インタビュー
リアルを取り入れ,セオリーを壊した結果,誰も見たことのないゲームが生まれた。スクエニの藤澤 仁氏が「予言者育成学園 Fortune Tellers Academy」を作った狙いとは
「絶対予知」「ガード」「戦勝確率」が噛み合ったときに面白さが理解できるバトル
4Gamer:
FTAでは,予言テストに回答すると,敵性アルカナとバトルすることになります。以前少しお話を聞いたとき,「当初はここまでバトルに力を入れる予定ではなかった」とおっしゃっていましたが。
ドラゴンクエストのバトルの変遷を辿ると,「I」は敵1体,自分1体の1vs.1の戦いですよね。それが「II」になったとき,多vs.多になってバトルの面白さが広がりました。
その一方でFTAでは,最初から敵1体に対して,プレイヤー側は複数の使役アルカナを駆使して戦うと決めていました。ですから僕自身は,ドラゴンクエストよりもずいぶん簡略化したバトルになるだろうと思っていました。
しかし,バトルにプレイヤーが予知をするというアイデアを入れてみたところ,論理の構築がどんどん面白くなっていってしまって……その結果,作り込んでしまいまして,気づいたらバトルが予言テストと並ぶ一つの柱となっていたんです。実を言うと,バトルに一番コストがかかっているんですよ。
4Gamer:
「実はバトルが面白い」というプレイヤーも増えつつありますよね。私もそうですが。
藤澤氏:
そう,"実は"なんですよ(笑)。最初は「ん?」と思うんですよね。ゲームが好きな人ほど,最初はどう楽しめばいいのか分からない。バトルが始まったら,敵が弱いとすぐに戦勝確率が100%になってオートバトルで勝ててしまうから,「このバトル,必要なの?」と思われてしまう。
でも「絶対予知」と「ガード」をうまく使って「戦勝確率」を上げていくという部分がうまく噛み合ったとき,「ああ,こういうゲームデザインなのか」と理解できて,急に面白さに到達するんですよ。とくに強敵と戦って,死ぬや生きるやの展開になると抜群に面白い。ただ,今はまだ,そうした熱いバトルを体験できる場面が少ないんです。
4Gamer:
そうなんですよね。もったいない。
藤澤氏:
もう一つ指摘されがちなのが,「一撃死が多い」ことです。これは予知とガードを使わせるというゲームデザイン上,避けられないことなのですが,ドラゴンクエストを含むさまざまなRPGをプレイしてきた方は,「なんて大雑把なバトルなんだ」という感想を抱くようです。
この点に関しては,僕達から「こういう面白さがあるんです」という手引きをしなければいけなかったな,と反省しています。
4Gamer:
チュートリアルにも「ガードが重要」ということは書いてあるんですけどね……。
藤澤氏:
まあ,チュートリアルをきちんと読む人は多くはないですし,実戦を経てみないと実感として理解できないだろうとも思います。
4Gamer:
MPを管理しつつ,ガードで誰を優先的に守るべきか予想するのが面白いんですよね。それで,うまく戦勝確率が上がると嬉しい。
藤澤氏:
でも,Wガードでうまく予想を当てて二人を守ったのに,なぜか戦勝確率が下がった,という経験はありませんか? 「下がるわけないだろ!」って(笑)。
4Gamer:
あります,あります(笑)。
もう一つ,敵性アルカナの体力を残り1〜2割くらいまでうまく削っていたのに,ずっと戦勝確率が不明だったというバトルを経験したんです。「おかしいな,そろそろ戦勝確率100%になってもいいだろう」と思ったら,その直後に全滅させられてしまって。そのとき,戦勝確率は極めて正確なものなんだと実感しました。
藤澤氏:
その経験をすると,最初は魔法のように見えますよね。実際,戦勝確率はかなり複雑な仕組みになっているんです。
4Gamer:
なるほど。バトルに関して,ほかにこだわりはありますか。
藤澤氏:
アルカナの育成システムも,独自性が高い仕様になっていると思います。現在主流のスマホゲームは,ほとんどがお気に入りのカードに,不要カードを合成して育成していくというシステムを採用していますよね。その結果,プレイヤーは多数のカードを入手することになり,インベントリは常にあふれかえることになります。
そこで「カードがいっぱいなので,整理してください」みたいなメッセージを見ると,「もうプレイしなくていいか」という気分になりがちです。
