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「あんぷらぐど☆げーまーず」第6回:複雑だがアツイ心理戦が楽しめる,海外発の本格“対戦格闘”カードゲーム「Yomi」
1991年にリリースされた「ストリートファイターII」を皮切りに,アーケードで一大ムーブメントを巻き起こした対戦格闘ゲームは,今でも高い人気を誇るゲームジャンルの一つだ。先週2015年7月17日から19日の3日間には,世界最大級の格闘ゲームトーナメント「Evolution 2015」がアメリカのラスベガスで開催され,その激闘に一喜一憂した読者も多いのではないだろうか。
そんな対戦格闘ゲームのエッセンスを,アナログゲームにうまく落とし込んだのが,今回紹介する対戦型カードゲーム「Yomi」だ。海外のデベロッパであるSirlin Gamesが開発したこのタイトルは,必殺技やコンボといったお馴染みの要素はもちろん,相手プレイヤーの行動を「読む」ことで対戦を有利に運んでいくという,格闘ゲームならではのメカニクスが忠実に再現されている。そう,タイトルのYomiとは,日本語の「読み」のことなのだ。
今回は,格闘ゲームファンならばハマることは間違いなしのこのタイトルを,基本ルールからじっくり紹介していこう。
「Yomi」公式サイト(英語)
さまざまな技を駆使して相手をK.O.せよ!
本作の基本ルールは,「自分の体力が0になる前に,相手の体力を0にすれば勝利」という,まさに対戦格闘ゲームそのもののとなっている。トランプと同じ52+2(JOKER)枚のカードで構成されたデッキは,それ自体が一つのキャラクターを表していて,各カードにはキャラクターの「技」が描かれている。この技によって相手にダメージを与え,先に相手を倒した方が勝ちというわけだ。
バトルは各ターンに手札(初期は7枚)の中から使用するカード(=技)を1つ決定し,伏せた状態で場に出す。そして,両者同時にオープンして技の勝敗を決める流れだ。カードの種類は「打撃」「投げ」「防御」「回避」の4種類があり,その組み合わせによって,どちらの攻撃が有効であったかが決まる。このときの判定は以下のとおり。
- 打撃は投げに勝ち,ダメージを与えられる。
- 投げは防御と回避に勝ち,ダメージを与えられる。
- 防御は打撃に勝ち,防御後は手札を増やせる。
- 回避は打撃に勝ち,回避後に反撃ができる。
ちょっと複雑に思えるかもしれないが,ようはジャンケンなのだ。それもそのはず,「打撃」「投げ」「防御(避け)」によって形作られる3すくみは,格闘ゲームの基本でもある。いわゆる“あいこ”になったときも,格闘ゲームと同じ仕組みで判定が行われる。「打撃」や「投げ」同士がかち合うと,より発生の早い技の勝ちとなるのだ。発生速度はカードごとに個別に設定されていて,同じカードであってもキャラクターによって違いがある。
例えば主人公Graveの「Q」のカード「Dragonheart(龍心拳)」は,なんと発生が0.0という本作で最速の発生速度を持っている。つまり,この技はほかの打撃に打ち負けることがない――格闘ゲームにおける無敵技を表現した技なのだ。格闘ゲームファンなら,ニヤリとできるところなのではないだろうか。
チェーンコンボや必殺技キャンセルで連続技をつなげ!
