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「GeForce RTX 2060」レビュー。349ドルで登場する60型番のRTX 20シリーズは「みんなの新世代GPU」となれるか
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印刷2019/01/07 23:00

レビュー

349ドルで登場する60型番のRTX 20シリーズは「みんなの新世代GPU」となれるか

GeForce RTX 2060
(GeForce RTX 2060 Founders Edition)

Text by 宮崎真一


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 すでにお伝えしているとおり,日本時間2019年1月7日,NVIDIAは,Turing世代のGPU新製品「GeForce RTX 2060」(以下,RTX 2060)を発表した。搭載カードは北米時間1月15日発売予定だ。
 その4桁型番から想像できるとおり,RTX 2060は「GeForce RTX 2070」の下位に置かれるGPUで,同時に,従来製品「GeForce GTX 1060 6GB」(以下,GTX 1060 6GB)を置き換える存在でもある。

 RTX 2070搭載グラフィックスカードの価格はデビュー時と比べて落ち着いてきたものの,依然として実勢価格は6万3000〜8万2000円程度(※2019年1月7日現在)と十分すぎるほど高価である。それゆえに,より購入しやすい価格のGeForce RTX 20シリーズ搭載製品を望む声は少なくなかったわけだが,直販モデルとなる「Founders Edition」で北米市場におけるメーカー想定売価が349ドル(税別)となるRTX 2060はそのような声に応えることができるのか。
 4GamerではNVIDIAからまさにそのRTX 2060 Founders Editionを入手できたので,テストを通じてその立ち位置を明らかにしてみたい。

RTX 2060 Founders Edition
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GPUコアはRTX 2070と同じ「TU106」。グラフィックスメモリは上位モデルと変わらずGDDR6対応に


NVIDIAが公開したRTX 2060のGPUパッケージ(上)と,RTX 2070が採用するTU106(TU106-400A-A1)のGPUパッケージ(下)。シリコンダイのサイズ(というか形状とパッケージ上の専有面積)が変わっていない点に注目してほしい
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 まずは,RTX 2060の基本仕様を確認しておこうと思うが,採用するGPUコアはRTX 2070と同じ「TU106」である。NVIDIAはこれまで,ミドルクラス市場向けGPUをハイクラス市場向けと揃えたり,逆に別コアにしたりと,世代ごとに異なる戦略を取ってきたが,GeForce RTX 20シリーズで採用するのは前者ということになる。

 ミドルクラス市場向けGPUのコアをハイクラス市場向けのそれと揃える場合,シリコンダイのサイズが大きくなるためコスト的には不利となるが,歩留まりの関係で「ハイクラス市場向けGPUとしては使えないシリコンダイ」を救済できるメリットがある。逆に分けた場合は,上位クラスのシリコンダイ不良を救済できない一方で,シリコンダイのサイズを物理的に小さくできるため,量産時の製造コストを大幅に低減できるメリットがあるのだが,GeForce RTX 20シリーズのミドルクラス市場向けGPUでNVIDIAが採用したのは「上位クラスの製品とシリコンダイ共用」だったというわけだ。

 そのため,GPUとしての基本仕様はRTX 2070と変わらない。12nmプロセス技術(12nm FFN)を用いて製造され,108億トランジスタを445mm2というサイズのシリコンダイに集積する点は当然同じだ。置き換え対象となるGTX 1060 6GBのGP106コアだと16nm FinFETプロセス技術を用いて製造され,44億トランジスタを200mm2というサイズのシリコンダイに集積しているため,思いっきりざっくり計算するなら製造コストは2倍以上違うはずである。

参考までに,フルスペック版TU106(=RTX 2070)のブロック図
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 さて,そのプロセッサ規模だが,基本的には「RTX 2070比で6分の5(≒83%)」という理解でいい。
 RTX 2070の採用するTU106コアでは,Turing世代の演算ユニット「Streaming Multiprocessor」(以下,SM)を12基集め,CPUで言うところの「CPUコア」に相当する“ミニGPU”モジュールとしての「Graphics Processor Cluster」(以下,GPC)を構成し,さらにそのGPCを3基束ねた設計になっていた。
 それに対してRTX 2060では,3基のGPCで合計6基のSMが無効になっている。もちろん,そのパターンはいくつか考えられるが,許容できる不具合と性能のバランスからして,「GPCあたり2基ずつ無効にしている」可能性が最も高いというのが筆者の推測だ。

