インタビュー
なぜ「リング☆ドリーム」で,「DDT美少女化計画」とかいうどうかしているコラボ企画が進行中なのか。サクセスの松田秀夫プロデューサーと,DDTの高木三四郎社長に聞く
そんなリング☆ドリームと,4Gamerで連載中の「男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ」でおなじみ,男色ディーノ選手が所属するDDTプロレスが,「DDT美少女化計画」というコラボレーション企画を実施している。そもそもDDTプロレスリングに所属している選手は,男ばっかりだというのに,美少女化って……?
こんな,明らかにどうかしている企画がどのようにして生まれたのかを,サクセスで本作のプロデュースを担当している松田秀夫氏と,DDTプロレスリングの代表取締役社長 高木三四郎選手に,当事者でありながらあまり経緯を把握していなかったという男色ディーノ選手が聞いた。
「リング☆ドリーム〜女子プロレス大戦〜」公式サイト
DDTプロレスリング公式サイト
「DDT×リング☆ドリーム」コラボレーション 特設サイト
WRESTLE EXPO 2006が,
今回のコラボの伏線だったという仮説
男色ディーノ(以下,DD):
まずは,「リング☆ドリーム」というのはどんなゲイムなのか,そこから教えてほしいのよ。
あ,はい(緊張)。
リング☆ドリームは,mixi,Yahoo!モバゲー,ニコニコアプリの3プラットフォームで展開しているPCブラウザ向けソーシャルカードバトルゲームです。架空の女子プロレスの世界を題材にしているのが,最大の特徴となっています。
DD:
リング☆ドリーム自体は,ブラウザゲームになる前からあったわよね?
松田氏:
よくご存じですね!
歴史をさかのぼると約20年前,カードゲームとしての「リング★ドリーム」が誕生し,後に「GURPS」(ガープス)というTRPGに移植された経緯があります。現在,弊社でサービスしているのは,リング★ドリームのライセンスやキャラクター,世界観などを受け継いだ正統な現代版という位置付けなんです。
DD:
女子プロレスを題材にしたゲームということで言うと,サクセスさんから「レッスルエンジェルス」シリーズが発売されていたこともあったわよね。それとリング☆ドリームには,何か関係があるの?
松田氏:
実は弊社がレッスルエンジェルスのライセンスを引き継いで作ることになったとき,リング☆ドリームの選手を登場させたことがあるんです。同じ世界の中に,レッスルエンジェルスもリング☆ドリームも共存しているというイメージです。
実は当初,今回のリング☆ドリームでもレッスルエンジェルスとのコラボを予定していたんですが,最終的にはリング☆ドリームとしての独り立ちを目指すことにしたという経緯があります。
DD:
ああ,なるほど。そうだったのね。
……高木さん,思い出しませんか? 8年前にお台場で開催されたWRESTLE EXPO 2006で女子プロレスゲームのプロモーションが行われていたことを。
えっ,あの伝説のWRESTLE EXPO? 俺様が電流爆破デスマッチをやったら,停電になったという。
4Gamer:
しかも近隣の住民が苦情を言いに来ちゃったりもした,伝説の“プロレス版夏フェス”ですね。
DD:
あのときに会場でプロモーションされていたのが,「レッスルエンジェルス サバイバー」だったのよ!
4Gamer:
思わぬところに意外な歴史が(笑)。
松田氏:
実は現在のリング☆ドリームでディレクターを務めている泥士朗は,リング★ドリームの原作者で,レッスルエンジェルスサバイバーではディレクターとシナリオを担当しているんです。
キャラクターデザインも,リング☆ドリームとレッスルエンジェルスでは同じ者が担当しているなど,共通点は多いんですよ。
DD:
今にして思えば,あのWRESTLE EXPOって,リング☆ドリームとDDTのコラボに向けた伏線だったのかもしれないわね。
DDTとコラボしたい!
そんな思いを最初に受け止めたのは鶴見亜門GM
DD:
で,単刀直入に聞きたいんだけど,なんでコラボの相手としてDDTを選んじゃったの?
松田氏:
それはもう,僕がどうしてもお付き合いさせていただきたい団体が,DDTさんだったんです(真顔)。
大社長:
あ,はい。ありがとうございます。
松田氏:
コラボレーションって,いろいろな形のものが世にあふれていますけど,開発陣が夢中になれなきゃ意味がないと思うんです。
それに単発的で刹那的なコラボレーションではなく,長期にわたって複数回何かを仕掛けたいというとき,ゲーム側もコラボをしていただく側も夢中になって楽しめないぐらいだったら,やらないほうがいいでしょう!
4Gamer:
(熱い……)。
DD:
そこまで言われると,こちらも悪い気はしないわね。
松田さんは以前からプロレスが好きだったのかしら?
松田氏:
ええ。新日本プロレスで闘魂三銃士が活躍している頃からのファンです。以来,あちこちの団体を見てきました。
DD:
DDTはいつ頃から見てるの?
