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  • 発売日:2023/06/06
  • 価格:スタンダードエディション:9800円(税込)
    デジタルデラックスエディション:1万2600円(税込)
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「ディアブロ IV」では結局何が起きていたの? イマイチ理解できないメインストーリーをフォローするストーリー解説
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印刷2023/08/31 08:00

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「ディアブロ IV」では結局何が起きていたの? イマイチ理解できないメインストーリーをフォローするストーリー解説

<この記事はストーリーをクリアした人に向けた内容です>

 ようこそ。勢いでクリアしちゃった者の館へ。この記事を開いたということは,アナタが「ディアブロ IV」のメインストーリーをクリアしたものの,展開がよく分からなかった,もしくは何かしら腑に落ちない点があった人ということだろう。まだクリアせずココに迷い込んだなら,本稿はクリア後のお楽しみにしつつブラウザを閉じてほしい。

 これから筆者が書き連ねるのはメインストーリーの解説であるため,必然的に物語のネタバレが発生する。ただ,この記事はネタバレを趣旨としたものではなく,あくまでシーズンの物語に至るまでの大まかな旅路を補完し,ストーリーへの理解をより深めるために用意したものであることを留意いただきたい。

未クリアの方は,サンクチュアリへお戻りください
画像集 No.001のサムネイル画像 / 「ディアブロ IV」では結局何が起きていたの? イマイチ理解できないメインストーリーをフォローするストーリー解説

 「ディアブロ IV」PC / PS5 / Xbox Series X|S / PS4 / Xbox One)で描かれたのは,永劫の戦いから逃れた天使と悪魔が築いた地“サンクチュアリ”を舞台に,創造主たちが繰り広げた衰亡の物語である。

 物語自体のストーリーラインはシンプルなのだが,創造主を発端としたドラマは彼らを取り巻く者たちの思惑やバックボーンが複雑に絡み合っており,それらを丁寧に紐解くことで物語の深みが増していく。
 だが,メインクエスト上ではそうしたドラマの背景が詳しく語られておらず,それらは登場人物と交わす任意の会話や,サブクエストのストーリー,アイテムやオブジェクトのフレーバーテキストをつなぎ合わせることで全貌を把握できるようになっている。

 そのため,寄り道せず駆け足でプレイしている人ほど物語の理解度が低くなりやすく,結果「よく分からなかった」という感想を抱きがちになると思える。しかし,物語の深みを知らぬまま彼らの群像劇に幕を引いてしまうのはあまりにももったいない! 本稿では章ごとにおさえておきたい出来事を補足しつつ,創造主たちの物語を振り返ってみたい。



振り返る前にまず押さえておきたい
創造主が抱く憎悪の根源


 創造主たちの衰亡の物語と書いたように,本作の中心人物は憎悪の御子リリス天使イナリウスだ。彼らは夫婦でありながら互いに憎しみの感情を抱いており,メインストーリーの端々で憎悪の念をあらわにするシーンが描かれる。

 その憎悪の根源はサンクチュアリ誕生の時代にあり,彼らの関係性と過去の因縁を知らぬままでは,その心情を理解しにくい。2人の出会いと決別,創造主たちが罪悪戦争時代にたどった末路は最低限おさえておくべきだろう。リリスとイナリウスのバックストーリーを把握できていない人は,以下のざっくりまとめや解説記事に目をとおしておこう。

画像集 No.012のサムネイル画像 / 「ディアブロ IV」では結局何が起きていたの? イマイチ理解できないメインストーリーをフォローするストーリー解説

<リリスとイナリウスのバックストーリー>

・永遠に終わらぬ天使と悪魔の戦いに2人はウンザリしていた
・敵同士ながら駆け落ち同然に,ともに永劫の戦いから逃亡
・悪魔と天使の逃避の地としてサンクチュアリを創造する
・リリスとイナリウスはサンクチュアリを築いた創造主
・2人の子はネクロマンサーの祖であるラズマ
・ネファレムの存亡をめぐり決別
・リリスはイナリウスによって虚空へ追放される
・罪悪戦争後,イナリウスは地獄の軍勢の手に渡り拷問を受ける

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 「ディアブロ IV」がついに発売を迎える。今作では恐怖の帝王ディアブロではなく,憎悪の御子リリスがフィーチャーされることになり,「リリスって誰?」となっている読者もいることだろう。そんな人に向けて,知っているとより物語を楽しめるリリスとイナリウスのバックストーリーを解説しよう。

[2023/06/01 08:00]

振り返る前におさえておきたい
リリス召喚以前の出来事


 ゲーム本編は,エライアスが血の儀式によってリリスを召喚するシーンから始まるが,物語に関わる出来事の多くはこの儀式よりも前に起きている。それらはリリスの足跡をたどる過程で明らかになるものの,時系列が分かりにくいものが多い。ここでは,各章で明かされた過去の出来事を時系列で並べ,エピソードゼロと題してまとめてみた。

