プレイレポート
「SaGa SCARLET GRACE」のファーストインプレッション。サガシリーズらしい,とことん“尖った”タイトルだ
そんなSaGa SCARLET GRACEを,約1時間という短い時間ではあるが試遊できたので,プレイ感をお伝えしよう。
今回試遊したのは製品版とほぼ同等のバージョンで,使用する主人公にも制限はなく,「ウルピナ」「タリア」「レオナルド」「バルマンテ」の4人から好きな1人を選んでプレイできるようになっていた。また,こちらの記事で紹介したように,東京ゲームショウでのデモよりロード時間が短くなっていた。
可能であれば主人公を変えながら何回かプレイして,その違いをお伝えしたいところだったのだが,今回は試遊時間が1時間ということで,1人に絞ることにした。少々迷ったが,フリーワールドシステムの概要を序盤から体験できるというレオナルドを選択。
帝国中心部から離れたヤクサルト辺境州の農民であるレオナルド。その冒頭シナリオは,農場に倒れていた女に「緋の欠片をアイ・ハヌムに沈めて」という言葉を託され,幼馴染みのエリザベートをはじめとする仲間とともに旅に出るというものだ。
会話シーンのキャラクターグラフィックスは,小林智美氏によるイラストの雰囲気が強く感じられるものになっており,これがなかなかいい味を出している。フォトリアルでも,アニメ風でもなく,最近のゲームではあまりお目にかからないテイストなので,好みは分かれるかもしれないが,個人的にはエリザベートの可愛さが気に入った。
冒頭のイベントが終わると,いよいよフィールドへと足を踏み出すのだが,ここがまた独特な作りになっている。絵画のようなタッチで描かれたフィールドを歩き回るうち,特定の場所に近づくと,町や洞窟などのオブジェクトがニョキッと“立ち上がる”のだ。人形劇の書き割り的な印象で,ゲームに独特の雰囲気を与えている。
イベントでの会話などから,どこへ行けばいいのか(物語が進むのか)は一応提示されるが,実際にどこへ向かうかはプレイヤーの自由。町に行けば鍛冶屋で武器を強化できるし,洞窟などでは敵と戦うこともある。
ただし,町や洞窟には固有のマップというものが存在しない。フィールドからそれらに入ると,すぐにイベントやバトルが発生し,それをクリアするとフィールドに何か新しい展開が生まれたり,次のエリアに行けるようになったりするという流れだ。町や洞窟の中をうろうろする,という要素が排除されているので,ここだけを抜き出せば,RPGよりはマップ移動のあるアドベンチャーゲーム,もしくはTRPGに近いかもしれない。そのうえで後述するバトルやキャラクターの成長といったところはRPGで,非常に不思議な手触りになっている。
この感覚こそが本作の大きな特徴の一つだ。新しい町やダンジョンに入るたび探索から始まるようなタイトルとは違い,本作で探索が必要なのはフィールド上のみ。重複する部分を削りに削ったような大胆なゲームデザインで,すべてがフィールド上にまとめられているような印象だ。
かといってサクサク進んですぐ終わってしまうようなゲームでもないようで,各キャラクターともクリアまで軽く40〜50時間かかるとのこと。ボリュームに関して心配することはなさそうだ。
今回のプレイは,スタート地点であるヤクサルト辺境州から,隣のメグダッセ辺境州へと向かい,そこに現れた中ボス的なモンスターと戦ったところで終了となった。感覚としてはそれほど大きな分岐点もなかったようなので,おそらくプロローグも終わっていない,という段階ではないだろうか。
さて,もう一つの注目ポイントであるバトルも「タイムラインシステム」の採用により,従来のRPGとは一線を画すものになっていた。
本作のバトルでは,敵味方双方のキャラクターアイコンが画面下に並ぶ。これが「タイムライン」で,バトルでは原則として左側のキャラクターから順に行動することになるのだが,そのターンに取る行動によって,順番が入れ替わるのがポイントだ。
各キャラクターの行動入力後,最終決定のボタンを押してからターンが始まるので,この行動順を見ながら,何度でも入力をやり直せる。
