レビュー
「嘘つき姫と盲目王子」レビュー。姫の姿となった狼と,目の見えない王子が力を合わせて旅をする,懐かしくも切ない2Dアクションアドベンチャー
本作は,セピアカラーを基調とした2Dグラフィックスで,異なる境遇の姫と王子の物語を描くアクションアドベンチャーだ。2人のキャラクターをいかにして動かすかが重要で,パズル的なギミックも楽しいものとなっている本作のレビューを掲載しよう。なお,今回はPS4版でプレイしており,文中のボタン表記もそれに準じている。
近藤玲奈さんの静かな語りで始まる本作は,止め絵のストーリーパートと,2Dのアクションパートで構成されている。
ストーリーパートの字幕は,背景となる絵の邪魔をしないように配慮した位置に表示される。独特のタッチやページをめくる演出など,雰囲気は絵本そのもので,特別なシーンではクロッキーのような絵柄になるのも印象的だ。字幕の朗読は全編近藤さんによるもので,絵本を読んでもらっているような感覚でゲームは進んでいく。
この世界には人間と化け物が住んでいて,化け物は人間を食べる存在として恐れられている。登場する化け物はどれもコミカルで,人間は可愛く描かれているぶん,ときに見られる残酷な描写とのギャップが大きい。主人公の1人である姫の正体も狼の化け物であり,もう1人の主人公である王子との出会いはなかなか衝撃的だ。
夜な夜な歌を歌うのが好きな狼の化け物と,岩の上から聞こえてくる歌声を毎晩聞いていた小国の王子。ある日,声の主に会いたくなった王子の行動が,思わぬ悲劇を招いてしまう。
不幸な事故で視力を失ってしまった王子を不憫に思った狼は,森の魔女に頼み込み,美しい歌声と引き換えに少女の姿を手に入れ,王子の目を治してもらうために,2人で再び魔女のもとへと旅立つ。
王子に嫌われたくないために,自身が隣国の姫だと偽る狼と,目が見えないために,一緒に居る姫の正体が自分を傷つけた化け物だということを知らない王子という,何とも切ない境遇の2人であり,その後のストーリー展開がなんとなく予想できてしまうところがまた切ない。
そしてアクションパートでは,プレイヤーは姫を操作することになる。一緒に行動する王子は,彼女が手を引いたり,何か指示を出したりしてあげないと行動ができない。[□]ボタンで手を引き,方向キーで短距離の移動やちょっとした物を持ってもらうように指示できるので,2人で協力して進んでいくのだ。
アクションの中でも特徴的なのが,姫はいつでも狼の姿に戻れるというもの。狼は強力な攻撃を持っていて,化け物を倒したり,特定の障害物などを破壊したりと,姫の状態ではできないパワフルな攻撃を行える。ジャンプ力も数倍に上がり,化け物に対しても基本的に無敵で,とにかく強い。プロローグでは,あっという間に魔女の森を行き来しているほどだ。
しかし,化け物を恐れる王子の手を引くことができないという最大の欠点があり,これが今回の長旅の要因にもなっている。
王子の手を引き,ときに2人で協力し,行く手を阻む化け物を狼の姿になって退け,2人揃ってカカシのいるゴールにたどり着くことでステージクリアとなる。どちらかがやられてしまうとゲームオーバーで,直前のチェックポイントからのやり直しとなる。
ステージのギミックには,乗ると起動するスイッチや,カギで開く扉,狼が攻撃すると種を飛ばす花,大ジャンプができるキノコなど,本作の世界観にマッチしたものが数多く存在している。また仕掛け的なものとは別に,設問に対する回答を入力することでクリアできるような思考要素が強いものも用意されていて,このあたりは絵本というよりは,「頭の体操」的な懐かしいパズルを彷彿とさせる。
新しいギミックが現れたときは,ヒントとなるメッセージが表示される |
謎解きのようなギミックも。時間はあるのでじっくり考えてみよう |
またこれらのギミックをどうしてもクリアできないという場合は,一定時間の経過によってステージをスキップすることも可能となっている。何よりも先に物語を楽しみたいという人もゲームを進められる設計だ。本作のメインとなるアクションパートをスキップできるという大胆な救済処置ではあるが,進めばステージセレクトもできるようになるので,まずは先を見たいという人にはいいかもしれない。
細かな部分ではあるが,収集によるやり込み要素も充実している。ステージ中に落ちている花びら,あるいは花畑に咲いている花は,一部を除いてクリアには必要がない収集アイテムで,取っておくとメニューにある「コレクション」や「アルバム」から,設定資料や「魔女のおとぎ話」など,本作の世界観をより深く楽しめる読み物を閲覧できるようになる。ゲームをプレイしていると,クリアルートとは違う場所に落ちていたり,見えているのに取れなかったりするものもあるので,クリア後にステージセレクトができるのは親切だ。
絵本という雰囲気を重視したゲームではあるものの,ステージの仕掛けは段階を踏んで少しずつ難しくなっていくバランスで,パズル要素の強いアクションゲームとしての完成度も十分。現在の据置・携帯の主要ハードで発売されるというのもポイントで,とくに寝床に入ってPS VitaやSwitchの携帯モードなどでプレイすれば,絵本を読んでもらっているような感覚になれるだろう。
ただし絵本としてはかなりブラックな表現(CEROレーティングB程度)もあり,昔読んで聞かされた怖いおとぎ話を思い出してしまうかもしれないので,そのあたりはご注意を。
森の化け物達は“狼”や“山羊”のように我々にもなじみ深い名前で呼ばれているようだ |
自分の本当の姿を知られないように嘘を重ねていく姫の心境は見ていて切なくなる |
「嘘つき姫と盲目王子」公式サイト
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©2018 Nippon Ichi Software, Inc.
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