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[GDC 2015]必要なのは,広くて深い愛。「ダンガンロンパ」の小高和剛氏がキャララクター作りの秘訣を明かす
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印刷2015/03/06 19:36

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[GDC 2015]必要なのは,広くて深い愛。「ダンガンロンパ」の小高和剛氏がキャララクター作りの秘訣を明かす

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 ダンガンロンパシリーズを手がけるスパイク・チュンソフトの小高和剛氏が,北米時間の2015年3月5日,Game Developers Conference 2015で「My Ordinary Process for Crafting Extra-Ordinary Stories」(日本のサブカルチャーでうけるキャラクターとシナリオの作り方)と題するセッションを行った。
 そこではダンガンロンパに登場する,強烈な個性を持ったキャラクター達がどのように作られるのかが語られたので,今回はその内容をお届けしよう。若干のネタバレを含むので,未プレイの方はご注意を。

小高和剛氏
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[GDC 2015]ゲーム作りは自分を信じて楽しむもの――「ダンガンロンパ」シリーズを手がけた小高和剛氏の講演直前インタビューを掲載



大事なのは自分の好きなキャラクターを生み出すこと


 冒頭で小高氏は,「みなさんに言いたい大事なことがあります」と会場に呼びかけ,「Why won't people buy a VITA」(なぜみんなPS Vitaを買わないの?)というスライドを映した。
 これは北米でPS Vitaの販売が振るわない状況を受けてのものだが,小高氏はPS Vitaを「少ない予算,少人数,1アイデアで作りきれる,クリエイターの個性を生かせるいいハード」と評価。「みなさんがVita向けにゲームを作って盛り上げてくれれば,ダンガンロンパももっと売れるんじゃないか」と来場者を笑わせてセッションを始めた。

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 「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」「スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園」「絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode」などのシリーズ作品に加え,テレビアニメやキャラクターグッズなど,さまざまな形で展開されているダンガンロンパシリーズ。ファンへ行ったアンケートの結果では,主に「魅力的なキャラクター」「予想できないストーリー」「独自のゲームシステム」などが評価されているようだが,この中で小高氏がゲーム作りの中心に据えているのがキャラクターなのだという。
 小高氏はその理由を「キャラクター同士の会話がストーリーになり,プレイヤーキャラクターの行動がゲームシステムと呼ばれる」と述べ,ゲームの重要な要素がキャラクターを通してプレイヤーに伝えられるからだと話す。

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 では魅力的なキャラクターを作るにはどうすればいいのか。ここからがセッションのメインとなるわけだが,小高氏はまず「Subjective Love」(個人的な愛/主観的な愛)というキーワードを掲げた。キャラクター作りに正解というものはなく,好きかどうかで決めるしかないというわけだ。実際,小高氏は「こんなキャラが男子高校生に受けそう」といったような分析などはほとんど気にしないそうで,「自分の好きなキャラクターを生み出すことが大事」と語った。

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 続いては具体的な手法だが,小高氏はまずキャラクターのキーワードを集めることから始めるのだという。キーワードといってもさまざまなので,氏の場合は「バックボーン」「外見」「性格」の3項目に分けているそうだ。

思いつくままにキーワードを列挙したところ。バックボーンには「格闘家」「ヤクザ」「アイドル」,外見には「ゴスロリ」「筋骨隆々」「童顔」,性格には「優しい」「陰気」「家庭的」といったものが並んでいる
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 こうして集まったキーワードを組み合わせてキャラクターを作っていくのだが,前述したように,正解はない。ピンとこなければ組み直したり,さらにキーワードを足してみたりして,試行錯誤する。今回のセッションでは,小高氏が実際にキーワードを組み合わせて,ダンガンロンパのキャラクターを作ってみせた。

最初に「格闘家」「筋骨隆々」「ストイック」を組み合わせたが,ちょっと意外性がないので,「セーラー服」「女の子女の子した性格」を付け足して生まれたのが「大神さくら」だという
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攻撃的なヤクザなのに可愛い顔,という組み合わせが一発ではまった「九頭龍冬彦」
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アイドルなのに着飾っていなくて,優しくて家庭的,という理想の女性を絵に描いたような「舞園さやか」。上の2人と比べると,あまり意外性が無いような気もするが,小高氏は「アクが強いキャラクターの中で癒やしになる」と説明
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 続いてはそのキャラクターの「役割」を設定する。これは言い換えれば主人公との関係や,立ち位置といったものだ。ここからは舞園さやかを使ってその手順が紹介されることになった。