4Gamer:
整理するのも結構面倒ですからね。
藤澤氏:
なのでFTAでは,そういったインベントリ管理の概念を全部なくそうと考えました。そこで,アルカナの数をタロットカードの小アルカナと同じ数の56体に限定し,そのかわりそれを全部育てましょう,というゲームデザインにしました。
これは僕個人としては,スマホゲームの「カードを消費させる」というセオリーを壊すという意味で結構な挑戦のつもりだったんですが,今のところこの点について「違和感がある」という意見はありません。むしろ「合成がないのが楽でいい」とおっしゃる方がいるくらいで,うまくハマった部分かなと捉えています。
4Gamer:
56体と数を限定してしまうと,すぐに集まってしまうので,プレイヤーのモチベーションが持続できなくなるという危惧はなかったのでしょうか。
藤澤氏:
その点に関しては,育成方法でカバーしようと。今はランクとレベルという2軸の育成ですが,今後はバリエーションが増やしていきたいと考えています。たとえば武器を持たせたり,衣装を変えたり,属性を追加したり……といったように,56体をプレイヤーの好みに合わせて育成できるようにしていく予定です。
4Gamer:
アルカナの数は今後増えることはないのでしょうか。
少しだけ増やす予定があります。ただ,ゲームのバージョンが上がったから追加で10キャラ,20キャラみたいなことにはならないと思います。
あとは皆さん,アルカナのフレーバーテキストをきちんと読んでくれていますね。「このアルカナと,このアルカナが,こういう関係で」みたいなところまで把握してくださっていて。実は結構な時間を費やしてアルカナの世界の設定を練ってあるので,興味を持っていただけてありがたいことです。
4Gamer:
私自身は,サリムとミルシュカの師弟関係が印象深かったですね。私のプレイでは,この2体が最強メンバーに選出されることが多く,実際強いんですけど,フレーバーテキストを読んだら実は師匠と弟子だったという。
藤澤氏:
その2体は人気が高いですね。さらに上のランクS3に到達すると,各アルカナの新たな側面が明らかになったりするケースもあります。
また,アルカナについてよく聞くのが,「こんなちゃんとしてるのに,どうして人間を喰うんだろう」という疑問ですね(笑)。
4Gamer:
確かに,そこは気になる部分です(笑)。
藤澤氏:
その点については,サービスが長く続いていけば,いつかきちんと理由を説明できる機会もあると思うので,そちらを楽しみにお待ちいただければと思います。
スマホゲームのセオリーを壊した結果,FTAのプレイサイクルが生まれた
4Gamer:
FTAのストーリーは,予言者育成学園の「ミステリーリサーチ部」を舞台としたミステリー小説仕立てになっていますが,これは最初から決まっていたのでしょうか。
藤澤氏:
実を言うとバトルと同じく,当初はこのゲームでストーリーを重視するつもりはなかったんです。あくまでも予言テストがメインで,ストーリーは,それを支えるために必要なものであると。ですから,表現方法についてはずっと未定になっていて,僕自身はドラゴンクエストのように,ト書きがなくキャラクターのセリフだけでストーリーが進んでいく形式──僕らは「キャラ劇」と呼んでいます──になるのかな,と考えていました。
4Gamer:
その方向性を転換するきっかけは何だったのでしょう。
藤澤氏:
FTAのプランナーが「小説形式がいいんじゃないか」と言い出したことですね。その理由は,藤澤がもともと小説書きだったから,というものです。
また,本当に小説のような感覚でストーリーを読めるのであれば,それは新しいスマホゲームのスタイルとして提案になるのではないかという思いもありました。
4Gamer:
ストーリーを読むことと,ゲームのプレイが切り離されているところも新しいと感じました。極端に言うと,ストーリーを読まなくともゲームの進行に支障はないですよね。
藤澤氏:
そうですね。あえてそうしたのには,二つ理由があります。
一つは,これもセオリーを壊そうとした結果です。FTAを企画するにあたり,いろんな方からスマホゲームにおけるセオリーをいくつも教わったのですが,その中に二つ印象的なものがありました。
