レビュー
AMD「2013年秋のリネーム祭り」は侮れない
Radeon R9 280X
(ASUS R9280X-DC2T-3GD5)
Radeon R9 270X
(Radeon R9 270Xリファレンスカード)
Radeon R7 260X
(Radeon R7 260Xリファレンスカード)
米国ハワイまで行って話を聞いてきた西川善司氏は,これらすべてがRadeon HD 7000シリーズのリフレッシュモデル,つまりはリネーム品(もしくはリブランド品)だと言い切ってしまっているわけだが(関連記事),名前の変わったRadeon HD 7000シリーズは,年末商戦に向け,価格対性能比で光るところを見せられるだろうか。
AMD,R9 290シリーズを除くRadeon R9&R7シリーズのスペックを公開。R9 280X以下は基本的にHD 7000系のリフレッシュ
R9 280X搭載カードはASUS製のOCモデルで
R9 270XとR7 260XはAMDのリファレンスモデル
のっけから恐縮だが,今回は時間の都合もあり,「R9 280XとR9 270X,R7 260XがそれぞれどんなGPUなのか」は割愛し,表1にスペックをまとめるに留める。西川善司氏によるラインナップ解説記事を未読という人は,まず,そちらをチェックしてから本稿に戻ってきてもらえれば幸いだ。
R9 270Xリファレンスカード |
R7 260Xリファレンスカード |
まずは3枚の外観を順に見ていこう。
■R9280X-DC2T-3GD5
ASUSのR9280X-DC2T-3GD5は,同社自慢の「DirectCU II」クーラーが取り付けられた,独自設計採用モデルとなっている。動作クロックはGPUコアが最大1070MHz,メモリが6400MHz相当(実クロック1600MHz)だ。
ただし,異なっているのはカードの幅で,一般的な横幅を採用しているHD 7970 GEだと(PCI Express x16端子込みで)実測約111mmなのに対し,R9280X-DC2T-3GD5は基板レベルでそこから同13mm,クーラーも入れると同33mm長くなっている。その分PCケースを選ぶわけで,この点は気を付けておきたい。
写真をまじまじと見た人だと,2基あるファンの形状が異なるのに気づいたかもしれないが,グラフィックス出力インタフェース寄りの片方は,外周部が一般的な吹きつけ型ファン,内周部が横方向へのエアフローを生むブロワーファンとしてそれぞれ機能する「CoolTech Fan」になっており,これがより効率のよいエアフローを生んでいるという。
■R9 270Xリファレンスカード
2スロット仕様のGPUクーラーは,カード全体を覆う箱のようなデザインを採用し,80mm角相当のブロワーファンを組み合わせるという,ミドル〜ハイクラスのリファレンスカードでお馴染みのものとなっている。隙間から覗き込んだ限り,内部のヒートシンク部には,3本かそれ以上のヒートパイプが採用されているようだ。
CrossFire用のブリッジコネクタ近くにあるスリットから,クーラー内にヒートパイプが用意されていることが覗ける |
渦のようなデザインが採用されたGPUクーラーには,カード後方側で小さな穴が用意されているのだが,その用途は不明 |
なお,グラフィックスメモリチップはGPUを囲むように8枚搭載されているようだが,残念ながらチップの型番などは分からなかった。
■R7 260Xリファレンスカード
ちなみにGPUクーラーは2スロット仕様で,GPUに取り付けられたヒートシンクを,80mm角相当のファンで冷却するという,いたってシンプルなものになっていた。
カード背面を見ると,電源回路は4+1フェーズ構成に見える |
外部出力インタフェースの並びは上位モデルと同じ |
従来製品や競合製品と比較し,立ち位置を探る
スペックを考慮し,R9 280Xだけ別テストに
テスト環境のセットアップに入っていきたい。
今回は,主役となるR9 280XとR9 270X,そしてR7 260Xの評価を行うわけだが,ここで注意したいのは,AMDがR9 280Xを「2560×1440ドットあるいは2560×1600ドットで高いグラフィックス設定を行ってもゲームをプレイできるGPU」と位置づける一方,R9 270Xは1920×1080ドットがターゲットになるとしていることだ。R7 260Xのターゲットとされる解像度は明らかになっていないが,R9 270X以上の解像度がターゲットになっていることだけは絶対にあり得ない。
そのため今回は,R9 280Xと,R9 270X&R7 260Xで,テスト対象の解像度を分けることにした。R9 280Xのテストにあたっては1920×1080ドットと2560×1600ドット,残る2製品のテストでは1600×900ドットと1920×1080ドットを用いる。
