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VR空間を歩ける自由度をもたらす「ルームスケールVR」はどこがどう凄いのか? 発売直前のHTC Viveを体験してきた
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印刷2016/03/01 00:00

テストレポート

VR空間を歩ける自由度をもたらす「ルームスケールVR」はどこがどう凄いのか? 発売直前のHTC Viveを体験してきた

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 仮想現実(VR:Virtual Reality)といえば,昨今のVRブーム火付け役となったOculus VRの「Rift」と,その好敵手(と書いて「とも」と読む)的な「PlayStation VR」の2強体制で業界が動いてきた感があるわけだが,昨年はそのVR対応ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の第3勢力が数多く登場して,VRブームをさらに盛り上げてくれた。そんないくつかあるVRHMDの第3勢力のなかでも,「2強」に負けない強い競争力と独特の魅力を持っているのが北米の有力ゲームスタジオであるValve SOFTWAREがコンセプトデザインを担当した「Steam VR」だ。

 実際の製品開発と製造は,携帯電話メーカーとして日本国内でも認知度を上げている台湾の電子機器メーカーHTCが担当し,その製品名は「Vive」となる。Valveが提唱した「Steam VR」コンセプトを一番最初に具現化したのがHTCのViveである……そんな理解でいいだろう。

 2月29日から購入予約の受け付けが開始されることが予告されており,先日2月21日付で北米での価格が799ドルと発表もされて,話題沸騰中のViveだが,今回,メディア向けのVive体験会と関係者インタビューが行われたのでその模様を前後編でお伝えすることにしたい。

 まずは,Viveの最新版として発表されている「Vive Pre」を使った体験レポートからお届けすることにしよう。

体験会の模様
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ViveがRIftやPlayStation VRと異なる点として訴求する「ルームスケール VR」とはなにか


Viveシステムにおける位置検出用のユニットとなる「Base Station」。これを対角線上に配置することで部屋サイズの仮想空間内での被験者の動きを正確に検知できるようになる。Base Stationはカメラではなく赤外線レーザーの照射装置である
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 Viveでは,縦横3m×4m,対角5mの部屋の範囲にいるプレイヤーの頭部(HMD)の向き,位置までをリアルタイムに検出することができるのがウリで,この範囲であれば自由に歩き回ることができる。Oculus RiftやPlayStation VRでも,HMDの向きだけでなく,HMDの位置を検出することはできるが,位置検出用のセンサーは一箇所に設置するシステムので,それほど大きく広く被験者が動き回ることを想定はしていない。いうなれば,基本的には椅子に座りながら体験するVRコンテンツを想定したものであり,被験者が動くとしてもせいぜいその椅子の周辺までを想定したものであった。

 ところがViveの場合は部屋の2か所に位置検出用のユニット(「Base Station」という名称)を設置する方式であり,部屋全体を被験者の移動可能範囲として想定したVRコンテンツが実現できるのだ。2か所に設置する位置検出用ユニットは互いに対角に設置することが奨励されているのだが,これは,被験者が,ある一つの位置検出用ユニットに対して後ろを向いたりしても正確に被験者の向きと位置を検出できるようにするためである。

ViveのHMD(左)と専用コントローラ(右)。商品セットには,HMDと二つのコントローラ,そしてBase Stationが2基が付属する。HMDの凹み部分に赤外光センサーが実装されており,Base Stationから照射された赤外線レーザーはここで受光される
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 Valve/HTCでは,この部屋全体を動き回れるVR体験のことをとくに「ルームスケールVR」と呼称している。椅子の周辺を可動範囲として想定しているRiftやPlayStation VRはあえていうならば「チェアースケールVR」といったところか。

ルームスケールVRのイメージ図。Vive/SteamVRの開発者向けドキュメント(PDF)の挿絵より。イラストでも部屋を一生懸命片付けたあとが見られるのが微笑ましい
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ViveのルームスケールVRを体験