エピソードゼロ


■ラズマの予言がホラドリムに伝わる

 事の発端ともいえるラズマの予言は,リリスとイナリウスの息子であるラズマが,サンクチュアリの終末を告げる夢を見たことにより生まれた。この予言がいつまとめられたかは明らかになっていないが,少なくとも現代のホラドリムが組織として機能している時期にはすでに伝わっており,ロラス,ドナン,エライアスは内容の解明に努めていたようだ。

 「予言は謎掛けのようで,賢いものでも意味を理解するのは難しい」とロラスが指摘していたように,あらゆる知識に精通するホラドリムすらもその本質にはたどり着けなかった。読み手によっていかようにも解釈できる予言の存在が,イナリウスの傲慢さに火をつけ,ホラドリムを惑わせ,エライアスを突き動かし,サンクチュアリに混沌をもたらしたのだ。

<ラズマの予言>

「己の死体を視た。
その口からは憎悪が吐き出されていた。
 父は炎で己の子らを弔い,
 母はその灰から新時代を築いた」
「羊の群れが狼を貪るように
 弱き者が強くなる光景を視た。
 砂漠の宝石に血の涙が降り注ぎ,
 地獄への道は引き裂かれる」
「しかる後,光の槍が現れて憎悪の心を貫き,
 鎖につながれし者は自由を得た」

序章のオズウェンに運搬されるシーンで予言の文面を目にすることになる。これから起きることがここに書かれているとは思いもしなかった
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■ティラエルが去り,ホラドリムが抜け殻と化す

 サンクチュアリを守護するために組織された集団ホラドリム。その原初は大天使ティラエルによって召集された賢者や魔術師らで組織され,シリーズの祖「ディアブロ」で描かれるよりも前の時代からサンクチュアリを守護する任にあたっていた。
 最後のホラドリムと呼ばれたデッカード・ケインの死によって一度は歴史が途絶えたが,本作の50年前の世界を描く「ディアブロ III リーパー オブ ソウルズ」にて新生ホラドリムが結成されている。その新生ホラドリムの生き残りが,本作の語り部であるロラス・ナールその人だ。

ティラエルと若き日のロラス(「ディアブロ III リーパー オブ ソウルズ」より)
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 「ディアブロ IV」に至るまでのホラドリムは,ティラエル,ロラス,ドナン,エライアスの4人で活動していたが,統率者であったティラエルは自身に課せられた使命をまっとうするために組織を去ってしまう。その際,ほかのメンバーをホラドリムの宝物庫に導き,統率者としての任をロラスに委ねた。
 そこからどれだけの歳月が過ぎたかは不明だが,ティラエルを失ったホラドリムはうまく機能していなかったようで,ロラス,ドナン,エライアスは宝物庫を去りそれぞれの道を歩み始める。

 ドナンはエルドハイム砦を守護し,家族とともに自身の人生をまっとうするために。エライアスは師であるロラスとの意見の不一致をきっかけに,ラズマの予言を独自に解明するため袂を分かつ。
 ロラスはもはや組織として機能していないホラドリムを捨て,山小屋で隠者として暮らすことにした。こうしてそれぞれが宝物庫を去ったことで,現代のホラドリムは事実上の解散を迎えたのだ。

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■創造主イナリウスの帰還と聖堂の再興

 罪悪戦争の休戦協定によって,天界から地獄界へ引き渡されたイナリウスは,長きにわたりメフィストの手によって壮絶な拷問を受けていた。そんな彼がなんらかの方法でサンクチュアリへの帰還を果たしたのだが,残念ながらリリス召喚前のどのタイミングであったかは語られていない。
 帰還を果たしたものの,自らの手で創造したサンクチュアリは内から腐敗し,ワールドストーンを失ったことで荒廃の一途をたどっていた。そこはもはや彼にとっての理想郷ではなく,愚かにも天界を裏切った過去の汚点でしかなかった。

 英雄として称えられたかつての栄華にすがったイナリウスは,故郷である天界へと戻る方法を模索する。その第一歩が,かつて自身が率いた教団“光の聖堂”の再興である。彼こそがサンクチュアリを創造せし唯一の存在であるとし,信奉者に癒やしと罪悪に抗う力を与える聖父として君臨したのだ。民衆の心を掴んだイナリウスは,長い年月をかけ破砕山脈一帯を掌握するほどに教団の勢力を拡大させ,灰の日々終結以降はスコスグレンにその教えが流入した。

聖堂の実務を取り仕切る教母プラヴァは,イナリウスの癒やしによって救われている。この出来事が,決して揺らぐことのない彼女の信仰心を形作ったのだろう
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■イナリウスがもたらしたラズマの死