対戦格闘ゲームの醍醐味の一つに,複数の技をつなげて相手にダメージを与える「連続技(コンボ)」がある。本作でも打撃もしくは投げ技がヒットしたときに,一定の条件を満たしていればカードを重ねてコンボを決めることが可能だ。
コンボのつなぎ方にはいろいろなパターンがあるが,ここでは基本的な例を紹介しよう。もっとも基本的なのは,打撃の数字の小さいものから順につないでいく「チェーンコンボ」だ。例えば打撃で3〜5までのカードがあり,3の打撃で勝利した場合,4→5のカードへつなぐことで3枚分のダメージを与えられる。このほかにも技によって技のつながりを示すコンボ属性というものがあり,
- Starter:始動技。何かの技の後にこの技はつなげられない
- Linker:つなぎ技。技の前後を自由につなぐことが可能。
- Ender:締めの技。この技の後に別の技をつなげることはできない。
- Can't Combo:コンボに組み込めない技。何かの技の後につなげることもできず,この技の後に別の技をつなげることもできない。
という意味になっている。慣れるまでは難解に思えるかも知れないが,仕組みを理解してコンボをスムーズに決められるようになると戦略がグッと広がる。チェーンコンボからLinkerにつなぎ,最後にEnderで締めるといったことも可能で,キャラクターによっては多彩なコンボが生み出せる。
トランプでいうところの絵札――J〜K,そしてAのカードは格闘ゲームで言うところの「必殺技」が当てられている。その性能はさまざまで,先ほどの無敵技のように発生に優れる技やダメージが大きい技,あるいはガードされても不利にならない技など,通常技にはない強力な技となっている。
中でも,いわゆる「超必殺技」にあたるAのカードは強力だ。これをヒットさせれば,それだけで勝負をひっくり返せるような技が揃っている。ただし,Aのカードは単体では使えず,2枚以上で運用しなければならない。つまり簡単には使えないので,カードを溜めながら機会をうかがう必要があるのだ。
Aのカードは山札から自然に出てくるのを待つほかに,コンボを決めたり,同じ数字のカードをセットで捨てたりすることで,山札もしくは捨場から任意に拾ってくることも可能。Aカードが強力なキャラクターほど,カード管理が重要となる。格闘ゲームでいうところの,ゲージ管理の要素がここで再現されているわけだ。
格闘ゲームのメカニクスを忠実にアナログ化した怪作
本作は,これまで紹介したシステムのほかにも,「転倒からの起き攻め」「Jokerを使ったコンボ回避(バースト)」「必殺技による削りダメージ」といった,格闘ゲームファンにはお馴染みのシステムがいくつも用意されている。
キャラクターが持っている個性――特殊能力も,最初は意味が分からないかもしれないが,一度掴めば「なるほど」と思わされるものばかりだ。「一点読みからの超必殺投げを狙う投げキャラ」「1発のダメージは少ないが,連続技の制限が緩いコンボキャラ」「必殺技をガードさせれても,そのまま相手を投げられる固めキャラ」「相手の手札を見てから自分の手札を変えられる自動2択キャラ」などが,カードデッキとしてうまく表現されている。
より強くなるためには相手のキャラクターの弱点を把握する,いわゆるキャラクター対策も重要になる。相手の特殊能力を発動させない立ち回りはもちろんのこと,例えばキャラクターによっては特定のカード――例えば「防御」の枚数が少ないなど,明確な弱点が設定されているものが少なくないので,その穴を突くといった知識も求められるようになる。こういった「やり込むほどに強くなる」感覚はまさに格闘ゲームさながら。システムを知れば知るほど,その再現度に唸らされることになる。
その分,格闘ゲームをまったく知らない人には少々ハードルは高そうだが……逆に言えば一度ルールを把握しさえすれば,格闘ゲームの楽しさの“核”の部分を手軽に楽しめるタイトルとも言えるのではないだろうか。なにせ本作はカードゲームだ。レバーさばきの巧みさや,反射神経などは必要ない。それでいて,求められる「読み」の奥深さは,アクションが絡まない分だけ本物以上といっていい。その意味では,格闘ゲームを知らない人にこそ,プレイしてもらいたいタイトルだ。
なお,本作は日本未発売タイトルではあるが,Steam版やPCブラウザ版,iOS版も制作されているので,オンラインで遊ぶことも可能になっている。かつ,そちらは日本語化もされているので,リアルカードにこだわらないのであれば,こちらのほうがより気軽だろう。この記事で興味を持った読者は,まずはこのオンライン版に挑戦してみるといいかもしれない。
「Yomi」公式サイト(英語)
Steam版「Yomi」ストアページ
iOS版「Yomi」ダウンロードページ
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(c) 2013 Sirlin Games