レビュー
G.E.A.R.ブランド初のゲームパッドはPS3やXbox 360でFPSをプレイする人の相棒たりえるか
G.E.A.R. FPS PAD STRIKE GEAR
(FPS PAD 3 STRIKE GEAR,FPS PAD EX STRIKE GEAR)
そんなSTRIKE GEARシリーズだが,製品を概観してみる前に2つ,押さえておきたいことがある。1つは本シリーズが,ゲームイベントや大会を開催/運営しているeスポーツ団体「e-sports SQUARE」の協力を得て製作されたものであること。そしてもう1つが,2012年11月に発売となったワイヤードゲームパッド「FPSアサルトパッド」シリーズ2製品,PS3用「FPSアサルトパッド 3」およびXbox 360用「FPSアサルトパッド EX」の後継的な位置づけになっていることだ。
当初の発売日を10月31日と「バトルフィールド 4」(PC / PS3 / Xbox 360,以下 BF4)に揃え,BF4の発売が11月7日に延期された時点でSTRIKE GEARの発売も延期してきたあたりからは,「FPS用」であることにこだわるHORIの本気度も感じられるわけだが,果たしてSTRIKE GEARはFPSで戦えるゲームパッドなのか。じっくり見ていきたい。
フォルム,レイアウトともXbox 360パッドに近い
“ハッタリ”のない,質実剛健な印象
その形状は,PS3の純正パッドたる「DUALSHOCK 3」よりも,Xbox 360の純正ゲームパッド「Xbox 360 Controller」(以下,Xbox 360パッド)のそれに近い。左アナログスティックとD-Pad(≒十字キー)の配置関係も,Xbox 360パ
ッドのそれを踏襲している。
振動機能も純正ゲームパッドと同じく搭載されているが,DUALSHOCK 3が搭載するモーションセンサー(6軸検出システム)だけは採用されていない。
なお,詳細は後述するが,これらはゲームパッド上で任意のボタンを割り当てられる追加ボタンである。この機能自体はFPSアサルトパッドにも用意されていたものだが,従来はゲームパッド正面から見たときの手前から順に[L1/R1][FL/FR][L2/R2]と,[FL/FR]ボタンが間に入る格好となっていたのに対し,STRIKE GEARでは[FL/FR][L1/R1][L2/R2]という並びになった。HORIによれば,[L1/R1]ボタンと[L2/R2]ボタンは隣に並んでいたほうが“誤爆”が少ないというフィードバックがあり,それを受けての変更とのことだった。
左右アナログスティックの感度を調整できるダイヤルや,押している間だけ,AIM用となる右アナログスティックの感度を大きく下げる[TARGET]ボタンを持つあたりも,FPSアサルトパッドから受け継いだ部分となる。
グリップにもXbox 360パッドとの違いがある。STRIKE GEARの“くびれ”がXbox 360パッドよりも大きく,握った感覚もややほっそりしたものになっているのだ。Xbox 360パッドが「持つ」という感覚なら,STRIKE GEARはより「握る」に近いものになっている,といったところか。
パッドを平らな場所へ置いたときに[L2/R2]ボタンが接地しないのは,耐久性や,誤爆の可能性的に,歓迎したいポイントといえよう。
気になる重量は,PS3モデルのFPS PAD 3 STRIKE GEARがケーブル込みで実測303g,Xbox 360モデルのFPS PAD EX STRIKE GEARが同356gで,ケーブルを脇によけた参考値では両モデル共に226gだった。
参考までに,バッテリー内蔵のDUALSHOCK 3は実測約174g。単三形乾電池2本を搭載したワイヤレス版Xbox 360パッドは同265g,ワイヤード版のXbox 360パッドはケーブルを脇によけた参考値で205g前後。膝や机などに手首を乗せて操作するタイプのプレイヤーならほとんど気にならない程度だと思うが,数値としてはやや重めといったところか。
肝心要のアナログスティックは
FPSアサルトパッドの抱える問題が解決
