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AMD,新型GPU「Radeon RX 6600」を発表。GeForce RTX 3060に挑戦するNavi 2X世代のエントリー〜ミドルクラスGPU
Radeon RX 6000シリーズのエントリー〜ミドルクラス市場向けとなる本製品の概要を解説しよう。なお,Radeon
Radeon RX 6600搭載カード「PULSE RX 6600 Gaming」レビュー。上位モデルやGeForce RTX 3060との性能差を探る
2021年10月13日22:00,AMDは,ミドルクラス市場向けのデスクトップPC用新型GPU「Radeon RX 6600」を発表した。本稿では,Sapphire製グラフィックスカード「PULSE
Navi 23ベースの弟分として登場するRX 6600無印
Radeon RX 6600は,Radeon RX 6600 XTと同じ「Navi 23」シリーズ(開発コードネーム)の半導体ダイを用いたGPUになる。
改めて振り返っておくと,Radeon RX 6600 XTのNavi 23(※Navi 23 XTとも呼ばれる)は,ダイサイズが約237mm2で,総トランジスタ数は約110億1000万個,演算ユニットのクラスタである「Compute Unit」(以下,CU)は32基となっている。製造プロセス技術はTSMCの7nmプロセスだ。
なお,「Radeon RX 6700」系として製品化されている上位GPUの「Navi 22」はダイサイズが約336mm2で,総トランジスタ数は約172億個,総CU数40基だ。そして最上位となるRadeon RX 6800/6900系の「Navi 21」になると,ダイサイズは約519mm2で,総トランジスタ数は約268億個,総CU数80基となる。
Navi 23のCU数は32基で,Radeon RX 6600 XTはそのフルスペック版に相当する。一方,今回発表となったRadeon RX 6600は,Navi 23のCUから4基分を無効化したCU数28基のGPUになる。RDNA系アーキテクチャでは,CU 1基あたりのシェーダプロセッサ数は64基の構成となっているので,総シェーダプロセッサ(SP)数は1792基となる。
Navi 22からCUを削減してRadeon RX 6600系を作ることも可能なように思えるが,AMDがあえてNavi 23を開発したのは,消費電力を重視したゲーマー向けノートPCへの採用を狙った側面もあるからだと思われる。AMDがこうした理由で,ミドルクラス以下の「スペックを刻んだGPUコア」を開発するのは,よくあることだ。
ゲームプレイ時などに継続的に運用できる動作クロックとしてAMDが規定しているGame Clockは2044MHz,最大動作クロックに相当するブーストクロックは2491MHzとなっている。ブーストクロックで最大理論性能値を計算すると,約8.9 TFLOPSとなる(※近年のAMDは,公称理論性能値をブーストクロックで計算している)。ちなみに,ひとつ上のRadeon RX 6600 XTは約10.6 TFLOPS。そしてRDNA 1ベースの最上位モデル「Radeon RX 5700」シリーズが約8
さて,改めて説明することでもないが,RDNA 2世代のRadeonはリアルタイムレイトレーシングに対応する。Navi 2X系において,レイトレーシング関連の演算を担当する演算器である「Raytracing Accelerator」(以下,RA)は,CU 1基ごとに1基実装する構成なので,Radeon RX 6600の総RA数はCU数と同じ28基になる。
RDNA 2のRAは,1クロックあたり1ポリゴンに対する衝突を検出できるので,1秒あたりに計算可能なレイとポリゴンの衝突回数は,
- 28 RA×2491MHz=約700億
となる。ちなみに,ひとつ上位のRadeon RX 6600 XTは約828億回,Radeon RX 6700 XTは1000億回だった。
グラフィックスメモリは,Radeon RX 6600 XTのメモリクロック16GHz相当から若干引き下げた14GHz相当のGDDR6を採用する。最大容量は8GBだ。メモリインタフェースは128bitなので,メモリバス帯域幅は約224GB/sとなる。Radeon RX 6600 XTは256GB/sだったので,メモリ性能もCU数に見合った調整がなされているという印象だ。
技術的にはグラフィックスメモリ容量4GBの構成も可能であるそうだが,昨今のヒットタイトルが比較的多めのグラフィックスメモリを要求するトレンドを考えると,8GBのモデルがほとんどになることだろう。
なお,Radeon RX 6600のCPUとの接続インタフェースは,Radeon RX 6600 XTと同じくPCI Express 4.0 x8接続となる。
消費電力の目安となるTotal Board Power(※グラフィックスカード全体の最大消費電力)は,132Wとなっている。市販のグラフィックスカードは,8ピンまたは6ピンのPCI Express外部電源コネクタを1つは備えるだろう。
Radeon RX 6600は,最新のRadeon RXファミリー製品ということで,近年AMDが訴求を強めている超解像技術「FidelityFX Super Resolution」(以下,FSR)や,動的解像度レンダリング技術「Radeon Boost」,遅延低減技術「AMD Radeon Anti-LAG」,可変フレームレートに合わせたディスプレイ同期技術「FreeSync Premium」といったAMD独自機能すべてに対応する。
