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[TGS 2014]「魔界戦記ディスガイア5」にはPS4ならではの面白さを盛り込む。日本一ソフトウェア社長の新川宗平氏にインタビュー
プレスカンファレンスの翌日,同社の代表取締役社長とディスガイア5のプロデューサーを務め,そしてシナリオも手がける新川宗平氏に,インタビューを行う機会を得た。看板タイトルをPlayStation 4独占で展開していくということで,どのような意気込みで挑むのか聞いてみたので,その模様をお届けしよう。
4Gamer:
本日はよろしくお願います。
東京ゲームショウ2014にあわせてディスガイア5の発表会があり,発売日も2015年3月26日に決まったということで,まずはこの最新作について質問していこうかと思います。
分かりました。本当は,もっと早く発売したかったんですけどね。もともとディスガイア5は,PS3とPS4のマルチ展開で考えていて,その場合は当然PS3に合わせた内容で開発していくことになります。それなら,もっと早く発売できたかもしれないんですが,最終的にはPS4独占という判断になったので,ギリギリまで作りこんで発売しようということになりました。
4Gamer:
発表会では,社長としては決算前の発売は避けたかったとおっしゃっていましたね。
新川氏:
正直,リスクはありますね。もし1週間でも発売が遅れたら,それだけで今期の業績はどうなるんだということになりますから。ただ,長期的に見れば,このタイミングで,我々のような小さな会社が率先してPS4でしっかりソフトを出すということは,とても大事なことだと思うんですよ。今後据え置き機用タイトルの開発に関しましては,PS4に移行していく方向で考えていているんです。
4Gamer:
ということは,ディスガイア5以外のタイトルも?
新川氏:
ええ,PS4に向けてすでに準備をしています。ですから,日本一ソフトウェアのファンには,ディスガイアを機会にPS4を購入しても,その後もちゃんとタイトルを用意しているのでご安心くださいとお伝えしたいです。
4Gamer:
そちらも楽しみにしています。とはいえ,日本一さんの看板タイトルであるディスガイアを,特定のプラットフォーム独占にするというのは,かなり勇気のいる判断ですよね。昨日お話されていたとおり,マルチ展開のほうが販売数は伸びやすいわけですから。
新川氏:
我々としても,覚悟は必要でした。ただ,これからPS3からPS4に移行していくなかで,タイトルが出揃ってから我々も出しますとなると,技術的な面で追いつけなくなってしまいます。リスキーと思われるかもしれませんが,まだあまり国内から独占タイトルが出ていない今であれば,ディスガイアというIPに触れてもらう良いチャンスでもあると思うんですよ。今のタイミングで出すからこそ,ソニーさんからもバックアップをいただけることになりましたし,ディスガイアとPS4を一緒に盛り上げていく意気込みで取り組んでいます。
4Gamer:
ディスガイアは,海外でも販売されているタイトルですから,その点でもPS4専用というのがプラスに働くかもしれませんね。
新川氏:
そうですね。海外では,我々が想像していたよりも早くPS4への移行が進んでいて,同時にPS3用タイトルの販売数が伸び悩むようになってきています。マルチプラットフォームで出しても,圧倒的にPS4用が売れるという状況なんです。日本一ソフトウェアは,海外での売り上げが大きい会社ですから,海外戦略という点でも,PS4を選択して良かったと思っています。
4Gamer:
マルチ展開といえば,本作はPS Vitaへの移植はできないんですよね?