Turing世代のSMブロック図
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 Turing世代では,16基の「CUDA Core」――より正確を期すなら「32bit浮動小数点(FP32)演算器,32bit整数(INT32)演算器が16基ずつ」――と1基ずつのWarpスケジューラ(Warp Scheduler)および命令発行ユニット(Dispatch Unit),2基の「Tensor Core」,4基のロード/ストアユニット(LD/ST)などを1ブロックとして扱い,これを4基束ねたうえで,L1キャッシュと4基のテクスチャユニット,そして1基の「RT Core」を組み合わせてSMとしている。よって,TU106のフルスペックだと総CUDA Core数は,

  • 64(※SMあたりのCUDA Core総数)×12(※GPCあたりのSM総数)×3(※GPCの総数)

で2304基となるところ,RTX 2060はSMの総数36に対して6分の5の30基なので,1920基という規模になるのだ。
 同様に計算すると,Tensor Coreの総数は240基,RT Coreの総数は30基で,やはりRTX 2070比6分の5となる。

 ただし,足回りはプロセッサより大きめに削減が入っている。L2キャッシュ容量はRTX 2070の4MBに対して3MB,32bitメモリコントローラ数はRTX 2070の8基に対して6基と,いずれも4分の3(=75%)だ。

CUDA SDKに付属する「devicequerydrv.exe」実行結果。メモリインタフェースが192bit,L2キャッシュ容量が3MBであることが確認できる。「GeForce GTX 1060」としてデビューしたGTX 1060 6GBはdevicequerydrv.exe上の製品名に「6GB」とあり,異なるメモリ容量の製品が登場する可能性を感じさせたが,RTX 2060には製品名レベルにおけるメモリ容量の付記がない点にも注目してほしい
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 なお,組み合わせるグラフィックスメモリはRTX 2070と同じくGDDR6。メモリクロックも14GHz相当と変わらない。しかし,32bitメモリコントローラの数はすぐ上で述べたとおり6基なので,メモリインタフェースはGTX 1060 6GBから据え置きの192bitだ。グラフィックスメモリ容量もやはり据え置きの6GBとなる。
 ただ,GTX 1060 6GBと比べた場合,まずL2キャッシュ容量が2倍になり,GDDR6の広帯域を活かしてメモリバス帯域幅も192GB/sに対して336GB/sと1.75倍になっているため,前世代比では相当な強化が入ったとは述べて差し支えない。

以上を踏まえ,RTX 2060のブロック図を用意してみた。暗くした部分はあくまでも単純化したものである点に注意してほしいが,イメージとしてはこんな感じで,TU106のフルスペックに対してプロセッサ部は6分の5,メモリ周りは4分の3という規模になる
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 さて,RTX 2060のベースクロックはRTX 2070の1410MHzより若干低い1365MHz。ただし,ブーストクロックは1680MHzとRTX 2070の1620MHzに対して逆転する。有効なSM数が少ない分,熱周りには余裕があって動作クロックが伸びやすいということなのだろう。
 RTX 2070以上のFounders Editionだとリファレンスより高いブーストクロックが設定されていて,たとえばRTX 2070のFounders Editionだとブーストクロックは1710MHzだったりするわけだが,RTX 2060 Founders Editionにそういう設定はなく,リファレンスどおりの動作クロック設定になっていた。

