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孤独のボドゲ 第4回:アプリがGMを担当してくれるクトゥルフ系RPG「マンション・オブ・マッドネス 第2版」
マンション・オブ・マッドネス 第2版
ボードゲームと聞くと複数人でプレイするものと思われがちだが,実は1人でも遊べる作品は多く存在する。月間連載の「孤独のボドゲ」では,そんな1人でも遊べるボードゲームを紹介しよう。ポイントとなるのは1人“でも”というところで,1人で遊んでみて面白ければ,友達を誘って一緒に遊べるというわけだ。
「孤独のボドゲ」第4回は,アークライトが販売する,クトゥルフ神話をテーマにしたボードゲーム「マンション・オブ・マッドネス 第2版」を紹介しよう。本作はクトゥルフTRPGのボードゲーム化をコンセプトに作られた作品だ。
第1版は,ゲームマスター(以下,GM)となるプレイヤーが必要だったこともあって,かなりの重量級ゲームとして扱われてきたが,第2版ではGMを担当してくれるアプリが別途用意されたことで,コンポーネントの量も減り,非常に遊びやすく,そして1人でもプレイ可能になった。
アプリは,マップの構造やイベントなどをある程度ランダムで作成して,本来はルールブックを読みながらしなければならない部分を軽減してくれる。利用時には雰囲気のあるBGMを常に流してくれるので臨場感も抜群だ。本作は最大5人でプレイできるが,今回は1人でプレイするときの流れや,豪華なコンポーネントも合わせて紹介しよう。
コンポーネントをチェック
デジタルゲームにはないボードゲームの魅力といえば,やはりコンポーネントである。作品によっては凝ったギミックを持つコンポーネントもあり,それを触ったり動かしたりするのが,これまた面白い。そんなわけで,ボードゲームの華ともいえるコンポーネントを見ていこう。
◯マップタイル
マップタイルには,ゲームの舞台となる屋敷の部屋や街の一角が描かれており,タイルは白い線でいくつかのマスに区切られている。マップはその都度,アプリの指示に従って構築していくことになり,プレイするたびに構造が変わるのが面白いポイントだ。
◯探索者
事件の解決に挑む探索者達。各シナリオでは最大5人の探索者でパーティを組む。何人の探索者で挑むのか,誰がどの探索者を担当するのかは自由に決められ,なんなら1人で5人の探索者を担当することだって可能だ。
探索者はそれぞれ固有のステータスと特性を持っており,それらは専用のカードに記されている。本作ではステータスが行動成功率に影響するため,たとえば知識に高い探索者に謎解きを,筋力の高い探索者に戦闘を,といった具合で,能力に合わせた立ち回りが重要だ。ちなみに写真のコマには拡張で追加されたものも入っている。
◯一般/特殊アイテムカード
事件解決の手助けをしてくれる,武器や鍵といったアイテムが描かれたカード。ゲーム開始時には,アプリの指示によって初期アイテムが決まるので,それを探索者達で分配することになる。アイテムはその場に落として,ほかの探索者に渡したりといったことも可能だ。
◯状態/呪文カード
呪文カードは敵を攻撃するものから仲間をサポートするものまで,かなりの数が存在する。ただ,使用者にデメリットをもたらすこともあり,それが致命打となったりもするので,慎重に使い時を見極めたい。状態カードは,その名の通り探索者の状態を表すもので,これを持っている探索者には,特定の条件下で能力判定が発生することがある。その結果として有利になることもあれば,最悪死に至ることも。
◯恐怖/ダメージカード
探索者がダメージを受けたり恐怖を感じたりしたら,このカードを引き,そこに書かれている内容を処理する。これらのカードを引くことになった場合,大抵は事前の能力判定が行われ,その結果によっては引く枚数が減ったりする。クトゥルフTRPGにおけるSAN値チェックをイメージしてもらえると分かりやすいだろう。いずれにせよ本作では,ただダメージを受けるだけでなく,探索者にさまざまな影響を及ぼすので,戦闘することのリスクがとても高い。
◯ダイス/クルートークン
数字の代わりにエルダーサインと探索の目が描かれた八面体ダイス。主に能力判定のときに使用するもので,エルダーサインの出目が成功値となる。探索の目が出た場合は,クルートークンを消費すれば成功扱いになるが,クルートークンはパズルの手数を増やす効果もあるので,使うタイミングはけっこう悩ましい。