 詳しい時期は不明だが,ドナン(もしくはホラドリム)によってイナリウスにラズマの予言が伝えられると,彼は自らが地獄で憎悪を貫く救世主であると主張し,教団一丸となって偽りの予言を掲げるようになった。そこまではよかったのだが,天界へ戻るための手柄を立てられると考えたイナリウスは,愚かにも地獄界への進出を決意してしまう。

 ラズマは彼の身勝手な思い込みを予測しており,地獄の門を閉じてそれを阻止した。わざわざ門を閉じたのは,世界の均衡を保つ調停者として,パワーバランスを崩しかねない地獄界との戦いを避けたかったからだと思われる。その結果が1章での鍵をめぐるやりとりにつながり,ラズマはイナリウスによって命を奪われた。

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 ラズマの死が1章で明かされたこともあり,このタイミングで起きた出来事のようにも見えるが,実際はリリスが召喚される前に死を迎えていたようだ。というのも,エライアスが予言の解読のために神殿を訪れた頃には,ラズマの死が既知の事実となっているからだ。

 また修道士オーリンによると,イナリウスは予言を耳にするまでコー・ヴァラーで過ごしていたが,予言の著者であるラズマを訪ねてからは,長年にわたりアラバスター修道院で運命に立ち向かう準備をしていたという。
 となれば,少なくとも数週間前,下手をすると何年も前の出来事になるのだが,その割に死体の状態がよかったのは謎である。

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■灰の日々と3人の英雄

 “炎獄の侯爵アスタロスによる灰の日々”は,2章で描かれるドナン,エイリダ,ナフェインによって引き起こされた悲劇の元凶ともいえる出来事だ。灰の日々とは,悪魔アスタロスがスコスグレンの地を蹂躙した厄災のこと。
 ドルイドの聖地トゥール・ドゥルラは火の海に包まれ,灰が雨のように降り注ぎ,アスタロスの恐ろしい笑い声が雷のように鳴り響いたという。

 トゥール・ドゥルラの拠点開放時に現れた幻影や,苦悶の表情を浮かべ黒焦げになった人々を思い返せば,当時の状況がいかに凄惨であったかをうかがい知れるだろう。

 アスタロスの打倒によって灰の日々を終わらせたのが,ドナン,エイリダ,ナフェインの3人であり,その討伐の地とされているのが,スコスグレン地方の“傷痕”というエリアだ。
 灰の日々の終結から長年経った現在もアスタロスの血塗られた痕跡は残り続け,討伐の地は岩盤が燃えたぎり不毛の地となったばかりか,飢えた闇のものが跋扈している。

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 灰の日々で活躍したのは3人の英雄だけではない。当時アスタロス討伐に向け,ドナンは優秀な人材を集めており,その戦力の1つとなったのが傭兵集団ブラックウィールドだ。

 楯突く者は女,子供であろうが斬り捨て,依頼でゴールドを稼げば同じ量の血を大地に吸わせる冷酷な者たちとして知られ,切羽詰まった状況のときに仕方なく声をかける存在だという。彼らを頼るほかなかったということは,灰の日々での戦いがそれだけ末期的な状況だったのだろう。
 なお,灰の日々に関するエピソードは,トゥール・ドゥルラの拠点開放や,<太ったガチョウの下>亭でのサブクエスト「ブラックウィールドの熊」で語られている。

肖像画に描かれた英雄らの姿は若々しく,その点からも灰の日々の終結から長い年月が経過していることを読み取れる
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■リリス召喚に至るまでのエライアスの足跡

 ホラドリムの宝物庫を去ったエライアスは,ラズマの予言を解き明かすべく独自に調査を進めていた。その過程でラズマの神殿にたどりつき,永劫の戦いに,そして三大悪に抗わんとする唯一の存在がリリスであったと確信し,彼は来たる終末に抗う手段として彼女に希望を見いだしている。

 同時に,彼女が決して善なる存在ではないこともエライアスは理解していた。召喚後のリリスが人類の味方である保証がないうえに,悪魔と徒党を組むタブーとも言える行為は多くの敵を作り,命を落とす危険すらある。
 自身に降りかかるあらゆる事態に備えるため,エライアスはラズマの神殿に自身の小指を残し,この世に魂をつなぎ止める不死の儀式を行った。その後,囁きの木との取引によって血の儀式の情報を得た彼は,エズレット礼拝堂へ向かいリリスをサンクチュアリに帰還させたのだった。

 では,血の儀式で生け贄となった3人は誰だったのか? その答えはザービンゼットのサブクエスト「暗き道を往く」にある。数週間前に姿を消した助任司祭のサイモンを捜索するこのクエストでは,エライアスがいかにして儀式の生け贄を得て,あの祭壇に至ったのかが描かれている。
 その旅路を知ったうえで血の儀式のムービーをあらためて見ると,また違った視点で映像を楽しめるはずだ。

