プレイレポート
「プチコン4 SmileBASIC」のオススメ投稿作品17本を紹介。体験版で試すもよし,“第五回 プチコン大喜利”応募作品の参考にするもよし
「プチコン4」は,プログラム言語の一種・BASICを拡張した“SmileBASIC”のコーディング環境や実行環境など,各種ツールで構成されたもの。プチコン大喜利は,SmileBASICで構築したオリジナルゲームのコンテストであり,今回の大賞受賞者には“北海道 海の幸”が贈られる。また,前回の大賞受賞作品「ドウクツジマ」は単品タイトルとして製品化されているので,それに続ける可能性もあるだろう。
「プチコン4 SmileBASIC」,賞品は北海道・海の幸,第5回プチコン大喜利が開催。本日から無料体験版の配信もスタート
スマイルブームは本日,プログラミングソフト「プチコン4 SmileBASIC」において,「第5回プチコン大喜利」を開催すると発表した。今回のお題は「シュッとした」で,大賞の受賞者には北海道の海の幸が贈られる。
プチコン大喜利には各回のテーマが用意されており,今回は「シュッとした」というものだ。「大事なお題なんだし,もうちょっと具体的に言ってくれない?」と言いたいかもしれないが,具体的な条件はなく,とにかく「シュッとした」ニュアンスが表現できればOKとなる。世の中にはシュッとしたスタイリッシュなダークヒーローや,シュシュッと参上する忍風戦隊,シュッと泡をスプレーする部分洗い用洗剤,シュッと刺して煮込むと思いきや閉める式神など,いろいろな「シュッとした」ものがあるが,どの類でも大丈夫だ(もちろん他者の権利を侵害した作品や,公序良俗に反するネタはNGとなる)。
とは言え,これで「よし,やるぞ!」となる人は限られるだろう。SmileBASICにしても,Visual BasicのようなRAD(高速アプリケーション開発)のない,インタプリタ風(※)の比較的ベーシックなBASICである。プログラミングをまったく知らない人が戸惑うのはもちろん,Scratchなどに慣れた少年少女は「なにこの古臭い環境?」と思ったり,ナイスミドルおよびナイスミディは「この令和にBASICなんて……アナログ地上波の副音声で流れたピーガーをカセットテープに録音して8bit PCにロードさせてRUNする昭和じゃないんだぞ?」と思ったり,「て言うか主音声混ざっててロードされないし!」と三十数年ぶりの憤りをテレビ東京にぶつけたくなったりするかもしれない。
※内部的には中間言語にコンパイルし,仮想環境で実行している。
しかし待ってほしい。テレ東だって急に三十数年前の憤りをぶつけられても困るだろうし。なんと「プチコン4」の最大メモリ容量は128MB,スプライトは最大4096枚,さらにマウスなどのポインティングデバイスやToy-Conも利用できる(※詳細な仕様については公式サイトを参照)。8bit PCの時代とは,まるで次元が違う。しかも10月18日に発売されたばかりのNintendo Switch用ソフト「リングフィット アドベンチャー」の開発には,SmileBASICをベースとしたスクリプト言語「SBScript」が採用されている。そう,SmileBASICはレガシーシステムではなく,モダンシステムなのだ。
そんな「プチコン4」を試してみたいと思った人は,本日リリースされた体験版を触ってみよう。体験版は,プログラミングはもちろんのこと,サーバーにアップロードされている作品のダウンロードも可能だ。制限されている主な機能は以下の通り。
体験版の特徴
- ダウンロードした作品のセーブ領域は最大32MB(製品版は最大512MB)
- 作品をダウンロードしたら次回ダウンロードまで8時間のクールタイムが必要(公式作品などは無制限。無制限ゲームは追加・変更予定アリ)
- 自作プログラムの保存は不可(実行は可能)
- プチコンサーバーへの自作プログラムのアップロードは不可
現在のアップロードされている作品数は約650本。パッと見だと,どれが優れた作品なのかが分からないだろう。そんなわけで,“「プチコン4」で何ができるのか”をざっくり把握できるような,オススメ投稿作品を紹介したい。なおSmileBASICの仕様上,どのプログラムもソースコードを閲覧・編集できるので,自分でプログラムを組むときの参考にすることが可能だ。
GIVERS P3D プチコン4エディション
作者名:Bugtaro
公開キー:4234W3QV
