イベント
「Nuclear War」から「クイーンズブレイド」まで歩み続けた40年。最新第8版「T&T」をリリースしたFlying Buffaloに,SPIEL会場で話を聞いてみた
「T&T」が初めて日本に紹介されたのが1980年代の後半のことなので,その当時のことを覚えている人は,(筆者を含め)今やかなりいい年になっている気がするが,ホビージャパンから発刊されているゲームブック「クイーンズブレイド」の原作が「Lost World」だと言えば,若い人でも「ああ,あの!」と思うかも知れない。
そんな歴史あるFlying Buffalo(なにせT&Tは今年で40周年だ)だが,このところどんな活動をしているかが,日本から見えにくくなっていたのもまた事実である。その同社が再び活発な動きを見せだしたのが2013年のこと。最新第8版「Deluxe Tunnels&Trolls」のプロジェクトがKickstarterによって実現し,2015年8月には海外でのローンチを迎えている。先の記事でお伝えしたように,同作はグループSNEと冒険企画局による日本展開も予定されているとのことである(関連記事)。
そこで,今回はそのデベロッパであるFlying Buffaloブースに押しかけて収録した,創設者であるRick Loomis氏のインタビューをお届けしてみたい。
Flying Buffalo公式サイト(英語)
「Nuclear War」の続編はゾンビもの?
4Gamer:
お忙しいところ,お時間をいただきありがとうございます。
いやしかし,これまた懐かしい箱が並んだブースですね。(展示されていた「Nuclear War」の箱を手に取りつつ)この作品も40周年なんですね。
Rick Loomis氏(以下,Loomis氏):
そうだね。「Nuclear War」は1967年にダグラス(Douglas Malewicki氏)が作ったんだけど,その権利を1975年に僕が買ったんだ。で,拡張セットの「Nuclear Escalation」を僕が作った。つまり,Flying Buffaloが「Nuclear War」をサポートし始めて,今年で40年ってことだね。
4Gamer:
「Nuclear War」は日本語版も出ていて,当時は随分遊ばせていただきました。記憶が確かなら「Nuclear Escalation」まで日本版があって,三番目の拡張セット「Nuclear Proliferation」は英語版を遊んだ気がします。
Loomis氏:
随分と楽しんでもらえたようで,なによりだよ(笑)。
4Gamer:
このゲームのリリース当時は,熱核戦争がまだ相応にリアルな可能性として感じられた時代でした。この続編や拡張セットの構想は,もうないのでしょうか。構図こそ当時と違えど,今もまた,核の脅威を感じる時代のように思いますが。
Loomis氏:
よく聞いてくれた。実はね,いま新しい拡張セットを作っているんだよ。
4Gamer:
え,マジですか?
Loomis氏:
うん,マジで。タイトルは「Zombie Nuclear War」といってね。システムも,もう考えてある。
4Gamer:
なるほど,ゾンビもの。それは驚き……というか納得のチョイスですね。40年経ってもブレがないようで,感服いたしました(笑)。
Kickstarterによって復活した「T&T」
4Gamer:
さて,40周年といえば「T&T」も今年で40年。最新第8版がKickstarterで始動したのが2年前の2013年でしたが,この経緯についてあらためてご説明をいただけますか。
Loomis氏:
おっしゃるとおり,第8版は2013年の1月にKickstarterで開始したプロジェクトなんだ。ありがたいことに,これはあっという間に目標金額を達成できてしまった。で,これが完成した第8版ルールブック。全部で380ページあるんだよ。
4Gamer:
「T&T」は日本でも有名ですし,多くの人がプレイしたRPGです。しかし,ソロアドベンチャーが充実していたタイトルでもあるので,そちらで楽しんでいたという人も多いはず。同作は日本語版の展開もあるそうですが,ソロアドベンチャーも順次出版されると考えていいのでしょうか。
Loomis氏:
もちろん,そういう計画はある。ただ,現状は出資してくれた人の元にルールブックを発送する作業に追われていて,なかなか次のステップにとりかかれないんだ。なにしろ,世界中から援助があったからね。でも,それが終わり次第,ゲームブックのようなソリティアはどんどん作ろうと思ってる。新作も作るし,復刻版も作りたいね。
4Gamer:
おお,またカザンの闘技場※で戦える日を,首を長くして待ちたいと思います。ちなみに,小説などはいかがですか。
Loomis氏:
実は短編集があるんだ。でもアメリカではあんまりウケが良くなくて。日本で出版できたら,とても嬉しいんだけど。
4Gamer:
これは(グループSNEの)安田社長に,ぜひにとお願いしておかなければなりませんね。
話を戻してしまいますが,第8版の制作にあたってKickstarterを利用してみて,感触はいかがでしたか。
※「T&T」世界に登場する有名な闘技場。「カザンの闘技場」というタイトルのソロアドベンチャーもある。
Loomis氏:
とても良かったね。アメリカはRPGの流行り廃りが大きいのだけれど,「T&T」をこうしてまた出版することができたことには,Kickstarterの存在がやはり大きいと感じている。それにゲームデザインの面でも,Kickstarterにはとても助けられたよ。なにしろ,プレイヤーが本当に欲しがっているものが何なのか,ダイレクトに分かるからね。
4Gamer:
まさにインターネットの力,というところでしょうか。
Loomis氏:
そうだね。小さな会社だけじゃなく,中規模の会社であってもKickstarterを利用するのは,とても良いアイデアだと思うね。
4Gamer:
なるほど。ところで,この会場にブース出展しているKickstarterの人に話を聞いたのですが,アナログゲームのプロジェクトは,目標金額達成率は90%近くある半面,70%がリリース期日に間に合わないとのことでした(関連記事)。どう思われますか?
Loomis氏:
耳が痛い話だよね。僕もリリース予定に遅刻してるから(苦笑)。でも4つの追加企画のうち,1つはちゃんと期日に間に合わせたから!
4Gamer:
それは,見事に70%のうちに入ってしまっていますね(苦笑)。
ところでFlying Buffaloのゲームの日本展開というと,こちらの「クイーンズブレイド」も印象的です。ちなみにLoomisさんとしては,これをどう思っているんでしょうか。なんというか……日本国内でもいろいろ賛否両論あったりしましたが。
Loomis氏:
初めて見たときは,驚いたね! 実はね,僕はホビージャパンが「Lost World」で何をするのか,よく知らなかったんだ。でも,仕上がってみたら,これじゃないか。とにかく,嬉しいことだよ。こんなに美しくて,素晴らしくて,驚くべき(beautiful, wonderful, marvelous)ゲームになるだなんて。
4Gamer:
そ,それは何よりです。最後になりますが,今後のFlying Buffaloの活動について,教えていただけますか。
Loomis氏:
まずは「T&T」第8版のサプリメントだね。すでにシティブックが8つほど進んでいるので,まずはそれから。あと,最初に言った「Zombie Nuclear War」も作っている。これから2年くらいは,ずっと忙しいだろう。
日本にはたくさんの「T&T」ファンがいるし,本当に感謝してるよ。自分が作ったゲームを楽しんでくれているというのは,デザイナーにとってとても嬉しいことだからね。だから僕としても,もっとたくさんのゲームをお届けできるように,頑張ろうと思う。
4Gamer:
ファンの一人として,ぜひ期待したいと思います。本日はどうもありがとうございました。
Flying Buffalo公式サイト(英語)
4Gamer内「Spiel’15」記事一覧
- 関連タイトル:
トンネルズ&トロールズ 第8版完全版
- この記事のURL: