プレイレポート
PS4版「ZERO ESCAPE 刻のジレンマ」プレイレポート。グラフィックスの大幅強化によって“ZERO ESCAPEの最終進化版”と呼べる作品に
本作は「極限脱出 9時間9人9の扉」「極限脱出ADV 善人シボウデス」に続く「極限脱出」シリーズの最新作だ。2017年4月13日より,過去2作品がセットになった「ZERO ESCAPE 9時間9人9の扉 善人シボウデス ダブルパック」(PS4 / PS Vita)が販売されているため,本作の発売によってシリーズ3作品全てがPS4で楽しめるようになる。
2016年6月30日にPS Vita版と3DS版がリリースされているタイトルだが,このPS4版は,高解像度化,ライティングの見直しなど,グラフィックス面が大幅に強化されているのが特徴だ。そんなあらゆる面が強化されたPS4版の魅力について,さっそく本稿で紹介していこう。
「ZERO ESCAPE 刻のジレンマ」公式サイト
「ZERO ESCAPE 刻のジレンマ」は,謎の人物ゼロに監禁され,強制的にデスゲームへ参加させられることになった9人のドラマを描いたアドベンチャーゲームだ。物語の舞台となる地下シェルターは3つの区画に分かれており,キャラクター達はそれぞれの区画に3人ずつ,3チームに分かれて行動することになる。
地上に脱出するには中央エレベーターホールに向かわなければならないのだが,そのためには,6つのパスワードでロックされた「Xドア」を開けなくてはならない。
しかしそのパスワードは,“人が1人死ぬごとに1つ公開される”という,無慈悲極まりないルールとなっている。施設内には幾多のギミックがこれ見よがしに用意されており,メンバーはそれぞれ思考をめぐらし,ほかのチームの人間を殺そうとする。
果たして彼らは地上へ脱出することができるのだろうか……というのが,本作のイントロ部分だ。
謎解きが見どころであることに間違いはないのだが,キャラクター1人ひとりがリアルに,そして丁寧に描かれているのも本作の特筆すべき点だろう。
生き残るために他人を殺すことを良しとする者もいれば,良心の呵責(かしゃく)にさいなまれ苦悩する者もおり,その人間性は十人十色……ならぬ九人九色といった模様だ。ムービーシーン(シネマパート)もボリュームがあり,その緊迫感のある展開や演出は,まるで海外ドラマを観ているような感覚を覚える。
デスゲームを題材にした作品は,映画やマンガも含めると星の数ほど存在するが,本作はその中でも「人間」をきちんと描いている部分が,個人的に好感を持ったポイントだ。
「死」を覚悟して選べ! ディシジョンパートの選択
続いてゲームの流れを見ていこう。本作のシステムはざっくり言うと「クエストパート」「シネマパート」「ディシジョンパート」の3つに分類される。
「クエストパート」は,シェルター内の施設を探索して,そこに仕掛けられた謎を解いていくというもの。例えば“とある部屋に閉じ込めた際に,脱出する方法を見つけ出す”という密室脱出のような要素も含まれている。
施設内のいたるところを調べ,点と点をつなぎ合わせていき,一本の線としてつなぎ合わせるというクエストパートの展開は,まさに王道の謎解きだ。ある意味,プレイヤーの推理力が最も試されるシステムでもあり,見事謎を解いた時の達成感は確かなものがある。
「シネマパート」は,いわゆるイベントシーンのことだ。キャラクターの演技とセリフのみで表現される会話シーンが楽しめる。全員がフルボイスで喋るので,臨場感の溢れるシークエンスを堪能できるだろう。ドラマ性を最も深く感じ取れるのも,シネマパートの売りである。
キャラクターの意外な過去や性格の側面などにもスポットが当てられており,非常に見応えもある。主人公のカルロスを杉田智和さん,シグマを小野大輔さん,茜を沢城みゆきさん,ミラを坂本真綾さんといった実力派声優陣が各キャラクターのボイスを担当している点も注目したい。
最も過酷な決断を迫られるのが「デシジョンパート」だ。本作の世界でこのデスゲームは“Decisionゲーム”と呼ばれており,まさに本作を象徴するシステムと言っても過言ではない。
シチュエーションは,ゼロから提示される理不尽極まりないルールや,チームメンバーとの論争など実にさまざまだが,選択次第でのちの展開に大きな影響を与えるものばかりなので,慎重に慎重を重ねた決断を下す必要がある。
一見幸福に見える結末になったとしても,正しい選択と言えず,またその逆もあるなど,単純なイエスノーの二元論を超越した,良い意味で厄介な選択肢なのだ。このパートに差し掛かったら,プレイヤーは,覚悟を決めて慎重かつ大胆な決断をしてほしい。
そのほかにも本作には特徴的なシステムがあるので,こちらも紹介していこう。本作のストーリーは,時系列の不明な「物語の断片」の中からプレイする物語を選ぶという「フローティング・フラグメント・システム」を使ってゲームを進めていく。
物語の断片の数はストーリーを進めるごとに増えていき,徐々に全貌が明らかになるという仕組みだ。途中でほかの断片を選び直すこともできるので,詰まったら別のチームに切り替えてみると,また違った視点でストーリーの背景が見えてくるだろう。
また,クリアした断片は「グローバルフローチャート」として時系列順に可視化される。つまり,クリアしたタイミングで,いままでプレイしていた物語の断片がどの時系列に位置していた判明するわけだ。
PS4版はさすがのグラフィックス
シネマパートでの恩恵は大きい
PS4版最大の特徴と言えば,やはり高解像度化とライティングの見直しといった,グラフィックス面の強化だろう。筆者はすでに本作の他機種版をプレイしているが,それらに比べると,よりドラマチックになったシネマパートがとくにこの恩恵を受けているように感じた。クエストパートも細かい部分も鮮明に表示され,プレイしやすくなった印象だ。
さて,そろそろまとめに入ろう。PS4版「ZERO ESCAPE」は,まさに同タイトルの決定版とも言うべき仕上がりになっている。もともとシナリオやシステムの評判は高かった本作だが,グラフィックス面の強化により,さらに完璧になったという印象だ。
「ZERO ESCAPE」シリーズは本作から遊んでも十分に楽しめるが,過去作との関連性もあるので,この世界観を100パーセント満喫するならば,ぜひ過去作もプレイしてほしい。
冒頭でも述べた「ZERO ESCAPE 9時間9人9の扉 善人シボウデス ダブルパック」で,先に過去作をプレイするのも良いし,本作を先に触れたあとに過去作をプレイし,「ZERO ESCAPE」の物語を補填するのも良い。この夏“最高のミステリーを体験”をしたい人には,文句なしにオススメしたい作品だ。
「ZERO ESCAPE 刻のジレンマ」公式サイト
「ZERO ESCAPE 9時間9人9の扉 善人シボウデス ダブルパック」公式サイト
- 関連タイトル:
ZERO ESCAPE 刻のジレンマ
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ZERO ESCAPE 9時間9人9の扉 善人シボウデス ダブルパック
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