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印刷2016/02/18 00:00

プレイレポート

本日発売「いけにえと雪のセツナ」のプレイレポート。古き良きRPGの様式美を追求したゲームデザインが心に響く

 スクウェア・エニックスは本日(2016年2月18日),新作RPG「いけにえと雪のセツナ」PS4 / PS Vita)を発売する。
 同社が新たに設立したスタジオ,Tokyo RPG Factoryが,1990年代に隆盛を極めた国産RPGのプレイフィールを追求して開発したということで話題となっている本作。そのPS4版を事前にプレイする機会を得たので,レポートをお届けしたい。

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「クロノ・トリガー」のATB2.0をベースにした戦闘システム


 日本では1980年代の後半に「ドラゴンクエスト」(以下,DQ)や「ファイナルファンタジー」(以下,FF)シリーズによって,コンシューマゲームにRPGというジャンルが定着した。それに続く1990年代は,両シリーズに続こうと,後に名作と呼ばれるタイトルが数多く登場したほか,急激なハードウェアの進化によってより多彩な表現が可能になったこともあり,国産RPGの黄金時代と呼ぶにふさわしいものとなった。30代以上のゲームファンであれば,壮大なストーリーや魅力的なバックボーンを持ったキャラクター達,作り込まれたグラフィックスなどに胸を躍らせた記憶が残っているはずだ。

 本作ではそんな古き良きRPGのテイストを,ゲームを始めるとすぐに感じ取れる。とくに戦闘シーンが顕著だ。
 本作は戦闘システムに,スクウェア(当時)のRPGに導入されていた「アクティブタイムバトル」(ATB)が採用されている。正確に言うと,1995年に発売された「クロノ・トリガー」の「ATB2.0」をベースにしたものだ。

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 当時プレイした人には今さらとなってしまうが,ATBについて少し説明しておこう。
 戦闘が始まると,各キャラクターのATBゲージが溜まっていき(敵キャラクターのATBゲージは見えない),それが最大になったキャラクターから順にコマンドによる行動が可能(本作ではATBゲージが溜まったキャラクターの行動順を任意に選択可能)となる。行動が終了するとATBゲージが0に戻って,再び溜まり始めるという仕組みだ。
 ゲージが溜まる速さはキャラクターによって異なり,それを速めたり遅くしたりできる魔法なども存在している。物理攻撃か,それとも魔法か……などと迷っていると,敵に攻撃されるままとなってしまうので,単純なターン制のバトルとはひと味違った,緊張感のあるシステムなのだ。

画面下,キャラクターのパラメータの下にあるオレンジのゲージがATBゲージ。これがいっぱいになると,コマンドを入力可能になる
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「たたかう」や「魔法」といったコマンドを入力後,攻撃対象や使用魔法などを選ぶときにはATBゲージの進行が止まるが,オプションの「ATB設定」を「アクティブ」に変えると,その間もゲージが止まらない上級者向けの設定になる
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戦闘や装備など,操作の基本は,オープニングを兼ねたチュートリアルで覚えられる
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 このリアルタイム性の高いATBに,新たな戦略性を加えているのが「刹那システム」だ。これはATBゲージとはまた別の「SPゲージ」(刹那ゲージ)が溜まった状態のとき,コマンド選択後にキャラクターが動き始めたタイミングで[□]ボタンを押すと,その行動に追加効果が発動するというものだ。

各キャラのパラメータの右にあるのがSPゲージで,白く光っているとセツナシステムが使用でき,最大3回ぶん溜められる
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キャラが動き出したら[□]ボタンで発動。ゲージが輝いて特別なエフェクトが出ると刹那システム成功で,画面左に効果が表示される
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 SPゲージは,ATBゲージが溜まった状態での待機中や,コマンド選択後の行動,あるいは敵からダメージを受けたときに溜まるので,早く溜めるにはそれなりのリスクがともなうが,これをうまく使いこなせればボス戦などがが進めやすくなるのは間違いない。ATBゲージとSPゲージの溜まり方を把握できるようになると,駆け引きがかなり面白くなるという手応えもあった。

攻撃だけでなく魔法を使うときも刹那システムを発動できる。行動によって効果も違うので,いろいろと試してみるといいだろう
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 ATBや刹那システム以外にも,キャラクターの組み合わせによってさまざまな種類がある連携攻撃や,敵との位置関係に合わせた効果的な範囲攻撃の使用など,戦いに組み込める要素は多い。あまり考えなくてもゲームは進められるが,これらの要素を意識することで,より有利に戦える絶妙なバランスに設定されている。