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さて,メインストーリーを振り返ろうか


 ここからはメインストーリーの序章から終章までを振り返っていく。各章の振り返りでは,放浪者の大まかな旅路をまとめ,物語をひもとく上で重要なポイントを独断と偏見でピックアップしている。
 物語上で発生するすべての出来事を網羅しているわけではない点と,筆者による解説(考察)は公式の正解というわけではないことをご留意いただきたい。「そういう見方もあるのか〜」,ぐらいの感覚で読み進めてもらえると幸いだ。


<あらすじ>

 馬を失った放浪者は,寝袋もなければ,防寒具もない,絶望的な状況で雪の中をさまよっていた。吹雪をやり過ごすには心もとない小さな洞に身を寄せるも,厳しい寒さを前に意識を失う寸前だった。
 そこに夢か現実か,1匹の血まみれの狼が現れ,放浪者は悪夢にうなされるように目を覚ます。暖をとるため近郊の町ネヴェスクに避難するも,放浪者が駆け込んだその場所は,憎悪の御子リリスによる洗礼を受けていた。

 村人によって“リリスの血の花びら”を食わされた放浪者は,幸か不幸か“リリスとのつながり”を得てしまう。
 命の恩人である僧侶イオセフの助言によってホラドリムのロラスを訪ねると,放浪者がつながりを得た悪魔がサンクチュアリの創造母であること,そして彼女を止めなければ世界が滅亡することを告げられる。

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 序章で描かれるのは,雪山で死にかけ,ネヴェスクでも死にかける,なんとも不運な放浪者への救いと導きだ。放浪者がキヨヴァシャドにたどりつくまでに,血まみれの狼と僧侶イオセフによって命を救われている。彼らの存在がなければ,放浪者はこの時点で死を迎えていたはずだが,大いなる因果に引き寄せられるように救いの手が差し伸べられた。

 数奇な因果によってもたらされた“リリスとのつながり”は,ロラスに人類救済の希望を与え,抜け殻同然だったホラドリムに再起の炎を灯す。その結果,放浪者はロラスという心強い導き手を得たのだ。そして序章で描かれたもう1つの導きが,リリスによる目覚めのシーンである。


★解説1:リリスが村人に与えた“目覚めと導き”

 教会に向かった放浪者は,司祭が村人を叱咤するさまと,リリスが村人の罪を肯定し目覚めを与える幻視を目にする。ここで語られる罪というのは,酒,賭博,窃盗をはじめとした欲におぼれることで,司祭が好ましくないと指摘していた行為を指している。

 リリスはその罪こそがありのままの欲望――つまり人の本質であるとし,心から欲するものを否定する光の教えに救いはないと説く。そのくさびを断ち切り,己の欲のままに生きよと村人たちを諭したのだ。
 そうして目覚めを得た村人たちが司祭をなぶり殺すのだが,天使と悪魔から生まれた人類の内には,残忍な悪魔の面が存在することを示唆したシーンだったようにも思う。

 リリスはその悪魔の面に干渉することで,内にある欲望と憎悪をかき立て,理性というの名の枷を外す。目覚めを得た人々はリリスに心酔し,目的のためならば自らの命をも差し出す狂信者と化すのだ。死をも恐れぬ狂信者たちは,リリスにとってさぞ都合のいい手駒であったことだろう。

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★解説2:血まみれの狼

 のちに正体が明かされる血まみれの狼は,憎悪の帝王メフィストである。リリスの帰還を察知したメフィストは,彼女の思惑を阻止する対抗馬として放浪者に目を付けた。せっかくの逸材が雪山で凍死しかけていたので,眠って死なれては困ると放浪者の目を覚まさせたのだ。

 ちなみに,メフィストがこうして狼の姿で現れるのは,本来の力を発揮できないほど弱っているからだ。マルサエルに取り込まれた魂の消耗が激しく,メフィストの本体は地獄界の憎悪の玉座にて精髄を再生している最中なのである。
 「三大悪の顕現」という書物によれば,弱った三大悪は片目のフクロウや翼のないコウモリ,傷ついた狼といった奇妙な姿をとるそうだ。翼のないコウモリって,どうやって移動するんだ……?