NVIDIAコントロールパネルの「システム情報」を確認したところ。CUDA Core数が1920基,ブーストクロックが1680MHzであることなどを確認できる
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Afterburnerでテスト中の動作クロックを確認してみると,1950MHzまで上がった
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 ちなみに,MSI製のオーバークロックツール「Afterburner」(Version 4.6.0 Beta 9)で,テスト中の動作クロックを追ってみると,後述するテスト環境で,動作クロックは1950MHzまで上昇するのを確認できた。
 動作クロック関連で付記しておくと,RTX 2060も自動クロックアップ機能「GPU Boost 4.0」をサポートし,また,オーバークロックを適切に調節する機能である「NVIDIA Scanner」を利用可能だ。

 表1は,ここまで紹介した内容を基に,RTX 2060のスペックをRTX 2070,そして「GeForce GTX 1070 Ti」(以下,GTX 1070 Ti),GTX 1060 6GBと比較したものになる。

※1 筆者推測
※2 TU106-400と,その派生版(選別版?)としてのTU106-400Aの存在が確認されている
※3 メモリクロック9Gbps相当となった後期モデルでは「GP106-410」(関連記事)。また,末期には上位モデルと同じGP104版も登場した(関連記事
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230mm長と短いRTX 2060 Founders Edition。電源コネクタは8ピン×1に


カード長は実測約230mm
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 ここからは入手したRTX 2060 Founders Editionそのものをチェックしていこう。
 まず外観だが,銀と黒を基調にしたデザインはRTX 2070のFounders Editionとほぼ同じ。カード長は実測約230mm(※突起部除く)で,これもRTX 2070 Founders Editionとまったく同じだ。GTX 1060 6GBのFounders Editionだとカード長は実測約249mmなので,そこから20mm近く短くなっている。

 しかも,箱のような形の金属製カバーが全体を覆っているため分かりにくいのだが,実のところ基板長は実測約190mmしかない。GPUクーラー,そして8ピンのPCI Express補助電源コネクタがカード後方へ約40mmほどはみ出た格好だ。

外観はRTX 2070 Founders Editionと瓜二つ。ただし,2基あるファンに挟まれた部分とその反対側にRTX 2060とあり,そこで区別できるようになっている
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背面カバーを外せばカード長が短いことを確認できる。GTX 1060 6GB Founders Editionの基板長は174mmだったから,基板はRTX 2060 Founders Editionで長くなっているわけだ
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8ピン補助電源コネクタはカード後方,マザーボードに差したときマザーボード平行方向を向く形で引き伸ばされている。PCケースによっては電源ケーブルがほかの内部コンポーネントと干渉する可能性がある点は注意が必要だろう

 クーラーは2スロット仕様で,90mm角相当のファンを2基するタイプ。上位モデルと同じくカードの側面,つまりはPCケース内へ排気する仕様である。

カードを側面から見てみると,ケース外排気ではなくケース内排気になっていることがよく分かる
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外部出力インタフェース一覧。GTX 1060 6GB Founders Editionと比べると,DisplayPortが1つ減り,代わりにUSB Type-Cが追加となった形だ
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 外部出力インタフェースはDisplayPort 1.4a×2,HDMI 2.0b(Type A)×1,USB 3.1 Gen.2 Type-C×1,Dual-Link DVI-D×1という構成だ。RTX 2070のFounders Editionと同じながら,「GeForce RTX 2080 Ti」「GeForce RTX 2080」のFounders EditionにはないDual-Link DVI-Dを持つ。
 上位モデルと比べてより低い解像度がターゲットとなるRTX 2060(やRTX 2070)では,一昔前のゲーマー向けディスプレイで主流だったインタフェースもしっかりサポートする必要があるということなのだと思われる。

 GeForce RTX 20シリーズのFounders Editionは分解の難度が高いため,今回も分解は行っていないが,NVIDIAから全世界のレビュワーに提供された製品画像を見ると,ファンの下には放熱フィンユニットがあり,さらにその下には,メモリチップや電源部を広く覆うヒートスプレッダ兼補強板があるという多層構造になっているのが分かる。

