プレイレポート
「有翼のフロイライン」プレイレポート。ヒロイックな空中機動を簡単操作で実現できるフライトシューティングアクション
本作は,発表された当初からインディーズ作品とは思えないほどに美しいビジュアルで話題を集めたフライトシューティングアクションだ。本稿では,PS4版のプレイレポートをお届けしよう。
「有翼のフロイライン Wing of Darkness」公式サイト
2人の少女を中心としたストーリー。シナリオパートでは演出の工夫が光る
まずは,軽く本作のシナリオに触れておこう。「有翼のフロイライン Wing of Darkness」の舞台となるのは,正体不明の敵性存在「ブランカー」の侵攻によって,人類が生存圏を追われつつある世界。ブランカーは圧倒的な性能の兵器を用い,またたく間に人類から“空”を奪い去っていった。
それに対抗するため,人類は対ブランカー専用装備を開発する。しかし,それを装着できるのは特別な才覚を持った少女たちだけ。機械の翼で空を守る少女たちを,人は“フロイライン”と呼んだ。
そんな本作の主人公「クラーラ・エルンスト」は,ひょんなことから素質を見いだされて,フロイラインになることを選んだ少女だ。クラーラは新設のフロイライン部隊“アーベント・フリューゲル”の一員となり,人類を守る戦いに身を投じることになる。
ゲームはクラーラを中心としたストーリーが語られるカットシーンパートと,その後に展開されるシューティングパートの繰り返しで進行する。シナリオの語り手は,主人公のクラーラと,もう1人のヒロインである「エーリカ・レールツァー」のいずれかが務め,それぞれの視点から物語を楽しめる。
活発で負けん気の強い田舎娘のクラーラと,軍人となることを選び,育ってきたエーリカという,まるで水と油のような2人の少女が,幾多の戦いを乗り越える中で互いの欠点を補い合う仲間として認め合う存在になっていく“ガール・ミーツ・ガール”的なストーリーは,見どころの1つといえるだろう。
シナリオはナレーションベースで進行するためセリフは存在せず,いわば“地の文”だけで物語が進む。対してミッション中は,キャラクターによる直接の会話だけでストーリーが展開していく。
比較的平和な日常が描かれるシナリオはナレーションベースで落ち着いた時間感覚を,逆にミッション中は会話による進行を採用することでリアルタイム感を演出しているといった印象だ。内心と言動がどう相互に影響しているか,といった部分を演出の切り替えによって表現するのは,なかなか面白いと感じた。
難しいリソース管理要素はいっさいナシ。アクションの爽快感を最大限に引き出した戦闘システム
ミッション前のブリーフィング画面では,作戦目標や出現する敵の情報を参照できるほか,持ち込む兵装の選択が可能だ。兵装には「プライマリ兵装」「セカンダリ兵装」「ターシャリ兵装」があり,それぞれの兵装を1つずつ装備できる。
触れてみて驚いたのは,基本的にすべての武器が最初から解放されているという点だ。アンロック要素などは存在せず,プライマリは4種,セカンダリとターシャリは各3種から自由に組み合わせられる。
最初から選択肢が多いと戸惑ってしまいそうなものだが,各ミッションには内容に合った“推奨ロードアウト”が用意されているので,初挑戦のミッションでは頼ってみるのもアリだろう。
操作システムもスッキリしており,細かな操作を習得せずともスティック1本と視点移動だけで直感的に空を飛び回ることが可能だ。
攻撃に関しても,適正距離で敵をレティクル内に入れて射撃ボタンを押せば自動で敵に向けて射線を調整してくれるので,基本的には敵を視界の中央に捉えるようにしておけば問題ない。そこにブーストボタンを使った機動を織り交ぜれば,それだけで空中を自在に舞って戦う爽快感を味わえる。
ブーストボタンを短く押せば回避行動を取る「クイックマニューバ」が,長押しすれば超高速移動ができる「ドラッグブースト」が発動する。いずれも発動にはブーストゲージが必要だが,ゲージは時間の経過ですぐに回復するのでガンガン使っていこう。
敵を見失ってしまいそうな時は,特定の敵を自動で視界の中心に置く「フォーカスターゲット」が便利だ。大量の敵の中にいる撃墜目標を狙う時など,ターゲットが分散しやすい場面でも役に立ってくれる。
ただし,特定のターゲットではなく多数の敵と同時に戦う場面では,フォーカスターゲットを使うと逆に敵を狙いづらくなってしまうこともある。先述の通りレティクル内に敵を入れておけば自動で相手を狙ってくれるので,状況に応じて使い分けよう。
ダメージ関連のシステムも特徴的で,本作にあたるHPは「シールド」と呼ばれる数値で表現されている。被弾するとシールドが減少し,シールドが0の状態でさらにダメージを受けると撃墜されてしまうのだが,一定時間(2秒程度)ダメージを受けずにいればすぐに全回復する。
つまり,連続して被弾しなければ被弾は“なかったこと”になるのだ。1度の被弾が後の戦闘に影響を与えないので,すべての弾を避けようとする必要はない。なんなら「ブーストを吹かして敵陣奥深くで暴れ回り,危険な状況になったらブーストで戦線を離脱する」といったヒロイックな戦い方が普通にできるのが,本作の機動戦の魅力と言える。
遊んでいて楽しかったのは,敵を撃破したときなどに発生するスロー演出だ。敵を連続して撃破すると“バレットタイム”のようなシチュエーションが発生し,映画のように美しいアクションをじっくりと体感できる。こういったシングルプレイに特化した作品ならではの表現を,しっかり盛り込んでいるのも見どころの1つだ。
総合すると本作は,フライトシューティングの系譜にロボットアクションの文脈を取り込んだ,ロマンの詰め合わせのような作品だ。しかし,同時に複雑で難しい要素を排除し,手軽に楽しめる工夫が随所に施されている。自働で回復する弾薬やシールドの仕様など,難しい操作やリソース管理要素は排除して“格好良く空を飛び回ること”に全力を注いでおり,それらの配慮がしっかりとゲームの爽快感につながっている。
ただ,ゲーム全体で見ると,シナリオもミッションもボリュームが控えめなのは気になった。同じマップがひとつとして存在せず,個々のミッションが作り込まれており,かつシナリオやキャラクターも魅力的なために満足感はあるのだが,終わった後の「もっと遊びたかった!」という気持ちは拭いきれない。
リザルト画面でもしっかり情報を提示してくれるので,やり込むのであればスコアアタックやタイムアタックを楽しむことになるだろう。その辺りが専用モードとしてサポートされれば,より遊びごたえが出てくるのではないだろうか。
光彩を活かした各種の演出には少々クセがあるが,刺さる人にはたまらない要素を備え,ゲーム部分は誰でも楽しめるよう巧みな調整が施されている。スクリーンショットやPVを見て食指がそそられた人や,自由に空を飛び回って戦う爽快感あるアクションを求めている人には,ぜひオススメしたい1本だ。
「有翼のフロイライン Wing of Darkness」公式サイト
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