MAXIMUS VI FORMULA ゲーマー向けのハイエンドZ87ボード。基板全体を覆う「ROG Armor」の採用が特徴的 メーカー:ASUSTeK Computer 問い合わせ先:テックウインド 実勢価格:4万3000〜4万4000円程度(※2013年10月8日現在) |
SMD-32G28CP-18ML-Q PC3L-14900仕様のDDR3Lモジュール,8GB×4枚セット メーカー:サンマックス・テクノロジーズ 問い合わせ先:パソコンショップ アーク パソコンショップ アーク販売価格:3万5980円(税込,※2013年10月8日現在) |
対するR9 270X&R7 260Xのテストでは,置き換え対象となるHD 7870 GE&HD 7790に加え,上位モデル代表としてのR9 280X,そしてR9 270Xの競合製品となる「GeForce GTX 660」(以下,GTX 660)とその上位モデル「GeForce GTX 660 Ti」(以下,GTX 660 Ti),R7 260Xの競合製品となる「GeForce GTX 650 Ti」(以下,GTX 650 Ti)およびその上位モデル「GeForce GTX 650 Ti BOOST」(以下,GTX 650 TiB)を用意している。
なお,R9 280X搭載カードであるR9280X-DC2T-3GD5や,Sapphire Technology製「VAPOR-X HD7970 GHZ EDITION 3G GDDR5 PCI-E」など,一部はメーカーレベルで動作クロックが引き上げられているため,それらはテストにあたってすべて,MSI製のオーバークロックツールである「Afterburner」(Version 2.3.1)から,動作クロックをリファレンスレベルにまで下げて利用している。R9280X-DC2T-3GD5が持つ「カードとしての性能」は,後日お伝えする予定だ。
テスト方法は基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション14.0準拠。ただし,いま注目されているタイトルかどうかという観点から今回は「SimCity」を外し,「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」(以下,新生FFXIVベンチ キャラ編)のテストを追加した。また,時間的都合から,「F1 2012」は省略している。
なお,新生FFXIVベンチ キャラ編では,標準で用意されている「グラフィック設定プリセット」から,「標準品質(デスクトップPC)」と「最高品質」の両プリセットをチョイス。解像度ごとに2回ずつ実行し,平均値をスコアとして採用する。
R9 280XのスコアはHD 7970 GEと同程度ながら
高いメモリバス幅が“効く”場面も
いずれのグラフも,クリックすると「より負荷の高いテスト条件」におけるスコア順で並び変えたグラフを示すようにしてあると断りつつ,まずはR9 280Xから見ていこう。
グラフ1は「3DMark」(Version 1.1.0)の結果になるが,R2 280XのスコアはHD 7970 GEとほとんど変わらない。R9 280XとHD 7790 GEを比べた場合,R9 280XはGPUの最大クロックが50MHz低いというハンデを抱えているわけだが,3DMarkにおいて,その影響はあってもごくわずかと述べてよさそうだ。
3DMarkはRadeonが高いスコアを出しやすいので,その点は割り引いて考える必要があるものの,AMDが仮想敵とするGTX 760はおろか,GTX 770すら上回る結果というのは,なかなかインパクトがある。
では,実際のゲームタイトルを用いたベンチマークではどうか。グラフ2,3は「Far Cry 3」の結果で,ここでは3DMarkと異なり,R9 280XのスコアはHD 7970 GEの96〜97%程度という形で,最大クロックの違いが出ている。もっとも,実フレームレートでは最大でも2.2fps差であり,基本的には大差ないという理解でいいだろう。
対GTX 770では「高負荷設定」で離されてしまっているものの,GTX 760に対しては,ここでも3〜24%程度高いスコアを示した。「GTX 760キラー」としての面目躍如といったところか。
続いて「Crysis 3」の結果となるのがグラフ4,5である。3DMarkと同様,R9 280XとHD 7970 GEのスコア差はほとんどないと述べていいだろう。GTX 770に対して89〜95%程度,GTX 760に対して106〜115%程度というスコアなので,競合のGPUとの比較では,ほぼ中間の位置に収まっているともいえる。