繰り返しになるが,FPSアサルトパッドは「スティック精度に問題がある」という,致命的な弱点を抱えていた。筆者もこれを繰り返し書いていると若干胸が痛むのだが,ここまで紹介してきた機能的にも,STRIKE GEARがFPSアサルトパッドの後継的な製品なのだから,これはやむを得まい。
STRIKE GEARで共通して採用されるアナログスティック |
FPSアサルトパッドではスティック部の高さを調整できるようになっていたが,STRIKE GEARでこの機能は廃された |
FPSアサルトパッドのレビュー記事より,最も長いアタッチメントを取り付けた状態を再掲。筆者は当時「笑えてくる長さ」と述べたが,今見てもおかしい |
FPSアサルトパッドの場合,スティック部は着脱可能で,付属のアタッチメントに交換することで,最大でその高さを30mmまで高くすることができるようになっていた。実際に変えてみたところ,「おお! ……お?」という不思議な気持ちになったのも記憶に新しいところである。
それに対してSTRIKE GEARでは,アナログスティックの高さが低いというのが逆にウリとなっている。具体的には,スティックを囲むパッド本体の“枠”から最も高い位置までで実測約9mm。これはDUALSHOCK 3の同11mmと,Xbox 360パッドの同7mmの,ちょうど中間に当たる長さである。
FPSアサルトパッドは,スティックを長くする(=指の移動量を多くする)ことで分解能を高めて精密な操作を可能にしようとする意図があったものと思われるが,STRIKE GEARでは指の移動量はDUALSHOCK 3やXbox 360に近い水準となった。ここぞという場合の精密な操作は,リニューアルされたスティックの機構そのものと,後述のターゲットボタンに任せようということなのだろう。ハードウェア的にDUALSHOCK 3やXbox 360パッドと近い仕様にして,乗り換えのハードルを下げるという意味でもメリットはあるはずだ。
そんなアナログスティックについて,HORIは「倒し込んだときの反発力が,倒し込んだ量によらずほぼ一定」であると謳い,これを「フラット荷重」と呼んでいる。
その実態を検証したいと思ったのだが,たとえば「角度を少しずつ変えてその荷重を測る」というのは,かなり難度が高い。そこで今回は参考までに,STRIKE GEARとDUALSHOCK 3,Xbox 360パッドの3製品で,右アナログスティックの入力が行われ始める(=スティックが傾き出す)ときの荷重と,最大入力がなされた(=スティックが倒れきった)ときの荷重を調べ,その差を比較してみることにした。
テストに用いたのはPCで,STRIKE GEARとXbox 360パッドは64bit版Windows 7のクラスドライバ,DUALSHOCK 3は有志が開発したツール「MotioninJoy」のドライバをそれぞれ用い,「ゲームコントローラの設定」ウインドウから,スティックの反応を確認することにした。
目視による計測のため,精度が高いとはいえないが,まあ参考にはなるだろうということで,結果をまとめたものが表である。
STRIKE GEAR | DUALSHOCK 3 | Xbox 360パッド | |
---|---|---|---|
スティックが倒れ始める荷重 | 62g | 51g | 77g |
スティックが倒れきる荷重 | 76g | 60g | 110g |
倒れ始め荷重と倒れきり荷重の差 | 14g | 9g | 32g |
各パッドのスコアを見てみると,DUALSHOCK 3の荷重が傾き始めと倒れきりの荷重差が最も小さく,次いでSTRIKE GEAR,Xbox 360パッドの順になっているのが分かる。
もちろん,この計測方法では,アナログスティックが倒れる角度ごとの荷重変化度合いは分からない。そこで今回は計測者としてその挙動を述べておきたいと思うが,DUALSHOCK 3は,錘を少しずつ増やしていくと,あるポイントを境にして一気にスティックが倒れる。Xbox 360パッドはその重さゆえか,倒れ方に滑らかさをやや欠く印象があった。それに対してSTRIKE GEARは,傾き始めから倒れきりまで段階的に倒れていく。確かに,アナログスティックの荷重はフラットか,それに近いものになっていると述べていいだろう。