放浪者のピンチにたびたび駆けつけるメフィスト。忠犬みたいでかわいい……
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★解説3:命の恩人イオセフ

 村人に殺されかけているところを助けてくれた“イオセフ”を覚えているだろうか。駆け足でプレイしている人ほど「誰?」となるであろう彼は,ネヴェスクの小屋で村人から“狂人”と呼ばれていた男だ。薬を盛られ錯乱していた彼は,放浪者の到着後に正気を取り戻し,森へと退避していた。
 そのまま逃げおおせることもできたはずだが,自身の危険を顧みず放浪者に救いの手を差し伸べている。彼がいなければ「ディアブロ IV」の物語はあそこで終わっていたことだろう。

 そんな彼は今でこそ光の聖堂の敬虔(けいけん)な信者だが,もとは罪人であったそうだ。教母プラヴァの導きによって改心した彼は,こうして光の道を歩み始めたという。そういった背景があるからか,プラヴァと聖堂に対する信仰はいかなる状況にあっても揺らぐことはなかった。

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★解説4:ロラスのポールアームとアミュレット

 上でも触れたが,ホラドリムのメンバーであるロラスは宝物庫を離れ,雪山の小屋で隠者となった。これには,マルサエルがもたらした惨劇によって精神を病んでいたことも関係している。終わらぬ永劫の戦いの中でサンクチュアリに平穏をもたらし,善なる世界を取り戻すことが困難であると彼は悟っていたのだ。
 ティラエルが去り,抜け殻同然のホラドリムでは地獄の軍勢に立ち向かうことなど到底出来ない。その事実が彼を苦しめ,使命から目を背けさせたのだ。

 そうして借金の形,長年連れ添ったポールアームとホラドリムのアミュレットを手放したロラスだったが,放浪者との出会いが彼を運命の大きなうねりへといざなった。
 「憎悪の御子から人類を守れるかもしれない」――彼はリリスと放浪者の間に生まれたつながりに“希望”を見いだし,ホラドリムとしての使命にすべてを捧げる決意をしたのだ。キヨヴァシャドでポールアームとアミュレットを買い戻すシーンは,そんな彼の覚悟と新たな門出を描いている(できれば自分の手で買い戻してほしかった)。

商人から買い戻したこのポールアームは,新生ホラドリム結成時に使っていたあのポールアームだろうか。そうだとしたら,めっちゃエモい
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★解説5:サンクチュアリでの人々の暮らし

 マルサエルとの戦いによって,サンクチュアリの地は深く傷つき,50年の歳月が経った今もその影響は色濃く残っている。大地の荒廃,疫病の蔓延,厳しい気候に苛まれ,人々は豊かな暮らしとは無縁の生活を送っている。
 冒険の舞台となる東の大陸をひとたび歩けば,窃盗,詐欺,人身売買が日常的に起こるヤバイ世界であることを実感できるだろう。さすがダークファンタジー。

 市民の暮らしが厳しい一方,光の聖堂の者たちの生活は比較的安定しているように思う。キヨヴァシャドの貼り紙によると,懺悔の騎士団に入隊した者は訓練,食事,住居が提供され,罪を清める機会まで与えてもらえるらしい。
 そんな彼らは,頻繁に酒場へ出入りするだけの賃金を得ており,キヨヴァシャド周辺の経済を支えている。イナリウスへの信仰心ではなく,安定した生活のために騎士を志す者が出てくるのも納得だ。

イェレスナの村人は,野菜シチューで食いつないでいる模様。お肉は贅沢品だ
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<あらすじ>

 ネヴェスクをあとにしたリリスは,地獄の鍵を持つ息子のラズマを探して,ヴェナードとともに古代都市カサマを訪れていた。一方,光の聖堂から寄せられた目撃情報をもとにリリスを追う放浪者は,母を探すネイレルとともにカサマの門をくぐる。そこでネイレルが探し求めた母ヴェナードを見つけるも,リリスに洗脳された彼女は娘に刃を向ける狂信者と化していた。

 リリスが向かったラズマの墓所へ向かうには,行く手を阻む暗黒の湖を渡らなければならない。放浪者はネイレルと協力し湖を渡る儀式を成功させるも,その先で待っていたのはイナリウスによって殺害されたラズマの亡骸だった。
 一足先にラズマの亡骸と対面したリリスは,彼の杖から地獄の鍵を手にし,姿を消していた。息子を死に追いやったイナリウスへの憎悪を深めながら……。

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 ネイレル,ラズマ,イナリウス,リリスといった重要人物が次々と登場する1章では,対照的な親と子の関係性とラズマの死,光の聖堂の恐ろしさが印象的なトピックだろう。
 自らの目的のために息子の命を奪い,弔うこともなくその場をあとにしたイナリウスと,息子の亡骸を慈しみの目で見つめ弔ったリリス。同じ子を持つ親でありながら息子に対する態度には天と地の差があり,その対比によって両者の人となりが強調された章だったように思う。

 そんなイナリウスが率いる光の聖堂は,悪魔に立ち向かっている点では放浪者と志を同じくしているが,彼らは本当に善なる組織なのだろうか?


