レビュー
「不思議のダンジョン」と「世界樹の迷宮」がコラボレーション
世界樹と不思議のダンジョン
「不思議のダンジョン」といえば,自動生成されるダンジョンを舞台に,プレイアブルキャラクターと敵が交互に行動するという,いわゆるローグライクのダンジョン探索型RPGだ。シリーズ作品では「風来のシレン」がお馴染みだが,そもそもシリーズ1作目はドラゴンクエストシリーズを題材にした「トルネコの大冒険 不思議のダンジョン」で,その後も「チョコボの不思議なダンジョン」「ポケモン不思議のダンジョン」と,さまざまなコラボ作品がリリースされている。
そして今回コラボする「世界樹の迷宮」は,ファンタジー感あふれる世界観,さまざまな職業のキャラクターで構成するパーティ,ターン制バトル,ダンジョンのマッピングなど,「Wizardry」に代表されるような,古き良き時代のコンピュータRPGの要素が詰め込まれたシリーズだ。
いかにも相性が良さそうな組み合わせではあるが,果たして本作はどのような仕上がりになっているのか。序盤を実際にプレイした感想をお届けしよう。
「不思議のダンジョン」に挑むのは
「世界樹の迷宮」の4人パーティ
本作の舞台となるのは琥珀色の世界樹を望む絶景の街,アスラーガ。この地には,入るたびに地形が変化する「不思議のダンジョン」と呼ばれる迷宮があり,多くの冒険者がそこに挑戦するべく集まってくる。プレイヤーもそんな冒険者の1人としてダンジョンに挑むことになるのだ。
ゲーム開始時,プレイヤーは,アスラーガへと向かう「ソードマン」をプレイすることになる。アスラーガに到着すると冒険者ギルドへ案内されるので,自分のギルドを設立し,そこで仲間となるキャラクターを登録しよう。
冒険者ギルドに登録できるキャラクターの職業は10種類(そのうち序盤で選択できるのは7種類)。ほとんどは世界樹シリーズに登場したものなので,同シリーズを遊んだことがある人なら特徴をイメージしやすいはずだ。本作で初登場となる職業「フーライ」はルックスからして不思議のダンジョンに強そうで,普段はパンよりおにぎりを食べていそうなイメージだ。
冒険者パーティは4人で構成される。職業の組み合わせに制限は無いが,序盤は探索からボス戦まで万遍なく対応できるバランス型の構成がオススメだ。筆者はソードマン(近接攻撃役),パラディン(盾役),カースメーカー(遠隔攻撃/支援役),メディック(回復役)というパーティを組んでみた。
ゲームを進めて感覚がつかめてきたら,特殊なスキルが多いシノビや,万能職のプリンス/プリンセスなどを入れてみるのもいいだろう。
「育っていないキャラクターはパーティに入れたくない」「頻繁にパーティメンバーを入れ替えていたら,キャラクターの成長が遅くなってしまうのでは?」と思うかもしれないが,本作ではダンジョン探索に連れ出さないメンバーにもある程度の経験値が入るシステムになっているので,キャラクターを作ってさえおけば,放置していてもそれなりには成長してくれる。
「今回は盾役と回復役を入れた耐久型」とか「攻撃役だけで組んでサクサク進む」といった具合に,さまざまなパーティが手軽に組めるのが嬉しいポイントだ。
キャラクターの個性ともいえるスキルは,スキルツリーにポイントを割り振ることで習得する。能力を特化させるため,単一スキルにポイントを詰め込んでみたり,逆に幅広い能力を身につけるため万遍なく振ってみたりと,自由度は高い。逆にいえばレベルを上げても獲得したスキルポイントを割り振らない限りスキルは習得できないのだが,それを忘れがちだったり,面倒に感じたりする人には,「オート割り振り」機能が便利だ。
「不思議のダンジョン」のルールは不変だが
4人パーティならではの要素が新鮮
パーティを組んだら街でミッションを受けて,いよいよダンジョン探索だ。ダンジョンは,基本的に「不思議のダンジョン」のフォーマットで作られているので,ここで同シリーズの“お約束”を確認しておこう。
