「そうだ アニメ，見よう」第2回：異世界で繰り広げられるファンタジー群像劇「うたわれるもの 偽りの仮面」

　春アニメも中盤に突入し，視聴継続か切るべきかで頭を悩ます今日このごろ，読者の皆様はいかがお過ごしだろうか。さて，2回目となる今回のタイトルは，異世界ファンタジー「うたわれるもの 偽りの仮面」だ。原作はアクアプラスのコンシューマ向け同名タイトルで，制作を手がけているのはWHITE FOXである。前作「うたわれるもの」と世界観を共有しているが，主な登場人物や地名は異なり，本作だけを視聴しても十分楽しめる内容となっている。

「うたわれるもの 偽りの仮面」

　舞台となるのは，獣のような耳や尻尾，背中に翼を持つ人々が暮らす戦乱の世界。主人公はある日突然，その世界に記憶をなくした状態で投げ出され，怪物に襲われているところを少女・クオンに助けられる。クオンに「ハク」と名づけられた主人公は，旅の途中だという彼女に同行し，ふとしたことから知り合いになったウコンと名乗る男と，大国ヤマトの属国クジュウリの姫ルルティエの護衛として，ヤマトの帝都へ同道することに。
　この後，ハクはウコンが実はヤマトの重鎮・右近衛大将であることを知らされ，彼の隠密として帝都で活動を開始，さまざまな事件に巻き込まれていく。

　帝都でのストーリーは，原作ゲームがシミュレーションRPGということもあり，仲間集めパートともいえるエピソードがメイン。ヤマトの属国シャッホロの姫で槍使いの少女アトゥイ，ちょっと間抜けな元義賊のノスリとオウギ姉弟，各国を渡り歩く剣豪ヤクトワルトなど，個性豊かな面々がハクの人柄に惹かれて集まる。面倒なことが嫌いで怠け癖があるのに，妙に他人に好かれるハクと彼らが絆を深めていく様子が，ときにはコミカルに，ときにはしっとりとした演出で描かれている。

ハクの下に集まる個性的な仲間達。鎖の巫ウルゥル＆サラァナは押しかけ女房？

ハク達は豪快な風来坊ウコンで出会う

なぜかこの世界の住人はみな風呂好き

キャラクターの心理描写を重視

　最近の原作付きアニメは，心情描写やキャラクター同士の関係性を深めるエピソードなどを尺の都合上，削ってしまうことが多いが，本作はこの部分のボリュームが厚く，キャラクターへの感情移入を重視した作りになっている。ここを冗長と感じるか，必要な尺と考えるかで，本作への評価ががらりと変わってしまうわけだが，筆者は後者だと捉えた。

　例を挙げると，第18話「侵攻」でのエピソードがそれにあたる。故郷トゥスクルとヤマトとの戦が決まり，板ばさみで悩むクオン。彼女の葛藤を感じ取ったハクは，彼女を戦場へ連れて行かないと決めるが，肝心の本人の姿が見えず，探し回るハメになる。そんなハクの姿を陰ながら見守っていたクオンは人知れず，トゥスクルと戦う決意を固めていた。このエピソードは，原作には登場しないオリジナル回となるのだが，クオンとハクのお互いを思う気持ちが，セリフを一切使わずに表現された，アニメーション作品らしい回だと感じられた。

仮面に秘められた力が本作のテーマのひとつ

ハクとオシュトルの一騎打ちシーン

　「仮面の者（アクルトゥルカ）」と呼ばれる超常の力を持つ者の存在や，世界生成の謎，主人公に隠された秘密など，ほかにも見どころの多い本作だが，丁寧に描かれたキャラクター同士の群像劇こそが，アニメ版「うたわれるもの 偽りの仮面」の最大の魅力ではないだろうか。原作ゲームをプレイした人にもオススメしたい作品だ。

アニメとゲームが同時進行

　ちなみに，原作ゲームと本作では各キャラクターの出会いや，性格などがかなり異なる。アトゥイの戦闘好きはなりを潜め，ルルティエの耽美趣味は悪化しているといった感じだ。というのも，本作はゲーム版と同時進行で制作されており，厳密にはゲームの“アニメ化”ではなく，同じシナリオの別作品というべきタイトルなのだ。双方の同時進行にあたって，スタッフ陣もキャラクターと世界観のすり合わせに相当苦労したのだとか。

