イベント
[SPIEL’16]小型化の秘密は円盤にあり? 会場で大人気の卓上版「リアル脱出ゲーム」を遊んでみた
こうしたリアル脱出ゲームは割と大掛かりなイベントになりがちで,事前に予約したりなど,参加のハードルが低いとは言い難い側面もある。そこで今回,人気を博しているのが,卓上でも楽しめる形にアレンジされた,ボードゲームタイプの脱出ゲームというわけである。リアル脱出ゲームの面白さを,自宅にいながら気軽に体験できるというわけで,こうした脱出ゲームを扱っているブースは,SPIELの会場でも予約なしには試遊できないほどの大盛況。
そんな中の1つである,Thinkfunの「Escape the Room: Das Geheimnis der Sternwarte(エスケープ・ザ・ルーム:天文台の謎)」の試遊に参加できたので,プレイレポートをお届けしていこう。
「Escape the Room: Das Geheimnis der Sternwarte」公式サイト(ドイツ語)
4Gamer内「SPIEL’16」記事一覧
謎を解く鍵は円盤にあり?
試遊会場に向かうと,そこはブース内に設けられた,8畳分ほどの広さの密室である。インストラクターによると,今回の試遊でプレイするシナリオは,市販版のプロローグにあたるシナリオなのだとか。単に最初のシナリオを持ってきたとかではなく,試遊専用にあつらえたものだそうで,パブリッシャが本作にかける意気込みが感じられるというものである。
なお,我々が参加したセッションのメンバーは,小さい女の子を連れたお父さん,個人参加のコアなボードゲームファンっぽい2人(ここまで全員ドイツ人),そして筆者達取材班2名という,なかなかのカオスぶりである。ちなみにゲーム進行はすべてドイツ語。……果たして大丈夫だろうか。
まず最初に,インストラクターが物語の冒頭部分を読み上げる。かなり早口のドイツ語で聴き取るのが大変だったのだが,どうも我々は失踪した天文学者(部屋の雰囲気的には占星術師のほうが近そうだが)の秘密を調べに,彼の家を訪れた一行のようだ。
荒廃した天文学者の家の中で我々が見つけたのは,5枚の円盤が組み合わさった謎の物体。一番外側の白い円盤が,それぞれの課題のシチュエーションに対応しており,その内部にあるさまざまなシンボルの入った赤・黄・緑・水の円盤に書かれたシンボルを正しく組み合わせることで課題が解ける,ということらしい。
制限時間は20分。これは脱出ゲームとしては短めな気がするが,課題の難度が分からないため,ペース配分も分からない。ちょっと不安である。
最初の課題は,天文学者の部屋に入るため,部屋の壁にイラストとして描かれた階段の謎を解け,というものだった。よく見ると,この階段は,一段一段がさまざまな色とシンボルで塗り分けられている。この中から正しい色とシンボルを選んで円盤に入力することで,次のステップに進めるということのようだ。
インストラクターが読み上げた冒頭部分によれば,どうも表面が剥げて破損している階段が怪しい,ということだったので,そうした階段のシンボルを選んで円盤を合わせていくと……見事クリア。我々は次の課題が書かれた封筒を手に入れることができた。
この封筒を開けてみると,次のストーリーが書かれた紙が中に入っていた。
その説明によると,我々は見事天文学者の書斎に足を踏み入れることができたようだ。この書斎も玄関同様に荒廃しているが,一部の本と絨毯は,なぜか新品同様だという。……どう考えても怪しいです,これ。
絨毯のほうは筆者がうっかり踏みつけていたのだが,それをめくってみると円盤にも記されているシンボルが点在するボードを発見した。一方,本のほうは部屋の別の壁に描かれた本棚に磁石入りのボードがくっついていることが判明。このボードには,これまたどう見ても怪しげな,円盤に対応した色つきの穴が開いていた。どうも2枚のボードを重ねることで,円盤に入力するためのシンボルを見つけ出せ,ということのようだ。
なんだ,簡単じゃないかと思ったのだが,これが意外と曲者。3つまでは穴がシンボルで埋まるものの,残る4つ目がなかなか見つからず,うまく重ねるのにわりと難儀した。それでもたまたま置いたところが運よく正解となってくれて,2つ目の課題も見事クリア。我々は3つ目の課題が書かれた封筒をゲットしたのだった。
さて,この封筒に入っていた紙によれば,我々は書斎の中で天文台へと通じる隠し扉を発見したらしい。ここには鍵があり,それを開けることで最後の課題をクリアできるという。6枚の磁石のパネルと台座を,それらの上に書かれたシンボルを合わせながら組み合わせていく。しかしこれがかなり複雑で,試行錯誤をしてもなかなかうまくいかない。
残り5分を切ったあたりから焦りが出はじめ,相談する声も次第に険悪な感じになってくる。だが,ここで活躍をしたのが,子連れのお父さんだった。それまでの謎解きでは比較的大人しかったこの人が,正解となる組み合わせを見事発見。3つ目の課題も解決し,こうして我々は天文台へと足を踏み入れ,天文学者が残した秘密にまた一歩近づいたのだった……というところでゲームは終了。めでたし,めでたしである。
ボードゲーム版は脱出ゲームの可能性を広げるか
SPIEL'16では,本作のほかにも何点かの卓上版脱出ゲームが出展されていた。
これらの作品は,いずれもタイトルの中で,「ボードゲーム(Spiel)サイズの脱出ゲームであること」を主張しており,制作者側がリアル脱出ゲームを強く意識しているのが見てとれる。
今回試遊した「Escape the Room」も,部屋のあちこちにヒントが隠されていたので,リアル脱出ゲームに近くはあるが,歩き回る必要はなく,ギリギリ卓上と言っても差し支えのない範囲に収まっていると感じられた。登場するアイテムのサイズがちょっと大きめな気はするが,販売用のボックスはさほど大きくないので,これはSPIEL会場用の豪華版なのだろう。
進行のために必要な鍵は,5枚のボードが組み合わさった円盤に集約されており,これは解答手段を単純化することで,ゲーム全体をコンパクトにまとめる仕掛けであることが見てとれる。一方で謎を作る側からすれば,4色のシンボルを導き出すのに必要な謎自体は幅広く設定できるわけで,うまいやり方といえるのではないだろうか。
ちなみに,今回筆者が体験してみて感じたのは,状況説明パートの重要性である。プレイヤーは課題をクリアするたびに封筒を与えられ,そこに入った文章を読み上げていくわけだが,このテキストによってストーリーへの没入感は大きく変化する。リアル脱出ゲームとは違い,体ではなく,頭を動かすことでしか前へ進めない卓上版であるがために,こうした雰囲気作りはより大切になる,ということなのだろう。
ともあれ「Escape the Room」は,元となったリアル脱出ゲームにおける協力の楽しさ,出題される謎の独創性についても,うまくテーブルサイズに落とし込んだものに感じられた。同じくリアル脱出ゲームが人気の日本でも,より手軽な遊びとしてブレイクしそうな気配もある。まだ日本語版が出ると決まったわけではないが,期待してしまうタイトルの一つだ。
「Escape the Room: Das Geheimnis der Sternwarte」公式サイト(ドイツ語)
- 関連タイトル:
Escape the Room: Das Geheimnis der Sternwarte
- この記事のURL: