Onion Gamesは2019年12月8日,東京・阿佐ヶ谷ロフトAで
「タマネギ大忘年会 勇者たちの宴」を開催した。本イベントでは,
木村祥朗氏を始めとする開発スタッフが
「勇者ヤマダくん」や
「moon」の開発秘話を披露したほか,両作のサントラの発売が告知された。まずは“忘年会”らしく木村氏が乾杯の音頭を取ると,ほぼ満員となった会場のファンも一斉にグラスを掲げた。
会場ではグッズの販売も
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●「タマネギ大忘年会 勇者たちの宴」出演者一覧
・木村祥朗氏(Onion Games代表取締役社長)
・倉島一幸氏(Onion Gamesアートディレクター)
・杉山圭一氏(作曲家・スタジオカリーブ代表取締役)
・工藤太郎氏(作曲家・ゲームクリエイター。セロニアス・モンキース)
・谷口博史氏(作曲家。セロニアス・モンキース)
・安達昌宣氏(作曲家。セロニアス・モンキース)
・mic氏(Onion Gamesプログラマー)
・LuCK氏(Onion Gamesアシスタントディレクター)
・ローリング内沢氏(MC)
前列左から,倉島一幸氏,安達昌宣氏,谷口博史氏,工藤太郎氏,木村祥朗氏,ローリング内沢氏。後列左から,LuCK氏,杉山圭一氏,mic氏
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Switch版「勇者ヤマダくん2 幻の花嫁」は
無料アップデートとして2020年初春に配信
「勇者ヤマダくん」のコーナーでは,木村氏と倉島氏,そして同作の音楽を手がけた杉山氏が語った。同作のスマートフォン版は2016〜2018年にかけて運営され,その間に作った音楽のデータ量は500GBを越えたという。木村氏が「『勇者ヤマダくん』の歴史は音楽の歴史でもある」と語るだけに,2016年には音楽関連のコラボを積極的に展開している。
「ファイナルファンタジー」シリーズの音楽で知られる
植松伸夫氏とのコラボ「ノビヨ師匠の牧場」では,オカルト好きの植松氏に,木村氏から「『ファイナルファンタジーV』のボス曲のようでいて,オカルト話になるようにしてほしい」とオファーが出された。それに対して植松氏は,自らがラップでオカルト話を語る
「べんとらっぷ鎮魂歌」で応えたというからノリノリだ。
本コラボでは,植松氏自身もゲーム内に登場。同作のキャラクター達は独特のボイス(木村氏曰く「ハナモゲラ語」)でしゃべるのだが,これも植松氏自身のボイスを加工したものを使ったとのことで,ディープなこだわりといえるだろう。
2017年には海外版「Dandy Dungeon」の配信がスタートしたが,ここでも音楽へのこだわりが発揮されている。日本語の歌をそのまま流すのではなく,英語の歌詞を作成して,とある海外のミュージシャン(木村氏曰く「約束で名前は明かせない」とのこと)に歌ってもらっているそうだ。しかもこのとき,メールなどで出演を依頼したのではなく,音源を聞いて歌声を気に入った木村氏が何気なく地元の駅へ向かったところ,そこで偶然本人と遭遇し,即座に出演をオファーしたというから,人の縁は実に不思議だ。
2018年は「『勇者ヤマダくん』をどう終わらせるか」がテーマとなった。最終ダンジョン「ダークソリッドタワー」でも音楽的なチャレンジが行われており,なんとお経がBGMになっている。
ブラック会社がテーマだけに,バックにお経をかけたい……ということで本物のお経を入れてみたものの,より世界観にあったものとするため,オリジナルのお経を作ることに。しかし,さすがの木村氏もお経を書いたことはないため,執筆にはかなり苦戦したそうだ。音楽へのこだわりがゲームのインパクトを強めた,実に木村氏らしいエピソードといえるだろう。
また,Nintendo Switch版「勇者ヤマダくん」の無料アップデート,
「勇者ヤマダくん2 幻の花嫁」が
2020年初春に配信予定であることも明かされた。装備なしで挑む「天国への階段」も,「『勇者ヤマダくん』のルールでシビアなローグライクをやりたい」(木村氏)ということで,スマートフォン版よりもパワーアップしたものになっているという。これまでのコラボダンジョンも収録されるとのことなので,気になる人は続報をお楽しみに。
会場では,LuCK氏とmic氏による先行テストプレイも行われた
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秘蔵の開発資料を見ながら「moon」開発秘話が披露
イベントの後半は,木村氏と倉島氏に,セロニアス・モンキースの工藤氏,谷口氏,安達氏を加えて「moon」のコーナーに。ここでは,工藤氏がずっと保存してきた秘蔵の開発資料を見ながら,開発秘話が明かされた。
その中で,とくに印象的なのが「モンスターキャッチ」のアイデアメモだ。当初は「空中から降りてきた巨大な手が,モンスターを掴んで空中へ連れていく」という演出が予定されており,手のグラフィックスまで制作されたという。その後,演出が変更されたものの,このグラフィックス自体は「キノコの森」で使用されたそうなので,「moon」のプレイヤーはアイデアメモと実際のゲーム画面を見比べてみるといいだろう。
「モンスターキャッチ」のアイデアメモ
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工藤氏の開発資料の中には,デバッグ関連の文書もあった。右のメモはデバッガーからの意見で,左はプログラマーから。ROM名の欄にある「クチナシ」は花の名前で,当時は新バージョンのROMができるたびに花の名前を付けて管理していたという
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ロケットイベントの流れを解説したメモ。シーンの流れや時間などが指定されている
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バリバリ島で奏でられる「ギャムラン」のスコア。当時の東京ゲームショウで配布されたメモ帳で,「moon」のキャラクターの透かしが入っている
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開発初期のイメージ図。「コラージュの面白みを表現したい」ということで,例として実際にコラージュが使われている
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なお,4Gamerでは「moon」のSwitch版の発売を記念したロングインタビューを掲載しているので,興味のある人はぜひご一読を。
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「勇者ヤマダくん」と「moon」のサントラが発売決定
会場ではサプライズとして,「勇者ヤマダくん」と「moon」のサントラが発売されることが発表された。
まず,
「勇者ヤマダくん珍曲アルバム X面Y面Z面」は2020年初春発売。これまでのサントラと重複している曲はなく,植松氏や「東方Project」などとのコラボダンジョンの曲もフォロー。ブックレットには,曲の歌詞に加え,ヤマダくんが住むマンションの断面図の完全版が収録されるとのこと。
「moon」のサントラは新規制作となり,現時点での仮タイトルは
「The Sketch of moondays 2020(仮)」。過去のサントラをリマスターしたものに加え,フレディの曲を始めとした,これまで未収録だった楽曲も収録。また,「MD(Moon Disc)」の曲もゲーム中で使われたバージョンが収録される。「Fake MOON」についても,ゲーム中で使われていない曲を含めた完全版になるという。同梱の図録「moon Visual & Music」は,ビジュアルと音楽の関わりについてのインタビューや,曲の解説も収録した読み応えあるものになるとのことだ。
セロニアス・モンキースの
公式サイトでは,本日より「moon」サントラの制作日記が公開されるとのことなので,チェックして期待を高めておこう。