Radeon RX 6600の仮想敵はGeForce RTX 3060
気になる実効性能についても見ていこう。
AMDは,Radeon RX 6600の競合製品として「GeForce RTX 2060」や「GeForce RTX 3060」を想定しており,発表時においては,これらとの性能対比グラフを示している。
これによると,同一ゲームタイトル,同一グラフィックス設定の計測条件において,GeForce RTX 2060に対しては約23%高いフレームレートを実現できるようだ。一方,対GeForce RTX 3060に対しては,「勝るタイトルもあれば負けるタイトルもある」とAMDは説明しており,ほぼ同等性能という認識で良さそうだ。
ただAMDは,「GeForce RTX 3060とほぼ同性能ではあるが,ベンチマーク測定時の平均消費電力で正規化して求めた消費電力あたりの性能値で比較すれば,Radeon RX 6600のほうが10%〜50%は優秀である」と主張する。つまり,同じ消費電力ではRadeon RX 6600のほうが高性能だというわけだ。
このあたりを根拠として,出力450W程度の電源ユニットでも比較的優秀なゲームPCの構築が可能だと訴えているわけである。
Radeon RX 6600はどんなユーザー向けの製品なのか
AMDによると,Radeon RX 6600搭載カードの北米市場に想定売価は,329ドル(約3万7300円,税別)となっている。Radeon RX 6600 XT発表時点の想定売価は379ドル(約4万3000円,税別)だったが,昨今のGPU不足もあってか,国内では強気の価格で販売されることが多く,想定売価の2倍近い価格で販売するところもあった。
さて,それではRadeon RX 6600はどんなユーザーが選択すべきなのだろうか。国内での実勢価格が予想できないので,価格は気にしないで考察してみたい。
まず,Radeon RX 6600の理論性能値は約8.9TFLOPSと,際立って高いわけではなく,4K解像度でのゲームプレイは,FSRなどを活用するとギリギリ行けそうという程度のGPUである。もちろん,レイトレーシング対応GPU製品としてはAMD製GPU史上もっとも安価なモデルとなることは確実なので,ここにも価値はある。
乗り換え対象のGPUは,AMD製品ならば「Radeon RX 560」や「Radeon RX 570」(2.9〜5TFLOPS)以前を使っているユーザー。NVIDIA製品ならば,「GeForce GTX 1060」(3.9TFLOPS)や「GeForce GTX 1650」系(2.7〜3.9TFLOPS)以前を使っているユーザーだろうか。また,搭載グラフィックスメモリが4GB未満のGPUユーザーも,昨今のゲームにおけるグラフィックスメモリ消費量の増大を考えると,このタイミングで乗り換えるのはアリだと思う。
Radeon RX 6000系に乗り換える場合,予算的にRadeon RX 6600(8.9TFLOPS)と,Radeon RX 6600 XT(10TFLOPS)あたりで悩むことになると思う。どちらを選ぶべきかだが,もし「2560×1440ドット以上でゲームを楽しみたい」あるいは「2560×1440ドット以下で高品位設定のゲームグラフィックスを楽しみたい」ということであれば,Radeon RX 6600シリーズよりも,Radeon RX 6700 XT以上のGPUを選ぶのがいいかもしれない。
その根拠は,Navi 2X系GPUの根幹アーキテクチャともいえる「Infinity Cache」の容量が,Navi 23では32MBとかなり少なくなってしまっているためだ。
次に示す表は,Radeon RX 6600系(Navi 23)と6700系(Navi 22)のCU数,メモリインタフェース,Infinity Cache容量を抜粋したものだが,CU数やメモリバス幅の削減数と比較して,Infinity Cacheの削減量がかなり激しいのだ。
CU数 | メモリインタフェース | Infinity Cache | |
---|---|---|---|
Navi 22 | 40 | 192bit | 96MB |
Navi 23 | 32 | 128bit | 32MB |
そもそもNavi 2Xは,性能面でInfinity Cacheに大きく依存した設計となっており(関連記事),ここを大きく削減したということは,CU数の削減比率から連想される以上にNavi 23の性能は抑えられてしまうと考えられる。
グラフィックスレンダリングは局所的なメモリアクセスが頻発するので,Infinity Cache容量の削減は,高負荷時の性能に大きく影響するはずだ。とくに,レイトレーシングの根幹処理系であるレイトラバース処理と交叉判定では,演算器よりもメモリアクセスに圧倒的な負荷がかかる。
逆にいえば,同じInfinity Cache容量であるNavi 23のRadeon RX 6600とRadeon RX 6600 XTの実効性能差は,CU数の差から導出される理論性能値の差ほど強く表れないかもしれない。Radeon RX 6600とRadeon RX 6600 XTのどちらを選ぶか悩む場合は,予算の事情に合わせて選んでも満足できるのではないだろうか。
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