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小島監督がつながりの大切さをアピールした「『DEATH STRANDING』World Strand Tour 2019 TOKYO」レポート。合同インタビューも合わせて掲載
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印刷2019/11/11 17:57

イベント

小島監督がつながりの大切さをアピールした「『DEATH STRANDING』World Strand Tour 2019 TOKYO」レポート。合同インタビューも合わせて掲載

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントは2019年11月10日,PlayStation 4用ソフト「DEATH STRANDING」の発売記念イベント「『DEATH STRANDING』World Strand Tour 2019 TOKYO」を,東京・品川の同社ビルにて開催した。
 このイベントには,本作のプロデュースとディレクションを手がけた小島秀夫監督とゲストの声優陣が登壇,本作にまつわるトークを披露したほか,小島監督が獲得したという2つのギネス世界記録の認定式も行われた。
 なお本稿の後半には,イベント終了後に行われたメディア合同の小島監督への質疑応答の模様を掲載している。

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「DEATH STRANDING」公式サイト



声優陣がボイス収録時のエピソードなどを披露。小島監督のギネス世界記録認定式も


 登壇した小島監督は,まず来場したファンの多くがまだ「DEATH STRANDING」の序盤〜中盤くらいまでしかプレイしていないと聞くと,「じゃあ今日はネタバレたっぷりで」「今日帰ったら,(会場に来られなかった)皆が国道バンバン作ってるから楽にプレイできますよ」などととコメントし,会場を沸かせるところからスタートした。

MCの松嶋初音さんと小島秀夫監督
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 続いてゲストとして登壇した声優陣は,サム・ポーター・ブリッジズ役の津田健次郎さん,ダイハードマン役の大塚明夫さん,アメリ役の井上喜久子さん,フラジャイル役の水樹奈々さん,クリフ役の山路和弘さん,デッドマン役の石住昭彦さん,ヒッグス役の三上 哲さんの7名だ。

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 トークの序盤では,パリを皮切りに開催中の「『DEATH STRANDING』World Strand Tour 2019」のこれまでが,映像とともに振り返られた。小島監督が各都市での思い出を語ると,声優陣も「皆楽しそう」「ファンの数がすごい」と口々にコメント。感想を求められた津田さんは「これだけ多くの人達が『DEATH STRANDING』の発売を待っていたと思うと,感動しちゃいますね」と語っていた。また井上さんも「(小島監督の)SNSでずっと写真を見ていたが,こうして改めて皆がつながっているのを見ると感無量ですね」と話していた。

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 続いての話題は,声優陣がどこまで「DEATH STRANDING」を進めているかというもの。井上さんは友人の助けを借りて,ストーリーの中盤まで進行しているという。その一方で,山路さんは最初の崖を降りるのに手こずり,ようやく自身が演じるクリフの姿を拝めたところだそうだ。

 話題は,周囲の「DEATH STRANDING」に対する反応にも及んだ。とくに出演している映画俳優がきっかけで関心を持った人もいるという話題には,小島監督が「ぜひ洋画沼からゲーム沼へハマッていただければ」とコメント。そのほかプレイ中,任意のタイミングで日本語ボイスと英語ボイスを切り替えられることも紹介された。

 会場では,来場者からの質問に小島監督と声優陣が答えるコーナーが設けられた。ここでは,その中からいくつかを抜粋して掲載する。
 「自分が演じた以外で,お気に入りのキャラクターを教えて」という質問には,まず小島監督が「皆好きですよ」と即答。津田さんは「僕は全員のキャラと絡むので,それぞれ思い入れがあるから選べない」と回答した。また井上さんと水樹さんが「選べないけれど,敢えて選ぶならBB」「母性本能をくすぐられる」と答えると,山路さんと石住さんもBBを挙げた。
 一方,大塚さんが「まだプレイできていないんだけど,眼鏡をかけている女性」,山路さんが「(BB以外では)フラジャイルのツンとしたところも好き」,三上さんが「アメリ。癒やされます」と,それぞれの好みを挙げていくとほかの登壇者から「女性の好みを聞いているみたいだ」とのツッコミが入っていた。

