連載
【Jerry Chu】“戦う”だけではない,“魅せる”のだ。最も好きなゲーム「デビル メイ クライ3」を振り返る
Jerry Chu / 香港出身,現在は“とあるゲーム会社”の新人プログラマー
Jerry Chu「ゲームを知る掘る語る」Twitter:@akemi_cyan |
“戦う”だけではない,“魅せる”のだ
「最も好きなゲーム」は人それぞれだ。
ビデオゲームに興味を持つきっかけとなった1本。学生時代にやり込んだゲーム。感銘を受けた作品。ゲーマーであれば,こうした思い入れのある名作を挙げられるだろう。
筆者の最も好きなゲームは,2005年にリリースされた「デビル メイ クライ3」(PlayStation 2)である。当時,中学生だった筆者は本作を何百,いや何千時間とやり込んだだろうか。筆者に多大な影響を与えた印象深い作品である。
だから,本作を含むシリーズ初期三部作を収録した「デビル メイ クライ HDコレクション」(PC / PlayStation 4 / Xbox One)の発売は素直に喜んでいる(関連記事)。
筆者のような古参ファンには温故知新であり,「デビル メイ クライ」を知らない人には重要な名作に触れられる機会だ。初期三部作はいずれも10年以上前のタイトルだから,若い読者には未プレイの人も多いだろう。
最新のゲームと比べるとグラフィックスはどうしても粗く見えるが,アクションゲームとしては不朽の名作である。今回のコラムは,筆者が愛して止まない「デビル メイ クライ3」の魅力に焦点を当ててみたい。
※本稿のスクリーンショットはPlayStation 3版「デビル メイ クライ HDコレクション」に収録されている「デビル メイ クライ 3 スペシャルエディション」よりキャプチャしたもの。
「デビル メイ クライ HDコレクション」公式サイト
「デビル メイ クライ」シリーズの主人公・ダンテは, 悪魔と人間の血を引く“半人半魔のデビルハンター”。魔剣と二丁拳銃を愛用し,人間界に侵攻する悪魔を狩る。絶大な力を持つダンテは怖いもの知らずで,悪魔との戦いにおいても不敵な態度を崩さない。
驚異的な身体能力を生かして,悪魔を手玉に取るように弄ぶ。マグマを噴く大悪魔に対しても軽口を叩いて挑発する。自分に向かって放たれたロケット弾は,サーフィンのように乗りこなす。
ダンテは伝説のデビルハンターだが,黙々とターゲットを仕留めるプロの殺し屋ではなく,悪魔との戦いを鼻歌混じりに楽しむような楽天家だ。
悪魔を圧倒する力を持つダンテにとって,戦いは自分の見せ場。悪魔を葬るにしても,スタイリッシュに決めたい。そんなダンテのメンタリティーは「スタイリッシュコンボ」という形でゲームに綴じ込まれている。
プレイヤーが斬撃と銃撃を連続して当てると,コンボが成立して画面に「Crazy!」「Blast!」「Alright!」といった“カッコよさ”を評価するテキストが表示される。敵の攻撃をかわしながら,多彩な技を繰り出して絶え間なくダメージを与える。すると「スタイリッシュランク」が上がり,敵を倒したときにより多くのレッドオーブ(お金に近い位置付けのリソース)が手に入る。
ただ敵を倒すのではなく,敵を“カッコよく”倒す。これこそ「デビル メイ クライ」の醍醐味だ。
ゲームとは動詞の具現化である。「スーパーマリオブラザーズ」ではプレイヤーキャラクターが「跳ぶ」。「メタルギアソリッド」では「隠れる」。「ワンダと巨像」では「登って」「刺す」。ゲームは動詞によって定義されるものだ。
だが「デビル メイ クライ」シリーズは,動詞の代わりに「副詞」のほうが主格となる。敵を「撃つ」「斬る」のではなく,「カッコよく」「スタイリッシュに」倒すゲームだ。多彩な技を使いこなし,自分なりのコンボを編み出して,戦場で舞い踊る。
「デビル メイ クライ」シリーズにおける戦闘は,ただの勝ち負けではない。プレイヤーとダンテの見せ場であり,敵を“華麗に”打ち負かすことが求められる。動詞によって構成されるゲームの文法に,「デビル メイ クライ」シリーズは副詞を与えたのだ。
勝敗の判定はシンプルだが,戦いの“華麗さ”はどう判定すればいいのか。スタイリッシュコンボのシステムは作品によって変化してきたが,ここでは「デビル メイ クライ3」のシステムを紹介しよう。
ダンテのすべての技には,それぞれ固有の「スタイリッシュポイント」が設定されている。敵に攻撃を当てたり,敵の攻撃をかわしたりすると,スタイリッシュポイントが蓄積され,ポイントが一定値に達することで,スタイリッシュランクは「D」から「SSS」まで上がっていく。
そのほか,スタイリッシュコンボの基本ルールは以下のとおりだ。
- 蓄積されたスタイリッシュポイントは時間経過と共に減少する
- 技を使ってポイントを得ると,一定時間内に同じ技を繰り返してもポイントが得られない
- 敵が近距離にいるときに挑発すると大量のポイントが得られる
- 敵の攻撃を回避行動によって間一髪で避けるとポイントが得られる
- ダメージを受けるとランクが大幅に下がる
行動しなければポイントを失うため,積極的に攻めないことにはランクが上がらない。同じ技を繰り返してもポイントが得られないため,遠距離から銃を撃っているだけではランクが上がりにくい。
ランクを上げるには,敵に接近して武器を切り替えながら戦うことになる。敵に接近すると反撃を受けてランクが下がるリスクが生まれるが,敵の攻撃をうまく避ければポイントを得るチャンスでもある。“ダメージを受ける”というリスクを負って,スタイリッシュポイントというリターンを狙うのだ。