電波新聞社刊「マイコンBASICマガジン」の有名投稿者“Bug太郎”としても知られる,スマイルブームの谷 裕紀彦氏が開発したシューティングゲーム。スクリーンショットからお分かりかとは思うが,ポリゴン描画の3Dグラフィックスが用いられている。ゲーム自体はシンプルだが,画質もフレームレートも当然ながら高く,視点移動による演出やステージ間デモなども作り込まれており,「BASICでこんなものが作れるのか!」と驚かされる。
Cyburst
作者名:ToT_k
公開キー:4D34X333J
3つの武装を切り替えながら戦っていく縦スクロール式のシューティングゲーム。画像の拡大縮小による背景演出や,敵撃破時に放出されるアイテムのパターンなど,プログラムによる表現が秀逸だ。
Petit Clampett
作者名:JNK
公開キー:4LA4EX334
イングランドのグレーターマンチェスター・ボルトン区に在住のJNK氏による作品。自動生成されたメイズの中で,ジャンプと天井張り付きが可能なキャラクターを操り,一定数のコインを集めればステージクリアとなるアクションゲームだ。JNK氏はプチコンのヘビーユーザーで,週1ペースで新作を公開している。そんなハイペースだと1作を作り込む時間は無いと思われるが,それでも「遊べる」作品になっているのがすごい。「少ない要素を組み合わせて遊べるゲームを作る」というセンスの良さが感じられる。
Hoppers
作者名:おぼの
公開キー:44ZKE3EK3
トランポリン状のパネルを,より高い位置のものへと飛び移っていくことで,最高峰にあるゴールパネルを目指すアクションゲーム。筆者的にはShockwave時代のブラウザゲームを彷彿とさせられるデザインだ。「Nintendo Switchでゲームを作れる」となると凝ったものを作りたくなるのが人情だが,本作のようにシンプルなルールとプレイフィールだけでプレイヤーに「面白い」と思わせることができるかというのも,制作者の腕前が問われるところとなる。
JINTORI
作者名:hijk0909
公開キー:4NZKDDESD
「GIVERS P3D プチコン4エディション」ほどではないが,3D表現を採用した全方位型シューティングゲーム。敵のジェネレータに接触して制圧し,画面上の敵を倒し切るとステージクリアとなる。敵キャラクターの複雑な動きは注目すべきポイント。
アルパカ v1.11RS
作者名:スー
公開キー:4E32NQDBX
アルパカの首を伸ばしてリンゴを食べるゲーム。ほとんどジョークソフトのような,主に見た目のインパクトで攻めるデザインだが,その“見た目”が実は注目ポイント。「プチコン4」は,本体仕様の都合上,外部からのデータインポートが行えないのだが,本作にはグラフィックス素材として写真が使われている。これは麗氏が開発した「Petit4Send」(公開キー:4BKXWKAE)およびPC用「Petit4Send」クライアントソフトと,Arduinoキットを用いて実現されているのだとか。「プチコン4」のさらなる可能性が垣間見えるタイトルだ。
nROGUE
作者名:neko800
公開キー:4KK8E4EY
かなりRogueらしいRogue系RPG。そのRogueらしさは,CUIでもないのに主人公が「@」マークなところからしてバリバリだ。その一方で,タイトルロゴが燃えていたり,敵を倒すと血飛沫が飛び散ったりと,Rogueにしてはテンションの高さが感じられる。グラフィックス表現を絞ってもエッセンスを伝えられる演出ができるというのは感心するところだ。
SUNRISE AIRPORT
作者名:Hanzo
公開キー:4A2NEW24E
民間航空機の着陸シーケンスをテーマとしたフライトシミュレータ。シンプルすぎるきらいはあるが,ファーストパーソンの航空機ゲームを作れるという点では驚きがある。
VATTE-LA
作者名:ギターやんよ
公開キー:4EKXW2QE
フィールド上の鍵を集めるとゴールが出現し,ゴールに接触するとステージクリアというアクションゲーム。こう書くと「ドルアーガの塔」っぽいが,どちらかというと「パックマン」のようなドットイートアクションのバリエーションといった印象だ。演出のレベルが高いほか,アクションゲームに大事なキャラクター操作の小気味よさやシチュエーションが醸し出す緊迫感など,一言で表せば“手触り”が優れている。
BALL SHOOTING BALL
作者名:KUNISAN.JP
公開キー:42E338E4V