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 小島監督作品に長らく関わってきた大塚さんと井上さんに対して,「今回のボイス収録で何か変わったことはあったか」という質問には,大塚さんが「海外のキャストがしゃべった長さにぴったり合わせて,吹き替えをしなければならないところ」と回答。ただ小島監督によると,日本語ボイスは多国語ボイスと比較するとセリフの長さ以外の部分では,かなり自由に演じることが許されていたそうだ。
 また大塚さんは,ダイハードマンがプレイヤーにミッションの内容を説明する役なので,きちんと分かりやすく伝えることにも配慮したという。井上さんは,小島監督の真面目で誠実な気遣いに「頭が下がる思い」と語り,その仕事ぶりに「命を削っていると感じます」と話していた。

 そのほかこのコーナーでは,山路さんがマッツ・ミケルセンさん演じるクリフの吹き替えをするにあたり,マッツファンを怒らせないように気を配ったことや,主人公・サムはカットシーンにおけるクールな姿と歩いているときにブツブツ愚痴を言う姿,そしてプレイベートルームにいるときの姿と3つの表情で構成されていることなどが明かされた。

 イベントの後半では,小島監督が「Twitterのフォロワー数が最も多いゲームディレクター」(Most followers on Twitter for a videogame director)と「Instagramのフォロワー数が最も多いゲームディレクター」(Most followers on Instagram for a videogame director)に認定されたことが発表され,その認定式が行われた。

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 認定証授与のあと,大塚さんが「俺達の小島秀夫が,どんどん世界の舞台を駆け上っていくのを下から支えている感じがしているんだけど,それが報われた思い」と感想を述べると,小島監督も「Twitterはしんどいので止めようと思っていたんですが,これからも続けます」と意気込みを見せていた。

 イベントの終盤では,ゲストの声優陣が改めて「DEATH STRANDING」に関われたことや,ファンに向けて感謝の意を示した。その中で大塚さんが,小島監督の独立以来の活動を振り返り「この日を迎えられて嬉しいです」と涙ぐむ一幕も。
 最後に,小島監督が「DEATH STRANDING」のプレイヤーとファンに向けて,以下のように語り,イベントを締めくくった。

小島秀夫監督(以下,小島監督):
 4年前に独立し,そのとき確かにあったものは絆だけでした。ファンの皆さんが僕の作るものを待っていてくださるので,もう歳なんですが頑張ってみようと。アーティスト,ミュージシャン,俳優,声優と皆さんとのつながりをたどって何とかここまで来られました。
 3年9か月くらいの間,いろいろありましたが,こうして完成できて皆さんにもう一度遊んでもらえる幸せはほかでは得られません。非常に感謝しています。僕1人だけの力では達成できなかったので,つながることは大切だと感じました。
 「DEATH STRANDING」を遊んでいる皆さんも,たった一人で世界をつなごうとしています。そのために荷物を背負ったり,転んだりと大変な思いをしていることでしょう。それでも決して1人じゃない,自分みたいな人が世界中にいて,皆がつながって生きていることを感じているんじゃないでしょうか。
 僕もゲームを作っている中で,多くの人とつながっていると感じていました。ゲームで僕らと皆さんがつながって,さらにプレイヤー同士もつながっていく。世界ではいろんなことが起こっていますが,人はつながって生きていくことが大切です。そこに僕の4年近くの頑張りが活かされれば幸いです。皆でつながりましょう。 

イベントの最後には,津田さんの「監督の作る世界は美しいです」という言葉とともに,声優陣から小島監督に花束が贈呈された
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小島監督に対するメディア合同の質疑応答