 4Gamerからはaueki氏と筆者の二人でデモを順番に体験させてもらったのだが,一人めのaueki氏が体験したのはVRコンテンツ制作集団WEVRが手がけた「TheBluVR」公式サイト)と,VRゲーム専門スタジオOwlchemy Labsが開発した「Job Simulator」公式サイト),そしてGoogleが開発した「Tilt Brush」公式サイト)の三つだ。
 TheBluVRは,深海に沈む木造船の甲板上で水中遊泳を楽しむダイバーに扮した被験者が,海中のさまざまな海棲生物との遭遇を楽しむ内容だ。体験の最後には巨大なクジラが泳いできて,被験者の視界を覆い,被験者自身の何倍もある大迫力の巨体を実感することになる。ゲーム的な要素はほぼなしで,沈没船の甲板上を自由に歩き回れることに主眼が置かれたVR体験だ。

海中散歩が楽しめる「TheBluVR」。この沈没船の上を歩きながら海棲生物との戯れが体験できる
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巨大な鯨との遭遇が体験のクライマックスだ
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 なお,VRHMDを被っているプレイヤーは現実世界が見えていないので,部屋の壁に激突してしまわないかと心配する人もいるだろう。しかし,それは大丈夫である。というのは,2か所に設置した位置検出用ユニットの検知範囲境界にまで歩いていくと,VRHMDで見ている仮想空間の映像に「それ以上先には進めません」という意味を表すワイヤーフレーム表示の金網のようなものがフワっと出現して警告してくれるのだ。

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 二つめの「Job Simulator」はややシンプルなポリゴンポリゴンしたオフィスルームで,被験者はコーヒーを入れたりドーナツを食べたり,文房具を投げたり,OA機器のスイッチを操作したり……とやりたい放題を楽しめるもの。これは,どちらかといえば,Viveの専用コントローラを慣れ親しむためのチュートリアル的な体験という感じである。

ウォーターサーバーから水を入れているところ
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ルームスケールVRと専用コントローラのチュートリアル的な内容の「Job Simulator」
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 なお,今回は体験することができなかったが,「Job Simulator」には,オフィスシーンだけでなく,台所(Kitchen),コンビニ(Convenience Store)シーンも用意されているとのことだ。




Tilt Brushを体験している様子
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 三つめの「Tilt Brush」は,3D仮想世界に立体的な絵画を描く,とてもクリエイティブかつアーティスティックなVR体験だ。
 被験者はVive専用コントローラを絵筆のように操作することになるのだが,キャンバスとなるのは紙や板のような平面ではなく,被験者がViveを被って見ることになる仮想世界の立体空間そのもの。空間にコントローラ(絵筆)を走らせることで中空に線を描いたり,色を塗ったりできるのだ。もちろん,リアルタイムなCG世界なので,描いた線が炎のようなエフェクトで煌めいたり,スプレイで空間内に雪を降らせたりすることもできる。
 保存したデータは,描いた順番に再現表示できるので,これも面白い使い方ができるものとなっている。

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「Tilt Brush」は立体空間に絵画を掛ける体験。彫刻と絵画のハイブリッド的な創作体験が楽しめる。子供向けの知育VRとしてもいいかも?
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 被験者が大きく動けば大きな立体アートを創作することも可能であり,ゲーム用途とはやや趣の異なったアプローチで「ルームスケールVR」の旨味を効果的に応用している事例ということができそうだ。



よりゲームらしいVRデモを体験!