・ダンジョンは入るたびに構造や敵・宝物の配置が変化する
・すべての行動はターン制。プレイヤーが行動しなければ敵も行動しない
・マップを移動するとFP(空腹値)が徐々に減り,ゼロになるとHPが減り始める
・プレイヤーが力尽きると所持金・所有アイテムを失う
つまり,マップが把握しづらく,ミスしたら所持金や所持アイテムを失うという厳しい状況の中,じっくりと考えて探索する必要があるということだ。敵が強いと感じたら無理せず引き返す,回復アイテムは多めに持って惜しみなく使う,といった余裕を持った行動が基本中の基本となる。
なお,本作には「不思議のダンジョン」シリーズ作品にあった「夜ターン」は無いが,同じフロアに長時間いると霧が発生して冒険失敗となるので注意しよう。
そんな不思議のダンジョンだが,本作ではプレイヤーキャラ単独ではなく,最大4人のパーティで探索するのが最大の特徴となっている。プレイヤーが操作するのはリーダーに設定したキャラクターで,残りのメンバーはリーダーの後を追ってくる仕組みだ。
戦闘もリーダー以外のキャラクターは基本的にオート戦闘で,しかも嬉しいことにAIはなかなか賢いときている。パラディンであれば真っ先に敵のヘイトを集めるスキル“挑発”を使ってくれるし,カースメーカーは敵が単体なら直接魔法で攻撃,複数いれば範囲弱体魔法で支援してくれるなど,各キャラクターの役割を的確に果たしてくれるのだ。
もちろん各メンバーに対してプレイヤーが直接指示を出すことも可能だが,任せっぱなしでも割と安心して進めるはずだ。
しかし,オート戦闘も完璧ではない。とくに“キャラクターがダンジョン内の部屋に入らないと行動しないときがある”という点には注意が必要だ。
ダンジョンのフロアは複数の部屋が細い通路でつながれた形になっているのだが,部屋の入口に敵がいると,隣接している先頭のキャラクターだけが戦闘し,その後ろにいるメンバーは何もできない,という状況が発生するのだ。
敵に近づけない状況なので,近距離攻撃主体のキャラクターが見ているだけなのはまだ分かるのだが,遠距離攻撃が可能なキャラクターでも,この現象がしばしば発生した。どうやら敵の存在を感知していない,ということのようなのだが,ともあれメンバーが動いてくれないときは,自分で指示を出すか,部屋の中に移動させるといいだろう。
キャラクターのHPを回復する手段には,スキルやアイテムのほかに,ターンの経過による自然回復があるので,回復役がパーティにいなくても,うまく立ち回れば探索は続けられる。さらに別の回復手段として,マップに配置された黄色く光るマス目「琥珀床」がある。上を通過したキャラクターのTP・FPが回復するが,1人通っただけで割れてしまい,使えなくなるというものだ。
FPが減っているキャラクターを優先させたいのは山々だが,空腹値はリーダーにのみ設定されているので,リーダーにも踏ませたい,さらには,TPが枯渇すると戦力にならないメディックやルーンマスターといったキャラクターにも……と,ここでも慎重さが求められ,大いに悩むところだ。
ゲーム序盤はさほど深い階層には進めず,強力なアイテムもそうそう落ちていないが,キャラクターのレベルは割とサクサク上がる印象。ダンジョン探索の練習をしているうちにどんどん先へ進めるようになるはずだ。
そうやってダンジョンを探索していくと,最深部でボスモンスターと遭遇することになる。ボス戦ではオート戦闘ではなく,各キャラクターをそれぞれ操作することになるので,さらなる注意が必要だ。
ボスは雑魚モンスターとは比較にならないほど攻撃力が強いため,防御力が弱いキャラクターは一撃で瀕死になったり,場合によっては即死したりする。盾役がボスの攻撃を引きつける,回復役はむやみに近づかない,攻撃スキルを惜しまず使うといった,パーティ制RPGらしさが前面に押し出された戦闘となる。