さて,肝心要の「FPSアサルトパッドにあった不満」だが,STRIKE GEARで感じることは一切なかった。「アナログスティックの前後左右で“遊び”が異なる」などの違和感は皆無。DUALSHOCK 3やXbox 360パッドと交互に持ち替えてプレイしてみてもおかしな感じはないので,スティック操作部分に問題はないと述べていいだろう。
よくよく考えてみると,これは「普通に動いた」ことを特筆しているわけで,少し失礼な物言いかもしれない。しかし,FPSアサルトパッドの後継的な製品としては,この点は非常に重要なことなのだ。
STRIKE GEARはスティックのわずかな傾きでも検知されるようになっているため,ニュートラルな状態でも,ゲームソフトによっては「勝手に視点が動く」といった事態が生じる可能性もあるという。今回試した限り,そういった動きは見られなかったのだが,もしこの問題が生じたときには,センターマージンモードは有効とのことだ。
これは簡単にいうと,アナログスティックのニュートラル状態付近でマージン(≒“遊び”)を増やす機能である。レティクル(照準)がわずかに動く程度までスティックを倒して,その状態で有効化すると,レティクルの動きがぴたりと止まる。
ちなみに設定方法は以下のとおりである。
●センターマージンモードの設定方法
- [PROGRAM]ボタンを長押し
→[SELECT]ボタン下の緑色LEDが点灯する) - 緑色LEDの点灯中に[SELECT]ボタンを長押し
- 赤色LEDが常時点灯した状態になると設定完了
ショルダーボタンのカスタマイズ機能はやはり頼れる
〜スティック以外の部分をチェック
スティック以外の部分も,順にチェックしていこう。
■アナログスティック感度調整ダイヤル
感度は10段階で,「1」が最も鈍感,「10」が最も敏感。10にもなると,スティックを3分の1程度倒しただけで入力値は最大となるほどだ。この設定はSTRIKE GEAR側で保持されるため,ゲーム側のオプションにある感度設定とも併用できるので,極端なことをいえば,とことん鈍感/敏感なアナログスティック設定を行うことも可能だ。
ダイヤルには簡単にアクセスできるものの,ゲーム中のシチュエーションに合わせて感度を変化させるといった使い方は想定されていない。まずは中央値である「5」に設定のうえ,ゲーム側である程度感度調整を行って,そこから微調整用としてダイヤルを使うというのが,現実的な使い方になるだろう。オプション画面をいちいち開かなくてよくなるので,微調整はかなりラクである。
■[TARGET]ボタン
一時的に感度を下げられるので,距離のあるターゲットを狙うスナイピングなどのシチュエーションで威力を発揮する。標的付近まではある程度ダイナミックにレティクルを動かし,標的にレティクルが重なるか重ならないかといったタイミングで[TARGET]ボタンを押下する,といった使い方になるだろう。
ショルダー部分に置く指との兼ね合いもあるが,筆者は,左グリップのやや下部分をホールドして,ショルダー部分の3ボタン[FL][L1][L2]は人差し指に一任させつつ,[TARGET]ボタンを中指で操作するスタイルに落ち着いた。左グリップのやや下部分をホールドするのは,人差し指の可動範囲を広げつつ,その“腹”でショルダーボタンを押せるようにするためである。
その場合でも,[TARGET]ボタンを意識すると,どうしても慣れない手つきになる。[TARGET]ボタンを常に押せる状態にしつつ,ショルダーボタンへうまくアクセスできるようになるには,練習が必要だろう。
ちなみに[TARGET]ボタンを薬指でというのも考えたのだが,試してみるとホールド感が弱くなってしまうので,筆者的にはボツとしている。
[FL/FR]が追加されたショルダーボタン
パッド手前側の[FL/FR][L1/R1]は,DUALSHOCK 3で同じ位置にあたる[L1/R1]と比べるとボタンそのものが横方向に長く,それぞれパッド外側に“下がる”よう傾きをつけて配置されている。これにより,パッドを握るスタイルは,やや自由度が高まった印象だ。