 続いて,筆者に体験者を交代。
 筆者が体験したのは,aueki氏が体験したものよりも,もう少しゲーム志向が強いVRコンテンツであった。
 最初に体験したのは「A10-VR」というガンシューティングタイプのVRゲームだ。
 ルールはシンプルで,飛来してくるエイリアン宇宙船を手持ちのレーザーガンで撃ち落としていくだけ。敵エイリアンは,被験者が立っている足場宇宙船に体当たりを仕掛けてくるので,敵の撃墜はこれを防ぐことにもつながる。足場が破壊されたらゲームオーバーだ。

「A10-VR」を体験する筆者
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 レーザーガンはVive専用コントローラをガンコントローラ的に構える感じで操作する。狙いを定めてトリガボタンを引けばレーザー弾を発射する(レーザー弾ってなんだってのは置いておいて)。弾切れを起こしたら銃身を下に向ければ装弾が行われる。
 きらびやかな宇宙空間とネオン管のような色あいで彩られたエイリアンが縦横無尽に動き回る雰囲気は1980年代に流行した「ムーンクレスタ」「ギャラクシアン」のようなクラシックアーケードゲームを彷彿とさせる。あのタイプのオールドゲームを一人称視点にして3D化,VR化したようなゲーム……というとイメージが伝わりやすいかもしれない。敵を連続撃墜すると取得スコアにボーナスが加算されていくゲームシステムもあの時代のゲームっぽい。

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クラシックアーケードスタイルのシューティングゲームが3DVR体験になったような「A10-VR」
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 夢中になってプレイしていた筆者はゲームオーバーになって疲労に気が付く。そう,敵は全方位から攻めてくるので,360°を警戒しなければならず,身体をくるくると回転させる必要が出てくる。さらに装弾操作で腕の上げ下げも強いられるので,1ゲーム,普通にプレイするだけで結構な運動量になるのだ。
 「ゲームはeスポーツ」なんていわれるが,VRのガンシューティングは普通にスポーツであると感じた次第だ。
 なお,本作の開発を担当したのは台湾/カナダにオフィスを構えるVR専門ゲームスタジオのFutureTownとのこと。


「CLOUDLANDS VR MINIGOLF」を楽しむ筆者
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 このFUTURETOWNのVRコンテンツをもう一つ体験した。それが「Cloudlands VR MiniGolf」だ。
 こちらは,もう名前からピンとくると思うが,いわゆる「パターゴルフ」である。
 パターショットだけでボールのカップインを目指すゲームなのだが,この手のゴルフゲームでは定番の仕掛けトラップがそこかしこに仕掛けてあり「そのトラップに挑んでショートカットを狙うか,あるいはトラップを回避の遠回りで安全策に打って出るかはあなた次第……」というゲーム性になっている。

 一般的なゴルフゲームはゲージの上下降を見極めてベストタイミングでボタンを押すことでナイスショットが実現できるわけだが,この作品では,Vive専用コントローラを実際のパタークラブのように握って,足元のボールを打つことになる。被験者のクラブの振り回し軌道や振り回し速度でボールへの衝撃が算出されるわけで,打撃のフォースフィードバックこそないものの,けっこうリアルなゴルフプレイ感覚で遊ぶことができた。


 コース上の移動はコントローラ上のボタンを押すことで,ボール近くへの瞬間移動が可能なだが,ボールとカップ(ホール)の位置関係を確かめたり,打撃スタンスを決めるにあたっては,(現実世界側の壁にぶつからない限りは)コース上を自由に歩き回ることができる。この作品も,Viveの「ルームスケールVR」要素を効果的に活用しているVRゲームだと思う。

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美しい景色の中でトリッキーなコースへ挑むことになる「CLOUDLANDS VR MINIGOLF」。あまり疲れないVRゲームなので高年齢層にもお勧めかも?
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 続いて体験したのは,オランダのゲーム開発会社Jaywalkers Interactiveのゾンビ襲来型ガンシューティング「Arizona Sunshine」公式サイト)だ。

 こちらは,前出の「A10-VR」のゲーム性に近いガンシューティングゲームだが,世界観が地球上……それも荒廃した郊外シーンになっている。タイトル名にアリゾナ……とあるので舞台はアリゾナ州のどこかということなのだろう。グラフィックスも日差しの強い乾いた砂漠気候を感じさせる景観としてデザインされている。