ミッションをクリアしていくとアスラーガの街で利用できる施設が増え,スタート時点では選べなかった職業のキャラクターも冒険者ギルドで登録可能になる。
利用できる施設が多くなるとキャラクターを強化しやすくなるほか,出会う人も増えて受注可能なクエストも多くなる。
新たな要素がアスラーガの街に追加されたときはメニューにアイコンでお知らせが出るので,しっかり確認しておこう。
非常に役立つ街の施設だが,本作にはその施設を破壊しようと地底からダンジョンを侵攻してくる「D.O.E」という敵が出現する。これはボスとはまた違った難敵で,よほど腕に自信がない限り,正面から挑むのはやめておいたほうがいい。
そこで役に立つのが「砦」だ。ダンジョン内に砦を建設しておくと,D.O.Eは砦を破壊して地下へ撤退する。パーティに入っていないメンバーを「防衛隊」として派遣しておくと,侵攻してきたD.O.Eを迎え撃つことができる。
また,砦に派遣されたメンバーは通常の待機時よりも経験値が多く入るというメリットもあるので,キャラクターの成長を促す意味でもうまく活用したい。
一筋縄ではいかない本作のバトルだけに,慎重に慎重を期しても,パーティが全滅してしまうことはあるだろう。
もしダンジョンで全滅した場合,そのまま諦めて「帰還」を選ぶと,装備や所持金がロストしてしまうが,街や砦に待機メンバーが残っている場合は「救助隊」を編成できる。全滅したパーティがいる階層にたどり着き,メンバーが倒れている場所を調べれば救助成功となって,アイテム類をロストせずに街から再出発できるのだ。
救助隊を編成するにはギルドに待機メンバーが必要で,1回の救助要請でトライできるのは3回までとなる。救助をしっかり行うためにも,ギルドメンバーを多めに確保しておき,普段から鍛えておいたり,装備を充実させたりしておくのがいいだろう。メインパーティが全滅するような場所だけに,サブメンバーで挑む救助隊の道のりはさらに難しくなるはずだからだ。
両シリーズの“イイトコ取り”で快適なダンジョン探索が楽しめる良作
「不思議のダンジョン」「世界樹の迷宮」シリーズの基本となる部分はまったくブレておらず,実にうまくまとめられているという印象の本作。基本となるゲームシステムや世界観の知識はプレイ中に教えてくれるので,どちらのシリーズも未体験という人であっても問題ない。むしろ1本で両シリーズの入り口に立ててしまえてお得ではないだろうか。
「不思議のダンジョン」では,フロアの構造が分からない,ミスったら所持金やアイテムを失う,という緊張感が常に付いて回るが,本作は4人パーティで進めるということもあり,かなりダンジョン探索がしやすくなっているという印象を受けた。やはり回復や敵の弱体化といったサポート役が仲間にいると,非常に心強い。1人の時よりも積極的にダンジョンを進めるのだ。
だが,緊張感が無くなってしまったわけではない。ボスにはパーティ構成をよく考えたうえで挑み,行動ターン順を考慮して戦わないと歯がたたないので,適当にプレイしていたらあっというまに身ぐるみをはがされてしまう。このあたりはまさしく「世界樹の迷宮」のテイストだが,「進みやすくなったダンジョン」と「手ごわいボス戦」という構成が,ゲームプレイにメリハリを生んでいる。
本作は「世界樹の迷宮」キャラで「不思議のダンジョン」を遊ぶだけのゲームではない。両作品の持ち味をうまく融合させ,新たに作られた遊びやすいRPGだ。両作品を知らなくても問題ないし,むしろ両シリーズの名前を意識せず,完全新規のタイトルとしてプレイしてほしい作品だ。
「世界樹と不思議のダンジョン」公式サイト
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世界樹と不思議のダンジョン
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