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[NDC21]「Durango: Wild Lands」のエンディングはどのように作られたのか。サービス終了決定後の取り組みが語られたセッションをレポート
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印刷2021/06/10 20:58

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[NDC21]「Durango: Wild Lands」のエンディングはどのように作られたのか。サービス終了決定後の取り組みが語られたセッションをレポート

 NEXON Koreaは,ゲーム開発者向けカンファレンス「Nexon Developers Conference 21」(NDC21)を2021年6月9日から11日までオンラインで開催している。本稿では会期2日目の6月10日に実施された,スマートフォンゲーム「Durango: Wild Lands」(以下,Durango。iOS / Android)のエンディングコンテンツに関するセッションの模様をレポートしよう。

Oh Hyungun氏
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 Durangoは,2018年にサービスを開始したスマホ向けMMORPG。その内容は,時空の歪みによって現代から恐竜が生息する原始的な異世界にワープしたプレイヤーたちが,未開拓の荒野で生き残るために,マップを探索して集めた素材を元に家を建てたり,道具を作ったりしつつ,恐竜と戦うというもの。Oh氏によると,開発とサービスの運用は,常に新しい方向性を模索していたと振り返る。

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 サービス中はさまざまなアップデートが行われ,イベントやゲームストーリー,ゲームモードの追加などが行われたものの,2019年12月18日にサービスを終了している。

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 たとえば,シングルプレイの家庭用ゲーム機向けタイトルであれば,ストーリーがありその最後にエンディングが置かれる。一方,オンラインゲームにも同様にストーリーがあるものの,最後はサービス終了となる。前者は,開発チームが意図した結末,後者は意図しない結末であり,それぞれを同じベクトルで捉えるのは難しいと,Oh氏は自身の見解を述べる。

 Durangoの場合は,サービス終了が通達された直後,開発チームはアップデートサイクルに基づき,2019年9月末から12月初めまでの約3か月で,4回にわたってエンディングに向けた準備を行うことを決定したという。この計画を実現するには,関連する部署の協力が必須になるため打ち合わせが何度も重ねられ,「App StoreやGoogle Playからゲーム本体をダウンロードできる状態をサービス終了日まで維持するにはどうすればいいのか」など,さまざまな議論が行われたそうだ。

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 開発チームは,まずは当初の予定どおり9月のイベントを優先して対応し,エンディングを本格的に開発する前に,ゲームのバグ修正などに着手した。
 その後,上記の関連記事にあるとおり,10月にサービス終了を告知し,その裏では11月と12月に2回に分けて実装するエンディングコンテンツの開発を進めていたという。

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 エンディングコンテンツの開発にあたっては,まず開発チーム内で意見を収集した。そこでのリサーチによると,「多くのプレイヤーの記憶に長く留まるもの」という意見が多かったため,実際に形が残る何かを提供したいという話になったとのこと。
 その具体的な手法を選定するために多くの意見が集まったものの,最終的に“新しい何か”を入れるより,従来のインスタンスダンジョンの難度を緩和する方向に焦点を当てたという。逆に,悲劇的なエンディングはやらないようにしようと考えたそうだ。

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 11月のアップデートでは,エンディングに向かう雰囲気が高められた。一例を挙げると,サービス開始時はDurangoを起動すると,明け方の景色が映し出されていたが,これが同じ景色の夕焼けに差し替えられた。
 また,バトルロイヤル形式のPvPコンテンツや,楽器の演奏を楽しめる“思い出作り”に関連したコンテンツも実装された。Oh氏によると,バトルロイヤルを実装した理由は,Durangoが推していたプレイヤー同士の協力と対になる,単独で戦うコンテンツにしたかったからと説明。マップが島単位で構成されていたことがバトルロイヤルに合っていたことや,プレイヤーが育成したキャラクターを活用できることも理由に挙げられた。

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SNSや動画配信サイトには,プレイヤーが集まって楽器を演奏する動画が投稿されたという
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楽譜の作成・共有やMIDIデータから楽譜を作成する機能も開発した
焚き火をすると,プレイヤーを集めて選んだ楽譜を演奏できる
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 そして,新コンテンツの実装以外にも,はやくエンディングストーリーをプレイできるよう,ゲーム内で発生する待ち時間の短縮など,さまざまな項目を緩和する調整が行われた。こうした取り組みは,プレイヤーが希望する目標地点に素早く到達できるよう,速度を高める方向性で進めたという。

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 肝心のエンディングストーリーは全8クエストで構成され,当時の平均プレイ時間なら1週間以内にクリアできる内容になった。ユーザーインタフェースも刷新され,プレイヤーが集中して遊べる環境が構築された。
 なお,当初の予定では11月と12月にそれぞれ四つずつクエストを実装する計画だったものの,開発の都合などで11月には二つのクエストのみが実装されたという。

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 エンディングの制作にあたっては,ストーリーを効果的に伝えることが最重要になるため,多くのビジュアルや映像が必要となり,優先的に予算が注ぎ込まれたという。

エンディングストーリーのサブクエストも制作した
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 続いて,12月のアップデートでは,文字どおりプレイヤー個人の空間である「プライベートアイランド」を発展させて飾り付ける機能と,エンディングストーリーの残りのクエストが実装された。
 プライベートアイランドは,実装当初はその全貌を1枚のスクリーンショットに収める機能がなかったため,プレイヤーが空間内を歩き回って撮影し,それをつなげて作った画像をSNSなどでほかのプレイヤーと共有していたという。

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 最終アップデートには,プライベートアイランド全体を1枚のスクリーンショットに収める機能が実装されたとのこと。プライベートアイランドは,スマホからゲームを削除しない限り利用可能となっている。

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2階以上の階層を持つ家も建設できるようになった
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プレイヤーのリクエストに応じ,リンゴの木が実装された
PCでもエンディングムービーなどを鑑賞できるよう専用ソフトを用意した
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 本作のエンディングが終了したのち,これらの試みがきちんと伝達されたか,伝達されたエンディングがプレイヤーにとって価値のあるものだったかなどをチェックする効果測定も行われた。
 一般的に,オンラインゲームがサービス終了を発表すると,プレイヤーの大半は即座に離脱し,そのままサービス終了日を迎える。しかし,Durangoはエンディングに向けた施策を行ったため,サービス終了発表後も60%以上のプレイヤーが残り,サービス終了日の直前には,わずかながらプレイヤー数が上昇する結果になった。
 発表前に毎日ログインしていた本作のプレイヤーが少なくなかったことを踏まえると,かなり多くのプレイヤーにエンディングを提供することができたと,Oh氏は説明する。

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 またエンディングストーリーのクエストを完遂したかどうかという調査では,サービス終了日の直前にすべてクリアしたプレイヤーがもっとも多かったという結果になった。

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 講演の最後にOh氏は,今回紹介した一連のエンディングに向けた施策について,「誰もやりたくない作業で,今後も二度とやりたくないものだったが,貴重な経験だった」「提供したエンディングによってDurangoが多くの皆さんに良い姿で記憶され,新しい期待感を持っていただけたのなら,それだけでも意味があった」とコメントしていた。

※記事内に掲載した画像は,すべて配信をキャプチャーしたものです。

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