松田氏:
お恥ずかしい話ですが,3年ぐらい前からなんです。がっつりはまったのは2年ほど前で。
最初は飯伏選手を見て,凄く華のあるレスラーだなと思っていたんですよ。で,ちょこちょこそれ以前のことを調べはじめたら,ヨシヒコ選手の存在に行き着きまして。
4Gamer:
2009年10月の後楽園ホール大会では,飯伏選手とヨシヒコ選手がKO-D無差別級のベルトを巡って死闘を繰り広げましたね。あれは映像で見ても,インパクト十分な試合だったと思います。
松田氏:
ええ。プロレスを見てきた経験があればあるほど,ニヤニヤしつつも,やがて感動できるというか。むしろ尊敬に近い気持ちがわき上がってくるんですよ。
DD:
なるほどねぇ。
ちなみに松田さんの中で,ゲーム作りとプロレスに共通点ってあるかしら?
松田氏:
プロレスと……というとちょっと難しいんですけど,どうやったらお客様が笑ってくれるのか,楽しんでくれるのかという部分を大事にしているところなんかは,DDTさんとの共通点があるんじゃないかと,勝手に思っています。
DD:
確かにエンターテイメントのビジネスをやっていくうえで,そこの視点は大事よね。
で,今回のコラボの話はどういう形で進めたのかしら?
松田氏:
いやもう,僕が突然事務所に電話をかけたんです。そのときに出てくださったのが,鶴見亜門GMで。「ちょっとよく分かんないから,企画書を送ってくれ」みたいに言われまして。
DD:
うわぁ……。あの人,そういう無礼なところがあるのよね。
ぞんざいですね。すみません。クビにします。
DD:
あの人も家庭があるしクビはかわいそうだから,時給を下げるぐらいにしてあげてくださいよ。
4Gamer:
で,企画書を送ったんですね?
松田氏:
はい。メールで企画書を送ったところ,「一度話を聞きたいので,事務所までお越しください」と声をかけていただいて。それで実際に事務所でプレゼンさせていただいたんです。
スターダムとコラボをして学んだ
FAXに宿るロマンについて
DD:
実はこのお話をいただくだいぶ前,うちの高木が「ソーシャルゲームを作るぞ」なんて言っていた時期があったのよ。
大社長:
あったあった。2年ぐらい前かな。
それまでソーシャルゲームってよく分かってなかったんですけど,無料ということで気楽に遊び始めた「戦国テンカトリガー」というゲームに,メンタルの部分からマネーの部分まで吸い取られましてね。
これでプロレスゲームをやったら,いけるんじゃないか? と。
DD:
自分が投資した分を,回収しようと?
大社長:
そこまでの欲はないけどね!
ただ単純に,これでプロレスゲームがあればいいのになって。
DD:
当時はプロレスを題材にしたソーシャルゲームって,あんまりなかったし。
4Gamer:
今でこそ,複数のタイトルが運営されていますが。
松田氏:
でも,女子プロレスを題材にしたものは,うちだけなんです。
DD:
ああ,そうね。そういう意味でもリング☆ドリームは独自性を保っているわよね。
考えてみると,男子の場合は実在する団体も多いし選手のキャラクターも豊富なので,題材にしやすそうではありますよね。
DD:
でもリング☆ドリームは以前,スターダムさんとのコラボもやっていたわよね?(関連記事)
松田氏:
ええ。あれはスターダムさんとお付き合いのある方に,声をかけていただいたんです。理想をいえば,愛川ゆず季さんがプロレスを引退される前に形にしたかったんですけど,タイミングがうまく合わなくて……。
でも,プロレスというカテゴリーのゲームである以上,プロレス団体とお付き合いをするべきだという強い思いがあったので,スターダムさんとのコラボをやることにしたんです。
DD:
完全に興味本位なんだけど,そのときはどなたとお話を?
松田氏:
ロッシー小川さんと打ち合わせをさせていただいたんですよ。
そのときも,事務所の中に入ったらロッシーさんと風香さんがいらっしゃって,その時点で興奮しましたね。
4Gamer:
まあ,しますよね(笑)。
松田氏:
それでゲームの説明を資料を交えつつさせていただいたんですが,ロッシーさんから「俺,ゲームのことは分からないんだよな」と言われてしまって。
大社長&DD:
言いそう!
松田氏:
これは何人が遊んでくれるんだ? という話になって,登録者数とアクティブユーザー数を伝えたところ,「毎日そんなに集客するのか!」と驚いてくださって。
DD:
興行ベースで考えたわけね。
松田氏:
で,「俺はゲームはよく分からないけど,やりたいならやりなよ!」と言ってくださったんです。
DD:
小川節!
松田氏:
で,登場させる選手を選ぶことになったんですけど,そのときにダメ元で「風香さんはもう選手として引退されてますし,ゲームの中とはいえ,戦うのはNGですよね?」と聞いてみたら,「いや,いいですよ。ぜひカードにしてください」と。
DD:
それも風香節だわ!