そしてSTRIKE GEARでは,追加されている[FL/FR]ボタンだけでなく,[L1/R1][L2/R2]ボタンにも,下記のとおり,任意のボタンを割り当て可能となっている(※工場出荷状態だと,[FL]には[L1]が,[FR]には[R1]がそれぞれ割り当てられていた)。
●6個のショルダーボタンに割り当てられるボタン
- [△/○/×/□](※もしくは[A/B/X/Y])
- [L1/L2/L3](※[L3]は左アナログスティックボタン)
- [R1/R2/R3](※[R3]は右アナログスティックボタン)
カスタマイズ可能なボタンがショルダー部に集まっているのは,ここであれば,アナログスティック操作中の親指を離すことなく押せるからだ。ショルダー部のボタンには,[△/○/×/□]ボタンや[L3/R3]ボタンを積極的に割り当てることで,そのメリットを最大限に享受できるだろう。
設定方法は以下のとおりだ。結果として赤色LEDが常時点灯になるのはセンターマージンモード有効時と同じで,ここは少々分かりづらい。
●ボタンのカスタマイズ方法
- [PROGRAM]ボタンを長押し
→[SELECT]ボタン下の緑LEDが点灯 - 割り当てたいボタンを押下
→緑LEDが点滅 - 「2.で指定したボタンに割り当てたいボタン」を押下→左の赤LEDが点灯
- 赤色LEDが常時点灯した状態になると設定完了
余談気味に続けておくと,「バトルフィールド 3」(PC / PS3 / Xbox 360)のスポット操作(※敵兵士発見時にマーキングする操作)は,PS3だと[SELECT]ボタン,Xbox 360では[BACK]ボタンとなっているため,STRIKE GEARを使ってもショルダー部には割り当てられない。しかしシリーズ最新作である「バトルフィールド 4」だと,PS3なら[R2],Xbox 360なら[RB]でスポット操作が行えるよう変更になったので,この点はSTRIKE GEARにとっての追い風となりそうだ。
なお,DUALSHOCK 3やXbox 360パッド,そしてFPSアサルトパッドでトリガーとして実装されている[L2/R2]は,STRIKE GEARで「普通の」ボタンになった。軽い押し込みによって,デジタルにカチカチと押せるタイプだ。
FPSのプレイにあたって,ストロークの大きなトリガーボタンは必要ないという判断だろうが,筆者もそれには賛成だ。このあたりの割り切りは非常に清々しい。
■D-Pad
STRIKE GEARのD-Padは,FPSアサルトパッドと同様に,小ぶりなプラスチックの単一部品で構成された,十字型のパーツとなっている。実際のゲームプレイ中に誤操作が頻発したというわけではないので,この点は誤解してほしくないのだが,「FPS特化型ゲームパッド」なのだから,斜め入力を切り捨てたセパレートタイプのほうが,より押しやすかったように思う。
「きっとコストの問題で割り切られたんや!」と個人的には思っているのだが,実際のところはどうなのだろう。
■[△/○/×/□]/[A/B/X/Y]ボタン
かといって押下時の音がうるさいわけでもないので,メリハリのある好感触のボタンであるとまとめておきたい。
純正パッドからの乗り換え候補として
コストパフォーマンスはまずまず
FPS用ゲームパッドとしてのSTRIKE GEARは,DUALSHOCK 3やXbox 360パッドの基本機能を確保したうえで,追加機能分のプラスアルファを享受できる製品である。耐久性はなんともいえないが,実勢価格で4100〜5000円程度(※2013年11月11日現在)なので,純正ゲームパッドから乗り換えるにあたってのハードルは高くないと述べていいのではなかろうか。
多機能ゲームパッドの筆頭格としては「Razer Sabertooth Elite Gaming Controller for Xbox 360」が挙げられるが,実勢価格はSTRIKE GEARの2倍弱で,しかもPS3用は用意されていない。この年末にバトルフィールド 4や「コール オブ デューティ ゴースト」(PC / PS3 / Xbox 360 / Wii U)をゲーム機でプレイするというのであれば,STRIKE GEARには注目せざるを得ないだろう。
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