NVIDIAから提供を受けた製品分解画像。ファンの下にGPUのシリコンダイと触れる放熱フィンユニットがあり(左),その下では金属板が基板のほぼ全体を覆う仕様になっていた(右)。電源コネクタと,ファンやLEDイルミネーション用の給電ケーブルがカード後方へ引き出されているのも見える
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 また,電源部は6+2フェーズ構成であり,ドライバICとMOSFETを1パッケージにし,45Aまでの電流に対応するON Semiconductor製の「NCP302150」各フェーズに採用していることも,基板の画像からは確認できた。
 搭載するメモリチップは黒塗りされていて詳細を判別できないが,基板上にはメモリチップ2枚分の空きパターンが用意あるため,RTX 2070 Founders Editionと設計を共有している可能性も見てとれよう。

基板画像。8ピン補助コネクタを引き出すケーブルは半田付けされていて取り外せない。また,メモリチップは刻印を確認できないような処理が入っていたが,8Gbit品を6枚搭載して容量6GBを実現していることは分かる
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4+2フェーズ構成の電源部。MOSFETにはドライバICを統合したNCP302150を採用していた
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uPI Semiconductor製フェーズコントローラ「uP1666Q」の姿も確認できる


RTX 2070とGTX 1070 Ti,GTX 1060 6GBと比較。DXRやDLSSの性能検証も実施


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 テスト環境のセットアップに入ろう。
 比較対象には上位モデルであるRTX 2070と,置き換え対象であるGTX 1060 6GBを用意。また,Pascal世代のGPUから,得られる性能が近くなると推測されるGTX 1070 Tiも用意した。要するに,表1で紹介したGPUを使うということだ。

 グラフィックスドライバは,RTX 2060のテスト用としてNVIDIAが全世界のレビュワー向けに配布した「GeForce 417.54 Driver」を用いる。OSのWindows 10は,「October 2018 Update」を適用したうえで,とくに断りのない限り「電源プラン」は「高パフォーマンス」で統一した。そのほかテスト環境は表2のとおりとなる。

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 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション22.1準拠。ただし,RTX 2060のリアルタイムレイトレーシング機能を検証するため「Battlefield V」を,DLSS(Deep Learning Super Sampling)性能を確かめるべく「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(以下,FFXVベンチ)のテストをそれぞれ実施することにした。

 2タイトルの具体的なテスト方法だが,前者は2018年12月20日に掲載した,Battlefield Vにおけるリアルタイムレイトレーシングのテストレポート記事と同じだ。シングルプレイモード「大戦の書」内シナリオ「北極光」のシーンで氷面上を決まったルートで1分間走り,その間のフレームレートをGPUOpen製フレームレート測定ツールである「OCAT」(Version 1.3.0)から取得するというものになる。

 なお,今回のテストでは,DXRを無効にした状態と,「DXRレイトレース・リフレクション」の品質を「最高」に設定した状態の2条件を用いることにした。
 テストは条件ごとに2回連続して実施し,平均をスコアとして採用する。また,OCATでは最小フレームレートを取得するすべがないことから,1 percentile(1パーセンタイル,全体のデータを高いスコアから順に並べたとき,最後の1%の位置にあるスコア)を最小フレームレートの代わりとして利用している。

 一方のFFXVベンチでは,「カスタム設定」から,NVIDIA製GPU固有機能以外の項目をすべて描画負荷が最も大きくなるよう設定したうえで,DLSS(Deep Learning Super Sampling)の有効無効を切り換えて性能をテストすることにした。
 GeForce RTX 20シリーズでDLSSを無効にした場合,Pascal世代のGPUと同じTAA(Temporal Anti-Aliasing,テンポラルアンチエイリアシング)を使うことになるので,この点はご注意を。

 なお,ベンチマークではスクウェア・エニックスの独自計算式に基づく総合スコアしか得られないことから,同時に「Fraps」(Version 3.5.99)を実行し,ベンチマーク実行中の平均フレームレートと最小フレームレートを取得することにした。こちらもテストは2回実行し,その平均をスコアとして採用している。