一つは「プレイサイクルが明確でなければいけない」というものです。たとえば,ストーリーを読んだ→そしたらボスが出てきた→ボスを倒したいけれども勝てない→だからバトルでレベルアップする→そのためにはスタミナが必要だ→スタミナを回復しよう→……といったサイクルをうまく作れるとプレイの動機につながる,という意味です。
そしてもう一つは,スマホゲームのプレイヤーは,あまりテキストを読んでくれないというものです。
4Gamer:
どちらも「ああ,確かに」という感じですね。
藤澤氏:
僕はあまのじゃくなので,セオリーと言われると反対のことをやらなくてはという気分になってしまうので(笑),ならばテキストいっぱいのゲームにしてみようと。
またプレイサイクルについても,確かに合理的で理にかなっているけど,なんとなく面倒くさいと思ってしまったんです。僕らは何よりも予言テストを楽しんで欲しいわけですから,そこに付随するバトルやストーリーは,任意に遊んでもらって構わないと思ったんです。なのでストーリーは読まなくてもプレイに支障が出ないようにし,バトルも今やらなくていいように「取り置きバトル」を用意しました。そうやって,セオリーに沿っていれば当然プレイサイクルの中に組みこむべきものを,少しずつ分断したんです。
4Gamer:
セオリーを壊した結果,今のFTAのスタイルが生まれたと。
ええ。自分自身でもスマホのゲームで遊んでみて行きついた一つの結論は,まずはゲーム自体を好きになってもらわなくてはならない,ということでした。さらに深く,長く遊んでもらえるかはその先の話なので,順番をちゃんと踏まえましょうと。
なので,ストーリーはゲームそのものや世界観を「好きになってもらうためにあるもの」だと考えています。お金を払わなくても誰でもストーリーが読めて,世界観に触れて好きになってもらう。そうやってファンを増やしていけたほうがいいと。
4Gamer:
そうしたFTAの設計は,私のライフスタイルにピッタリ当てはまっていて,日中はちょっとした空き時間にPP(スタミナ)が溜まっていたら予言テストをやり,夜など比較的時間のあるときにストーリーを読んだり,取り置きしていたバトルを消化したりといった楽しみ方をしています。結果として,1日のうち結構な時間をFTAに費やしていますね。
藤澤氏:
それに加えてプレイヤー同士の予言テストの情報交換を見だしたりしたら,あっという間に時間が経ってしまいますよね(笑)。
4Gamer:
そうなんですよね……。面白いんだけど,予想に反して時間食いのゲームなので戸惑っています。
さて話がFTA全体の設計に及んでしまいましたが,ストーリーについてもう少し教えてください。プレイヤーの反響はいかがですか。
藤澤氏:
非常に好評です。FTAの中では,ストーリーに対する評価がもっとも安定して高いかもしれません。1話2分で読めるようにしたという部分が功を奏したのかもしれませんが,「先が気になる」という感想をたくさんいただいています。物語の良し悪しは個人の資質が如実に出てしまう部分なので不安視していましたが,まずは一安心しています。
4Gamer:
ストーリーのベースとなる世界観は非常に暗くて重たいですよね。敵性アルカナの襲来によって,人類が滅亡の危機に直面している中,アルカナを使役できる予言者が何とか一筋の光になっているという。
その一方で,主人公達ミステリーリサーチ部の面々のやり取りは,明るく楽しいものになっているというギャップがありますけれども。
藤澤氏:
僕がこう言うのも何なのですが……それってすごく“ドラクエっぽい”んですよね。世界は破滅に瀕しているけれども,そこにいる人達は自分達と同じように生活をしていて,具体的な人間関係もあって,ツラいと感じる日もあれば楽しく過ごせる日もある。そういった人間らしい温度感と,世界で起きている一大事件とのミスマッチが“ドラクエチック”で,多くの人に受け入れられている部分なのかな,と感じています。
4Gamer:
そういった部分は,ドラゴンクエストの仕事の中で身についたものでしょうか。それとも,もともと藤澤さんがそういった物語が好きだったのでしょうか。
藤澤氏:
どうなんでしょうね。そこまで自己分析はできていないのですけど(笑)。