「Arizona Sunshine」を楽しむ筆者。二丁同時に銃火器を扱い,それぞれを異なる方向に向けて発射することも可能
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 ゾンビはうめき声とともに被験者に襲いかかってくるわけだが,A10-VRよりも敵の移動スピードは緩慢だ。ただし,ゾンビもの……ということで,そのゾンビの数は多めとなっている。プレイヤー側も二つの武器を同時に手に取ることで両手射撃スタイルでの攻撃も可能となり,かなりド派手にゾンビ達をやっつけることができる。一応このゲームでも,動き回ることはできるのだが,自発的に別の場所へ歩いて移動することはできず,基本的には敵の襲来ウェーブをすべて撃退して次の場所へ進んでいくというステージクリア型ゲーム進行システムとなっていた。

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今回の体験では数シーンをプレイすることができたが,どのシーンもビジュアルクオリティが高く,まさしくハイエンドゲームの世界に飛び込んだような体験が味わえた
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 弾薬再装填はA10-VRのように銃身を下に向けるのではなく,Vive専用コントローラ上のパッドボタンを押し込むことで行える。A10-VRよりは腕の上げ下げが少ない操作系であった分疲労は少なかったように思える。
 もう一つ,プレイして感じたのは360°の音像がゲームの内容として連動していて,なにかの事件に巻き込まれている感が強かったということ。砂漠を吹き荒ぶ乾いた風,ゾンビの足音,ヘリコプターの飛来音などが縦横無尽に,その音源物体の移動に連動して聞こえるので,画面を見てプレイするゲームよりもサラウンド感というかアンビエント感がもの凄く強いのだ。


 最後にプレイしたのはValve自身が開発した「Defense of the Ancients Allstars 2」(DotA2)の世界観を踏襲して制作された一人遊びの探索型アドベンチャーのVR体験「Secret Shop」だ。
 被験者が扮するは,古ぼけた丸太小屋みたいな魔法アイテムショップに迷い込んだ旅人。店主からの「自由に見てっておくれよ」の呼びかけに甘えて,魔法エネルギーの源である魔宝石を杖にあてがい,店内に点在する魔法陣を探していくことになる。魔法陣が見つかればそこをめがけて魔法を発動! すると被験者の体が小さくなり,不思議な生き物(モンスター?)達とのコミュニケーションができるようになる。

「Secret Shop」で魔法陣を探す筆者。暖炉の中やカーテンの裏側を探索中(笑)
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 この作品も「ルームスケールVR」の特徴を活かし,仮想世界内を自由に歩き回って「探索する楽しさ」を体験してもらう目的で制作されたVRデモであり,コンセプトとしては「TheBluVR」「Job Simulator」に近い。
 考古学系アドベンチャーでの宝探し,サスペンス系アドベンチャーでの爆弾解除ミッション,殺人ミステリー/推理アドベンチャーでの現場捜査などを,このような仕組みで実装するとアドベンチャーゲームがさらに深みを増しそうである。



