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[CEDEC 2019]Twitterのプロモーション効果でアクティブユーザー数を増やす。「天華百剣 -斬-」で行われた手法とは
天華百剣 -斬-は2017年4月20日にサービスが開始されたタイトルだ。2017年5月の時点で順調な立ち上がりを見せていたものの,そこから急激にユーザー数が減少。2017年11月には低迷期を迎え,ナカムラ氏はこの頃にディレクターとして参加した。そして,2018年1月にプロデューサーをやらないかと打診を受けたという(就任したのは4月)。
しかし,その後の2,3月のサービス状況は最悪で,8月末の状態を見て,サービスを継続するか会社がジャッジするというところまで追い込まれていたそうだ。
ナカムラ氏がプロデューサーを引き継いだタイミングは,どん底の状態だったわけだが,氏は本作をサービス開始時点から遊んでいるプレイヤーでもあり,「絶対にサービスを終わらせたくない」という気持ちだったという。
では,サービス継続のためにどうすればいいのか。とにかく,多くの人に本作を知ってもらわなければ話にならない。しかし,使える予算は限られている。大々的にやれば,新作を作れるほどの予算が必要なテレビCMは論外だ。電車の中吊り広告などであれば,予算は抑えられるものの,そのぶんテレビCMほどの効果は期待できない。
そこでナカムラ氏が考えたのは,「自分達の届けたい層にピンポイントで効率良く届いてほしい」ということだ。テレビCMや交通広告は,本来届きにくい層にまで届くため効果が高いと言われているが,予算がない以上,“刺さる”層にだけ届けてプレイヤーを増やそうというわけである。
こうした状況に合致しているとナカムラ氏が目を付けたツールがTwitterだ。TwitterはほかのSNSに比べて匿名性が高く,1人が複数のアカウントを使い分けられる。そのため,コミュニティや遊んでいるゲームごとにアカウントを用意するユーザーも多い。
専用のアカウントを使うということは,そことつながっている人は趣味趣向が似通っており,情報も伝播しやすい。そのため,ゲームのプロモーションと相性がいいのではないかと,ナカムラ氏は述べる。
Twitterでのプロモーションというと,「バズる」ことを目標に思い浮かべる人もいるかもしれないが,ナカムラ氏はこれを目指さなかったという。仮にバズって一時的に多くの人の目に留まったとしても,すぐに収束してしまい,中長期的な効果が得られないからだ。
では,ナカムラ氏が目指したのは何なのかというと,「同時多発的に天華百剣 -斬-のさまざまな情報がツイートされ続ける状況」である。まだ本作を遊んでいない人に,周囲の人が話題にしている状況を届け,情報が気になるようにしたいというわけだ。
さて,そうした状況を作るために,何ができるのだろうか。ナカムラ氏は,いくつかプロモーション効果を高めるために行った施策を紹介した。
まずは,「プレイヤーと運営のコミュニケーションの認識を変える」ことだ。プレイヤーと運営のコミュニケーションというと,ゲーム内のお知らせや公式Twitter,生放送,アンケート,プロデューサーレターなどが思い浮かぶ。
一方,プレイヤーからもSNSやBBSへの書き込み,動画配信などがあると,それを見た運営は反応を受け取れる。
さらに,これらに加えてもう1つ,「ゲーム内に実装するすべてのものは,間接的なコミュニケーション」であるという認識を持つべきだというのが,ナカムラ氏の主張だ。何かを実装すると,プレイヤーに対して何かしらの情報や運営のスタンス,メッセージを届けることになる。それに対して,プレイヤーは当然反応するので,コミュニケーションが成立するというのだ。
ここを意識して実装内容を考えると,Twitterのプロモーション効果も高まるという。
続いて,「ツイートの価値と意味を高める」ことも重要だとナカムラ氏。そのために天華百剣 -斬-では,「プレイヤーの立場に立って語り掛け,可能な限り情報を開示する」ということ,そして「プレイヤーの声を聞くことに努力し,可能な限り取り入れていく」ということを重視していたという。
具体的な施策としては,プロデューサーレターとエイプリルフール企画が挙げられた。最初のプロデューサーレターを公開したのは,ナカムラ氏がプロデューサーに就任した2018年4月のことだ。低迷期を迎えて暗い雰囲気の中,きちんと謝罪をしつつも,盛り上げていくためにどんなことを考えているかを公開したという。また,評判が悪かった部分は,どういった事情があったのかを正直に伝え,新コンテンツへの意見に対しても,どういった対策を取っていくかを説明するなど,プレイヤーと一緒に作っていく姿勢を見せていったそうだ。
またエイプルフール企画では,5ちゃんねるで使われているネタやパロディネタを積極的に入れた。これは,プレイヤーがSNSや掲示板に書き込んでいる内容は,運営がチェックしているということを実装内容で証明するために行ったという。
こうした姿勢で,運営がプレイヤーを見ていることが伝わると,プレイヤーにとって書き込みの価値が高まる。その結果,ツイートの活性化につながっていったのではないかと,ナカムラ氏は分析していた。
「ゲーム内にネタを仕込みまくる」こともポイントになるという。プレイヤーがTwitterで天華百剣 -斬-のことをつぶやきたくなるようなものを,ゲーム内に入れるべきということだ。
そして,つぶやいてもらうために効果的なのが,「スクリーンショットを撮りたくなるポイント増やす」ことだとナカムラ氏は述べる。とくに「エモい」と思えるところや,思わずツッコミを入れたくなるところは,スクリーンショトを撮りたくなり,結果的にTwitter上で露出が増えやすい。
例えば,天華百剣 -斬-の1周年イベントのエンディングでは,シナリオの登場キャラクター達が並んでプレイヤーを呼んで祝ってくれる演出があり,投稿も多かったそうだ。
さらに,「ゲーム外の施策とゲーム内の施策を連動させる」ことも有効だ。
天華百剣 -斬-ではコラボカフェの実施時に,内装を再現した背景アイテムをゲーム内に実装した。すると,お気に入りのキャラとお店に行った風のスクリーンショットを撮影して投稿する人が多くいたという。また,店内で流していたオリジナルのボイスドラマを,後日ゲーム内に実装したところ,「次はこのキャラがいい」といった話題につながるなど,連動させれば連動させるほどツイート数が増えていくそうだ。
こうした施策により,Twitterでの情報の広がりを意識していった結果,「ちょっとやってみようかな」という人が増え,プレイヤー数は回復。その後,コラボイベントなども成功し,8月の「サービスを続けるかどうか」というジャッジも無事に乗り越えた。現在も,超順風満帆……とは言わないものの,サービスは継続できているとナカムラ氏は語る。
10月からはショートアニメのテレビ放送が予定されているほか,2020年以降に向けた準備もスタートしているとのことだ。
「天華百剣 -斬-」公式サイト
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