作っています。ただ,メンバーをたくさん持っているお客様向けに,よりメンバーの選択が複雑になるようなステージを出すことも検討しています。
コラボは今後も注力。入手できなかったコラボキャラと似た能力のオリジナルメンバーの実装も視野に
4Gamer:
「ケリ姫スイーツ」ではこれまで,さまざまな社外コンテンツのコラボを実施していますが,中でも,2013年4月に実施された「にゃんこ大戦争」とのコラボは衝撃でした。
「ケリ姫スイーツ」の「にゃんこステージ」 |
西村氏:
コラボ自体はその前から検討していたんですけど,当時の主流だったカードバトルタイプのゲームは,ちょっと「ケリ姫スイーツ」のイメージとは違うなと考えていたんです。
そんな折,世界観がシュールで,かつゲームとしてもしっかり作り込んでいる「にゃんこ大戦争」と出会って,これは相性がいいんじゃないかと思ったんです。当時の私の上長が,京都にあるポノスさんのところに出向いてコラボのお願いしたところ,快諾していただけました。おそらく,最初にお話ししてから2か月くらいで実装に至ったんじゃないでしょうか。
4Gamer:
コラボの内容もすごかったですよね。恥ずかしながら「にゃんこ大戦争」を知ったのはこのコラボだったので,キャラクターのシュールさにかなり驚いたというか,戸惑ったのを覚えています。「にゃんこ大戦争」側のコラボも,またぶっ飛んだ内容でしたし(笑)。
西村氏:
私達は,「ケリ姫スイーツ」の中で「にゃんこ大戦争」をいかに忠実に再現するかと言うことに努めていたので,それはうまく伝わったみたいですね(笑)。
ポノスさんのほうは,“いかに面白くするか”がテーマになっていたようです。事前にだいたいの内容は知っていたんですけど,でき上がったものを見たときは,予想を大きく超えていて,妙に悔しかったのを今でも覚えています。
4Gamer:
当時のプレイヤーの反応はどうでしたか?
西村氏:
反響は大きかったですね。あのコラボをきっかけに「ケリ姫スイーツ」を始めて,今でも遊び続けてくださっているというお客様も多いんです。
4Gamer:
コラボによる相互流入のはしりみたいなイメージでしょうか。
西村氏:
そうですね。「にゃんこ大戦争」とのコラボ実績ができたことで,さまざまな企業様に提案しやすくなったところがあるのは事実です。
ただ,当時ポノスさんに提案したときは,「こうしたら面白いんじゃないでしょうか」と言ったら,ポノスさんが「面白いですね!」と乗ってきてくれた感じで,そういったビジネス的なことって実はあまり考えていなかったんですよ。当時の資料には,売上などの数値的なデータは一切書いていませんでしたし(笑)。
4Gamer:
それでよく企画が通りましたね……。
ガンホーの場合,面白いことが正義なんです。だから,そういった業界初みたいな事例が生まれやすいのかもしれません。「にゃんこ大戦争」とは通算3度コラボさせていただきましたが,お互いのタイミングが合えば,また何かやりたいですね。
4Gamer:
2014年に入ってからは,ミニストップ,「進撃の巨人」「劇場版 とある魔術の禁書目録」「ヤッターマン」,そして「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ」と,かなり社外コラボが増えましたよね。「ケリ姫スイーツ」では,どういった基準でコラボを決めているのでしょうか。
西村氏:
最近はストレートに,ユーザーさんのアンケート結果から検討して計画を立てています。それ以前は,ゲームの雰囲気に合うかどうか――「ケリ姫スイーツ」は端的に言うと敵と味方に分かれて戦うゲームなので,そこにマッチするかどうかを重視していました。
たとえば,「進撃の巨人」なら“人間対巨人”というはっきりとした構図があるので,ゲームに落とし込みやすいコンテンツだと言えます。対して,学園ドラマのようなタイプのコンテンツは,いくら人気があってもゲームにマッチさせるのが難しいんですよ。
ミニストップさんとのコラボは,“スイーツ”つながりでコラボして実際のお菓子を作れた,という意味では少し特殊ですね。
4Gamer:
「ケリ姫スイーツ」のコラボは,毎回クオリティがすごく高いですよね。「進撃の巨人」のときも,再現度の高さでかなり話題になりましたし。
西村氏:
スタッフ達がコラボ先の作品に愛情を持って取り組んでいるので,自然と全体のクオリティが上がっているんだと思います。
開発中は,机の上がコラボ先の資料だらけで何のゲームを開発しているチームなのか分からないくらいの状態になっていますし,原作の設定と合わない部分があると,版権元さんかと思うくらいの指摘が入りますから(笑)。
アニメ「進撃の巨人」コラボより (C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会 |
アニメ「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ」コラボより (C)Magica Quartet/Aniplex・Madoka Movie Project |
4Gamer:
コラボで思い出したのですが,「進撃の巨人」コラボではエレンが2種類の攻撃パターンを持っていたり,「劇場版 とある魔術の禁書目録」コラボでは神裂火織が武器を持ち替えるとスキルが変わったりと,新しい仕様が盛り込まれることがありますよね。
西村氏:
そうですね。リヴァイの弱点を狙うという仕様もそうでしたが,コラボキャラには,レギュラーメンバーにはない機能を盛り込むことがあります。
4Gamer:
そういったコラボキャラを入手する機会を逃してしまった人向けに,似たような性能のレギュラーメンバーを提供する予定はないんですか?