ルームスケールVRの凄さと課題


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 「仮想世界に没入するだけでなく歩き回れる」という体験が楽しめるのがViveの特徴であり,これがかなり高い品質で実現できていたことに感銘を受けた。移動の検知も頭部の検知にも遅延がまったく感じられず,それこそ自分の意志で見て動ける感覚が感動的であった。
 物理的には「歩き回れること」は「移動できること」に過ぎないのではあるが,「自分の普段の歩幅に呼応した移動ができること」と「自分の普段の歩行モーションの振動がそのまま視界に再現される」ことで,仮想世界に自分という存在そのものが転写されている感覚が味わえることが,「+α」に作用しているような気がする。
 一人称ゲーム内でコントローラでキャラクターを動かした際は,単なる座標操作だったり,あるいは事前に作り込まれた歩行モーションで視点が移動が実践されるだけなワケだが,Viveの場合は,普段自分が現実世界で行っている「姿勢のよくない,だらしない歩み」(筆者の場合)がそのまま仮想世界で再現される。これこそが「自分が仮想世界にいる感」のミソになっているような気がしてならない。
 一方で体験してVive特有の課題も感じた。
 それは,自由に歩き回れるからこそ,HMD側とホストPCを結ぶケーブルに配慮しなければならないという点だ。
 一人でうろうろ体験しているといつの間にかケーブルが足元に巻き付いてしまう。
 なので今回のデモルームでの体験では,体験者が被ったHMDから伸びるケーブルを支えて,絡まらないように取り回すアシスタントが随伴することとなった。
 Viveは,その「ルームスケールVR」の優位性を活かす方向性としてアミューズメント施設での応用も考えられているそうだが,被験者一人ににつき,「ケーブル絡まり対策アシスタント」が必要となると人権費が嵩んで,ランニングコスト的に厳しい感じもする。
 同時体験者が一人ということであれば,このケーブルを天吊り仕様にすることで対策はできるだろうが,同室同時多人数体験ということになるとワイヤレスしか手はないことになる。ただ,高解像度なVR映像をホストPCから超低遅延で無線で高速伝送するのは現状,技術的に難しい。究極的にはHMD側にホストPC相当の機能を搭載してしまうのがゴールとなるのだろうが,直近ではよい無線化アプローチがない。
 とはいえ,まぁ,まずはここ(ホストPCとは有線接続)がスタート地点ということで,そうした課題は今後の技術革新で解決がなされていくことだろう。
 今は,実際に発売されることが決定したことを素直に喜ぶことにしよう。


ViveによるVR体験の感想:auekiの場合


 体験会全体は西川善司君がまとめてくれたので,実際に使ってみての私個人の印象も加えておこう。
 まず,Viveのレンズ部を見ると同心円が見える。つまりフレネルレンズになっているのでちょっと驚いた。面が非連続なので少し心配していたのだが,画質的に問題が出ることはとくになかった。
 装着時の視野角は,Clescent BayやPSVRとだいたい同じくらいで見え方にも大きな違いはない。ちょうど水中メガネをかけたような感じだ。ほかのものより若干広めに感じたが,これは気のせいかもしれない。

レンズの厚みを抑えるためか,フレネルレンズが使われていることが分かる
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 冒頭の写真を見て分かるように,テストは日本の一般家庭ではちょっと望めないくらいに広い部屋で行われているのだが,移動できる範囲はかなり狭く感じた。ちょっと覗き込むとすぐ格子が現れて,それがかなり興醒めな感じなのだ。まあ,これがあるから安全かつ快適に体験できているわけなのだが,歩き回れる空間が期待したよりも狭く感じられたのが残念だ。考えてみると3×4mだと,短辺の中心を初期位置として,1.5m移動すると壁に当たることになる。これはほんの数歩分の距離なのだ。1歩2歩進んでちょっと覗き込むとアウトくらいの感じになる。

 VR空間内の移動手段としてキーボードやボタン操作などではなく,自分の足で歩いて動けるというのは実に素晴らしい。VRの場合,自動移動だとどうしても違和感が強く,VR酔いの原因にもなるのだが,自分の足で動く分にはまったくもって自然にVR空間を体験できる。
 その半面,全体的にこじんまりとしたデモが多いようにも感じられた。「自分の足で移動」というメリットを最大限生かそうとすると,行動が部屋の広さに制限されるのはしかたがない。ここでボタン操作などでの移動を導入すると,他社のVRと同じになってしまう。ただし,ボタン操作で割り切れば,快適性などは犠牲になるが行動範囲は無限になる。
 おそらく,Viveでは小空間+瞬間移動という構成のものが主流になるのだろう。うまくやれば,「狭さ」を感じさせずに大きな空間を表現することも不可能ではないかもしれない。VRゲームにどんなものを求めるか次第だが,このあたりの扱いは今後のVRコンテンツ制作では重要なテーマになってきそうだ。
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