★解説1:ホラドリムに希望を求めた親子

 ネイレルの母ヴェナードはホラドリムの知識を探求する研究者だ。人類の起源を追い求める彼女は,飽くなき探求心を原動力に,ネイレルを連れサンクチュアリのあらゆる土地を渡り歩いてきた。

 旅の中でヴェナードは,母としてネイレルに,生き抜くためのあらゆる知識を教え込んだという。その知識の中には,憎悪の御子リリスがいかなる存在であるかも含まれていたはずだが,そんな彼女でさえもリリスに心を奪われてしまった。
 相手の心を読み,聞きたい言葉を聞かせる彼女の人心掌握術には,並大抵の精神力では立ち向かえないということだ。

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★解説2:イナリウスのありがたい裁き

 アラバスター修道院でイナリウスの裁きを受けるシーンで,祝福を欲する放浪者に対し,彼は自分語りと愚痴をこぼし一方的に謁見を終了させてしまう。何を言ってるんだ感がすごいシーンなのだが,創造主であるイナリウスの心情が垣間見える貴重な場面でもある。
 彼の主張を要約するならば,「永劫の戦いから逃れ,平穏を得るためにサンクチュアリを創り上げたが,戦いはなくなるどころか苦しみばかりを得た。内から腐敗するこの地を離れ,とにかく故郷の天界に帰りたい」という感じだ。

 天界にこだわる理由は明言されていないが,「ディアブロ III」で登場した“イナリウスの書き残し”の内容から察するに,英雄として称えられた過去の自分を取り戻したかったのかもしれない。単純に争いの絶えないサンクチュアリで,人類のお守りをするのに嫌気がさしただけという線もありそうだが……。

これが,イナリウスの裁きっ! めちゃくちゃ悪口を言われている気がする
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★解説3:本当は怖い,光の聖堂

 「武器も呪文も祈りも効かぬ悪魔」の報がもたらされ,光の聖堂はカルディウムへ侵攻する準備をコー・ヴァラーで進めていた。軍備の拡張にあたり掘り起こされたのが,“懺悔の騎士の鎧”だ。
 コー・ヴァラーの右側にいる説諭者に話しかけると,“肉体ではなく信仰の力で動かす”という鎧の仕様を親切に教えてくれる。それは機密情報じゃあないのかい?

 懺悔の騎士の鎧は,苦痛を克服して生まれる信仰の力で稼働する古の秘宝だ。鎧の内部には無数の杭が打ち付けられており,身につけたら最後,装着者は全身を杭で突き刺され耐えがたい痛みを味わうことになる。
 その悪魔的な仕様からも察しがつくように,聖戦での勝利を望む教団は,騎士たちをこの鎧で武装させ命を使い捨てる方針だったようだ。

 「肉体の苦痛は魂を清める! 痛みで信仰心を高めよう!」と説き,その過程で生まれた死は魂の浄化であると肯定する彼らは,悪魔以上に恐ろしい集団なのでは……?

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★解説4:ヴィーゴと懺悔の騎士

 あらすじには書かなかったが,封鎖された鉱山にヴェナードとリリスを招き入れたのは,入口の警備にあたっていた騎士ヴィーゴだ。彼の迂闊な行動の結果,鉱山に派遣された護衛騎士らはリリスに惨殺され,ヴェナードも非業の死を遂げている。鉱山で起きた騒動の元凶たる人物だが,一応彼にも事情があったようだ。

 ヴィーゴはこの騒動の前に1か月分の給料を失っており,そんな折にヴェナードから金運のお守りをちらつかされたため,食いつかずにはいられなかったのだ。残された記録を見るに,信仰心が薄い彼はお守りをもらった前後のタイミングでギャンブルに興じていたと思われる。賄賂,賭博,職務放棄のオンパレードやないか……。

 ヴェナードを見捨てたり,プラヴァからのお叱りを恐れたり,保身に走ったりと,なかなかのダメっぷりを発揮していたヴィーゴだが,ただ心が弱いだけの人間ではなかった。衝撃的なシーンなので印象に残っている人も多いと思うが,彼は“懺悔の騎士の鎧”をまとい,窮地に陥った放浪者を自分の命と引き換えに守ってくれたのだ。
 鎧をひとたび見れば,自分が迎える末路を容易に想像できたはずだが,それでもヴィーゴはネイレルと放浪者を救う選択をした。その勇気を携えた彼は「鎧がなくとも立派な男」だったと思わずにはいられない。

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★解説5:ケインのあの檻

 ホラドリムの宝物庫へ向かうため放浪者が風幻の森に入ると,ホラドリムの幻影に惑わされ迷路のような森に迷い込んでしまう。見かねたメフィストが脱出用のポータルを開いてくれるのだが,その際に“トリストラムの幻影”というエリアを通過する。

 メフィストが言うには,ここは古のホラドリムがディアブロを地中に封じ,そのそばに作り上げた街“トリストラム”のなれの果てだという。炎が燃えさかる街の中には,デッカード・ケインが幽閉されていた檻もあり,「ディアブロ II」で彼を救出した光景が蘇ったかのようだった。

