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[TGS 2017]「『ワンダと巨像』コンサート」の開催を記念したトークイベントをレポート。作曲家・大谷 幸氏とSIEの北原恵一氏が明かした,“心に残る”楽曲制作の秘訣とは
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印刷2017/09/25 17:59

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[TGS 2017]「『ワンダと巨像』コンサート」の開催を記念したトークイベントをレポート。作曲家・大谷 幸氏とSIEの北原恵一氏が明かした,“心に残る”楽曲制作の秘訣とは

 東京ゲームショウ2017の最終日となった2017年9月24日,4Gamerブースにて,「『ワンダと巨像』コンサート開催記念トークイベント」が実施された。
 このイベントは,「Music 4Gamer #2『ワンダと巨像』コンサート」(仮)が,2018年3月9日に東京・渋谷のBunkamura オーチャードホールにて開催されることを記念したもの。ステージでは,「ワンダと巨像」(PS4 / PS3 / PS2)の音楽を手がけた作曲家の大谷 幸氏と,ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)サウンド課 課長 北原恵一氏が,同タイトルの楽曲にまつわるエピソードを披露した。

左からMCを務めた能登有沙さん,作曲家の大谷 幸氏,SIE サウンド課 課長 北原恵一氏
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「Music 4Gamer #2『ワンダと巨像』コンサート」特設ページ


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 北原氏が「ワンダと巨像」の音楽について考え始めたのは,2003年の夏頃だったという。そしてディレクターを務める上田文人氏ら開発チームとともに考えた結果,“壮大な音楽や感情を揺さぶるような音楽が必要”という話になり,映画やアニメのサウンドトラックなどでさまざまなジャンルの楽曲を手がけていた大谷氏の名前が挙ったそうだ。

 大谷氏に音楽のオーダーをするにあたり,北原氏は「主人公が代償を覚悟しながら巨像を倒し,蘇生術を駆使して大切な人を蘇らせる」という「ワンダと巨像」の背景を踏まえ,「覚悟の裏にある悩みや葛藤,希望と絶望,光と影」といった相反するものを一つの楽曲の中に入れてほしいと考えたという。
 そんなオーダーを受けた大谷氏は,「ファンタジーだが,救いのない世界」というイメージを常に持ちつつ,作曲に臨んだそうだ。

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 また大谷氏は,それ以外にも,上田氏ら開発チームから,「バトル時に主人公が優勢になったときと,ピンチになったときで,楽曲が自然に入れ替わるような感じにしてほしい」というオーダーを受けたとのこと。つまり,同じテンポかつ同じキーの楽曲を2曲作ることになったわけだが,これはテクニック的にかなり困難だった反面やりがいもあり,楽しかったという。

ステージでは,バトルで優勢なときに流れる「蘇る力」およびピンチに陥ったときに流れる「荒ぶる邂逅」の楽譜が披露された
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 一方,北原氏はこうした仕様を「主人公が今どんな状況にあるのか,音楽だけで伝わるようにしたかった」と説明。しかしハードウェア的な制約もあり,曲を切り替えるシステムの制作はなかなか思うように進まなかったとのこと。ある意味,システムに音楽を合わせる必要が生じたために,大谷氏が作った楽曲にリテイクを出すこともあったそうだ。

 大谷氏がとくに思い入れを抱いている楽曲は,ロマンチックな雰囲気のピアノ曲「陽のあたる大地」。この楽曲では自身でピアノを弾いているそうで「難しいけど,うまく弾けたな」という喜びもあるのだとか。大谷氏は,「『ワンダと巨像』コンサートでは,この曲をオーケストラとピアノソロをうまく組み合わせたアレンジで聴けたら嬉しい」と話していた。

 また北原氏は,「登場するすべてのキャラクター達のレクイエムに思える」「ゲームの世界に昔からあるような美しい曲」という理由で,「エピローグ〜残されし者たち〜」が思い出に残っているそうだ。大谷氏も,「少し長い曲ですが,ぜひオーケストラで聴きたい」と感想を述べていた。
 なおこの楽曲にはコーラスも入っているが,その歌詞は上田氏がピックアップしたゲーム内のキーワードの中から,大谷氏がいくつか選んでメロディに当てはめていったことも明かされた。

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 ステージでは,作曲時の大谷さんがゲームの絵コンテをスタジオ中に貼り,あたかも自分が「ワンダと巨像」の世界の中にいるかのような空間を作り出していたというエピソードも披露された。
 また北原氏も,初めての打ち合わせで大谷氏の自宅を訪れたとき,事前に送付したストーリーボードがピアノの周囲に貼ってあるのを見て驚いたという。さらに上田氏を交えてどんな音楽を求めているかを伝えようとしたところ,大谷氏のほうから「こういうイメージだと思います」と,北原氏らが考えているそのままの内容を説明されたことにも驚かされたそうだ。

 与えられた資料だけで,そこまで深く「ワンダと巨像」を理解できたことについて,大谷氏は「好きな世界観だったから」とし,「まるで映画を観ているかのように,自分の中に映像と音楽が浮かんできた」と説明した。

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 また今回,「ワンダと巨像」の音楽をオーケストラで演奏することについて,大谷氏は「一つの作品でコンサートをやっていただけるのは,作曲家として本当に光栄なこと。とにかく楽しみです。コンサートに来てくださる方も,『ワンダと巨像』をよく知っていると思いますので,心から楽しんでいただけると嬉しいです」と感想を述べた。

 一方,北原氏はオーケストラを使って音楽を制作したのは,「ワンダと巨像」が初めてだったという。「とくに本作の音楽は派手さがウリというわけではなく,ただただ深い楽曲ばかりなので,それで一つのコンサートを構成したらどんな仕上がりになるのか楽しみです」と話していた。

 そのほか,北原氏は「ワンダと巨像」の効果音の制作も手がけていたのだが,その収録のため深夜に公園などを徘徊しているとき,よく警官に職務質問されたというエピソードも披露された。

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 イベントの最後には,大谷氏が「『ワンダと巨像』が好きな方,ゲーム全般が好きな方,いろんな方とコンサートを楽しめたら嬉しいです」とコメント。そして北原氏が,「このゲームが発売されてから長い年月が流れましたが,私自身,関わることができて本当によかったです。今後も長く皆さんの心に残る作品であってほしいです。またコンサートも非常に楽しみにしています。ぜひ皆さんも生のオーケストラ演奏を聴いていただきたいです」と語って,トークを締めくくった。

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