ただ,藤澤は今でこそディレクターだったりプロデューサーだったり色々なことをさせてもらっていますが,本分はストーリーライターだと思っています。なので,文章で表現するストーリーとして効果的な内容というのは,掴まえられているのかなと。
さっきも少し話しましたが,藤澤は昔から本読みで,みんなが悟空や桜木花道に夢中だった時代,僕のヒーローは村上春樹と宮本輝でした。そんな青春時代を過ごしてきたから,物語を作る下地はその頃に形成されたんじゃないかと思います。
4Gamer:
第2章は,冒頭からは予想できないような意外な展開が繰り広げられて印象的でした。
藤澤氏:
そうですね。実は第2章は,FTAがどんなゲームなのかを示すために,プロトタイプとして最初に書いた話なんですよ。ホラー調で謎解きがあって,キャラクターは明るく,最後には救いがある。まさにFTAの物語の縮図なんです。
4Gamer:
そして第2章は,主人公が非常に地味ですけれども。全然活躍しない(笑)。
藤澤氏:
それについては,今後ますますそうなっていくと思います(笑)。FTAはRPG的な英雄譚ではなく,現代的な群像劇として描いていければいいと思っているので,必ず主人公に見せ場を持たせようとはしていません。ただ、各章を読了したときに得られる称号が,その話の中での主人公の立ち回りを表しているんですけど,やや小ネタ含みなものもありますので,そちらも楽しんでいただければと。
4Gamer:
ちなみに,ストーリーに関して何か“意外な反響”はありましたか?
藤澤氏:
ユーザーインタフェース周りの苦情をまったく聞かないことが,意外と言えば意外ですね。
4Gamer:
どういう意味で意外だったのでしょう。
藤澤氏:
小説を読むというのは,テレビを観たり漫画を読んだりすることとは性質が違って,万人向けの趣味ではありません。なので,小説形式で物語を読むことに抵抗のある人も相当数出てくるだろうと覚悟していたのですが,予想以上にストーリーを楽しんでくれている方が多いようです。とくにデータを見ると,毎日遊んでいる方のほとんどが,きちんとストーリーを読んでいるという結果が出ています。これは僕達からすると異常事態とも言える状況なんです。
非プレイヤーとも予言テストの話題を共有できる公式サイト「東方見聞録」
公式サイトの「予言者育成学園 Fortune Tellers Academy」についても教えてください。これもチャレンジの一つかと思うのですが。
藤澤氏:
僕自身がそうなのですが,世の中にはデータマニアの人っていると思うんです。スポーツ観戦好きに多いと思うのですが,過去の統計を眺めて,それだけで半日楽しめたりするような。
そして,おそらくFTAのようなゲームが好きな人にも,そういったデータマニアが多いんじゃないかと考えたわけです。せっかく多くの皆さんが集まって意見をやり取りするゲームを作ったのだから,その傾向や分布をデータとして集約し確認できる場を作ろうと。
4Gamer:
なるほど。
藤澤氏:
そしてもう一つ,昨今は情報共有が当り前の時代ですが,そんな中,相手が同じゲームをやっていなければ話題を共有できないというのは,あまりに遠いなという感覚があったんです。
そこで中間的に情報だけを置いておく場所があれば,FTAをやっていない人にも「こんな問題が出ていたよ」と情報共有ができます。なので「東方見聞録」は,僕にとっては絶対に必要なものだったのですが,当初は必要性を疑問視する声もなくはなかったです。ですが、実際に毎日のPVも非常に多く,当初の狙いは当ったのかなと捉えています。
4Gamer:
回答者の分布を見るかぎりでは,プレイヤー層は20代と30代が中心ですが,これは狙いどおりでしょうか。
藤澤氏:
そんなことはないです。現在はスマホ人口分布がそのまま出ているように感じますが,ゲーム的には“ドラクエ世代”の40代や,もっと上の年代でも楽しめる内容のはずなので,今後はもっと高い年齢層に向けて打ち出していきたいですね。すべての問題で年代比が均等になるというのが理想的です。
4Gamer:
逆に10代以下が増えることで,その親御さん世代が増えるかもしれませんね。FTAの話題で家庭内が盛り上がって。
私だけかもしれませんが,FTAを遊んでいると,小学生の頃に家族と一緒にテレビのクイズ番組を見ていたことを思い起こすんですよね。