このシーンでメフィストは「リリスが存在せぬ世界が望ましい。やつの反乱ごっこは混沌を生むだけ」と,放浪者を手助けする理由を教えてくれる。どうやら親子の仲もよくないようだ
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<あらすじ>

 ホラドリムの一員にして光の聖堂の協力者であるドナンのもとに,リリスが姿を現した。彼女は炎獄の侯爵アスタロスの行方を追うため,かの悪魔を封印したドナン,エイリダ,ナフェインに取引を持ちかける。英雄らの望む力を与える代わりにアスタロスの情報をリリスが求めると,ドナンはこれを拒否し,エイリダとナフェインは受け入れた。

 2人の裏切りによって秘密は売られ,アスタロスを封印するエルドハイム砦は悪魔の襲撃によって瓦礫と化した。ドナンを追って放浪者が砦にたどりついたときには,すべてはもう手遅れだった。

 リリスはソウルストーンに封じられたアスタロスと契りを交わし,ドナンの息子ヨーリンを犠牲に炎獄の侯爵をケリガーに解き放つ。かつての戦友に裏切られ最愛の息子を奪われたドナンは,絶望の淵に落とされ悲嘆に暮れるしかなかった。

2章は涙なくして完走できない。ドナンとヨーリンの別れのシーンは本作屈指の泣かせどころだ
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 2章では,エイリダ,ナフェインの裏切りを発端に,混乱の一途をたどるスコスグレンが描かれた。彼らが引き起こした結果だけを見れば,誘惑に負けた“身勝手な人たち”という印象を抱いたことだろう。
 だが,この章をより深く理解するならば,英雄らが抱いていた思いと彼らの置かれていたスコスグレンの状況にも目を向けておきたい。このバックボーンを知れば,彼らの選択が“仕方のないこと”であったと思わずにはいられなくなるからだ。


★解説1:エイリダとナフェインが裏切ったワケ

 ドルイドとは,自然と一体になり,まじないや精霊の力を行使することに長けた種族だ。彼らが生活を営むスコスグレンは,祖先の声に耳を傾け,供物と祈りを捧げるドルイドの文化とともに発展を遂げ,長きにわたり守護されてきた土地である。
 しかし,彼らが築いてきた文化と当たり前の日常は,光の聖堂がスコスグレンに進出したことで崩れ去っていった。

 聖父の教えを盾にドルイドの文化をないがしろにした光の聖堂は,生活のために自然を食い潰し,発展のためと称して野生動物の命を奪っていく。多くのドルイドはこれに反発し敵意の目を向けたが,聖父に救いと信仰を求めた一部の者たちは,古くからの習わしを捨て聖堂に傾倒してしまう。
 結果,聖堂の介入をきっかけにドルイドの力は弱まり,守り手を失ったスコスグレンはみるみる衰退していったのだ。

ムーアデインの山小屋には,土地の繁栄のために野生動物の毛皮を買い取るという光の聖堂の文書が掲示されている。これに感化された狩人は多くの動物を手にかけ,ドルイドの怒りを買い惨殺された
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 誇りと習わしを捨て,過去の犠牲さえも忘れ去った者たちにエイリダは失望し,力を失っていく一族の未来を憂えた。愛すべき自然を食い潰す無法者を嫌うナフェインは,侵入者たる光の聖堂を憎んでいる。一族の力を取り戻し,スコスグレンをあるべき姿へと戻すため2人はリリスと手を組んだのだ。

 英雄らの裏切りをきっかけとしたアスタロスの襲撃以降,光の聖堂はスコスグレンから撤退している。こうしてスコスグレンを衰退させる異物が取り除かれ,ドルイドがかつての生活を取り戻したことでエイリダとナフェインの望みは叶えられたわけだ。ドナンを裏切った彼らは本当に“悪”だったのだろうか?

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★解説2:ドルイドの誇りを忘れた村コーバック

 アイルイグが族長をつとめる村“コーバック”を見れば,ドルイドとしての誇りを失い,落ちぶれた村がどのような末路をたどるかが分かるだろう。光の聖堂こそが救いであると信じたアイルイグは,ドルイドの文化を捨て去った。
 その過程で,古くから土地を守ってきた結界石を破壊してしまうのだが,その愚かな行動が村に貧困をもたらす発端になっている。

 結界石の消失によって農村を守る結界は効力を失い,スコスグレンにカズラ(羊頭の獣)が跋扈し始める。守りを失った農村は,カズラによる度重なる襲撃によって作物の収穫がままならなくなり,その余波を受けたコーバックは食糧難に陥ってしまう。
 空腹のあまり倒れ込む者,盗みの計画をたてる者,飼い犬は食べないと誓う者……聖堂に救いを求めたコーバックが得たのは,耐えがたい苦しみだけだった。

