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「LA-MULANA 2」の配信日は2018年7月31日に決定! NIGOROメンバーが制作秘話を明かした「LA-MULANA 通の会」をレポート
「LA-MULANA」シリーズは,巨大な遺跡を探検する横スクロールアクションだ。2006年にフリーソフトとして発表された第1作は,その高い完成度から多くの支持を集め,2011年にはWii,2012年にはPC向けの商用ソフトとしてデビューした。そして2014年には,続編「LA-MULANA 2」がKickstarterで目標を越える26万6670ドルの出資を集めて本格始動している(関連記事)。
今回のイベントは,そんな「LA-MULANA 2」の完成を祝い,NIGOROのメンバーを招いて制作秘話を聞くというもの。会場が満員となったのはもちろん,海外ファンのために英語による同時通訳付きの中継も行われたのだから,注目度の高さがうかがえるだろう。
「LA-MULANA 2」公式サイト
●「LA-MULANA 通の会」出席者一覧
楢村 匠(ならむら)氏:ゲームデザイナー兼グラフィッカー兼サウンドクリエイター
鮫島朋龍(サミエル)氏:プログラマー&効果音担当
蛯原隆行(duplex)氏:メインプログラマー
中川啓己氏:「LA-MULANA 2」からUIやグラフィックスの補佐を担当
MSXへの愛が出発点。NIGORO創立秘話
イベントはNIGOROの歴史を振り返るところからスタートした。
NIGOROのルーツは楢村氏が運営していたサイトにさかのぼる。MSXのゲームをこよなく愛する氏は,サイトの掲示板に訪れた鮫島氏と蛯原氏に声をかけ,MSX風のシューティングゲーム「GR3」を作るため「PROJECT GR3」を結成した。
「GR3」は「真似やコピーすることに興味はない。(作品には)自分なりの解釈を入れる」という楢村氏のこだわりもあって評判となる。元々は「GR3」の1本だけで解散するはずだった3人だが,これを受けて活動を継続。2001年から「LA-MULANA」の開発に着手し,2006年に完全版の発表に至った。この時点で3人は互いに顔を合わせたことがなく,ネット上でのやり取りを通じてゲームを開発していたという。
その後,ゲーム作りをビジネスにしたいということで,3人は2007年にNIGOROを設立。まずは知名度を上げようということになり,FLASHでフリーゲームの制作を開始した。初回作「Death Village」ではFLASHゲームへのニーズを理解しておらず,複雑な操作を実装してしまうなどの試行錯誤はあったものの,シンプル操作で名家の女性がビンタを応酬する「薔薇と椿」などのヒット作を生み出していく。これらの制作においては,楢村氏が書きためていたゲームのアイデアノートや,FLASHゲームのネタを10個出すまで帰れない合宿などの取り組みが効を奏したという。
Adobeが2020年末でFLASHのサポートを終えるといった事情もあり,今後これらの作品はプレイが困難になっていくが,楢村氏らが現行環境へ移植するのは難しいとのこと。「誰かが移植してくれるなら(作品を)残せる。公開終了する数か月前にはアナウンスするが,その後はどうなるか分からない」と語った。
実際に遺跡を探索するような,緊張感あるプレイを目指した「LA-MULANA」
続いてのテーマは「LA-MULANA」について。PROJECT GR3の第2回作品としてスタートした本作だが,MSXの名作「ガリウスの迷宮」を目標としたゲームにすることは,かなりスムーズに決まったという。3人が同作をプレイしたときはまだ小学生だったため,リアルタイムで解くには至らなかったものの,後年再チャレンジしたことでエンディングを見ることができたそうだ。
「LA-MULANA」が高難度な理由は,こうした体験から「何年かあとに再度遊んでクリアするような遊び方があってもいいのではないか」と感じたことにあるとのこと。そして,開発に当たってはプレイヤーから「ゲームだから,こうすればいいんだろう」という油断を取り除くことがテーマになったという。
どうせ下は安全だろうと深い穴に飛び込んだり,フラグを立てるためにそこら中を叩き回ったりなど,ゲームであることを意識したうかつな行動を取るのではなく,実際に未知の遺跡を探索するかのような慎重さを求める内容にしたかったと楢村氏は語った。
ところで,NIGOROのメンバーはゲーマーとして,かなりの腕前の持ち主でもある。蛯原氏は「ハイドライド2」のレッドクリスタルの謎(広大な地下世界に点在する像の1つに魔法を撃ち込まなければならないが,どの像が対象となるかはノーヒント)を自力で解いたというし,鮫島氏は「キャッスルエクセレント」の複雑なパズルを見ただけで解法が浮かんでくるというから,どちらもかなりの強者だ。日本だけでなく海外のゲーマーからも支持される「LA-MULANA」だが,こうした上級者の視点からしっかりとゲームへのリスペクトを表現していることも,その理由の一つではないかと感じられた。
会場では,主人公のルエミーザ・小杉が忍者の末裔でカレー好きな理由も語られた。「弾として飛ぶサブウェポンが欲しい」いう理由で手裏剣が作られ,ここから忍者という設定が考案された。そして,忍者俳優ということでショーン・コスギ氏が連想され,氏の息子であるケイン・コスギ氏が当時カレーのCMに出演していたことからルエミーザ・小杉の好物もカレーに決まったそうだ。
ボリュームは50時間オーバー!? ついに配信される「LA-MULANA2」
イベントの第3部では,楢村氏による「LA-MULANA2」の実機プレイも披露された。今回のテーマは「神話」である。冒険の舞台となるイグ・ラーナ遺跡はすべての神話のルーツとなっており,世界各地の神話に共通項があるのは,ここでの出来事を語り継いだためという設定だ。ゲームには,北欧神話やインド神話風,「日本とシュメールと中国を混ぜたような」(楢村氏)エリアなど,バラエティ豊かなステージが登場する。
ゲーム的には「LA-MULANA」よりもしっかりとプレイヤーを誘導するようになっており,「無駄に迷う部分は減っている」(楢村氏)いるという。今回は,敵に倒されてコンティニューした場合もプレイ時間が加算されるようになっており,ボリューム的には「40〜50時間では済まない」とのこと。テストプレイを担当した鮫島氏の場合,「アクションでは死なない自分でも謎解きで迷ってしまう。45時間プレイしたデータがあるが,これでも最終段階には至っていない」のだそうだ。
また,ボスを討伐する時期によって攻撃方法が変化し,放置しておくと強くなっていくという「『ロマンシング・サガ』の七英雄のような」(楢村氏)フィーチャーも用意されているうえ,ハードモードではボスの攻撃方法自体が増えるそうなので,アクション面でもかなり遊び応えがありそうだ。
こうなると俄然気になってくるのが“いつプレイできるのか”だが,会場では7月31日の午前2時より,Steam,PLAYISM,GOG,Humble Storeにて,2480円で配信されることが発表された。会場では完成を記念しての乾杯も行われ,NIGOROメンバーとファンは終始にこやかにイベントを楽しんでいた。
「LA-MULANA 2」公式サイト
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LA-MULANA 2
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