 イベント終了後,小島監督に対する行われたメディア合同の質疑応答が行われた。以下に,その模様を掲載する。

──ゲーム発売後にファンと触れ合う場としては,久しぶりのイベントだったかと思います。今の感想をお聞かせください。

小島監督:
 新作としては4年振り,ワールドツアーとしては10年振りくらいですかね。パリ,ロンドン,ベルリン,ニューヨーク,サンフランシスコ,そして東京と回ってきて,ずっと「つながろう」と言ってきましたが,そのためには直接会うのが一番いいわけです。フォトセッションやサイン会で握手したり,お互いの気持ちを交換したりということは,しばらくやっていなかったこともあり,すごくいいですね。人間には本来,そういう触れ合いが必要なんだと改めて感じました。
 今まで日本の皆さんにハグするようなことはあまりなかったんですが,今日はそれをやってみました。意外と喜んでもらえましたよ。「肩組んでいいですか?」とか(笑)。

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──「DEATH STRANDING」のプレイヤーの声が届き始めているかと思いますが,感想はいかがですか。

小島監督:
 僕自身は,プレイヤー同士が倒し合うのではなく,間接的につながるゲームを遊んでほしいという問いかけをしたつもりです。そのゆるいつながりがいいと言う人が想像していた以上に多くて,ちょっとビックリしています。とくに日本の方は,つながることにポジティブですね。

──日本と海外で遊び方が違うと。

小島監督:
 今は「個」の時代ですよね。個人が自由に動く。ゲームはまさにその象徴と言えます。例えば対戦ゲームで誰が一番強いのかを競ったりしますよね。それとは正反対のゲームを作ったわけですから,国や文化によって多少遊び方は異なると捉えています。

──ギネス世界記録に認定されたことについて,率直な感想などをお願いします。
 
小島監督:
 正直,嬉しいです。SNSは諸刃の剣で使い方次第という部分がありますけれども,つながること自体は悪くない。僕が本を読んだり映画を観たりしてそれをつぶやくと,ファンの皆さんがどんどん拡散してくださって,最終的に作家さんや映画監督に届きます。それでDMを送り合って友達になる,というつながりができる時代なんです。そのようにSNSの持つパワーは本来ポジティブなものですから,そのつながることのよさを世に広めていきたいですね。結構「SNSはしんどいな」と思っていたんですが,もうちょっと頑張ります。

──「DEATH STRANDING」にはノーマン・リーダスさんやレア・セドゥさんなど映画界で活躍する俳優陣が出演していますが,映画とゲームの垣根についてどのように考えているのか教えてください。

小島監督:
 ずっと言っていることですけれども,以前は映画はフィルム,ゲームはデジタルでしたが,今はどちらもデジタルで,かつどちらも将来はストリーミングに集約されるはずです。映画は映画として,ゲームはゲームとして残るでしょうが,その距離が縮まりどちらでもないような新しいデジタルエンターテイメントが出てくると思います。
 そもそも映画とゲームは,制作プロセスや使われているテクノロジーが,途中までは一緒なんです。世界観やモデルを作ったり,モーションキャプチャをしたり。ただ出力時にインタラクティブにするかどうかが違う。この意味でも,映画とゲームの垣根はなくなっていくでしょう。
 僕はそんな映画とゲームの橋渡しをするべき世代なので,今それをやっています。5年10年経つと,こういう議論はなくなるかもしれませんね。

──「DEATH STRANDING」では新しいゲーム体験が得られますが,開発上でもっとも大きなチャレンジは何だったのでしょうか。

小島監督:
 いろんな要素でバランスを取っているゲームなんですけれども,新しいものは形がないと理解してもらえないんです。言葉や絵で説明するんですが,最初はスタッフが理解できない。そこがまず大変なんですが,ある程度やっているうちにだんだん分かってくる。
 例えばゲーム中,ほかのプレイヤーが作ったオブジェクトに対し「いいね!」ができますけれども,「なぜポジティブ評価だけで,ネガティブ評価がないんですか?」「なぜ評価された側に報酬がないんですか?」と,なかなか理解してもらえませんでした。
 とくに報酬については,「プレイヤーは自分が有利になるからこそ行動するわけで,報酬がなければ動かない」と言うんですね。しかし,それをやったら普通のゲームになってしまうので,「ポジティブは無償の愛だ」と断言し,スタッフが半信半疑の中で作り始めたところ,1年半くらい経った頃にようやく分かってもらえました。そういうチャレンジが多かったですね。