ビリヤードをモチーフとした,白いボールを操作して他のボールを穴に落せばステージクリアというデザインのゲーム。派手さは無いが,慣性の付いた自然な振る舞いをするボールのプログラムはハイレベル。重量がある(伝達運動量が抑えられる)ボールや,ピンボールのバンパーのように激しく跳ね返すオブジェクト,ボールの速度を落とす(運動エネルギーを奪う)床など,レベルデザインにも感心させられる。
アルカナストーンforプチコン4
作者名:そう
公開キー:4N32NQPPY
対戦格闘ゲーム「アルカナストーン」に新モードを追加して「プチコン4」の環境へ移植したタイトル。オリジナル版の「アルカナストーン」は,「フェイト/タイガーころしあむ」や「魔法の海兵隊員ぴくせる☆まりたん」などのイラストレーションで知られるヒライユキオ氏がニンテンドー3DS「プチコン3号 SmileBASIC」で制作したものだ。1人プレイは「起き攻め仕掛けてダウン確定攻撃を撃つのを繰り返せば終わる」といった感じなので,格ゲーのバランス調整やAI設計の難しさを感じるが,「プチコンでも“らしい”格ゲーを作れる」という可能性を示すという意味では十分過ぎるほどのタイトルだ。
VECTOLCAR
作者名:まつたく
公開キー:44JX34E4D
往年のベクタースキャンゲームをオマージュした,2Dワイヤーフレーム系グラフィックスのカーレースゲーム。これもまたシンプルすぎるきらいはあるが,「プチコン4で可能なビジュアル表現」の追求例としては面白い。2Dワイヤーフレームのほか,PC88用アドベンチャーゲームのようなライン&ペイントによるグラフィックスや,Delphine Software製ゲームのような2Dポリゴンなど,今は廃れた表現技術を「プチコン4」で再現することも可能だろうという気にさせてくれる。
MusiqA v1.3.3
作者名:むぎちゃ!
公開キー:4EKX4Q334
タッチ操作でプレイするリズムアクションゲーム。先の「アルパカ v1.11RS」でも述べたように,本体仕様の都合上,「プチコン4」は外部からのデータインポートが不可能なので,本作の収録曲はすべて音声データではなくMML(Music Macro Language)で鳴らされている。そんな「チップチューン音ゲー」な面に感服するほか,単純にゲームとしても譜面のクオリティが高い。
ICE QUEEN
作者名:jojo3
公開キー:4KE3VPBS
アイススケートをモチーフとしたアクションゲーム。時間制限がありつつもプレイ中の画面で残り時間を確認できないといったゲームとしての難点は否めないが,検知した傾きをもとにキャラクターの加速値を演算するという設計は見事。Joy-Conの特性を生かしたゲームを作りたい人は,触れてみると何かヒントを得られるのではないだろうか。
プチエアードラム
作者名:たかひろ
公開キー:4S384KE4E
こちらはJoy-Conが持つ機能のうち,加速度検知を利用したドラムツール。前述の「Petit Clampett」にも似て「必要なものをうまくパッケージングして作品を作る」というセンスがいい。発される音色は,Joy-Conをデフォルト状態で振ったときの1音と,4種のボタンを押しながら振ったときの各1音,それが左右で計10音までセッティングできる。
Pics Limited foru Switch
作者名:すうはかせ
公開キー:4N32KXD2Y
タッチ操作で絵を描ける,高機能なペイントツール。旧作プチコンでもリリースされていたが,Nintendo Switchが外部ポインティングデバイスに対応しているため,ペンタブレットを使ったイラストレーションも可能となった。
PetitKEY
作者名:kt.
公開キー:422N4W3AV
パーカッション系やビープも含め433音を利用できる本格派のキーボードツール。エンベロープやトレモロなどのフィルタも使えるうえ,3トラックまで音を重ねられる。タッチ操作は5点まで対応しているほか,キーボード(MIDIキーボードではなく文字入力用キーボード)での操作も可能。
これらのほかにも,一発ネタのジョークソフトから他環境のエミュレータまで,多種多様な作品が投稿されている。プログラムを作るのはもちろん,どんな作品があるのか深堀りしてみるのも「プチコン4」の楽しみ方だ。
「プチコン4 SmileBASIC」公式サイト
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