 テスト解像度は,NVIDIAがRTX 2060を1920×1080ドット解像度向けとしつつ,同時に「2560×1440ドットでも優れたゲーム体験が得られる」としていることから,両条件をまず採用。そのうえで,RTX 2060にとっては“重すぎる”テスト条件となる3840×2160ドットも加えた3条件とする。
 ただしFFXVベンチは4Kディスプレイと接続した状態でDLSSを適用すると解像度が3840×2160ドット固定となるため,当該解像度のみでのテストとなることをここでお断りしておきたい。


性能はRTX 2070比で約8割,GTX 1060 6GB比で約1.5倍か。おおむねGTX 1070 Ti相当とも言えるRTX 2060


 それでは,「3DMark」(Version 2.6.6238)の結果から順に見ていこう。
 グラフ1は「Fire Strike」の総合スコアをまとめたものだ。RTX 2060は,RTX 2070の78〜87%程度,GTX 1060 6GBの143〜153%程度というところに落ち着いている。GTX 1070 Tiに対しては,テスト解像度が1920×1080ドットのFire Strike“無印”でほぼ互角ながら,3840×2160ドットとなる「Fire Strike Ultra」と2560×1440ドットとなる「Fire Strike Extreme」で後塵を拝しているが,この考察は後ほど行うことにして,ひとまず先に進もう。

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 総合スコアから「Graphics score」を抜き出したものがグラフ2だが,ここでRTX 2060のスコアはRTX 2070の77〜83%程度,GTX 1070 Tiの89〜98%程度,GTX 1060 6GBの141〜150%程度。総合スコアをおおむね踏襲するものの,RTX 2070およびGTX 1070 Tiとのギャップはやや広がり,GTX 1060 6GBとのギャップはやや縮まった。
 RTX 2070とGTX 1070 Tiとでは,前者のほうがメモリバス帯域幅が広いため、高解像度のFire Strike Ultraで両者のスコア差は縮まると考えていたのだが,結果は逆に出ているので,ここではメモリバス帯域幅よりもGPUが持つ地力のほうがスコアに影響したということなのだろう。

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 グラフ3は同じくFire Strikeの総合スコアからソフトウェアベースの物理演算テスト結果を「CPU score」として抜き出したものだ。テストを通じてCPUを統一しているため,スコアはほぼ横一線に並んでいる。

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 総合スコアから,GPUとCPU両方の性能が効いてくる「Combined test」のテスト結果を抜き出したものがグラフ4だが,ここではRTX 2060のスコアが相対的にかなり高い。RTX 2070の81〜96%程度,GTX 1070 Tiの98〜109%程度,GTX 1060 6GBに対しては157〜202%程度だ。
 GTX 1070 Tiに対して,最も描画負荷の低いFire Strikeで高いスコアを示す一方,最も描画負荷が高くなるFire Strike Ultraで逆転を許す理由は,正直,よく分からない。GPUの地力が出ているだけなら,Graphics scoreと同じ傾向になるはずなのだが……。

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 続いてはDirectX 12世代のテストとなる3DMarkの「Time Spy」だ。GeForce RTX 20シリーズはGeForce GTX 10シリーズと比べてDirectX 12世代のアプリケーションにおける性能が高いことで知られているが,その特性はRTX 2060でも確認できる。
 総合スコアをまとめたグラフ5を見てみると,RTX 2060はRTX 2070の82〜83%程度と,対上位モデルでのスコアはFire Strikeを踏襲する一方,GTX 1070 Tiに対しては約9%,GTX 1060 6GBに対しては約66%高いスコアを示しているのだ。「安定してGTX 1070 Tiより高いスコア」というのは,Fire Strikeでは見られなかった傾向である。

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 続いてグラフ6はTime SpyのGPUテスト結果を抜き出したものだが,ここでRTX 2060はGeForce GTX 10シリーズとのスコア差をさらに広げている。対GTX 1070 Tiでは約10%,対GTX 1060 6GBでは77〜78%程度も高いスコアだ。

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 グラフ7はCPUテストの結果をまとめたものだが,ここではFire StrikeのPhysics testと同様,CPUが揃っているため横並びの結果となっている。