そして,このタイムラインに関連する重要な要素が「連撃」だ。戦闘不能になったキャラクターのアイコンはタイムラインから消え,その間が詰められるのだが,これによって味方のキャラクター同士がつながると,通常のコマンド技とは別のボーナス攻撃として連撃が発動。敵に大ダメージを与えられるだけでなく,連撃に参加したキャラクターは,次のターンで技や術などの使用に必要な「BP」(ブレイブポイント。詳細は後述)の消費が少なくなるなど,メリットは大きい。
連撃の有無によってバトルの展開が大きく変わるので,発動させやすいタイムラインになるよう,倒す敵を選んだり,いろいろとコマンドを試してタイムラインを入れ替えたりするのが基本的な戦い方だ。
なお,連撃は敵側にも発生するので,タイムライン上で敵に挟まれた味方がいるときは,うまく守ってやる必要がある。
連撃で面白いのは,タイムライン上で3人の味方が並んでいるとき,真ん中の味方が戦闘不能になって左右の2人がつながった場合でも発動すること。つまり,瀕死の仲間をあえて見捨てて発動させる,という手もあるのだ。
ちなみに,本作ではシリーズでおなじみの「LP」(ライフポイント)が導入されており,戦闘不能になっても,これが尽きるまでは戦闘終了後に復活できる。
バトルでもう一つ重要なのが,BPの存在。前述したとおり,技や術を使うときに消費するものだが,キャラクターごとに設定されるのではなく,味方全体で共有する形になる。最初に一定の値が用意され,ターン経過で全回復したり,値が増えていく仕組みとなっており,特に1ターンめは味方の何人かが行動できないこともザラ。なかなか辛いのだが,数ターン経過したり,連撃を決めてBP消費が少なくなると,一気に楽になる。
タイムライン(連撃)とBPの双方に大きく関わってくるのが,シリーズおなじみの「陣形」システム。本作では,バトル開始前にパーティメンバーと陣形を変更する「戦闘準備」のフェイズがある。陣形によってメンバーの行動順が変わったり,BPの初期値や増加条件が変わったりするので,状況に合わせて,最適なメンバーと陣形をじっくり考えるといいだろう。
ここまで読んで,一筋縄ではいかないと感じた人もいるだろうが,実際,本作のバトルはかなりの歯ごたえだ。戦闘中のHP回復手段は,術またはランダム発生の「恩寵」のみで,回復アイテムは用意されていない。しかも今回のプレイでは,レオナルドとその仲間にHP回復の術を使えるキャラクターがいなかったのだ。
最初の戦闘では,うまく連撃を決められないまま戦闘が長引き,回復しようと思ったらその手段がないことに気づくという感じで,いきなり全滅してしまった。本作の厳しさを味わわされたのだが,全滅してしまってもすぐに再挑戦が可能になっている。プレイヤーの腕次第で展開が大きく変わるだけに,この仕様は嬉しい。
キャラクターはこのようなバトルを繰り広げて成長していくのだが,本作には経験値やレベルの概念がなく,バトルを重ねることでパラメータが上がる仕組みになっていた。
また,こちらもシリーズおなじみの要素だが,キャラクターはバトル中の「閃き」によって新しい技を覚える。その種類は閃いたときに装備している武器によって変わるとのことだ。
なお,パラメータの成長は,基本的にバトルに参加したキャラクターにもたらされるので,キャラクター全員をしっかり成長させたいなら,編成を入れ替える必要がある。
ただ,控えにいるときには前述したLPが回復するし,最大HPも少しずつではあるが増えているようだった。入れ替えてLPを回復させつつ,パーティの成長のバランスを取る,というのが良さそうだ。
今回の試遊の時間は短かったが,いたるところが“尖った”作りから生まれる独特のプレイ感はしっかりと確認できた。
町や目的地ですぐイベントが起きるため,いわゆる「フラグ立て」の作業がなく,予想以上にゲームが進んだという印象だ。バトルも独特なシステムのうえ,“なんとなくボタンを押しているだけ”で勝てる難度ではない。グラフィックスのテイストと合わせて,「唯一無二」と言って良いタイトルだろう。
この後の展開も大いに気になるところ。ほかのキャラクターのシナリオも味わってみたいのだが,個人的には製品版でもまずはレオナルドを選んでプレイしたいと思っている。
「SaGa SCARLET GRACE」公式サイト
※画面写真はすべて開発中のものです
- 関連タイトル:
サガ スカーレット グレイス
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