Crysis 3とよく似た結果になったのが,グラフ6,7で示した「BioShock Infinite」だ。実フレームレートこそ,R9 280XはHD 7970 GE比で最大約3fpsの差がついているが,これはスコアがCrysis 3よりも高いからで,パーセンテージでいえばR9 280Xは,対HD 7970 GEで98〜99%程度である。
GTX 770に対しては92〜93%程度,GTX 760に対しては111〜113%程度なので,やはり中間といった案配だ。
一方,グラフ8,9にスコアをまとめた「The Elder Scrolls V: Skyrim」(以下,SKyrim)では,若干様相が異なる。「標準設定」でこそ,ここまでを踏襲するスコア傾向になっているのだが,8xアンチエイリアシングと16x異方性フィルタリングを適用する「Ultra設定」では,R9 280XがGTX 770を逆転しているのである。
なぜこういう状況になっているのかだが,その理由はおそらく,R9 280Xが384bitのメモリインタフェースを持ち,288GB/sものメモリバス帯域幅を持つ点にある。256bitインタフェースのGTX 770だと,帯域幅は224.3GB/sであり,R9 280Xが約28%も上回るからだ。
ベンチマークレギュレーション14.0で採用するSkyrimは,公式の高解像度テクスチャパックを導入することで,とくに“メモリヘビー”なテストになっている。そこに8xアンチエイリアシングを適用したことが,こういう結果を生んだという理解でまず間違いない。
新生FFXIV キャラ編のスコアをまとめたグラフ10,11でも,最高設定ではR9 280XがGTX 770に迫っている。ここでも,想定売価299ドルのGPUとしては非常に広いグラフィックスメモリバス帯域幅が奏功したと見ていいだろう。
ちなみに対GTX 760では,4〜21%のスコア差をつけている。
スコアだけ見せられてもピンとこないという人はいると思うので,平均フレームレートベースのスコアもグラフ10’,11’として用意してみた。こちらも合わせてチェックしてもらえれば幸いだ。
R9 270XとR7 260Xは
置き換え対象比でスコアが向上
続いてはR9 270XとR7 260Xを主役としたテストである。なお,本来であれば主役の2製品をグラフの1番上で2つ並べるべきなのだが,今回はグラフの見やすさを重視し,Radeonはスペック順で並べているので,この点はあらかじめお断りしておきたい。グラフ画像をクリックすると,より負荷の高いテスト条件のスコア順で並び変えたグラフを表示するようになっているのは,前段と変わらずだ。
さて,グラフ12は3DMarkの結果だが,R9 270XはHD 7870 GEに対して9〜
R9 270Xが仮想敵であるGTX 660どころか,GTX 660 Tiすら上回るスコアを発揮しているのは,R9 280Xと同じ理由によるものだ。R7 260Xも,GTX 650 TiBの94〜96%にまで迫っている。
Far Cry 3のスコアをまとめたグラフ13,14でも,R9 270XはHD 7870 GEよりも5〜8%程度高いスコアを示している。スペックどおりの性能向上が得られている印象だ。
競合製品との比較だと,GTX 660 Tiの81〜95%程度,GTX 660の98〜120%程度で,とくに高解像度でスコアを離されたり,逆転を許したりしてるのが気にかかる。メモリ周りのスペック単純比較ならR9 270Xが勝っているので,ここは最適化の違いが出たということだろうか。
一方のR7 260Xは,HD 7790から6〜7%高いスコアを示し,標準設定ではGTX 650 TiBとGTX 650 Tiのほぼ中間の位置に収まった。ただ,高負荷設定のスコアはGTX 650 Tiとほぼ同じだ。
グラフ15,16はCrysis 3のテスト結果である。R9 270Xのスコアは対HD 7870 GEで111〜112%と,Far Cry 3のときよりも高いが,高負荷設定でGTX 660にキャッチアップされるのは変わらずだ。逆転まではされていないが。
R7 260XはHD 7790よりも4〜6%高いスコアを示す一方,GTX 650 TiBには大きく離された。GTX 650 Ti比で100〜107%程度というところに留まっている。
BioShock Infiniteのスコアをまとめたのがグラフ17,18で,R9 280Xがそうだったように,R9 270XとR7 260Xのスコア傾向も,Crysis 3とそう変わっていない。
