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[SPIEL'17]山椒は小粒でもピリリと辛いを地で行く,Blue Orangeのライトなゲーム。新作はピンセットを使う「Dr.Microbe」
そんなBlue Orange Gamesの「ドクター」シリーズ最新作が,この「Dr.Microbe」だ。またこれに合わせて,2003年から発売されている傑作「Gobblet Gobblers」も紹介しよう。
「Dr. Microbe」製品ページ(英語)
「Gobblet Gobblers」製品ページ(英語)
「できた!(できてない)」も楽しめる「Dr.Microbe」
「Dr.Microbe」で,プレイヤーは顕微鏡を覗く科学者となる。カードで課題が提示されるので,ペトリ皿の中身をこの課題に沿った形へ構築するのが,ゲームの目的だ。見事達成できれば,晴れて課題カード獲得となる。
ゲームは複数のプレイヤーによるリアルタイム競争だし,課題を完成させるためのパーツ(=細菌)は,ピンセットでつまんで扱わねばならない。従って指先の器用さが,かなり要求されそうなゲームである。
とはいえ,単に「ペトリ皿の中身を課題カードとただ一致させる」だけなら,子供向けゲームとはいえ,さすがに簡単すぎる。そこで「Dr.Microbe」は,ここに一捻りが加えられている。
まずは,実際に課題カードを見てみよう。これらのカードには,「かならず指定どおりの場所になくてはならない細菌」が示されている。下の写真を見れば分かるように,ペトリ皿は4つのスペースに分割されていて,それぞれに1つずつ細菌を置いていくことになる。細菌には3色4種類が存在するので,まず課題カードで示された色と形の細菌を持ってくるところまでは,迷いなく行えるはずだ。
このうち最も大きなスペースに置かれた細菌は,「スーパー細菌」である。そして,このスーパー細菌とそのほかの細菌との組み合わせで,空欄に置いてもいい細菌は,大きく制限されるのだ。
まずスーパー細菌は,ほかの3つの小さなスペースに置かれた細菌と異なる種類,色でなくてはならない。さらに,小さなスペースに置かれる細菌は,そのペトリ皿に置かれているほかの細菌(スーパー細菌含む)と同じ種類であってはならない。加えて,スーパー細菌と同じ色であってもならないのである。
最初に「これで課題を達成した」と確信したプレイヤーは,「エウレカ!」と宣言する。この宣言があったら,そのプレイヤーのペトリ皿をチェックし,条件が満たされているかを確認。課題カードに基づいた状態が達成できているなら,そのプレイヤーは課題カードを獲得する。結果,最初に5枚の課題カードを達成したプレイヤーが勝利となる。これ以外にもいくつか上級ルールがあるが,ゲームの基本は変化しない。
説明だけ聞くと「なんだ簡単じゃないか」と思うかもしれないが,時間を競いながらピンセットで細菌パーツを扱っていると,「エウレカ!」と叫んではみたが課題が達成できていなかったり,ルール違反(小さなスペースに同じ種類の細菌が入ってしまっている,など)を起こしていたりする。
このあたりのプレイ感覚は,「ドクターエウレカ」における「課題を達成したと思ったけど,実はできてなかった」感に近い。そして重たいゲームに疲れた頭で本作をプレイすると,本当はルール違反を犯しているペトリ皿を,「OKですね」と全員が判断してしまったりするのも,横からゲームを見ているときにはかなり楽しい。
「ドクターエウレカ」に比べるとパズル要素が下がった代わりに,指先の器用さがより求められるようになった気がする本作。重たいゲームの合間でちょっとプレイして盛り上がるにはちょうどいいタイトルだろう。
「Dr. Microbe」製品ページ(英語)
悔しいくらいにシンプルで,悔しいくらいに面白い「Gobblet Gobblers」
もう一つ紹介するゲームは「Gobblet Gobblers」だ。これは2000年にリリースされた「Gobblet」の簡略版となっている。
「Gobblet Gobblers」を一言で言えば,三目並べである。そしてゲームに詳しくない人でも,「それってつまり,互いに最善手を打てば100%引き分けるゲームなのでは?」と思うだろう。だが当然ながら,「Gobblet Gobblers」には興味深いアレンジが加えられている。
「Gobblet Gobblers」には,大中小3つのコマがある。各プレイヤーは大2個,中2個,小2個のコマを持ってスタートするのだが,なんと大のコマは中・小のコマにかぶせるように置いて構わない。中のコマは小のコマにかぶせていいし,それは自分のコマでなく,敵のコマにだって構わないのである。
また手番プレイヤーは,まだ盤上に出していないコマを新たに投入してもいいし,すでに盤上にあるコマを好きな場所に移動させてもいい。このときも上記の「かぶせ」ルールは保たれており,敵プレイヤーのコマにより大きなコマで襲いかかり,「かぶせ」て移動しても構わない。もちろん,まだ誰もコマを置いていないスペースにコマを置いてもOKだ。
ただし,手に取ったコマ以上に大きなコマがあるスペースには,新たにコマを投入することも,移動させることもできない。
「Gobblet Gobblers」のルールはこれだけである。そして「なんだ簡単じゃないか」と思いながら実際にプレイを始めると,突如としてまるで定石の見えない戦いに放り込まれたことに気づく。
まず思い知らされるのは,「中央のマスに一番大きなコマを置く」のは確かに有効な戦術だが,常にベストとは限らないということだ。突き詰めればどうなるのかは分からないが,「中央のマスを一番大きなコマで占拠した」にも関わらず,負けることは珍しいことではない。
また,「自分のコマに,より大きな自分のコマをかぶせて守る」という選択を強いられることもある。いわゆる屈辱の自踏みであるのだが,これが起点となって勝利することもある。
そのうえで,「詰み」にしようと思って大きなコマを動かしたら,実はそのコマは敵の中型コマを踏んでいたということもあり得る(煮えた頭でプレイすると忘れやすい)。結果,「自分のコマを動かした途端に敵が1列揃って勝ち」という間抜けな展開も起こる,起こってしまうのだ。
一応,いろいろと調べてみたところ,「Gobblet Gobblers」には必勝パターンが存在するという説をネットのあちこちで見かけた。そりゃそうだろうな,という気はする。とはいえ実際にプレイすると,あまりの定石の見えなさに,まずは必勝パターンどころの騒ぎではないことが体感できるだろう。
また,「Gobblet Gobblers」は極めた! というプレイヤーであれば,本家の「Gobblet」をプレイするのも手だ。「Gobblet」もルールは同じだが,盤面は4×4の四目並べになっている。
ちなみに筆者達SPIEL取材班は,隣の席で一服しているご老人に「いいトシをしたオッサンどもが子供用ゲームで熱くなるとは」と苦笑されながらも,かなり必死に「Gobblet Gobblers」をプレイし続けてしまった。ぜひ,読者の皆様もこの「悔しい! でも面白い!」感を味わって頂きたいと思う。
「Gobblet Gobblers」製品ページ(英語)
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