プレイレポート
まだ見ぬ“楽園”を目指す,少年と少女の王道ストーリー。「ゼノブレイド2」のインプレッションを掲載
久しぶりのナンバリング作品となる今回は,シリーズの原点に通じるファンタジー路線に回帰。大地の代わりとなる,一体ごとに異なる景観を持った超巨大生物の上を舞台に,少年と少女の出会いから始まる,随所に熱い展開を散りばめた王道ストーリーが描かれていく。そんな本作の序盤をプレイしてみたので,そのインプレッションをお届けしよう。
「ゼノブレイド2」公式サイト
ゆっくりと滅びゆく世界で,まだ見ぬ楽園を目指す少年と少女の物語
本作の舞台となるのは,見渡す限りの雲海が広がる世界「アルスト」。大地がないこの世界には「巨神獣(アルス)」と呼ばれる巨大生物が生息し,人々はその背に国を築いて生活している。しかし近年,年老いた巨神獣が次々と雲海へ沈み始めたことで人が安心して暮らせる場所が減少し,それが争いの火種となりつつあった。
主人公のレックスは,雲海からまだ使えそうなものを引き上げて商売を営む,サルベージャーの少年だ。あるとき,破格の報酬を提示してきた謎の一団から,とある沈没船からの物資回収の依頼を受けたレックスは,サルベージに向かった船内で,1本の剣とカプセルのようなものの中で眠る一人の少女と出会う。
その少女の名はホムラ。彼女こそが「天の聖杯」と呼ばれる伝説のブレイドであり,レックスにサルベージを依頼してきたのは,その力を手に入れ,自らの目的のために利用しようとする秘密結社「イーラ」だった。レックスと同調し,長い眠りから目覚めたホムラは,彼に自分を故郷である「楽園」に連れて行ってほしいと頼む。
アルストの中心にそびえ立つ巨大な「世界樹」。その上には楽園と呼ばれる場所が存在し,はるか昔,人々はそこで神と共に暮らしていたという。ホムラを奪おうとするイーラの首魁(しゅかい),シンによって一度は命を落としたレックスだが,ホムラの命を半分もらうことで蘇り,彼女の力を借りて間一髪でイーラの手から逃れる。そして,ホムラの願いを叶えるため,まだ見ぬ楽園を目指して冒険への第一歩を踏み出すのだ。
シリーズらしさを感じさせる,広大なフィールドとシームレスな戦闘は健在
「ゼノブレイド」シリーズの大きな特徴であり,魅力となっているのが,シームレスに広がるフィールドである。本作ではストーリー進行に合わせて冒険の舞台が広がっていく形のため,完全なオープンワールドというわけではないが,街から草原へ,草原から洞窟へと,ひとつながりの広大な世界をどこまでも移動できる気持ちよさは健在だ。
起伏に富んだフィールドには,さまざまなランドマークや絶景ポイントが点在しており,ここが巨大生物の上であることをつい忘れそうになるが,はるか遠くに巨神獣の頭部が見えたときには思わずハッとさせられた。また,雲海は潮の満ち引きのように高さが変化し,それによって以前は行けた場所が雲海に沈んでしまったり,逆に新たなルートが現われたりする仕掛けもある。
フィールドの移動中は一部のシーンを除いて読み込みはほぼ存在せず,戦闘もフィールド上でリアルタイムに行われる。戦闘は,自動で敵を攻撃する「オートアタック」と,任意で発動する「アーツ」を組み合わせて行うというシリーズでおなじみのスタイルだが,本作ではドライバーとブレイドが協力して戦うのが最大の特徴である。ブレイドとは,ドライバーがコアクリスタルと同調することで生み出される亜種生命体のことだ。
レックス達ドライバーは,強敵からの戦利品や宝箱などから入手したコアクリスタルと同調することでブレイドを生み出し,一人につき,一度に最大3体のブレイドを連れ歩ける。ブレイドには「攻撃」「回復」「防御」という3つのタイプがあり,誰と行動を共にしているかによってドライバーが使用できる武器やアーツが変化する仕組みで,コアクリスタルからどんなブレイドが生まれるかはランダムで決定されるのが面白い。