藤澤氏:
すごくよく分かります。そうやって家族で楽しんでいるという声は届いています。「子どもとの会話が増えました」と聞くと,「すこしは社会に貢献できたな」と嬉しくなりますね。人と情報を共有したくなるという部分は,本当にうまく機能していると思います。
4Gamer:
そのほかプレイヤーと藤澤さんやスタッフとの交流手段として,ゲーム内や東方見聞録で読める「予言Times」が用意されていますが。
藤澤氏:
あれは単なる苦肉の策だったのですが,不思議な好評をいただけたようでよかったです。
スマホのゲーム,それもFTAのような新規かつ小規模のタイトルでは,情報発信という意味ですごく不自由を感じています。その一方で,僕達がどういう気持ちでゲームを作っているのか聞きたいという方も大勢いらっしゃいます。
そこで始めてみたのが「予言Times」です。自分達がどんな思いを込めているのか,どうしていきたいのかを伝えることで,今後の展開に期待してくださる方がたくさんいたので,やってよかったなと思っています。
また,ユーザーサポートのスタッフからもよく言われるのですが,ほかのタイトルと比較して,とにかくプレイヤーの皆さんの反応がとても暖かいんですよ。応援してくださる方が多いことに助けられているタイトルだなと思います。
4Gamer:
今後順調にプレイヤー数が増えて,FTAチームの規模が大きくなったら,たとえばネットで生放送を配信するなんてこともあるのでしょうか。
藤澤氏:
ぜひやりたいですね。
またFTAは,リアルイベントとも相性がいいはずだと思うんですよ。なので,ゆくゆくは会場を借りてリアル予言大会みたいなこともやれたらいいなと思っています。
ただ,そこまでになるには,まだまだ力不足です。ぜひ皆さんのお力を借りて,一緒にFTAを盛り上げていきたいです。
4Gamer:
現状,プレイヤー数の推移はどうでしょうか。
藤澤氏:
ネット上でも「面白いから一緒にやろう」という書き込みを頻繁に目にするようになってきて,口コミで始めてくださったんだろうという方が,毎日入ってきています。
注目しているのは,遊んでいる人の数と比較して,その熱量が非常に高い点です。この熱量をもっと多くの人に広げていけるようにしなければなりませんし,サービスを維持していけるだけの収入モデルも構築しなくてはなりません。現状は,そこが必ずしもうまく回っているわけではありませんので,遊んでくださっている皆さんへの責任として,サービスを継続できるようにしていかなくてはならないと考えています。
レイドバトル「大アルカナ襲来」の登場で,ゲームの印象が大きく変わる
4Gamer:
それでは,直近のFTAの展開について教えてください。
藤澤氏:
おそらく,皆さんが疑問に思っているのは,「何のために使役アルカナを集めて育成しているんだろう」ということだと思います。たまに強い敵が出てくるから負けないように育成しているけど,コレクション以上の本質的な理由が見出せない。この点に関しては自分達も自覚しており,その疑問に対する答えの第1弾を,3月中旬に予定しているアップデート、バージョン1.1にて披露します。そこで「ああ,こういうゲームだったのか」と思っていただけるのではないかと思います。
4Gamer:
可能な範囲で内容を教えてください。
藤澤氏:
FTAの世界では,「国家戦勝プラン」をもとに,世界規模で予言者の数を増強しています。それは予言者がアルカナを使役して戦うという,敵性アルカナに唯一対抗できる手段を得たからです。
しかし,バージョン1.1で再び世界は一変し,これまでの敵性アルカナを超える強大な敵が人類に襲いかかります。この新たな敵が,これまでにも言葉だけゲーム中に登場していた「大アルカナ」です。
大アルカナは,使役アルカナと比べると何十倍も大きい存在なので,予言者が束になって迎撃しなけれなりません。そこでプレイヤーは,ゲーム内の学級単位で大アルカナと戦うことになるわけです。
4Gamer:
ゲーム的な言葉で表現すると,大アルカナと戦うレイドバトルコンテンツが登場すると。
藤澤氏:
はい。学園は戦意高揚のため,学級単位,個人単位の貢献ランキングで上位に入った生徒に,特別な報酬を与えます。最高の報酬は10連召喚でのみ手に入る「月のかけら」12個で,SSランクの使役アルカナ1体が確定で入手できます。