西村氏:
その点については,チーム内でも検討しています。かつては,「似たようなスキルを持つキャラを出すのはよくない」という風潮がチーム内にあったんですが,おっしゃるように,二度と入手できないのはどうかという疑問が湧いたんです。
その後は考えをあらためて,キングメタルドラゴンと空賊のように,似たスキルのメンバーを許容する形になっていますので,今後も需要次第では,似たスキルを持つメンバーを実装する可能性はあります。
2周年記念イベントの内容を受けて3年めは新たな展開がスタート。新システム「覚醒」は剣士とエスパーから実装
4Gamer:
「ケリ姫スイーツ」では,2014年9月に900万ダウンロード突破の発表がありましたが,1000万ダウンロード達成の報はいつ頃聞けそうですか?
西村氏:
サービス開始から1年経過して700万を超えたあたりからは,1000万ダウンロードという数字も現実味を帯びてきました。今のペースなら,2015年前半には1000万を超えられるんじゃないかと考えています。
4Gamer:
タイトルによっては,同一端末で複数回ダウンロードした数を含めて「累計ダウンロード数」として発表しているタイトルもありますが,ガンホーでは確か,発表している数字は端末単位でカウントしているんですよね。それだとやはり,1000万という数字はかなりハードルが高いのでしょうか。
西村氏:
他社さんからもさまざまなタイトルがリリースされてお客様の選択肢が増えているので,新規層の獲得という意味ではハードルが上がりましたね。最近は,休眠しているお客様にもう一度遊んでもらうための取り組みに力を入れようとしています。一度は気に入って遊んでくださったのですから,また遊んでくださる可能性も高いんじゃないかと考えています。
4Gamer:
それでは,今後はどのような企画を予定しているのか,直近の予定を教えてください。
すでに公式サイトで告知済みですが,11月25日には「ケリ姫スイーツ」最大のボスが襲来します。その事前イベントとして,“総ケリ数”を増やしてボスの体力を減らそうという,レイドイベントのようなものを実施しています。11月25日までに総ケリ数が2億ケリに到達すれば,HPが最大90%ダウンした状態でボスが登場する,というものですね。
4Gamer:
実際のボスとの戦いは,プレイヤーが協力する形になるんですか?
西村氏:
いえ,ボスとの実際の戦いは,普段通り個別になります。HPが90%減少した状態でも相当強いので,勝つのはかなり難しいと思います。ですので,イベント期間中に一人でもボスを倒すことに成功すればミッション達成になります。
齋藤氏:
とは言え,上位のお客様が本気になれば倒せるだろうと考えています。成功したら使用人をプレイヤーの皆さん全員にプレゼントさせていただきますし,倒した方には達成報酬として限定ドレスを用意していますので,ぜひ挑戦してみてください。
またイベント期間中は,達成したケリ数に応じて,経験値アップやドロップ率アップといった支援効果も発生しますので,ぜひイベントに参加していただければと思います。
4Gamer:
そのほかには,どのようなイベントが用意されているのでしょう。
11月21日から,新ボスの「擬態神殿 プロテクタコ」が登場します。これは「コンペイトウ遺跡」と対になるスペシャルボスで,実はすでにマップ選択画面で姿の一部を見ることができます。
齋藤氏:
画面を見ていると,たまに顔を出すんですよね。
4Gamer:
マップによっては選択画面にボスの姿が見えることは把握していましたけど,コンペイトウ遺跡は全然気が付きませんでした……。よく見ると,確かに中央あたりで何か動いていますね。
西村氏:
これはデザイナーのこだわりで,どのエリアにも必ず,対となるスペシャルボスが組み込まれているんです。「シャーベット洞窟」など,分かりやすい形で姿を見せていたものもありますが,全部のエリアがそういう仕掛けになっているというのは,開発スタッフの中にも知らない人間がいるくらいなんですよ。
4Gamer:
勉強になりました。次に新ステージが実装されたときは細かくチェックしたいと思います。
西村氏:
ところで,タイトル画面が変わったのには気付かれましたか?
