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[CES 2014]これからのデスクトップPCは「テレビの上に置く」のがトレンド? AMD,大型スマホサイズの超小型デスクトップPCを披露
答えは,AMDが開発中の次世代APU「Mullins」(ムリン,開発コードネーム)が搭載された“デスクトップPC”だ。
AMDが「Nano PC」という開発コードネームで呼ぶこのPCは,ファブレットより少し縦に長い程度の筐体に,Mullins SoC(System-on-a-Chip)と容量2GBのメインメモリ,容量256GBのSSDに無線LAN機能といった,必要なデバイスが内蔵されている。
消費電力2W以下のMullinsが,ゲームPCの形状に革命をもたらす?
AMDはまもなく,デスクトップ向けAPU「Kaveri」を発表する予定だ(関連記事)。その登場を心待ちにしている読者も少なくないと思うが,AMDは同時に,超薄型ノートPCをターゲットにした「Beema」(ビーマ,開発コードネーム),そして2-in-1デバイスやタブレットPCをターゲットにしたMullinsという,2種類のAPU SoCも,2014年前半の市場投入に向けて開発している。
AMD,2-in-1&タブレット向け次世代APU「Beema」「Mullins」を2014年前半に市場投入
BeemaとMullinsはどちらも,モバイル向けのCPUコア「Puma」(プーマ,開発コードネーム)を2〜4基と,「Graphics Core Next」(以下,GCN)世代のGPUコア(※シェーダプロセッサ数未公表),「Cortex-A5」ベースのセキュリティプロセッサ「Platform security processor」や,I/O周りを集積したチップだ。
Beemaにおける消費電力の目標値はTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)にして10〜25Wだが,Mullinsの場合は,2-in-1デバイスやタブレットPCの標準的な用途における消費電力を想定したSDP(Scenario Design Power)で2W以下という,非常に低い電力で動作することが目標となっている。
そのBeemaやMullinsを使ったPCのプロトタイプとして開発されているのが,「Project Discovery」と呼ばれるPC群で,Nano PCもその一例だ。Nano PCは大型テレビや液晶ディスプレイの上に乗せやすい形状となっており,置き場所に困ったり見た目を損なったりしにくい。ワイヤレスキーボードやワイヤレスマウスと組み合わせれば,ケーブルがのたくることもなく,リビングの大画面テレビをPCのディスプレイとして使えるわけだ。
「本体にMini DisplayPortしかないのに,どうやって電源を取ってるの?」と思った読者は鋭いが,実のところNano PCのMini DisplayPort端子は,「DockPort Extension」(以下,DockPort)に対応しており,この端子の先に接続されるオプションデバイス「DockPort adapter」側で,AC電源入力とHDMI出力,USBポートを1基ずつ用意することで,電源やビデオ出力,USBによる拡張をサポートしている。
DockPortは,AMDやTexas Instrumentsなどが開発し,現在はビデオ関連の標準化を行う業界団体であるVESAが,2014年第2四半期の仕様策定を目指している,DisplayPortの拡張規格。DisplayPortケーブルで,映像信号だけでなくUSB 3.0ベースのデータ伝送も行えるようにしたものだ。イメージとしてはIntelの「Thunderbolt」に近いが,ロイヤリティフリーなのが大きな特徴だ。DockPortの旗振り役となるAMDとしては,Nano PCで,DockPortの有用性もアピールしたいということなのだろう。
いずれにせよNano PCの利用イメージとしては,ビデオチャット用のWebカメラをユーザーに向けるような形でディスプレイデバイスの上に載せ,別途DockPort adapterをテレビ台などの上に置いて使う感じになる。
先ほど示した写真では,PC版の「FIFA 14」が写っているが,ファブレットより少し長い程度のデスクトップPCで,DirectX 11世代のゲームが軽快に動作するというのは大したものだ。設置場所に困ることはまずないので,これなら自宅のテレビにつなげてみたいと思う人もいるのではなかろうか。
アナログスティック付きケースと合体する
ゲーマー向けMullins搭載タブレットも
Game cradleを付けた状態ではかなりの重量があるので,「これで長時間ゲームをするのは,あまり現実的ではないな」というのが正直な感想だ。とはいえ,タブレット端末でリッチなグラフィックスのゲームをプレイする習慣が広がっているという北米なら,こうしたオプションもありなのかもしれない。
Nano PCの小ささと,サイズに見合わぬ性能の高さは,超小型PCが好まれる日本ではとくに人気を呼びそうに思える。ただし,Project Discoveryとして紹介されたPCはいずれも「こういうPCが作れますよ」という提案に過ぎない。実際,「仮にNano PCと同様の製品が登場した場合に,価格はどれくらいになる見込みなのか」と聞いてみたものの,「それはPCメーカー次第」(AMDのブース担当者)ということで,回答は得られなかった。
個人的には,DockPortをうまく使えば,従来にはなかったような姿形のPCを実現できそうな気はする。USB 3.0接続となると,ハイエンドのグラフィックスカードを外付けボックスで接続して……というのは荷が重いものの,Nano PCのようなアイデアが続々と出てくれば面白い。Mullins&Beema世代のAMDに期待したいところだ。
AMDのCES 2014ページ(英語)
VESAによるDockPort Extensionのニュースリリース(英語)
- 関連タイトル:
Beema,Mullins(開発コードネーム)
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