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 実際のゲームアプリケーションを用いたテスト結果に移っていきたい。
 まずグラフ8〜10は「Far Cry 5」のテスト結果だが,RTX 2060の平均フレームレートはRTX 2070比で80〜88%程度で,GTX 1070 Tiを安定して上回り,また置き換え対象となるGTX 1060 6GBに対しては47〜60%程度高いスコアを示している。

 Far Cry 5のようなAAAタイトルでは2560×1440ドットといった高解像度のゲームプレイも行えるというのがNVIDIAのメッセージだと筆者は理解しているが,それを裏付けるように,RTX 2060が2560×1440ドット最小フレームレートで60fps超えを果たしている点は注目しておきたい。

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 続いて「Overwatch」の結果がグラフ11〜13だが,ここでRTX 2060はGTX 1070 Tiといい勝負を演じている。GTX 1060 Tiとのスコア差は50%弱だが,1920×1080ドットでGTX 1060 6GBだと垂直リフレッシュレート144Hz対応のディスプレイがターゲットとなるところ,RTX 2060であれば200Hzクラスに対応できるというのは,かなり大きな違いと言えるのではなかろうか。

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 グラフ14〜16の「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)でも,RTX 2060は平均フレームレートでGTX 1070 Tiに対して3〜17%程度,GTX 1060 6GBに対して47〜59%程度と安定して高いスコアを示した。1920×1080ドット条件の最小フレームレートが140fps弱という点も興味深い。
 なお,RTX 2070に対しては79〜86%程度と,「8割前後」というこれまでの傾向と似た結果に収まっている。

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 「Fortnite」の結果がグラフ17〜19だが,ここでRTX 2060は2560×1440ドット以下のテスト条件においてGTX 1070 Tiに対して6〜8%程度高い平均フレームレートを示す。ただ,3840×2160ドットでは逆転を許した。また,対GTX 1060 6GBのスコア差もここだけ縮んでいる。
 対RTX 2070だと,解像度が高まるにつれてスコア差は順当に広がっていく――1920×1080ドットだと約81%なのが2560×1440ドットだと約79%――ので,メモリバス帯域幅の違いがスコアを左右していると言っていい。おそらく3840×2160ドットにおけるRTX 2060のスコアは実力からすると若干低めに出ているという認識でいい。実プレイを伴うテストなのでこういうこともあるわけだ。

 もっとも,Fortniteにおいて最も重要なのは1920×1080ドットのスコアであって,ここだと最小フレームレートはGTX 1070 Tiに対して約7%,GTX 1060 6GBで約64%高い。垂直リフレッシュレート144Hzのディスプレイと組み合わせて使っていくにはもう少しグラフィックス設定を落とす必要があるだろうが,前世代のハイクラスGPUより高いフレームレートを期待できる点は,押さえておいて損はないだろう。

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 高解像度テクスチャパックを導入しているため,メモリ周りの負荷が非常に高くなっている「Middle-earth: Shadow of War」(以下,Shadow of War)。そのスコアをまとめたものがグラフ20〜22だが,はたしてここではGDDR6メモリを採用してメモリバス帯域幅が大きくなっているRTX 2060がGeForce GTX 10シリーズに対して優勢に立ち回っている。
 数字上は,3840×2160ドット条件の最小フレームレートでRTX 2060がGTX 1070 Tiに対して約36%も高いスコアを示しているのが最大の見どころだが,実プレイまで考えると,1920×1080ドットでGTX 1060 6GBだとベンチマークレギュレーション22.1が規定する「最小30fps」の合格ラインに若干届かないところが,RTX 2060ではクリアできているところのほうがより重要だと言える。

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 グラフ23は「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)の総合スコアをまとめたものである。
 ここでは,1920×1080ドットでCPUの相対的なボトルネックにより上位陣のスコアが丸まりつつあるが,全テスト条件を通じてRTX 2060はGTX 1070 Tiと似たようなスコアに収まった。対GTX 1060 6GBだと2560×1440ドット以上の解像度条件で51〜57%程度高いスコアとなる。とくに2560×1440ドット条件でベンチマークレギュレーションがハイクラス以上のGPUにおける合格ラインとしているスコア8500を,RTX 2060が大きく上回っている点は評価できるところだ。