まあ,そんな感じでした。
そうそう,そのとき印象的だったのが,今後のやりとりはメールで……と伝えたところ,ロッシーさんが「メールはあんまり得意じゃないんだよな」とおっしゃったんですよ。
DD:
お,おや? となるわよね。
松田氏:
打ち合わせが終わった後に,スターダム関係者の方から「大切な文書は大体FAXなんです」と教えていただいて。そういえば確かに,新日本プロレスとUWFインターナショナルの抗争が勃発したときも,大切な文書はFAXだった! って気付いたんですよ。
もの凄く失礼なことを言ってしまったと,即座に反省して……。
大社長:
いや,そんなことないですよ全然(笑)。
DD:
先方の事務所に漂っている空気に完全に飲まれて押し切られてるじゃないの。
松田氏:
言われてみれば,FAXのほうがロマンがあるなって。
DD:
確かにロマンはあるわね。「週刊プロレス」に載っている発表ごとも,だいたいFAXだし。……この時代にまだそうだったとは思わなかったけど。
(大社長が)嫁さんから言われた
「バカじゃないの?」というひと言
DD:
で,そういったことも経て,今度はDDTとコラボを……となったのよね。
松田氏:
ええ。ただ,最初はとにかく,ヨシヒコさんをカード化したくて。そうしたら,鶴見さんが「ヨシヒコだけでいいんですか?」と。
DD:
あの人,たまにそういう閃きがあるのよね。たまになんだけど。
松田氏:
ほかの選手とのコラボもさせていただけるなんて,僕は夢にも思ってなくて,でも,もしできるならやりたいな,と。ただ,男子のプロレスラーをそのままリング☆ドリームに登場させると,さすがに違和感があるんですよね。
そういう話し合いをしているうちに,亜門さんが「じゃあ,うちの選手も女の子にすれば? マイケルとか,どうなっちゃうのかな?」と言ってくださったんです。それで……こうなりました。
大社長:
正直なところ,打ち合わせのほとんどは亜門に任せていて,結果ぐらいしか聞いてなかったんですよ。で,あるとき亜門がこのイラストを持ってきて「高木さん,これでいいですかね?」と言ってきて,まあひっくり返りましたよね。何じゃこりゃ? って。
でもこれは凄いと思いました。ただ,うちらはこれでいいけど,サクセスさんは本当にこれでいいのか? という心配はありました。
DD:
それは今でもあるわよね。持ち込まれた企画とはいえ。
大社長:
亜門からも「先方がどうしてもやりたいと言っている」と聞いて,それならいいけど……と。
ただ「これだと女装にしか見えないから,極端に萌えっぽくしたほうがいいんじゃないか?」という話をしたんですよ。
DD:
そうそう。確かにこれだと誰も嬉しくないんじゃないかって。
松田氏:
そのご意見をうかがって,こうなったんです。
大社長:
そうだそうだ。それで,コスチュームもホンモノっぽくしてほしいというオーダーをしたんですよ。マイケルの場合は,アルティメットベノムアームという技があるんで,それを入れてほしいと。
で,それが反映されたものを見て,やっぱりどうかしてるなって思って。
DD:
マイケル本人もやたら気に入ってるんですよ。Twitterのアイコンにまでして。
松田氏:
いろいろと打ち合わせをさせていただきながら,こうやってキャラクターのデザインを進めていって面白かったのは,美少女になってもどういうわけだか中澤さんっぽさが出ているところなんですよ。着衣のうちはインテリっぽさがあるんですけど,カードを強化して軽装になっていくにつれて,なんというかこう……。
DD:
残念な感じになるわよね。
松田氏:
いや,あの,はい。
これはリングの上の中澤さんを知らない人でも,ゲームを通じて同じ印象を抱くんじゃないかと思いました。
DD:
彼は特殊なレスラーだから。
松田氏:
で,第一弾は高木社長,中澤選手,アントーニオ本多選手でいこうとなったんですけど……。
アントンも雰囲気あるんだよな。
ただ最初,僕の美少女化キャラが,ちょっとこう華奢な感じだったんですよ。それでもうちょっと胸のあたりのボリュームを……というお願いをしたんです。僕はやっぱりDDTで一番の肉体派として売っているので。
DD:
なんで半笑いでしゃべってるのよ。
大社長:
まあ,肉感がほしかったんですよ。
DD:
要は,巨乳にしろってことよね。
大社長:
んー,巨乳っていうかこう……肉体派っぽくっていうか。
松田氏:
それで何度か直させていただいて,最終的にこうなりました。
そういえば,これを描いたデザイナーが,「きっと大社長はロリ巨乳が大好きなんですね」と言っていました。
DD:
これは恥ずかしいわね。
大社長:
う,うん。恥ずかしいね……。
いやあくまでね,自分のイメージなんでね。
DD:
美少女化にあたっても妥協を許さないぞ,と。
大社長:
そう!
DD:
ちなみにご家族はこれを見て?
大社長:
嫁さんからは「バカじゃないの?」って。俺様がやったことじゃないんだけどなぁ。
DD:
あなたが指示したことではあるじゃない(笑)。
大社長:
まあ,うん。ただ女房は「これはこれで違うファンがつくんじゃないの?」とも言ってくれて。
子供にも「これパパだよ」と見せたら,「え〜〜〜〜〜」って言われて,そのまま無言になりましたね。
DD:
心の傷になってないといいけど。
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