前衛として敵と戦うのは主にドライバーの役目で,戦闘中はドライバーとブレイドのあいだに「キズナ」と呼ばれる光の帯が発生する。ブレイドの近くで戦い,連続で攻撃を決めることでキズナの力が強まり,戦闘中の移動速度やアーツのリキャスト速度が上昇するといったメリットを得られるが,逆に離れすぎるとドライバーの力が弱まってしまう。また,アーツには敵の背後や側面から命中させることで効果が高まるものがあるので,戦闘中の位置取りは非常に重要だ。
パートナーであるブレイドは戦闘中に任意のタイミングで切り替えが可能で,戦況に応じて交代させることで戦闘を有利に進められる。基本的にはオートアタックを繰り出しつつ,アーツのリキャストゲージが溜まったらそれを使っていくだけでも十分戦えるが,ブレイドの切り替えや,ドライバー同士でアーツをつなげていく「ドライバーコンボ」などを駆使することで多彩な戦い方ができ,これらが本作の戦闘をより奥深いものにしている。
やりたいことを自由にやれる心地よさに浸れる,手触りのいい一本
本作はストーリー主導型のRPGではあるものの,街の人から依頼されたクエストをこなしたり,採集ポイントやサルベージポイントでアイテムを集めたり,フィールドをあちこち探索して新しいロケーションを見つけたりと,メインストーリーを追うだけではない,さまざまな遊びが用意されている。
例えば,各街には5段階の発展度があり,クエストを達成するなどして発展ポイントを稼ぐことで発展度が上がっていく。発展度が高まると,ショップで売られている商品が安くなったり,新しい商品が並んだりするようになるのだ。もちろん,クエストを達成すればその報酬として経験値やお金,アイテムをもらえることもあるので,困っている人がいたら積極的に手助けしてあげたい。
ドライバーは戦闘などで経験値を得ることでレベルアップし,WPやSPというポイントを使って任意のアーツや能力を強化できるが,ブレイドの育成はやや特殊で,これらの寄り道要素をこなすことが,その成長につながっている。採集やサルベージで手に入れたアイテムは,ショップに売却してお金にするだけでなく,ブレイドの強化に必要な「アシストコア」の材料としても欠かせないのだ。
また,ブレイドはドライバーと行動を共にすることで信頼度が上がっていき,これがブレイドの新たなスキルを開放するための条件の一つになっている。開放されたスキルは,それぞれに習得するための条件が設定されているのだが,その多くはブレイドと一緒に冒険し,敵と戦うことで自然と達成できるものになっており,気づいたらいつの間にかブレイドが成長していたなんてことも珍しくない。
こうした寄り道要素は決して強制されるわけではないが,うまくプレイヤーを誘導する形で配置されており,「やらされている」と感じるのではなく,「やってみよう」と思える,絶妙な距離感で提示される。かと言って,メインストーリーのみを追うようなプレイスタイルでも攻略に行き詰まったりすることはなく,プレイヤーは好きなときに,自分のやりたいことだけをやればいい,自由度の高さもある。
ひと言で表現すれば,本作は非常に触り心地のいいゲームだ。美しい風景を眺めながらフィールドを走り回っているだけで楽しいし,一人でMMORPGのパーティプレイをしているような,戦略性の高いリアルタイムバトルも楽しい。どんどんストーリーを進めてもいいし,街に戻ってクエストをつまみ食いしてもいい。今回プレイしたのはゲーム序盤の十数時間ほどだが,それでもできることや,やるべきことはたくさんあり,紹介しきれなかった要素も多い。
ストーリーはまだまだ始まったばかりで,あまり多くは語れないが,少年らしい真っ直ぐな熱さを持ったレックスと,謎だらけの少女ホムラによる王道のボーイ・ミーツ・ガール作品となっており,まだ見ぬキャラクター達との出会いも含め,この先どのように展開していくのか非常に楽しみだ。舞台があり,物語も用意されているが,それをどのように楽しむのかはプレイヤー次第。「ゼノブレイド2」は,この冬じっくりと遊びたい一本だ。
「ゼノブレイド2」公式サイト
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