 可愛くて性格もよし,癒やし的な存在ときたら,やはり「ヒロイン」。そうなると主人公と一緒に事件の謎に挑んでほしいので「探偵の助手」,一緒にいるなら「主人公と幼なじみ」にしよう,ということで,役割が決まった。ただし,これはあくまで序盤の役割であり,小高氏によると「発売前のキャラクター紹介(として公開されるの)はこのあたりまで」とのことだ。

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 そしてキャラ作りの最後は「できごと」の設定である。ここでキャラクターに物語展開の要素を足すことになる。ここでは個人の好みに加えて,作品の雰囲気も影響してくるという。

 ダンガンロンパは,学園内に閉じ込められた生徒達に「誰かを殺したうえで,自分が犯人であることを隠し通せれば外へ出られる」という条件が与えられた,極限状態を描く作品だ。そんな極限状態の中で,主人公と幼なじみのヒロインにどんなできごとを設定するか。
 小高氏は,「主人公と強く結ばれてもいいが,ここまでプラスを足してきたからこそ,マイナスを」と語り,「最初の被害者になる」「それは誰かを殺そうとして返り討ちに遭った結果」「しかもその殺人を主人公がやったように偽装しようとしていた」というできごとを設定。「最悪のヒロインになった」。「でも,興味が湧いてきたと思います」と来場者に語りかけた。

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 天使のような女の子が殺人を犯そうとするという,あまりにギャップのある設定だが,小高氏によれば,このギャップは大きければ大きいほどいいのだという。なぜなら,そのギャップを説明するために,エピソードが生まれるからだ。
 舞園さやかの場合は,「幼い頃から夢見てきたアイドルになるため,何でもやってきた。その夢がかなったのに,このまま学園に閉じ込められるわけにはいかない。ここから出るためには殺人でも何でもする」という悲壮な覚悟を持っていた,という設定ができあがった。

 そして,ここで必要なのが「愛」だ。舞園さやかのギャップを「悪女だから」など,取って付けたようなもので済ませてしまったら意味が無い。そのキャラクターを愛しているからこそ,いいエピソードが生まれるというわけだ。

 小高氏は「まず予想外のできごとでプレイヤーを驚かせ,ギャップを埋めるためのエピソードでキャラクターに深みを持たせる」ことが,物語とキャラクター作りの双方でメリットがある方法だと述べている。

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 さて,ここまではキャラクターに命を吹き込むキャラクター作りの手法が紹介されたが,ダンガンロンパでは「キャラクターの死」というものも重要な意味を持っている。特徴的なのが「好感度イベント」だ。これは任意のキャラクターと一緒の時間を過ごすことで好感度が上がり,さまざまなエピソードが聞けるようになるほか,好感度を最大にするとゲームを有利に進められる特殊スキルが手に入るというものだ。

 ただし,ダンガンロンパのストーリーでは,キャラクターが次々に死んでいく。次に誰が死ぬかは分からないので,好感度を上げていたキャラクターがいなくなったときには,プレイヤーにかなりの喪失感が生まれる。
 もちろん,小高氏はこの喪失感を狙って好感度イベントをゲームに採用した。氏は「キャラクターを中心に考えていたからこそ生まれたシステム」と解説している。

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犯人であることがバレたキャラクターの「おしおきムービー」。それぞれの設定に合わせたおしおきが展開される。小高氏は「最後の見せ場」と表現したが,これから消えるキャラクターに見せ場を与えるのも,やはり愛があるからだろうか
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 セッションの最後で小高氏は,「いろいろな要素をキャラクターと結びつけていくのが僕のやり方」と語り,アクションゲームの開発で,モーションをつけるときにも「そのキャラクターに魅力が生まれるか」を第一に考えていると明かした。
 ここで氏は,「魅力的なキャラクターを作るのに必要なのは愛」とあらためて強調している。「キャラクターが偏らないように,深いだけでなく,広い愛が必要。さまざまなジャンルの映画や漫画,ゲームを楽しんでほしい」と呼びかけ,最後に「なので,今からでも遅くはありません。PS Vitaを買いましょう」とオチをつけてセッションを終えた。

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