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フロム・ソフトウェアがアドベンチャーを作るとこうなる。妖精と子供達の“温かくもミステリアスな物語”「Déraciné(デラシネ)」プレイレポート
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印刷2018/11/05 20:01

プレイレポート

フロム・ソフトウェアがアドベンチャーを作るとこうなる。妖精と子供達の“温かくもミステリアスな物語”「Déraciné(デラシネ)」プレイレポート

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントは,PlayStation 4用(PlayStation VR,PS Move必須)アドベンチャー「Déraciné(デラシネ)」を2018年11月8日に発売する。SIE ワールド・ワイド JAPANスタジオとフロム・ソフトウェアがタッグを組み,そしてディレクターに宮崎英高氏という,「Bloodborne」と同様の体制で作られたアドベンチャーはどのようなものになっているのか。発売直前のバージョンをエンディングまでプレイしたので,極力ネタバレせずにプレイレポートをお届けしていこう。

画像集 No.001のサムネイル画像 / フロム・ソフトウェアがアドベンチャーを作るとこうなる。妖精と子供達の“温かくもミステリアスな物語”「Déraciné(デラシネ)」プレイレポート

 本作の舞台となるのは,人里離れた古い寄宿学校。ここには,6人の少年少女と,年老いた校長先生が暮らしている。プレイヤーの立ち位置は,この学校に現れた「妖精」だ。妖精は「止まった時の世界」に住む存在で,人間とは異なる世界に生きている。そのため,妖精はモノに触れることはできても,人間は妖精を見ることができない。例えば,妖精が少年の持つ本を手に取ると,少年からは「いつの間にか本がなくなっている。どこかに忘れてきたかな」と認識されてしまうのである。

 登場人物の1人となる「ユーリヤ」は,妖精の存在を信じる少女だ。彼女は,本で妖精のことを知り,妖精と友達になることを望んでいる。
 その方法として妖精が使うのが,「命の時間」を与える力だ。ユーリヤは枯れた花を持っているのだが,これを咲かせてほしいと,手紙で妖精に伝えてくる。妖精は,生きているものから命の時間を移すことができ,ここではユーリヤが用意したブドウから命の時間をもらい,花を咲かせる。ユーリヤからすれば,「枯れていたはずの花が突然咲いている」という,あり得ない現象が起き,これにより妖精が実在することを確認できるというわけだ。

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妖精が干渉すると,一瞬だけその人物の時が動き,イベントが進行する
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 また,妖精は異なる時に移動することもできる。別の日に移動した妖精は,ユーリヤから「ほかの子供達にも妖精の存在を信じてもらうため,イタズラをしてほしい」と頼まれ,シチューの中に子供達が持つハーブをぶちこんで味を変えてしまおうとする。このように,間接的な方法で子供達と関わって,少しずつ距離をつめていくのである。

妖精の右手には赤い「生命の指輪」,左手には青い「時の指輪」がはめられている。命と時は,妖精が持つ重要な力だ
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 本作は,フロム・ソフトウェアのゲームにしては珍しく「次にやるべきこと」が明確で,そのシーンの目的を常に確認できる。目的に向けて何をすべきか,何を見つければいいのかを考えて,止まった時の中を探索するのが,基本的な進行方法だ。
 止まった時の中での探索は,奇妙な体験を味わえる。VRのコンテンツというと,没入感が重要になるものだが,本作の場合,妖精であるプレイヤーが最も浮いた存在だ。登場人物や景色が動かない中で,しかもVRの視点で行動するというのは,強い違和感を覚える。ただ,そのぶん,止まった人物は何をしようとしているのか,今はどういった状況なのかを,周囲のアイテムなどをヒントにして考えていくのが面白い。

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登場人物の周囲には,だいたい何かしらの情報があるので,360度ぐるぐるカメラを回しながら,触れるものがないか細かにチェックしていくのだが,止まった女の子にこれをやるのは,なんというか,その,イケナイ感じ
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 止まった時の世界での探索を助けてくれるのが,幻影と言霊だ。幻影は,子供達がその時にいない場所に,うっすらと残っている影のようなもので,これにより過去の行動を推測できる。言霊は,過去のセリフが聞こえてくるというもので,こちらも重要な手がかりとなる。

 操作面に触れておくと,右手のPlayStation Move モーションコントローラーで移動とカメラ操作,左手のPlayStation Move モーションコントローラーでイベントリ操作や目的の確認,立ちとしゃがみの切り替えを行う。止まった時の世界なだけに,アクション性を求められることは一切ない。
 移動に関してはワープ式で,カメラ操作も「カクッ」と回転する仕様だ。酔いにくく作られており,筆者もプレイ中に気分が悪くなることは一度もなかったので,酔いが心配な人も安心して遊べるだろう。
 また,本作の探索はアイテムに書かれたテキストも重要になるのだが,手に取れるものがある場所には,通常の移動と違った目印が付く。手当り次第ボタンを連打してアイテムを探す必要はなく,操作面で進めにくいということがなかったのは好印象だ。あえて操作の不満を挙げるとすれば,一回のワープの距離が短いので,長い廊下を移動するときに連打するのがちょっと煩わしかったぐらいだろうか。

 ゲーム序盤の子供達からの妖精への反応はさまざまだ。ユーリヤ同様,妖精を信じていて友達になりたいと願っている少女もいれば,妖精なんているわけがないと考えている少年もいる。しかし,仲良くなっていくと,「妖精のために椅子を用意してあげよう!」「妖精のために演奏会を開こう!」と,微笑ましい姿を見せてくれるようになり,逆にこちらも子供達を喜ばせてあげたいと思えてくる。

音楽堂の中に侵入して,妖精のために演奏会を開こうとする子供達。どうにか干渉して助けられないものかと,ハラハラするが,気持ちは嬉しい
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 止まった時間の中で,妖精が子供達のためにできることは何か。それは「過去の時間」に移動して,過去を変えてしまうことだ。ロージャという少女は,嵐の日,足に酷い怪我を負ってしまい,痛みに苦しんでいる。そこで,過去の時間に行ってその原因を取り除き,また元の時間に戻ってくると,元気に飛び回るロージャの姿が見られるのである。
 直接触れ合えないながらも,お互い干渉し合う妖精と子供達の関係は,「温かくもミステリアスな物語」という本作の謳い文句どおりで,優しい気持ちになれる。妖精と子供達がどのような物語を紡いでいくことになるかは,実際にプレイして確かめてみてほしい。

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 ちなみに,筆者はエンディングまでプレイしているが,シナリオや世界観の解釈は難しい。できるだけたくさんのイベントをこなし,さまざまなアイテムを手に取って説明文を読んだとしても,解釈は人それぞれ違ったものになってくるかと思う。発売後に,どのような考察が出てくるのか,今から非常に楽しみだ。ぜひじっくり探索して,本作の世界に浸ってみよう。

温かな子供達との交流の中で,ちらほら出てくる意味ありげなフレーバーテキストも本作の魅力。本当に……意味ありげで……
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 最後に,一言だけ。

 これ,フロム・ソフトウェアのゲームだからね?

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