◯その他のトークン
本当ならば1つ1つ紹介したいところだが,本作はトークンの種類が多すぎるので,ここでは割愛させていただく。
◯モンスターコマ
本作の箱が異様に大きいのは,このモンスターコマのせいだ。ゲーム中の雰囲気を高めてくれるだけでなく,所有欲を大きく満たしてくれる。せっかくなので,拡張セットのものも含めて一挙に紹介していこう。
・ロイガー
・星の精
・クトゥルフの落とし子
・忌まわしき狩人
・ディープワン
・ディープワンハイブリット
・カルト信者
・ダゴン教団の神官
・スケルトン
・ゴースト
・殺し屋
・暴徒
・ダゴンの仔
・下僕
ぼっちプレイの流れ
冒頭でも紹介したとおり,このゲームはアプリがゲームマスターとなって進行してくれるので,基本的にはアプリの指示に従って進めていけばよい。また,ぼっちプレイでも最大人数である5キャラクターを使って遊ぶことが可能だ。
本来であればプレイの様子を順を追って説明していきたいところだが,本作はストーリーそのものが重要なゲームなので,ネタバレを避けるためにも序盤の触りだけをさらっと紹介するに留めたい。
本作では,シナリオの終了条件を満たすまで,何度もラウンドを繰り返す。ラウンドは,探索者フェーズと神話フェーズの2つで構成されており,探索者フェーズでは,各探索者がアクションを2回実行できる。そして,すべての探索者が行動を終えると,神話フェーズに移行するという流れだ。探索者が行えるアクションは以下の通り。
◯移動アクション
探索者は2マスまで移動できる。移動中に一時停止し,ほかのアクションを実行してから再度移動することも可能。
◯調査アクション
自分のいるマスに調査トークン(クエスチョンマーク)がある場合,アプリ上でそのトークンをタップして調査を行える。これにより,重要な手がかりやアイテムを発見することがある。
◯隣接探索アクション
自分のいるマスに隣接探索トークン(赤いランタンのトークン)がある場合,アプリ上でそのトークンをタップして隣接探索を行える。これによって,未開だった部屋の状況が把握できるようになるが,モンスターが出現したりする可能性も高いため,準備なしにこのアクションをするのはやめたほうが良い。
◯交流アクション
自分のいるマスにNPCトークンか交流トークン(エクスクラメーションマーク)がある場合,アプリ上でそのトークンをタップすることで会話できる。残念ながら会話の内容まではアプリで朗読してくれないので,複数人で遊ぶ場合は自分で読み上げよう。
◯攻撃アクション
自分のマスにいるモンスターに対して近接攻撃をしかける。もし遠距離武器を持っている場合は,その武器の効果範囲内にいるモンスターにこのアクションを実行できる。なお,本作における効果範囲というのは,3マス先までを指し,もし途中に扉などがある場合はそれに遮られる。
◯トレードアクション
自分のマスにいるほかの探索者とアイテムのトレードができる。また,自分のマスにアイテムを落としたり,逆に拾ったりすることも可能だ。
アクションはこのほかにもあるのだが,条件が少々複雑なので,基本的に上記のアクションの中から2つを組み合わせて実行すると考えてもらえれば問題ない。そんなわけでプレイの続きに戻る。
モンスターを見てしまった探索者は,アプリが指定した枚数だけ恐怖カードを引かなければならない。いわゆるSAN値チェックというやつ。ただし,「(能力で回避)」という記述がある場合,その能力値と同じ数のダイスを振って,エルダーサインの出目分だけ引く枚数を減らすことが可能だ。上の写真の場合は,意志力での回避判定となり,エルダーサインを2つ以上出せれば無傷で済む。
とまあ,こんな感じでいろいろなイベントに対応しつつ,シナリオの解決を目指していくのがこのゲームの目的となる。ゲームマスターであるアプリが,どのようなイベントを仕込んでいるのかが読めず,それよって生まれる緊張感は,プレイヤーが望む“クトゥルフ世界の体験”に他ならない。ボードゲームでここまでクトゥルフ神話のおどろおどろしさを表現できているのは,本作くらいだろう。
値段は少々張るが(Amazonで1万ちょっと),リプレイ性の高さや,所有欲を満たしてくれる豪華なコンポーネントなどを考えても,それに見合うだけの体験を楽しめるので,興味のある人はぜひ遊んでみてほしい。
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