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 そんなFFXIV紅蓮のリベレーター ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものがグラフ24〜26となる。
 FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチの最小フレームレートはCPU性能への依存度が高い一方,GeForce RTX 20シリーズでGeForce GTX 10シリーズより若干低い数字が出やすいのだが,案の定,RTX 2060は上位モデルであるRTX 2070と並んでGTX 1070 Tiより4fps低かった。

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 次にグラフ27〜29は「Project CARS 2」の結果だが,ここだとRTX 2060は平均フレームレートでGTX 1070 Tiの92〜99%程度で,端的に述べて届いていない。GTX 1060 6GBとの平均フレームレート差も42〜43%程度と縮まり気味だ。Project CARS 2はそれほどメモリ周りの負荷が高いタイトルではないため,GPUの地力勝負になりやすいのだが,その傾向が出たといったところか。

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GeForce RTX 20シリーズのキモであるリアルタイムレイトレーシングとDLSSの影響はいずれも大きい


 Battlefield VでGeForce RTX 20シリーズのリアルタイムレイトレーシング性能を見たものがグラフ30〜32だ。
 グラフ中において,GeForce RTX 20シリーズでDirectX Raytracingの「最高」設定を行った状態は「DXR 最高」,DirectX Raytracingを無効化した状態は「DXR 無効」と表記して区別するが,最も負荷が高く,かつ最も良好なリアルタイムレイトレーシング結果が得られるとされる「最高」設定を適用した状態で,RTX 2060は1920×1080ドットの平均フレームレートが67.1fps,最小フレームレートが58.2fpsとなった。NVIDIAはレビュワーに対し,「1920×1080ドットでDirectX Raytracingを有効化しても平均60fps出る」と主張しているのだが,そのとおりの結果が出ていると言っていいだろう。
 もっとも,DXRの有効化によって,無効化時と比べた平均フレームレートが52〜60%程度に下がってしまっているのはやはり看過できないところだ。NVIDIAは,今後のアップデートによってBattlefield VがDLSSに対応し,それによりDirectX Raytracing適用時の性能向上も期待できるとRTX 2060発表に合わせて予告しているので,当該アップデートの早期実装を望みたい。

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 グラフ33はFFXVベンチの結果で,グラフ34はその平均および最小フレームレートをまとめたものだ。グラフ中ではGPU名の後ろに「DLSS」「TAA」と付記することでどちらを適用したか区別しているが,RTX 2060はDLSSを適用することでTAA適用時と比べて約34%もスコアが向上した。結果としてGTX 1060 6GB比で2倍以上という総合スコアを示し,最小フレームレートも18fpsから30.5fpsに上がるのだから,やはりインパクトは大きい。

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消費電力はGTX 1070 Tiと同等で,GTX 1060 6GBと比べると約40W大きい。クーラーの冷却能力は優秀


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 GTX 1060 6GBを置き換えるGPUとしてはかなり威勢のいいベンチマークテスト結果を残しているRTX 2060だが,そのTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)は160Wで,GTX 1060 6GBの120Wと比べて40Wも上がってしまっている。では,実際の消費電力はどの程度なのだろうか。

 「4Gamer GPU Power Checker」(Version 1.1)を用いて,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ実行時におけるカード単体の消費電力推移をまとめたものがグラフ35となる。
 これを見ると,GTX 1060 6GBは100W付近で推移しているのに対し,RTX 2060は150W付近で推移しており,消費電力が明らかに増加しているのが見て取れる。GTX 1060 6GBだと200Wに達する場面はまったくないのが,RTX 2060では62回も200W超えしているのを確認できた。

※グラフ画像をクリックすると横に引き伸ばした拡大版を表示します
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 グラフ35から中央値を求めたものがグラフ36で,RTX 2060のスコアはGTX 1060 6GB比で40W以上高い。ちょうどTDPの違いと同程度のギャップがあるわけだ。
 RTX 2060とGTX 1070 Tiが性能だけでなく消費電力の中央値もおおむね同じであることは押さえておきたい。

