あの怪作が帰ってきた。女性向け恋愛ゲーム「学園ハンサム for スマートフォン」を紹介する「（ほぼ）日刊スマホゲーム通信」第434回

2013/12/24 10:00

スマートフォンには相当な数のゲームが存在しているが，「じゃあ，どれが面白いの？」「そもそも，数が多すぎて好みのタイトルが探せない！」と思っている人も少なくないはず。　そんな問題を解決すべく，スタートした連載が「（ほぼ）日刊スマホゲーム通信」だ。話題の新作タイトルからネタ要素多めのオモシロ系まで，スマートフォンのゲームを片っ端からプレイして（ほぼ）毎日お届けする。

　女性向け恋愛アドベンチャーゲームの中でも，男性同士の恋愛という禁断の領域を描くBLというジャンルは，一種独特な存在感を放っている。しかし，そんなBLゲームの中でさらに異質と評される「学園ハンサム」という作品をご存知だろうか。

　学園ハンサムは，2010年にチーム欲求腐満から発売されたが，そのあんまりな内容が，口コミで（一部の層に）広がり，人気を呼んだ作品だ。その後MobageやGREEでも提供されていたが，このたびついに「学園ハンサム for スマートフォン」（iOS / Android）として単体アプリがリリースされたので，本日，クリスマスイブの「（ほぼ）日刊スマホゲーム通信」で紹介しよう。

　まさか本連載でBLを扱うとは。しかもそれがクリスマスイブで，その記念すべき1本目が「学園ハンサム」とは……。

iOS版，Android版ともに価格は700円と少々お高め。無料のお試し版もあるので，購入はそちらをプレイして雰囲気を確かめてからの方がいいかも

iOS版「学園ハンサム for スマートフォン」ダウンロードページ

Android版「学園ハンサム for スマートフォン」ダウンロードページ

　システム自体は非常にオーソドックスな恋愛アドベンチャーで，シナリオを読み進めると現れる選択肢を選ぶと，それによって展開が変わっていく。プレイヤーは県内トップクラスの名門男子校「私立薔薇門高校」への転校生となり，形容するにもしにくい青春を過ごすこととなる。

　攻略できるキャラクターは計5名で，いずれも「個性が強い」の一言では済まされないほどの圧倒的なハンサムガイたちだ。アウトローな教師，サッカー部のエースにして問題児，生徒会長のツンデレメガネ，幼馴染のお調子者，そしてミステリアスなクールガイと，属性だけ聞けばよだれを垂らしそうなお姉さま方もいるかも知れないが，彼らの魅力はそれだけに留まらない。登場人物いずれも，その顔が独特……具体的に言うと，アゴが異常に長いのだ。

某“ざわ…ざわ…”な漫画もびっくりするほどの美アゴを持つハンサムたち

　本作はいわゆるインディーズゲームにカテゴライズされる作品であり，イラストのタッチやBGM，キャラクターボイスなどは，失礼ながら素人レベル。大手メーカーの気合の入った作品が大好き！　という人からすると少し，いやかなり物足りないとは思うが，本作においてはむしろそれが逆にいい方向に働いているので，何も言わずに納得していただきたい。ネタをネタとして楽しむ心の広さを持って，ハンサムの世界へ飛び込むべし。

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こちらが登場人物の1人，危険なアウトロー教師こと「西園寺輝彦」。なかなかにハンサム……というかベビーフェイス

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こちらも西園寺輝彦。同姓同名の別人ではない。本作はこのように，場面ごとにタッチがかなり異なるのだが，突っ込んでいたらキリがない

　本作は登場人物ごとにエンディングが用意されており，どれに辿り着くかはプレイヤーの取った行動次第。とはいえ，基本的には複数のハンサムを股にかけず，本命一筋で動けばほぼ問題なくエンディングに辿り着けるだろう。
　ただし，本作は唐突（本当に唐突）にバッドエンドになることが多いので，セーブはこまめに行うこと。ちなみにセーブはメニュー画面から……は行えず，校長の「次郎」か，物語中盤以降に主人公の妹「優」に会うことで可能となっている。次郎に会うには放課後の選択肢で「校長室に行く」を，優に会うには寝る前の選択肢で「優の部屋に行く」を選べばOK。なんでこんな回りくどいシステムなのかは不明だ。

転校したての主人公を何かと気にかけてくれる，優しい校長。口癖は「ここでセーブするか？」

本作における一服の清涼剤（？）ともいえる優。実は彼女にはとある秘密があるのだが……そこはプレイしてのお楽しみ

　ちなみに主人公を除く登場人物たちはなんと驚きのフルボイス。とにかく（無駄に）喋りまくるのだが，肝心の演技がかなり棒読みに近く，抱腹絶倒間違いなし。普通のゲームならば怒るところなのだろうが，本作ではなぜか「これでいい」と思わせてくれるのだから不思議だ。

　ちなみに，本作ではプレイヤーが主人公の名前を決める。普通の作品なら，こういった場合，登場人物が主人公と会話するときには名前を出さないようなセリフ回しになるのだが，本作では「アラララー君」や「ウゥンンゥ君」などと，名前を適当な言葉でごまして喋ってくれるのだ。このごまかしがやたらとバリエーション豊富で面白い。

各キャラクターのボイスは，声優や声優の卵が起用……されているわけがなく，本作を開発したチーム欲求腐満の面々が担当している

　気になる（？）ストーリーも，訳の分からないセリフや，おおよそ一般常識に当てはまらないキャラクターたちの言動，メタネタ，ツッコミ不在のまま流れていくボケなど，笑わずにいられないほどカオスな展開が続いていく。しかも登場人物たちは狙っているわけでもなく，これらをさも当たり前のように喋るので，もはやおかしいのはこっちではないかと錯覚してしまうほどだ。

突っ込みどころがない場所を探すほうが難しい本作。やっつけと美麗が入り乱れるイラストや，「パない」「エンジョイジョイ」など，独自の謎なセリフ回しがジワジワ来る

　初心者（が何なのかはよく分からないが）には正直オススメしづらいが，この手のバカゲーやネタゲー好きには心の底からオススメしたい逸品。ただし，BLゆえそういった描写もところどころに差し込まれるため，それらが苦手な場合は注意したほうがいいだろう。
　純粋で耽美なBL好きというお姉さま方にもオススメしづらいが，ごくわずかなイベントCGだけはやたらと気合の入ったイラストが拝めたりするので，話の種にプレイしてみてもいいかもしれない。

　理性が月までブッ飛ぶこの衝撃，万人に受け入れられるとは思わないが，ネタをネタと楽しむ余裕のあるオトナな人たちは「どうでもE」などと言わず，ぜひ本作をプレイしてはどうだろうか。そしてこの作品に感銘を受けたなら，さらに被害者……いや信者を増やしてほしい。