4Gamer:
はい。これまでに実装されたメンバー達がどっと入って賑やかになりましたよね。反対側にはアラカルテット四姉妹も登場していますし。
西村氏:
剣士姿の主人公,鎧のデザインが変わっていませんか?
4Gamer:
あっ! ……これは何ですか? 今の話の流れだとウラがあるんですよね。きっと。
西村氏:
これは,近日中に実装予定の新システム「覚醒」です。第1弾は「剣士」と「エスパー」が対象になるのですが,主人公と所持しているメンバーを,より使いやすくするという内容になります。
4Gamer:
覚醒すると,何が変わるのでしょう。
西村氏:
見た目とスキルが変わります。たとえば剣士の場合,蹴ったターン以後の攻撃スキルはジャンプ攻撃ですが,覚醒して「ナイト」になると移動距離が長めの攻撃方法に変わります。剣士は近距離にしか攻撃できないところがネックでしたが,覚醒することによって使い勝手が上がりますよ。……落とし穴に落ちるときは落ちるというのは同じですが。
ナイト(主人公) | ||
ナイト(メンバー) |
齋藤氏:
エスパーの覚醒も攻撃方法が変わります。まあ,イラストを見ていただければなんとなく察しがつくと思います(笑)。
エスパーの覚醒後(主人公) | |
エスパーの覚醒後(メンバー) |
4Gamer:
どうやったらメンバーを覚醒させられるんですか?
西村氏:
所持しているメンバーに特定の武器を装備させると覚醒できます。覚醒は武器に紐付いているので,別の武器に変えればいつでも元に戻せます。これは,ステージを攻略する際に「覚醒前のスキルだったら簡単だったのに」といった事態にならないよう,考えた仕様です。
それから,メンバーに“+”が付いていれば覚醒もより有利になる,という仕組みになっていますので,+付きのメンバーをお持ちの方は,メンバーの覚醒を期待してお待ちください。
4Gamer:
それではあらためて,今後の展望を教えてください。
2周年記念の一連のイベントでは,「ケリ姫スイーツ」も今後どんどん進化していくということを示したかったので,これまでとは少し流れを変え,新キャラやボスを先にお目にかけるという形式にしました。
とくに,10月24日に実装したプロローグ「異変」では新キャラである「アラカルテット4姉妹」の末っ子「カレット」が登場しましたが,今後彼女達は,ストーリーに深く関わってくることになります。
2015年以降は,これらの新設定とそれに基づく新エリアの投入を中心に展開していきます。もちろん,コラボも引き続き実施していく予定です。
4Gamer:
カレットは,いろんなエリアのステージ7に乱入するという新しいタイプのボスでしたが,そのほかの3人はどういった形で登場するのか,実装ペースを含めてすでに決まっているのでしょうか。
西村氏:
実を言うとアラカルテット4姉妹は,ただの敵ではなく“姫のライバル”という扱いなんですよ。末っ子とは戦うことになりましたが,三女以降が敵として出てくるとは限らないかもしれません。それほど間を開けずに登場する予定なので,ぜひ今後の展開をお待ちください。
4Gamer:
ちなみに,次のオリジナルメンバーの実装はいつ頃になりそうですか。
齋藤氏:
次のメンバーが30人めというキリの良い数字なので,面白いものを提供しようと準備しているところです。サポートモンスターを「使用人」のように連れ歩ける,いわゆるモンスターテイマーなどを考えています。ただ,それだけだと攻撃ではなくサブ効果がメインになってしまうので,今はどうやったらお客様に喜んでいただける形になるか,最終調整をしている段階なんです。
もちろん,そのあともメンバーのアイデアはたくさんありますので,期待していてください。
4Gamer:
それでは新エリアのネタはどうでしょう。
齋藤氏:
先ほどの話に出たように,新エリアがお客様にもっとも望まれているコンテンツなのですが,これまでのペースだと遅いので,もっとペースを早めようという方針を立てました。
今後は2〜3か月に1エリアのペースで実装していく予定で,その第1弾として「浮遊城」をテーマにしたエリアを2015年1月に実装予定です。そのあとも続々実装していくので,楽しみにしていてください。
4Gamer:
それでは最後に,読者に向けてメッセージをお願いします。
西村氏:
インタビュー中にもお話ししましたが,現在展開している2周年記念イベントは,3年めの展開に向けた先駆けとなります。「ケリ姫スイーツ」の世界はこれからもどんどん広がっていきますので,ゲームをプレイしながら今後それを実感していただけると嬉しいです。
齋藤氏:
2周年記念イベントを行っている今が,一番盛りだくさんでお得な時期なので,この機会にぜひ一度「ケリ姫スイーツ」を体験していただければと思います。
西村氏:
一度といわず,二度三度と遊んでいただきたいですね(笑)。ぜひよろしくお願いします。
4Gamer:
3年めのさらなる飛躍に期待しています。本日はありがとうございました。
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