「グラビデ」の魔法で敵を一か所に集めたところに,「回転斬り」で一網打尽に。こういった位置関係を考えた戦いができるようになると,ゲームがさらに面白くなる
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2種類のアイテムを組み合わせて行うキャラクターのカスタマイズ


 戦闘に加えてもう一つ,古き良きRPGのテイストを感じられたのが,各キャラクターが使用する「魔法」と,装備品である「法器」「法石」の関係だ。
 本作では「ケアル」「エスナ」「ファイア」といった,馴染みのある魔法に加えて,武器を使った特殊攻撃や,自動的に発動するサポート効果までが「魔法」としてまとめられている。これらはキャラクターの成長で身に付くのではなく,魔法の効果が秘められた「法石」と,それをはめ込むための「法器」を装備することで使えるようになるのだ。
 感覚としては「FFVII」の「マテリア」システムに近いかもしれない。法石を入手しさえすれば,キャラクターのレベルなどに関係なく魔法が使えるようになり,全員が装備できる法石ならば,戦況によって使い回せるというのも特徴の一つとなっている。

アクセサリーのような装備品である法器には,法石をはめ込むための「封穴」がある。法石には,刹那システム成功時にランダムで発生する「昇華」の効果も設定されている
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 法石の入手方法は少々特殊だ。本作では敵を倒したときにお金が手に入らず,敵が落としたさまざまな素材を村などにいる「魔導商会員」に売却することでお金を得るのだが,この売却した素材の内容によって,同時に法石も入手できるのだ。

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 欲しい法石があってもお金では買えないので,なかなかもどかしいわけだが,敵が一度にドロップする素材は複数あるので,「封穴を埋めることすらできない」といったような事態にはならなかった。敵を倒すときに「刹那システムをでとどめを刺す」「連携でとどめを刺す」など,特定の条件を満たせばドロップする素材が変わるようなので,お目当ての素材を探して,いろいろと試行錯誤してみるといいだろう。

ザコ敵を倒しただけでも,それなりの数の素材が手に入る。とりあえず売却しておけば,アイテムや装備品の購入資金にもなる
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新たな魔法が使えるようになると,戦闘時の選択肢が増え,戦略が立てやすくなる
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主人公と,いけにえの少女を待ち受ける数奇な運命


 冒頭からゲームシステムの話ばかりとなってしまったが,ストーリーについても触れておきたい。

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 本作の舞台となるのは,すべてが雪に覆われた世界。物語は,ヒロインであるセツナが,魔物を鎮めるための「いけにえ」として死地へ向かう旅に出るところから始まるが,冒頭から“まさか”の展開に驚かされるはず。ネタバレとなってしまうので詳細は書かないが,この数奇なシチュエーションにはなかなか興味をそそられ,プレイへのモチベーションは自ずと上がっていった。

ゲームは世界を移動する「ワールドマップ」と,村やダンジョンなどの「フィールドマップ」で展開していく。前者はあくまで移動用のマップで,敵は出現しない
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世界は雪に覆われているが,シーンによって天候には変化がある。フィールドマップでは時折木々から雪が崩れ落ち,主人公達が歩いた跡が残っていく
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イベントなどでもムービーが入らず,セリフのみで演出されている点はファミコンやスーパーファミコンのRPGを彷彿とさせる
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 音楽にもこだわりが感じられ,BGMがバトルなども含めて全編ピアノ曲に統一されているのが印象的だった。ヒロインであるセツナのバックボーンや,雪が降りしきるこの世界にもマッチしていて,今後サントラの発売なども期待したいところだ。

 今回は時間の関係でエンディングを見ることはできなかったが,製品版ではぜひ最後までプレイして,セツナや主人公の運命を見届けたい。冒頭で述べたように今回はPS4でのプレイだったが,PS Vita版で移動中や仕事の合間などに,少しずつ小説を読み進めるようにプレイしてもいいのではないだろうか。

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 実を言うと,筆者は近年の国産RPGにあまりプレイ意欲をそそられなかったのだが,本作はさほど抵抗なくゲームに入れて,プレイを進めるうち,その魅力にはまっていった。そうなった理由の一つは,やはり1990年代のRPGがベースになっていることだろう。 
 様式美ともいえるシステムに,新旧のプレイヤーがともに楽しめる世界観やシナリオを添え,さらに触っていて違和感のないインタフェースを備えたゲームデザインは,個人的にとても好印象だ。

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 筆者のような,リアルタイムで体験してきたゲームファンはもちろん,当時のゲームをあまり知らない人にもぜひプレイしてほしい。本作のようなRPGの作り方が注目されれば,今後の国産RPGが再び活気づきそうな予感がする。

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