新川氏:
ええ。携帯機で出すには,次世代機が登場しないと無理です。私も最初は移植をやりたいと思っていたんですが,開発途中でプログラマー達から「これ以上のことをやろうとすると,PS Vitaに移植できませんが,いいですか?」と経営判断を迫られまして。だったら,もうPS4用にやれることを全部やろうと。
4Gamer:
全力投球ですね。ディスガイア3のときも,PS3独占で早期に発売していて驚いた覚えがありますが,新ハードだからと尻込みする様子が感じられません。
新川氏:
ディスガイア3のときは,今以上に焦りが強かったですね。PS2からハードのスペックが急激に上がって,出遅れたら完全に置いていかれると思っていました。当時は,「PS3になってもディスガイアはあまり変わらないじゃないか」と言われましたが,結果的には,早いタイミングで一番自信のあるタイトルを出したことに意味はあったと考えています。
4Gamer:
同じような反応は,ディスガイア5でもあるかと思うのですが,実際のところ,近作のPS4ならではの部分というのは,どういった要素になるのでしょう。ディスガイアは2Dグラフィックスが魅力のゲームですから,少なくとも「PS4でグラフィックスがこんなに進化しました!」みたいな分かりやすいアピールはやりにくいですよね。
新川氏:
そうですね。でも,実はマシンスペックに頼ってできることは,かなり増えています。我々は,2Dのグラフィックスにこだわってきて,ディスガイア4で高解像度のドット絵を採用しましたが,あれはかなりメモリ容量を食うんですよ。手作業で1枚1枚キャラクターを描いているアニメーションですから。あれを使って快適にゲームを遊べるようにすると,せいぜい30体ぐらいのキャラクターしか表示できないんです。
4Gamer:
PS3ではスペック的にいっぱいいっぱいだったわけですか。
新川氏:
はい。しかし,これをPS4で表示させてみたら,100体を超えるキャラクターを表示できたんです。今回は,いろんな魔王が出てきて魔界大戦争が起きるみたいなテーマがあり,敵をワラワラ出したいと思っていたので,その点でもPS4の良さを感じています。
4Gamer:
グラフィックス面の変化も実は大きかったんですね。
新川氏:
解像度ではなく,物量の部分で,PS4ならではの作りを感じてもらえると思いますよ。
もちろん,SHARE機能やリモート機能を使って,何か面白いことができないかも模索しているところです。
4Gamer:
東京ゲームショウの試遊版で,拠点のキャラクターが,「プリニーの死に様を共有する機能」があると言っていたんですが,それもSHARE機能の使い方の1つですか?
新川氏:
いえ,それ,まだ私は話を聞いていません(笑)。でも,あの拠点のセリフは全部ディレクターが入力したものなので,案の1つにあるんだと思いますよ。
試遊版はPlayStation Storeでも配信しますが,正直あれを遊んでも,従来のファンにとってはそこまで大きな変化はないと思います。新要素として,「リベンジモード」や「魔奥義」は体験いただけますが,ディスガイア5ならではの要素をお伝えするのは,まだまだこれからですから。
どちらかというと,試遊版はまだディスガイアを遊んだことがない人向けです。我々の分析では,今PS4を所有している方達でディスガイアシリーズを経験したことがある人は少ないと思っています。でも,そういった方々の中にも,ディスガイアを好きになってくれる人がいると思っているので,こんな面白いゲームがあるぞとアピールしたいですね。
4Gamer:
ファンが少ないからこそ,まだ伸びしろがあるとお考えなんですね。
新川氏:
それともう1つ,PS4を持っていないディスガイアファンの方達にも,この機会に「すみません,買ってください」と言いたいです。もちろん安くはない買い物ですから,なかなか手が出ないとは思うのですが,先ほどもお話したとおり,日本一ソフトウェアとしてはこれからもPS4でソフトを出していきますから,ぜひお願いします。
4Gamer:
ファン向けのアピールといえば,細かい点ですが,試遊版で新たに「サブ武器」が追加されていましたね。今までのディスガイアは,例えば「槍が好きだけど剣のほうが使い勝手が……」とか,「レベルを上げたいから,やっぱり拳でビッグバン」みたいな理由で,武器の選択の幅が狭まってしまう面もありましたが,サブ武器で育成のやりこみはさらに楽しくなりそうに思えます。
新川氏:
ディスガイアって,ジャンルはシミュレーションRPGですが,どちらかというとRPG的な楽しさが大きいゲームだと思うんですよ。緻密な計算をして戦うわけでもありませんし。