R9 270XはHD 7870 GEよりも9〜10%程度高い平均フレームレートを示し,GTX 660 Tiの87〜91%程度,GTX 660の103〜107%程度というところに収まった。R7 260Xは,GTX 650 Tiより1〜5%程度高いスコアを示す一方,GTX 650 TiBには歯が立たない,といった具合である。
前段で述べたようにメモリ周りの性能がスコアを左右しやすいSkyrim。その結果をまとめたグラフ19,20では,Far Cry 3のような「スペックが高いのにスコアは低い」といったことは起こらず,競合製品に対してグラフィックスメモリバス帯域幅の高いR9 270XとR7 260Xが,順当に競合とのスコア差を広げている。
実スコアでいうと,R9 270XはHD 7870 GEの102〜107%程度,GTX 660の108〜113%程度となり,R7 260XはHD 7790の105〜106%程度,GTX 650 Tiの111〜114%程度。R9 270Xが対GTX 660 Tiでかなりいい勝負に持ち込んでいる点も注目しておきたい。
新生FFXIVベンチ キャラ編のスコアがグラフ21,22だ。R9 270Xは,メモリ負荷の低い標準品質(デスクトップPC)でこそGTX 660にほとんど並ばれているが,このクラスのGPUにとってより重要な最高品質では,平均60fpsのラインとなるスコア7000をやすやすと超えつつ,GTX 660のスコアを5〜7%程度上回ってきた。
R7 260Xの場合,スコア7000を超えてくるのは最高品質の1600×900ドットまでだが,その最高品質でGTX 650 Tiに対して3〜5%程度高いスコアを示せてはいる。
R9 280Xのときと同じく,フレームレートで確認したいという人のため,グラフ21’,グラフ22’を用意したので,こちらも参考にしてほしい。
R9 280Xの消費電力はHD 7970 GEより低下か
一方,R9 270XとR7 260Xは置き換え対象より高くなる
3製品の消費電力もチェックしておこう。それぞれ,
- R9 280X:公称典型消費電力は250Wと据え置きだが,最大GPUクロックはHD 7970 GEより50MHz低い
- R9 270X:公称典型消費電力はHD 7870 GEより5W高い180Wで,GPUの最大クロック,メモリクロックも高い
- R7 260X:GPU最大クロック,メモリクロックが高いだけでなく,公称典型消費電力はHD 7790比で30Wも高い115Wに設定された
という「見どころ」があるからだ。
テストには,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用意し,システム全体の消費電力比較を行うことにした。テストにあたってはゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。
その結果がグラフ23だ。まずアイドル時だが,R9 280XはHD 7970 GEと,R9 270XはHD 7870 GEと,R7 260XはHD 7790と,いずれも大して変わらない素顔になった。
もちろん,Radeon R9&R7シリーズでも,ディスプレイ出力がオフになった「ロングアイドルモード」に待機電力を大きく引き下げる「AMD ZeroCore Power Technology」(以下,ZeroCore)は有効になっており,R9 270Xは67Wまで,R7 260Xは69Wまでそれぞれ低下することも確認できている。同条件でHD 7870 GEは67W,HD 7790は69Wまで下がっていたので,ZeroCoreの実装にも大きな違いはないと述べていいのではなかろうか。
ちなみに,R9 280XのZeroCoreスコアを記載していないのは,同GPUでZeroCoreが機能すると,ファンの回転はいったん止まるのだが,2〜3分経つと再びファンが周り,また少しすると止まる……といった不具合が生じ,スコアを取得できなかったためだ。ASUS製カードのファームウェアに問題があるのか,ドライバ側の問題なのかは分からないが,いずれにせよ,早急な対処が望まれるところである。
一方の各アプリケーション実行時では,R9 280XがHD 7970 GEと比べて21〜32Wも低いスコアになった。今回用意した両GPU搭載カードはいずれもオリジナル設計を採用した製品なので,厳密な比較にはなっていないものの,それでもこれだけの違いがあれば,R9 280Xで多少なりとも消費電力が下がっていることは期待していいのではないかと思う。製造開始から時間が経ち,R9 290X(やHD 7970 GE)クラスのスペックを満たせるダイの歩留まりが上がってきた効果ではなかろうか。
