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[Unite 2019]視聴者がゲームに介入できる新たな世界へ。「ライブ・ストリーミングに参加せよ!Genvidが変える動画視聴体験」聴講レポート
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印刷2019/09/26 13:13

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[Unite 2019]視聴者がゲームに介入できる新たな世界へ。「ライブ・ストリーミングに参加せよ!Genvidが変える動画視聴体験」聴講レポート

 Unity開発者向けのカンファレンス「Unite Tokyo 2019」が,東京都港区のグランドニッコー東京で2019年9月25日から行われている。初日には,視聴者がゲームに介入できる動画配信を可能とする「Genvid SDK」についての講演「ライブ・ストリーミングに参加せよ!Genvidが変える動画視聴体験」が行われ,開発中のゲーム「デモリッション ロボッツ K.K.」の組み込み事例などが紹介された。

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「Unite Tokyo 2019」公式サイト


Genvid Technologies Japanの一條貴彰氏
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 登壇したのは,Genvid Technologies Japanでデベロッパとの仲介を務めるDeveloper Relationsの一條貴彰氏だ。一條氏はインディーズゲームを開発するヘッドハイの代表でもあり,ローポリゴンで3Dグラフィックス黎明期のゲームを再現した「Back in 1995」の制作に携わった経験を持つ。現在は新作タイトル「デモリッション ロボッツ K.K.」にGenvid SDKを組み込み,視聴者参加型のゲームとして開発を進めている。

 今回のテーマとなるGenvid SDKとは,簡単に言って「ゲームの配信動画のうえに,視聴者が操作できるインタラクティブなUIを被せることで,番組やゲームへの介入を可能にする」SDKだ。ここでいう配信動画とは,eスポーツのようなゲームの実況中継だけでなく,クラウドサーバーで動作するゲームの模様を不特定多数の視聴者に配信し,視聴者側から介入できることも含んでいる。

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 Genvid SDKについては,7月に行われた「GameTools&MiddlewareForum2019」(GTMF 2019)の講演で概要が解説されているが,「視聴者が間接的にゲームに参加できる」「eスポーツの中継で,好きな選手の視点で試合を見たり,ステータスを確認したりできる」などの活用事例が存在する。
 ここで一條氏は,Genvid SDKにはいくつかの誤解があると語った。それは,「動画配信プラットフォームなのか」「ゲームプラットフォームなのか」「クラウドゲームなのか」「Twitchと競合するものなのか」という4点で,一條氏はそれぞれに明確な解答を示した。

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●動画配信プラットフォームではない
 Genvid SDKは,視聴者参加型ゲームやインタラクティブなUIを可能とするサーバーミドルウェアである。

●ゲームプラットフォームではない
 利用者はGenvid SDKを組み込みたいゲームを任意に選ぶことができる。Steamでも自社販売でも販路は問わないし,ローカルで動作するものでも,クラウドゲームでもいい。

●クラウドゲームではない
 クラウドサーバー上でゲームを動作させ,操作の結果を動画としてストリーミングするのがクラウドゲーム。ユーザーのそれぞれが異なるゲームを遊ぶため,1ユーザーあたり1つのインスタンスが必要となる(遊ぶ人数分だけゲームソフトが必要になるようなもの)。しかし,Genvid SDKは,配信者が遊んだゲームの映像を,不特定多数の視聴者に配信し,そこに間接的な介入ができるというものだ。

●Twitch競合ではない
 TwitchのオーバーレイシステムとGenvid SDKは共存でき,一緒に使うことが推奨されている。


 ゲーム実況やeスポーツ中継で応援や「投げ銭」(カンパ)をすることは,もはや珍しくない。Genvid SDKの特徴は,ゲーム内にアイテムを投下するなどの間接的介入や,視聴者が望む選手の視点に切り替えるなどのインタラクティブ性であり,それによって単なる動画視聴以上のプレミアムな視聴体験ができる。そして,投げ銭やアイテムの購入によって,動画視聴者を対象としたマネタイズができるという。

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 視聴者がモンスターにエサを与える「CHKN Arena」や,プレイヤーが敵を倒した際に得られる「怒りポイント」を使って視聴者がゲーム内にアイテムや敵を送り込む「Space Sweeper」などが,Genvid SDKで何ができるかを示す好例だ。また,ゲーム内の看板に視聴者の好みにあわせた広告を表示することも可能。デベロッパが通常のゲームとは別に「Genvid版」を用意し,配信者のゲームに視聴者が介入するというイベント的な使い方もできるという。

