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レトロンバーガー Order 29:「トージャム&アール」最新作の日本語版で,奥成氏の言う「知らないことを体験させてくれる」感に浸ろう編
1月も半ばを過ぎて言うのもアレですが,年が明けてましたね。おめでたい気がしなくもないものの,一休宗純いわく「正月は冥土の旅への一里塚」であり,ジャン・コクトーいわく「私が産まれた日から死は私へと歩み始めた」なのでめでたくもなし,フランシス・ベーコンいわく「死は我々の友」なのでめでたくもあり,まあ世はなべてこともナシナシがアリアリです。
ただ,2020年3月17日に発売予定のPS4用ソフト「MLB The Show 20」を欲しがる野球キッズに,「はい2020年の野球ゲームだよ〜」と言って「2020年スーパーベースボール」(NEO・GEO/スーパーファミコン/メガドライブ)をプレゼントできるのは今年限りのハッピーなポイントですね。あとはセガ(当時)から発売された「セブンスドラゴン2020」シリーズと,Color DreamsのNintendo Entertainment System用ソフト「Raid 2020」を,「今年か〜」と思いながらプレイできます。ついでに「San Francisco Rush 2049」(AC/ドリームキャスト/ニンテンドウ64/ゲームボーイカラー)を「29年後か〜」と思いながらプレイできます。あと「Subwar 2050」(DOS/Amiga)を「30(以下略)
そんな2020年早々,ビッグなふたりが久々に日本へやってきました。そう,アメリカ・HumaNatureによる日本語版「ToeJam & Earl: Back in the Groove!」が,1月9日にNintendo Switch,10日にPS4向けでリリースされたわけです。さらに14日にはPC版もアップデートで日本語に対応! そんなわけで,今回は「ToeJam & Earl: Back in the Groove!」でやっていきましょう。ちなみにXbox One版の日本語対応も取り組みが行われているそうです。
そもそもの「ToeJam & Earl」は,1991年(※)にセガ・エンタープライゼス(当時)のアメリカ法人から発売されたSega Genesis(北米版メガドライブ)用ソフトでした。ゲーム自体は,ファンキーな宇宙人のトージャムとアールが地球を放浪して,奇妙な地球の人々と邂逅しながら,墜落の衝撃で散乱してしまった宇宙船のパーツを探すという内容です。ソフト売上は初動こそ低かったものの,クチコミでじわじわと販売数を伸ばし,同年のクリスマス商戦における「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」の大ヒット&Sega Genesisの大躍進に引っ張られてヒット作の仲間入りを果たしたのだとか。
※発売年は北米のもの。以降も同様。なお国内でメガドライブ用ソフト「トージャム&アール」が発売されたのは1992年。
この成功を受けて開発会社のJohnson Voorsanger Productionsは,社名をToeJam & Earl Productionsへと改称。同社は1992年にリリースされたSega Genesis用ガンシューティングゲーム「Menacer」の一部ミニゲームを手掛けたのち(このミニゲームもトージャムとアールが主人公),1993年にSega Genesis用ソフト「ToeJam & Earl in Panic on Funkotron」をリリースしました。そこからは沈黙が続きましたが,2002年にXbox用ソフト「ToeJam & Earl III: Mission to Earth」でシリーズ復活! ……と思いきや,その売上不振を受けて同社は解散。「ToeJam & Earl」のヒットにあやかって誕生したToeJam & Earl Productionsという会社は,「ToeJam & Earl」の失敗と共に消えてしまったわけです。
解散後,設立者のひとり・Mark Voorsanger氏は,Electronic ArtsのシニアプロデューサーやActivisionのコンサルティングなどを務めたのち,ゲーム事業から離れて2006年にToeJam&Earl Productions跡地にコーチングビジネス企業のSkyward Coachingを設立しています。そして,もうひとりの設立者・Greg Johnson氏は,2006年にゲームスタジオ・HumaNature Studiosを立ち上げ,映画「カンフーパンダ」のアプリやPS4用ソフト「Doki-Doki Universe」などをリリース,2015年に「ToeJam & Earl: Back in the Groove!」を発表&クラウドファンディングを実施し,今日の日本語版発売に至りました。
そんなこんなで,一度は消滅の危機を迎えたものの,Johnson氏の熱意と,50万ドル以上を集めるカルトな人気によって復活を果たした「ToeJam & Earl」シリーズ。しかも「ToeJam & Earl: Back in the Groove!」は,初代のリメイクにあたる作品であり,セガゲームスの奥成洋輔氏いわく「メガドライブは(略)知らないことを体験させてくれるような変わったゲームもあって,その中でも『トージャム&アール』は面白いのか面白くないのかすら判別が難しいほどで,すごくビックリさせてもらいました」という(関連記事)持ち味を,現代の環境で体験できます。
初期状態で選択できるプレイヤーキャラクターは,トージャムとアール(モダン版/オールドスクール版)のほか,「ToeJam&Earl on Panic on Funkotron」のNPCだったレワンダ(Lewanda),「ToeJam & Earl III:MISSION to EARTH」のプレイヤーキャラクターだったラティシャ(LaTiSha)といった種類。スタート時に選択できる難度は,ノーマル/おなら/よちよちの3段階です。……ノーマル/おなら/よちよちの3段階なんですよ。いや,言いたいことはあるだろうけど,ノーマル/おなら/よちよちの3段階なんだからしょうがないだろ。
セグウェイ警官やドローン少年など,オリジナル版には存在しなかった新キャラクターも登場。というか1990年代にセグウェイやドローンが存在しなかったからね |
「オマエモナー」と,こんな感じのローカライズ。架け橋ゲームズが協力しているのだとか |
ちなみにプラットフォームごとに微妙な差があり,現時点だとPC版は試験的な“ジャムアウト”(BGMが流れる中で任意のSEを鳴らせる,初代にあったシステム)のイースターエッグを搭載,PS4版は高パフォーマンスのフレームレートに対応,Nintendo Switch版は“おすそわけプレイ”に対応となっています。これらの特徴のうち,ソフトウェア的なものは他機種版にも反映される可能性があるとか。
そのほか,Steamのアップデート通知では,Johnson氏による新作ゲーム――カードゲームだけど実際には“ゲーム”ではないとか,そんな謎のタイトル――のキャラクターがお披露目されています。「ToeJam & Earl」や「Doki-Doki Universe」から続く,さらなる“Greg Johnsonワールド”も要注目です。
世の中,いかにも面白かろうというゲームは多々ありますが,見知った甘ったるいものばかり食べていては舌が麻痺するもの。ときには地底獣国に踏み入って,容貌奇怪にして風味奇異なものを食らってこそ,本当に「うまい」とはどういうことなのかが見えてきます。それで言うと「ToeJam & Earl: Back in the Groove!」は! ……うまい……マズくはないよな?……うまいっちゃうまいが……癖のある風味付けの……しかし次の手が止まらないような……なんだろうなコレは……ゲーム自体が「変なことを楽しむ」という設計だから,ホント「面白いか面白くないか」という点ではよく分からないよな………味と言うより噛みごたえがキモって感じだな……。
ちなみにSteamでは「ToeJam & Earl」と「ToeJam & Earl in Panic on Funkotron」,Xbox LIVEではXbox 360用ソフト「セガエイジスオンライン トージャム&アールコレクション」が配信されていたりもするので,「ToeJam & Earl: Back in the Groove!」との“食べ比べ”もアリアリのアリです。
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ToeJam & Earl: Back in the Groove!
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- 編集部:早苗月 ハンバーグ食べ男
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