4Gamer:
報酬が良いということは,難度もそれなりに高くなりそうですね。
藤澤氏:
大アルカナは「障壁」,つまりバリアで守られています。この障壁は,使役アルカナの与えるダメージで破壊できるのですが,破壊するまでは大アルカナへのダメージの大半を吸収してしまいます。ですが,障壁への対抗手段はあり,障壁を一撃破壊できる必殺技を持つ「守護天使」という存在が世界に現れます。
アップデート後,大アルカナが現れるまでには数日の猶予がありますので,プレイヤーはその間にイベントをクリアして守護天使を入手/育成して,来たるべき大アルカナ戦に備えるという流れになります。
今は,このゲームに対して「時間に縛られず遊べる」とおっしゃる方も多いですが,ちょっと印象が変わってしまう部分かもしれません。
4Gamer:
というと,時間制限のようなものがあると。
藤澤氏:
ほかのプレイヤーと足並みをそろえるため,時間割が事前に発表されます。その時間割を見て,各自のタイミングで参加できそうなチャンスを見つけて大アルカナと戦うことになります。なかなかタイミングが合わない場合もあると思うのですが、ぜひ「参加できる時に楽しもう」という姿勢で臨んでいただければと思います。
4Gamer:
守護天使は必ず必要なんですか?
藤澤氏:
守護天使なしで使役アルカナだけでも大アルカナと戦うことはできます。ただ,大アルカナは1回のバトルでのターン数が決まっているので,効率良く障壁を破壊して戦うためには,守護天使がいた方が圧倒的に有利ではあります。
4Gamer:
守護天使はどうやって育成するのでしょう。
藤澤氏:
使役アルカナと同じく,入手を重ねることでランクが成長していきます。ただし手に入るのはランクAのみなので,育成もランクSが上限ということになります。
ただ、守護天使をランクSにするのはなかなか困難です。これに関しては,どこまで育てるのかは,プレイヤーごとの遊び方次第になると思います。
ともあれ,大アルカナとのバトルはかなり白熱する仕上がりになっていますので,ご期待いただければと思います。
4Gamer:
そのほか,バージョン1.1でアップデートされる要素はありますか?
藤澤氏:
細かい使い勝手の部分を向上させています。たとえば起動するたびに「本日のプリント」が表示される,予言テストで不正解を出すたびに「とらんす一味」の演出が表示されるといったところをスキップできるようにしたり,表示されているべき情報が出ていなかったりする部分を改善し,完成度と軽快感を高めています。こういった改善はバージョン1.1に限らず,随時行っていきます。
4Gamer:
それこそ「ドラゴンクエストX」の“地味な修正点”ですよね。
藤澤氏:
そうですね(笑)。地味というのはあんまりいい言葉ではないですが,本当の意味での使い勝手の良さというのは,そこまで細かい部分に目が行き届いたときに初めて生ずるものだと思っています。
4Gamer:
分かりました。それでは今回のバージョン1.1以降,どんなコンテンツを追加していくのか,お話できる範囲で教えてください。
一つは,アルカナの育成に関するものです。今は56体すべてを均等に扱うシステムになりすぎているので,もう少し「推しアルカナ」を表現できるようにしたいなと。
4Gamer:
たとえばお気に入りを設定できたり,みたいな感じでしょうか。
藤澤氏:
ええ。今は,ほかのプレイヤーの救援をするときも,どのアルカナで行っているのか分からない状態ですよね。せめて,どのアルカナで救援に行くかくらいは指定できるようにならないかと。
もう一つは,おしゃれコンテンツですね。たとえば自分のキャラクターの髪の色を変えたりできるようするとか。また,そうやってカスタマイズしたキャラクターを,ほかの人に見てもらえるような場面を増やしていきます。あとは……ひたすらストーリーを書きます(笑)。
4Gamer:
ストーリーは今後も藤澤さん自身が書くのでしょうか。
藤澤氏:
ええ,いろいろ試行錯誤はしたのですが,これだけはやはり自分でやらなければいかんと。
そんな台所事情もあってですが,第5章からは2週に1章のペースを想定しています。ただ今のところ,ストーリー以外にもあちこち手が掛かっている状態なので,ストーリーを楽しみにしてくださる方には申し訳ないのですが,今後配信が遅れてしまった時には何卒ご容赦ください,と今の内からお伝えしておきます。