視聴者がモンスターにエサを買い与える「CHKN Arena」(左),視聴者がゲーム内にアイテムや敵を送り込む「Space Sweeper」(右)。いずれもGenvid SDKの導入例で,「CHKN Arena」はすでに発売された「CHKN」にGenvid SDKを導入した別バージョンで,「Space Sweeper」は開発中のゲームにGenvid SDKが組み込まれている
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eスポーツでの活用例。「Counter-Strike: Global Offensive」の大会,「FACEIT London Major」や「Intel Extreme Masters Katowice 2019」では,Genvid SDKのインタラクティブなUIにより,視聴者は画面に詳細なマップやスコアボードを表示したり,好きな選手の視点で観戦できたりする
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 Genvid SDKを利用するにあたって,動画の配信サイトやクラウドサーバーは開発者が自由に選択できる。サーバー上でゲームを動かし,その様子を動画として動画サイトへ配信。視聴者による操作やゲームへの間接的介入といった情報を受け取って処理を行う……というのがGenvid SDKの仕事になる。動画へのボタンや文字の描画,視聴者用サイトの構築,決済などは別のシステムに任せることになる。

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 講演では,一條氏が手がけるPC/Mac/Nintendo Switch用の新作「デモリッション ロボッツ K.K.」でのGenvid SDKの実演が行われた。同作は4人用ゲームとして開発が進められているが,Genvid SDKを組み込んで視聴者が介入できるようにするという。プレイヤーはロボットを操作して街を壊し,視聴者はこれに抗議する市民団体の一員となって妨害用トラップを投下する。現時点でトラップが投下される位置はランダムだが,将来的には視聴者投票によって,どのプレイヤーを妨害するかを選べるようにしたいという。

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左がUnityのウインドウで動作するゲーム,右が視聴者用のサイトから見られる実況動画。実況動画右上には「トラップ設置」ボタンがあり,視聴者が押すとゲーム内にトラップを投下できる。Unityと視聴者用ウェブサイトが,Genvid SDKを通じてデータをやり取りしているわけだ
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 Genvid SDKをUnityのプロジェクトに導入するには,プレハブを配置してどんなデータを送受信するか決めるだけでいい。PCが1台あれば,テストサーバーを用意しなくてもテスト可能だ。シェルの操作とPythonスクリプトの実行,そして視聴者用のウェブサイトを構築する技術があればGenvid SDKを利用できる。一條氏のケースでも,「プロジェクトに3つプレハブを置くだけ」(一條氏)でスムーズに組み込みが進んだという。ただし,一條氏にウェブアプリケーションの知識が乏しかったため,Genvid SDKではなく,視聴者用ウェブサイトの構築に手間取ったそうだ。

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 今後Genvid SDKは,「自分でクラウドサーバーを立ち上げずに使えるBssS化」(2020年初頭頃を予定),「一般の配信者が使える『ローカルGenvid』のリリース」(2020年春頃を予定),そして各種動画サービスとのさらなる連携が予定されている。

 最後に一條氏は,「インタラクティブ・ストリーミング市場はこれから広がっていくものであり,Genvid SDKがあれば誰でも参入することが可能です。インディーズゲームクリエイターにとっては,大きく成長できるチャンスでしょう。開発チームが思いもよらなかった使い方をしてほしいので,どんどんサポートしていきます」と語って講演を締めくくった。

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 アドベンチャーゲームなどの実況中,配信者が視聴者のコメントを受けて選択肢を選ぶといった遊び方は現在でも行われているが,Genvid SDはよりゲームに深く関わったものになる。もちろん,ゲームデザインに新たな工夫が必要になるが,うまくいけばかなり盛りあがりそうだ。
 「デモリッション ロボッツ K.K.」では,視聴者に「市民団体の一員」というプレイヤーと対立する設定が与えられているのが面白いところで,このあたりを進めていくと,非対称型ゲームとしての発展も望める。1本のゲームに通常版とGenvid版を用意できるのもSDKという形式ならではで,Genvid版を新要素のお披露目に使ったり,能力値を高めてイベントで使うといった使用方もあるのではないだろうか。公式サイトにはサンプルも用意されているので,気になる人は試してほしい。

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Genvid Technologies公式サイト

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