スタイリッシュコンボのルールを理解すれば,自然と多彩な技を織り交ぜて攻め込み,敵の攻撃を華麗に避ける戦い方になる。安全な距離から銃を連射するといった単調な戦い方は,決してカッコいいとは言えない。スタイリッシュになりたければ,敵陣に果敢に飛び込んで派手なコンボを決めよう。スタイリッシュコンボのルールは,プレイヤーをカッコよく戦うように誘導しているのだ。
初心者は敵を倒すだけで精一杯かもしれないが,熟練者はスタイリッシュな戦い方を目指す。勝ち負けのほかに“華麗さ”という評価基準を設けることで,「デビル メイ クライ」シリーズはアクションゲームとしての深みを増している。
コンボシステムはアクションゲームによく見られるものだ。例えば,「戦国BASARA」シリーズでは,敵に連続して攻撃を当てればコンボが成立し,ヒット数が加算されていく。ヒット数を稼ぐことで,倒した敵からより多くの小判が手に入る。
それと比べると,「コンボはヒット数ではなく,ポイントで評価する」「時間が経過してもコンボが中断されない」のが,「デビル メイ クライ3」の特徴だ。溜め技のような“重くて遅い攻撃”には相応のポイントが設定されているので,高速で手数の多い技に対してもコンボにおいて不利にはならない。
また,時間経過によってポイントが低下していくが,ダメージを受けなければランクが大きく下がることはない。遅い攻撃でもコンボに組み込めるし,攻撃を一旦止めて回避や態勢を立て直したりする余裕はある。
実際,素早い連続攻撃を得意とする“ヌンチャク”と溜め技が特徴的な“格闘装具”は,コンボにおいて同等の活躍を見せてくれる。「デビル メイ クライ3」のコンボシステムは,柔軟性と自由度に富んでいると言えるだろう。
こうしたスタイリッシュコンボのシステムは,ダンテのキャラクターに合致している。とくに「3」のダンテは派手好きで,はっちゃけた若者だ。戦闘では安全性や確実性より,カッコよさや楽しさを重視するだろう。
スタイリッシュコンボはゲームの要素というだけではなく,ダンテが持つ美学の具現化であり,プレイヤーにダンテを演じさせるための仕組みでもある。ゲームのルールをもってキャラクターを表現する。この点もスタイリッシュコンボの秀逸なところだ。
スタイリッシュコンボは優れたゲームデザインだが,あくまで開発スタッフが考えた「カッコよさ」のルールである。プレイヤーはそれを逸脱して,別のカッコよさを編み出すこともできる。
例えば,YouTubeには熟練者による“スーパープレイ”がアップされている。その大きな見どころは“空中での連続攻撃”だ。
ダンテはさまざまな空中技を使えるが,空中では徐々に落下するので,長時間滞空して攻撃し続けることは難しい。そこで,「エネミーステップ」と呼ばれる空中で敵を踏みつけてジャンプする技が重要になる。空中技の直後にエネミーステップを使えば,滞空時間を延ばして攻撃を続けられるのだ
例えば,「兜割り」は空中から垂直に落下して,大剣で敵を地面に叩きつける技だ。着地の瞬間に衝撃波が発生し,敵を吹き飛ばすが,着地の直前にエネミーステップを使えば,落下モーションをキャンセルして空中に戻れる。兜割りとエネミーステップを繰り返し,敵を斬り続けてもいいし,兜割りではない技に派生してもいい。
「デビル メイ クライ3」の“魅せプレイ”には,エネミーステップを活用した空中コンボがほぼ外せない。とにかく,カッコいいからだ。
エネミーステップを使って空中コンボを繰り出すには,迅速かつ正確な操作が必要になる。エネミーステップで直前の技をキャンセルしつつ,高度が上昇する前に次の技のコマンドを入力していく。「デビル メイ クライ3」をやり込んだと自負する筆者だが,兜割りやスウィングといった技にエネミーステップを挟むことはできても,YouTubeにアップされているような華麗な空中コンボは無理だ。
エネミーステップを活用して,自在に連続攻撃を披露するプレイヤーには,困難をやすやすとやってのける“カッコよさ”が伴う。これはゲームのシステムの定義したカッコよさではない。プレイヤーの視点から感じたカッコよさだ。
そもそも,同じ技を短い間隔で繰り返してもポイントを得られないため,エネミーステップを活用して空中技を繰り返すことは,むしろポイントを稼げない。それにもかかわらず,一握りのプレイヤーが習得している高度なテクニックが見る者の目を奪う。
クリエイターはゲームのルールを作ることができる。だが,プレイヤーはルールを無視して自分なりの価値を見出すことができる。クリエイターが設定した「カッコよさ」とは別に,自分の考えた「カッコよさ」を追求してもいい。プレイヤーの自己表現を許容する「デビル メイ クライ3」は,筆者のゲーム観を大きく変えた作品だった。
もし「デビル メイ クライ3」を遊んだことがなければ,まずは自力でクリアしてみよう。その後,スタイリッシュコンボのシステムを理解して,高難度に挑戦してほしい。腕に自信がついたら,熟練者のスーパープレイを真似してみるといいだろう。噛めば噛むほど味が出る,奥深いアクションゲームであることが分かるはずだ。
■■Jerry Chu■■ 香港出身,現在は“とあるゲーム会社”の新人プログラマー。中学の頃は「真・三國無双」や「デビルメイクライ」などをやり込み,最近は主に洋ゲーをプレイしている。なるべく商業論を避け,文化的な視点からゲームを論じていきたい。 |
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(C)CAPCOM CO., LTD. 2012, 2018 ALL RIGHTS RESERVED.
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