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 念のため,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いてシステム全体の最大消費電力も計測してみた。
 ここでのテストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。さらに,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。その結果がグラフ37だ。

 RTX 2060とGTX 1060 6GBを比較すると,スコア差は46〜79W程度。消費電力のピークを取得するこのテストでは,両者のギャップはさらに大きくなる傾向が見て取れる。アイドル時の消費電力も(上位モデルと同様に)Pascal世代のGPUと比べて若干高めとなっていた。

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 最後に「GPU-Z」(Version 2.16.0)を用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。
 ここでは,温度を約24℃に保った室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。

 その結果がグラフ38である。GPUごとに温度センサーの位置は異なり,また,温度の制御法もGPUクーラーも異なるため,横並びの評価に意味はない。それを踏まえたうえでスコアを見てみると,RTX 2060が高負荷時でも70℃を割っているのが目を惹く。消費電力がGTX 1060 6GBより目に見えて大きいことも考慮するに,RTX 2060 Founders Editionが搭載する純正GPUクーラーはなかなか優秀と言っていいだろう。
 アイドル時の温度は見事な横並びだった。

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 ちなみにRTX 2060 Founders Editionの動作音だが,筆者の主観であることを断ったうえで述べると,十分に静かな印象を受けた。少なくとも,一般的な形状のPCケースに入れた状態なら,その動作音が外に聞こえたりする心配はまずもって無用というレベルにあることは確かだ。


「GTX 1060 6GBの後継」なのに価格はGTX 1070 Ti並み。価格設定が今回も最大のハードルか


製品ボックス
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 RTX 2060の性能はGTX 1060 6GBのざっくり1.5倍といったところで,世代格差を確実に体感できると断言できるほど,その違いは大きい。
 ただし,GeForce RTX 20シリーズの上位モデルがそうだったように,RTX 2060にも「価格の問題」がついて回ることになる。

 振り返ってみると,GTX 1060 Founders Editionの発表時点における直販価格は249ドル(税別)で,これが日本市場の初値だと3万円台後半から4万円程度になっていた。
 それに対してRTX 2060 Founders Editionはメーカー直販価格の時点で349ドル(税別)である。長くGeForceを使ってきた人ほど,下2桁が「60」のGPUにはミドルクラス市場向けGPUらしい価格設定を期待すると思うが,このままだと国内市場における初値は税込5万円かそれを超えるくらいになるはずだ。では「5万円のミドルクラスGPU」を,諸手を挙げて歓迎する人はどれくらいいるだろうか?

 そもそも,GTX 1060 6GBが市場で人気に火がついたのは,主流の価格帯が税込3万円半ばになってからだと記憶している。そしてその後,ブランドやグレードを考慮しなければ3万円以下から購入できるコストパフォーマンスの高さがGTX 1060 6GBを「鉄板」の座に着かせたわけだが,そういう「ミドルクラス狙い」の層に,RTX 2060の価格設定はハードルが少々高すぎるように思う。
 ほぼ同じ性能で,2019年1月7日時点の実勢価格が5万〜5万6000円程度とおおむね被りそうなGTX 1070 Tiを置き換える,新世代のハイクラス市場向けGPUと捉えるのが正解かもしれない。

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 その意味では,GeForce RTX 20シリーズの上位モデルと同じ結論を,RTX 2060に対しても出さざるを得ない。つまり,「DirectX RaytracingやDLSSを積極活用するゲームの数がこれからどれだけ増えるか」が,RTX 2060の価値を大きく左右するということだ。
 魅力的な対応タイトルが増えてくれば,ミドルクラス市場向けというよりハイクラス市場向けという価格設定も受け入れられるだろう。しかしそうならないなら,ユーザーはよりコストパフォーマンスの高い選択肢を探して,GeForce GTX 10の処分価格セールなどを今後も狙い続けることになるはずである。

NVIDIAのGeForce RTX 20シリーズ製品情報ページ

  • 関連タイトル:

    GeForce RTX 20,GeForce GTX 16

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