リファレンスカード同士の比較となるR9 270XとHD 7870 GEでは,R9 270Xで,公称典型消費電力値以上となる7〜19Wの消費電力増大を確認できた。また,リファレンスカード対カードメーカー製品の比較なので参考値となるものの,R6 270XがHD 7790比で31〜40Wも高い点は見逃せない。R7 260XでHD 7790より数パーセント高い性能を実現するのに支払われた対価はかなり大きいようだ。
最後に,アイドル時に加えて,3DMarkの30分間連続実行時を「3DMark時」とし,TechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.7.3)から各GPUの温度を追った結果もグラフ24示しておこう。
テスト時の室温は24℃。テストシステムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラック状態に置いてテストを行っている。
言うまでもなく,GPUクーラーもファン回転数の制御方法もてんでバラバラなので,厳密な横並び比較にはまったく使えない。その点は注意してほしいが,アイドル時にはどのGPUも30〜35℃程度にまとまっているのは分かる。また,カードメーカー独自の大型クーラーを搭載する製品は高負荷時のGPU温度が低くなる傾向にあるなか,R9 270XとR7 260XのGPU温度が70℃台前半と,まずまずのところに収まっている点は押さえておきたい。
なお,R9280X-DC2T-3GD5に搭載されたDirectCU IIはかなり優秀な可能性を感じさせるが,最終的な結論を下すのは,GPUクロックをカードの定格に設定してからになる。
ちなみに,主役3製品のGPUクーラー動作音だが,筆者の主観であることを断った上で述べると,R9280X-DC2T-3GD5はかなり静かだ。R9 270Xのリファレンスクーラーは,それほどうるさいというわけではないものの,HD 7870 GEリファレンスカードに搭載されたクーラーと比べると,音が大きい印象を受けた。
そして,R7 270Xのクーラーは,そんなR9 270Xのクーラーよりもさらに動作音が大きい。こちらも「うるさい」とまでは言えないのだが,製品の立ち位置からして静音性の高さを求める人はいるはずで,そういう人がリファレンス仕様のR7 260Xカードを購入すると,不満を覚えるかもしれない。
気持ちいいほどのリネーム品だが
とくに上位2モデルの価格対性能比は上々
3種の新製品を一気にテストしたので,けっこうなボリュームになってしまったが,まとめよう。以下,日本円の価格は2013年10月8日現在のものとなる。
まずR9 280Xだが,これはなんといっても299ドルという想定売価に最大のインパクトがある。置き換え対象となるHD 7970 GEは,一部のメーカーからしか登場せず,実勢価格も5万円以上と高止まりしていたのが,50MHzクロックダウンしただけで,Radeon HD 7000シリーズの最上位モデルの値段が一気に下がってくるわけだ。
GTX 760搭載カードの実勢価格は,一部の高付加価値モデルを除くと2万5000〜3万1000円程度。グラフィックスカードはどうしても,日本だと北米市場の想定売価を上回る価格で出てくるのだが,それでも,日本円でGTX 760を少し上回る程度の価格で済むなら,十分勝負になるだろう。
次に,北米市場における想定売価が199ドルとされるR9 270Xは,すでに市場から消えつつあるHD 7870 GEカードの実勢価格が2万2000〜2万6000円程度ということを考えると,「HD 7870 GEからちょっと性能が上がってお値段そのまま」ということになる可能性が高そうだ。GTX 660搭載カードの実勢価格もほぼ同じところにあるので,こちらも,日本円の“初値”が突拍子もないことにならない限り,面白い存在になると思われる。
一方,R7 260Xは,TrueAudio対応という新要素はあるにせよ,HD 7790比での性能向上がそう大きくない割に,消費電力が大きく跳ね上がってしまう点はマイナス要素と言わざるを得ない。もっとも,北米市場における想定売価は139ドルなので,実勢価格が1万3000〜1万8000円程度となるGTX 650 Tiと同じレベルの価格帯で市場に出てくるなら,価格対性能比的にはまずまずということになるはずである。
GPU技術的にはRadeon R9 290シリーズこそが本命であり,今回の新製品に見るべきものはないのだが,実際にGPUを使うゲーマーからすれば悪くない選択肢に仕上がっていると述べていいように思う。
AMD,R9 290シリーズを除くRadeon R9&R7シリーズのスペックを公開。R9 280X以下は基本的にHD 7000系のリフレッシュ
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