レビュー
「戦場のヴァルキュリア リマスター」が本日発売。ギネス記録にも名を残した「戦ヴァル」の魅力を改めて紹介しよう
本作は,PS3用ソフト「戦場のヴァルキュリア」をPS4用に最適化したタイトルだ。オリジナル版の映像出力は最大720p/30fpsだったが,本作は最大1080p/60fpsにグレードアップ。なお,音声はオリジナルと同様になっている。
また,オリジナル版にはなかったトロフィー機能や,オリジナル版では有料DLCとして配信された追加要素をすべて搭載。さらに,ロード時間も高速化されている。
“昔の4Gamer”を知らない人はちょっと面食らう話だが,もともとはPCゲーム専門のゲーム情報サイトであった4Gamerが,コンシューマゲーム機(コンソール機,家庭用ゲーム機)の情報を取り扱うことになったのは2008年10月8日のこと。
オリジナル版の「戦場のヴァルキュリア」が発売されたのは,その半年前の2008年4月。例外的にこういった記事はあるが,そのような理由から4Gamerには「戦場のヴァルキュリア」のレビューやレポートは掲載されていない。そこで,今回は「そもそも『戦場のヴァルキュリア』とはどういうゲームなのか」を含めて,リマスター版を紹介したい。
CANVASシェーダが描き出す水彩画風のグラフィックスをフルHD画質で見られるようになった |
オリジナル版は対応していなかったトロフィー機能を実装している |
柔らかな画調で描かれる“戦争のシビアさ”
「戦場のヴァルキュリア」の舞台となっているのはヨーロッパにあるガリアという小国だ。なお,劇中の設定は実際のヨーロッパやガリア(現代フランスや古代イタリア北部など)とは大きく異なるものとなっている。劇中の征歴1935年は帝国と連邦による第二次ヨーロッパ大戦の真っ只中であり,中立を掲げるガリアに帝国が踏み込んできたことから,物語が大きく動き始める。
“架空の燃料資源が存在する近代ヨーロッパ”が舞台となる。シナリオはミリタリーがベースだが,超常的な力を操る人種が物語の鍵を握っている |
架空のエネルギー資源であるラグナイト鉱石。戦車の動力から爆薬の原料,肉体を賦活させる回復薬まで,その用途は広い |
設定からなかなかユニークな本作だが,ひときわ特異なのが独自開発の「CANVAS」シェーダを用いたグラフィックスだ。CANVASシェーダによって“輪郭線のズレ”や“射線による影の描写”などが表現された水彩画風のグラフィックスは,写実的表現では得難い牧歌的な雰囲気を演出してくれる。
その一方で,シナリオはヘビーな「近代ミリタリーもの」がベースとなっており,キャラクターの「死」はシビアかつドライに描かれる。また,架空のエネルギー資源「ラグナイト」や超常の力を操る「ヴァルキュリア」の存在など,ファンタジー的な要素は多く盛り込まれているものの,取り上げられているテーマは人種差別や大量破壊兵器による抑止力など,現実的なものとなっている。
「戦場のヴァルキュリア」が持つ魅力のひとつは,こういった「漫画的ながらリアリティに富んでいる」点にあるだろう。こう言うと若干の語弊を招くかもしれないが,トールキンやアシモフの著作にも似た背景の奥深さを感じられるのだ。
主人公はガリア軍の将軍を父に持つウェルキンという青年だ。本作のストーリーは,彼が率いる義勇軍第3中隊の第7小隊を中心に展開される |
キャラクター原案は本庄雷太氏。プレイヤーの部隊には約50人もの兵士が所属しており,その1人1人が個性的に描かれている |
さまざまなジャンルの“いいとこ取り”をした「BLiTZ」システム
前項では設定面やビジュアル的な要素について紹介したが,「BLiTZ(Battle of Live Tactical Zone systems)」というシステムを採用した戦闘システムもまた,かなり個性的だ。
BLiTZのベースにあるのは,「マップ上でユニットを動かして敵を攻撃する」というターンベースの戦術SLGとしてスタンダードなスタイルなのだが,「半リアルタイム」とでも言うべき仕様になっており,プレイヤーのターン時でも敵は行動を停止せず,視界に入ると迎撃行動を取ってくる。敵の視界を避けたりリロードの隙を狙ったりしながらの移動は,かなりアクションゲーム的だ。同様に,敵ターン時でもプレイヤーキャラクターは行動を停止しないので,高火力の兵士たちで防衛戦を張り,タワーディフェンスのように敵を倒していくという戦法も可能となっている。
プレイヤーの攻撃時は,TPSのようなシステムでターゲッティングを行うことになる。基本的にはヘッドショットで大ダメージを狙うか,ボディを狙って着実にダメージを稼ぐかの二択だが,プレイヤーが任意にターゲッティングできる仕様上「敵の足元を狙って,回避動作(匍匐)をされても無理矢理ダメージを与えていく」という行動も可能だ。
前述のようにアクションゲーム的な要素が色濃いのだが,同時に戦術シミュレーションゲームらしい詰め将棋的な戦術立ても(とくに少ターンクリアを目指す場合は)要求される。このアクションと戦術の要求がバランスよく,本作は「攻略」が非常に面白いゲームとして仕上がっている。
なお,自軍兵士のポテンシャル(キャラクター固有の特性)や主人公の“オーダー”という技能を使いこなせるようになると,「独りの歩兵で弾丸飛び交う戦場を駆け抜ける」というプレイも可能になってくる。ワンマンアーミープレイが可能な点や,詰将棋的なシステムでありながらポテンシャルが確率発動である点など,本作のバランス調整に“穴”があるのは否めない。しかし,熟考したロジックで敵陣を単独突破したときやハプニングを巧くかわしたときの爽快感を味わうと,こういった“穴”ですら愛嬌と思えてくるだろう。
キャラクターが持つポテンシャルを活用できるようになれば,遊び方が大きく変わってくる |
しかし,バッド系のポテンシャルは致命的なものも少なくない。例えば,スージーは“博愛主義”が発動すると敵への攻撃を取りやめてしまう |
評価の高さは世界的。100万本以上の売上とギネス記録の認定
「賞を得ていれば面白い」と言うわけではないが,本作は実際「名作」と言えるほど出来がよく,ハードなミリタリー物が好きな人やコミカルなキャラクター物が好きな人,歯応えのある戦術シムを楽しみたいゲーマーなど,幅広い層にオススメできる逸品だ。オリジナル版を未プレイの人は,この機会に「戦場のヴァルキュリア」に触れてみてはいかがだろうか。
なお,「戦場のヴァルキュリア リマスター」のパッケージには背景設定やキャラクターを一新した精神的続編「蒼き革命のヴァルキュリア」の“バトル体験版Ver.1.0”を入手できるプロダクトコードが封入されている。この体験版のプレイレポは別途掲載しているので,そちらもチェックしてほしい。
「戦場のヴァルキュリア リマスター」公式サイト
- 関連タイトル:
戦場のヴァルキュリア リマスター
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(C)SEGA
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