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──プレイしていて,オープンワールドなのにナラティブな作りになっていると感じました。そのバランスは,どうやって取ったのでしょうか。

小島監督:
 ゲームとストーリーテリングは,本当は相性がよくないんです。僕個人は,マルチストーリーは好きなんですけれども,本来のストーリーではないと考えています。やはり1本の運命があって,どんなに頑張っても最終的に男女が別れるというのがストーリーなんです。右に行けば別れないゲームもありますが,僕のゲームではそれはやらない。
 「DEATH STRANDING」も,そういう1本のストーリーに沿って作っています。しかしオープンワールドなので,自由度がないと意味がない。そこで,このゲームではAからB,BからCとつないでいきますけれども,そのルートを自由にしています。AからBをつなげるために,山を登ってもいいし川を渡ってもいい。そうやって自由度を担保しているので,ストーリーテリングに何か特殊な手法を使ったというわけではないんです。

──「DEATH STRANDING」は人を殺すことに対するペナルティが重いですよね。もちろん世界観がそうだからということもありますが,そのほかに理由はあるのでしょうか。

小島監督:
 もともとプレイヤー同士がポジティブにつながるゲームを作ろうと考えていました。例えば殺傷をポジティブに表現することはできなくもないですが,考えていたようなゲームとして成立させるのは難しいですし,またストーリーの内容も踏まえ,今の形に落ち着きました。

──ゲーム中,赤ん坊のBTも存在することに気づきました。何かほかのBTと違うのでしょうか。

小島監督:
 BTは,いろんなバリエーションを作りたかったんですが,いろいろ制限があり今の形になりました。赤ちゃんのうちに死んだ人もいるので,そこはBBとの対比というメタファーとして入れています。

──ゲーム内でアーカイブをチェックしていたら,エジプトの死生観について書かれたものがありました。さまざまな国や文化の死生観がある中,エジプトのそれを採り上げたことに何か理由はあるのでしょうか。

小島監督:
 東洋と西洋の死生観は違いますよね。もちろんエジプトの死生観も違います。「DEATH STRANDING」は全世界の皆さんが遊ぶことを前提にしていますから,あらゆる国や文化の死生観を内包しています。
 話すと長くなるんですが,生命が生まれて進化していく中,ある時点で「死」というものが確認されました。そこで宗教などが生まれるんですけれども,その例としてエジプトでは死者が帰ってくるためにピラミッドを作ったことを挙げ,「死」とは人間が起こりとなった概念であることにフォーカスしたわけです。ほかにもインカ帝国などいろんなことに言及していますが,ご指摘の部分は知りたい人だけが知っていればいいという内容ですね。

──「DEATH STRANDING」の開発前,小島監督がSNSに月に関する投稿をしていたり,トレーラーに月が印象的に使われていたりしますが,本作と月は何か関わりがあるのでしょうか。

小島監督:
 僕は常々,「不可能を可能にする」ことを考えています。もちろん,「人間が空を飛ぶ」というような絶対的な不可能はありますが,飛行機を作れば人間も飛べるわけです。
 人生では,できないことがたくさんありますが,それであきらめたら評価されません。それを越えるためにどうするか,というのが知恵です。例えば壁があったとして,正面から越える必要はないんです。横からすり抜けてもいい。これがゲームデザインというものです。
 今から50年前,宇宙飛行士が月面着陸に成功し,しかも生還しました。50年前に前例のないことをやり遂げた彼らのことを考えたら,何でもできるんじゃないかと。そういう意味を込めて,月を使っています。

──エンディングに到達したあとも「DEATH STRANDING」の世界で遊びたいという人のために,今後,アップデートやDLCの予定はあるのでしょうか。

小島監督:
 まずDLCは今のところ予定がありません。またストーリーが終わっても配達任務は続くので,結構長く遊べると思いますよ。

――ありがとうございました。

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