アニメ版ではかなりお淑やかになったアトゥイ

ルルティエの耽美趣味はより過激に

　そして，ネタバレになるので多くは語れないが，物語終盤にアニメとゲームでは大きな違いが存在する。この改変は，放送時に賛否両論を呼んでいたもの。2016年9月21日発売予定の続編「うたわれるもの 二人の白皇」につながる重要な部分なのでぜひ自分の目で確かめてほしい。

「うたわれるもの 偽りの仮面」アニメ公式サイト

放映データ
2015年10月〜2016年3月まで
全25話

キャスト
ハク：藤原啓治	クオン：種田梨沙
ウコン：利根健太朗	ネコネ：水瀬いのり
ルルティエ：加隈亜衣	アトゥイ：原 由実
ノスリ：山本希望	オウギ：櫻井孝宏
ウルゥル：佐倉綾音	サラァナ：佐倉綾音
マロロ：杉山 大	ココポ：米澤 円
モズヌ：拝真之介	キウル：村瀬 歩
カルラ：田中敦子	トウカ：三宅華也
アンジュ：赤﨑 千夏	ムネチカ：早見沙織
デコポンポ：大川 透	ボコイナンテ：中西としはる
アルルゥ：沢城みゆき	カミュ：釘宮理恵
ムックル：下山吉光	ホノカ：矢作紗友里
帝：木村雅史	ミカヅチ：内田夕夜
ライコウ：置鮎龍太郎	ヴライ：乃村健次
ウォシス：菊池幸利	トキフサ：志賀麻登佳
グンドゥルア：小松史法	ゼグニ：下山吉光
エントゥア：米澤 円	ヤクトワルト：江口拓也
シノノン：久野美咲	シチーリヤ：三宅麻理恵
ソヤンケクル：最上嗣生	ベナウィ：浪川大輔
クロウ：小山剛志

スタッフ
原作：うたわれるもの 偽りの仮面（AQUAPLUS）
監督：元永慶太郎
色彩設計：佐藤美由紀
シナリオ監修：菅 宗光
撮影監督：木村俊也
シリーズ構成：鴻野貴光
編集：木村祥明
キャラクター原案：甘露 樹／みつみ美里
音響監督：えびなやすのり
キャラクターデザイン・総作画監督：中田正彦
音楽：下川直哉／アクアプラス
プロップデザイン：鈴木典孝/岩畑剛一
オープニングテーマ／エンディングテーマ：Suara
美術設定：李　炫定/野村正信
アニメーション制作：WHITE FOX
美術監督：高峯義人
製作：うたわれるもの偽りの仮面製作委員会

■Blu-ray BOX 上巻

収録話数：第1〜12話
価格：3万4000円＋税
発売日：2016年3月30日
仕様：
収録時間【本編】288分＋特典映像
映像：カラー／1080p Hi-Def（16:9）／片面1層
音声：1ヶ 日本語（リニアPCM／ステレオ）
パッケージ：キャラクターデザイン 中田正彦 描き下ろしスペシャルBOX・スペシャルパッケージ仕様
映像特典：オリジナルエピソードムービー
前期ノンクレジットオープニング
前期ノンクレジットエンディング
PV／SPOT集
封入特典：
100Pスペシャルブックレット
キャラクター原案 甘露 樹 描き下ろしビジュアルカード
※仕様は変更になる場合がございます。

■Blu-ray BOX 下巻

収録話数：第13〜25話
価格：3万4000＋税
発売日：2016年6月29日
仕様：
収録時間：【本編】312分＋特典映像
映像：カラー／1080p Hi-Def（16:9）／片面1層（一部2層）
音声：1ヶ日本語（リニアPCM／ステレオ）
パッケージ：キャラクターデザイン中田正彦 描き下ろしスペシャルBOX
映像特典：
オリジナルエピソードムービー
後期ノンクレジットオープニング
後期ノンクレジットエンディング
封入特典：
100Pスペシャルブックレット
キャラクター原案 みつみ美里 描き下ろしビジュアルカード
特製スタッフ本 NEW
※仕様は変更になる場合がございます。