4Gamer:
分かりました。それでは最後に,FTAに注目している人に向けて,メッセージをお願いします。
藤澤氏:
意図した部分ではあるのですが,「とにかく変わった、不思議なゲームだ」という点で定評のあるゲームとなっています。
ゲームに触れることで世の中で起きていることを知り,それについて少しだけ考える機会を持つことで日常生活が少しだけ楽しくなる,そんなゲームです。
家族や友達,グループで遊ぶことで俄然面白くなるという評価もいただいていますので,ぜひ誰かを誘って,一緒に世界初のリアル連動ゲームを体験していただければ幸いです。
4Gamer:
ありがとうございました。
インタビュー中藤澤氏が,「思っていた内容と違った」という感想をFTAに対して抱く人がいることに言及しているが,実は筆者もそう思ったうちの一人である。というのもこのタイトル,初報ではバトルについて一切触れていないからだ(同時に公開されたプロモーションムービーにはチラッと出てくる)。
そのため,以前掲載したプレイレポート用の取材では,「未来を予想して,その正解率を競うクイズのようなものか。面白そうだな」「有名なクイズゲームと言えば……」などと思いをめぐらせながら,スクウェア・エニックスに向かったのである。
しかし,プレイ前のプレゼンで藤澤氏が口にしたのは,「このゲームには予言テスト,バトル,ストーリーという3つの柱があります」という言葉。「ん,ストーリーはともかくバトルってなんだ? プレイヤー同士で正解率を競うんじゃないのか?」と戸惑ったことを今でもよく覚えている。
ところが,そのバトルがめっぽう面白かったのである。正直なところ,カード4枚が並ぶレイアウトを初めて見たときは,「これまたレガシーな……」と思ったものだが,藤澤氏のレクチャーに従ってプレイしていくうちに,「これは敵の行動を予想し,4人の使役アルカナのうち,誰を優先的にガードするべきか決めるという遊びなんだ」と気付き,その面白さを理解することができた。
藤澤氏から直々に遊び方を教えてもらえたことに加え,そのバトルが少し格上の敵との戦いだったことも幸いした。戦勝確率がなかなか100%にならない長丁場の戦いの中,MPが切れ,ガードもできなくなる。その状態で,あと一撃食らえば確実に倒されてしまうという緊張感の中,敵の攻撃を回避する使役アルカナ。終わらない苦境にタイミングよく登場するフレンドの救援……。たび重なるピンチとラッキーの繰り返しに,藤澤氏も「これは今まで見た中でも,かなり白熱したバトルですよ」と一言。
結局,善戦虚しく筆者の使役アルカナは全滅させられてしまったのだが,初プレイで本作のバトルが持つ魅力のほとんどを体験できたことは,まさに幸運だった。そうでなければ,最初に抱いた見た目の印象を引きずったまま,この記事を書いていたかもしれない。
肝心の予言テストは,まだサービス前だったこともあって,その時点でプレイできたのは,すでに答えが判明しているものばかり。その中の一つが,年末の某人気テレビ番組で,誰が最初に特定の行動を取るかという問題だった。筆者もその番組は観ていたのだがまったく覚えておらず,「あれ,誰でしたっけ?」と口にしたところ,その場にいた面々でしばらくああでもない,こうでもないと盛り上がった。
そのとき確信したのが,「ああ,このゲームは人と情報交換すると面白いんだ」ということである。そして今,ネットの掲示板やSNSでプレイヤーが情報交換で盛り上がっている様子を見て,またインタビュー中の「リアルの遊びに注目した」という藤澤氏の発言を聞いて,それは間違っていなかったな,と再確認できた。
バトルの面白さは,そこに気づけるかどうかが偶然に左右されやすいので,勧める理由としてはなかなか厳しいのだが,予言テストに関しては,他人と情報をやり取りすることで面白さが2倍にも3倍にもなるFTA。このインタビュー,あるいはプレイレポートを読んで興味を持った人は,ぜひ家族や友人知人を誘って,予言テストで予想が当った外れたと盛り上がってほしいと思う次第である。
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