4Gamer:
ダメージが億単位になると,計算どころではありませんからね(笑)。
新川氏:
だから,RPGとしての楽しさの追求という面で,本作では「アイテム界」などとは違う,ディスガイア5ならではの育成要素を用意しています。見た目が大きく変わるようなものも考えているので,ここはぜひ続報をお待ちください。
4Gamer:
ところで,ディスガイア5のストーリーは割とシリアスになると聞きましたが。
新川氏:
シリアスというより,入り口が広くなっているという感じですね。今回は新しいプレイヤーにも遊んでもらえるよう,ストーリーの最初は分かりやすさを重視しています。もちろんディスガイアですから,要所要所で笑いあり涙ありな内容ですけど。
今回は,キャラクターの成長や過去のできごとなど,いろいろな物語を掘り下げてボリュームを増やしているので,メインキャラクターに愛着を持っていただけると思います。
4Gamer:
シリアスな入り口で,さらに主人公のキリアが拳キャラっぽいので,なんとなくディスガイア2を思い出しますね。
新川氏:
確かに似ていると感じる方もいるかもしれませんね。ただ,2のアデルは熱血,戦隊モノでいえばレッドでしたが,キリアはブルーなので,ちょっとイメージが違います。でも主人公ですから,ちゃんと内には熱いものを秘めています。
日本一ソフトウェアは死ぬまで新作を作り続ける
4Gamer:
せっかくなので,ディスガイア5以外の展開についても教えてください。PS4用タイトルでいくつか新作を準備しているとのことですし。
今は,PS4とPS Vitaのタイトルを中心に開発しているところですね。割合としてはまだPS Vitaのほうが大きいですが,PS4用のものも,複数動き始めています。
4Gamer:
前回のインタビューでは,「魔女と百騎兵」の続編もやりたいとお話していましたが,そちらはどうでしょう?
新川氏:
検討を進めています。魔女と百騎兵はおかげさまで人気の出たIPなので,長く続けていきたいと考えていますから。「クリミナルガールズ」も好評をいただいているIPですから,こちらも続けていたいですね。
楽しみにしています。そういえば,結局10周年でも発表がなさそうなアサギはどうなったのかなぁと……。
新川氏:
彼女は……なかなか報われないですね(苦笑)。ずっと作りたい気持ちがあるんですけど,やるからにはちゃんと力を入れて完成させたいんですよ。ただ,アサギのゲームというとファンアイテムに近いタイトルになってしまうので,どうするか悩んでいます。ディスガイア5など,先にやらなければならないこともたくさんありますから。
でも,アサギが主人公の「魔界ウォーズ」は,常に頭の中にあります!
4Gamer:
今年立ち上がった「NEWBRAND」はどうでしょう?
新川氏:
いくつか新作を準備しています。NEWBRANDとして発表するかは別にして,今作っているタイトルの半分ぐらいは新規IPですね。日本一ソフトウェアは死ぬまで新規タイトルを立ち上げ続けますから。
4Gamer:
発売されたNEWBRANDタイトルで一番反響があったのは,「htoL#NiQ −ホタルノニッキ−」でしょうか。
新川氏:
そうですね。ああいった方向性のタイトルはニーズがあるのが分かっていましたから,続編ではないですけど,同じディレクターに世界観を重視したタイトルをまた作ってもらうかもしれません。
4Gamer:
新川さんは,社長でありながらご自身でシナリオを書いたりされますけども,現在,新川さんが作りたいと思っているタイトルはありますか?
新川氏:
「流行り神」です。
4Gamer:
即答ですね! もし本当に作ることが決まったら,ぜひ教えてください。
それでは最後に,ディスガイア5の発売を楽しみにしている読者に向けて,メッセージをいただけますか。
新川氏:
日本一ソフトウェアとしては3年ぶりとなるディスガイアのナンバリングタイトルを,PS4独占でやらせていただくことに決めました。PS4ならでは,そしてディスガイア5ならではという部分を感じていただけるようにしていきます。まだ秘密にしている情報もたくさんあり,今は様子を見ている人にも,年末頃には「PS4ごと買う!」と思っていただけるはずです。
もちろん,初めて遊ぶ人にも満足していただける商品にしますので,まずは体験版を遊んでもらえると嬉しいです。
4Gamer:
ありがとうございました。
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