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★解説3:ドナンにだって言い分がある

 じつは,光の聖堂をスコスグレンに引き入れ,英雄が裏切るきっかけを作ったのはほかでもないドナン本人である。自業自得やないかとツッコミたいところだが,もちろん彼にものっぴきならない事情があったのだ。灰の日々によってスコスグレンの地は傷つき,民の生活を守るには復興が急務であるのは明白だった。
 加えて,アスタロスを封じたソウルストーンからは邪悪が漏れ始め,ドナンの手に負えない状況となっていた。そこでドナンは光の聖堂に助力を請い,イナリウスの祝福を受けたエルドハイム砦を建設することで邪悪を封じたのだ。

 聖堂の力を借りねば漏れ出る邪悪が人々を蝕み,聖堂を頼ればドルイドが築き上げたものが壊されていく。滅びを選ぶか,多少の犠牲を払い生存の道を選ぶかの2択を迫られ,当時のドナンは聖堂に救いを求めた。多くの者を生かすには,これしか方法がなかったと彼は語っている。

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★解説4:アスタロスとリリスの取引

 序章でも触れたが,現在のメフィストは弱体化しており,自身の力だけではその身を守れぬ状態にある。そのため,憎悪の玉座に至る道には侵入者を拒む細工がされていたと思われる。
 メフィストの力を我がものとするため,父の精髄が隠された憎悪の玉座に向かいたいリリスは,メフィストの守護者であるアスタロスと取引をし,自由を与える代わりに招かれざる地への道を用意するよう要求していたのだ。

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★解説5:過保護なドナン

 2章の冒頭でヨーリンがブレイステイグの騎士に合流したいと,ドナンに訴えるシーンがある。ドナンはそれをどうにか諦めさせようとするが最後には許可してしまう……という何気ないやりとりなのだが,このシーンではドナンの過保護な一面が描かれている。

 ドナンは妻ブレイガを亡くしたことで,愛する者を失う恐怖にとらわれていた。その恐怖はヨーリンとの関係にも影響を与え,溺愛する息子を危険から遠ざけるためにエルドハイムの外へ出ないようコントロールしていたのだ。
 ドナンの過保護っぷりはプラヴァから苦言を呈されるほどで,彼女からの手紙には「子どもを永遠に庇護することはできない。だからヨーリンを自由にさせてやりなさい」とつづられている。

 リリスの出現によって危機感を募らせていた彼は,ヨーリンの身を案じるあまり光の聖堂の騎士としてブレイステイグへ向かうのを止めたかったのだろう。

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<あらすじ>

 リリスを召喚した蒼ざめた男は,ロラスの弟子にしてホラドリムのメンバーであるエライアスだった。目撃情報をもとにエライアスの足跡をたどると,彼はオーベイ修道院から四小悪にまつわる文献を盗み出し,三大悪の神殿へと向かっていた。

 その目的が苦悶の乙女アンダリエルの召喚であることを知った放浪者は,ロラスとともに儀式を妨害する。儀式によってアンダリエルとのつながりを得た“タイッサ”を保護し,宮殿へ逃げおおせたエライアスを追い詰めるも,不死性を得た彼を倒しきることはできなかった。

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 蒼ざめた男が,まさかのホラドリムの元メンバーであったことに驚かされた第3章。そんな彼が説くのは,人類の滅亡ではなくリリスによる救済だった。永劫の戦いの終結を望み,三大悪に抗う彼女こそがサンクチュアリの救世主となる。

 理にかなった救済案を説いているように思えるが,手段を選ばぬ彼の行動はとてもまともだとは言いがたい。悪魔による救済を掲げる一方で,死体の山を築くエライアス。放浪者と対極的な存在として描かれる彼は,決して救世主ではないということを強く実感させる章だった。

特筆すべき出来事ではないのだが,メシーフを探し怪しげな酒場に足を踏み入れると,“事業主”というNPCが襲ってくる。店主ということなのだろうが,ファンタジー世界に似つかわしくない圧倒的なパワーワードに思わず笑ってしまった
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★解説1:ショックのあまり飲んだくれたロラス

 ケド・バーデュで蒼ざめた男を探るロラスを訪ねると,あろうことかヤギ小屋で酔い潰れていた。ただの酒好きなおじさんだったからではなく,弟子のしでかしたことにショックを受け,酒に溺れるしかなかったからだ。会話の中でエライアスの能力を高く評価していたように,ロラスは彼の才能と可能性にとりわけ期待を寄せていた。ロラスの手記から想像するに,人付き合いが苦手な彼なりに可愛がっていたのかもしれない。

 だからこそ,エライアスが道を踏み外しホラドリムに仇なす存在となったことは,受け入れがたい事実だったのだろう。そりゃあ,酒も止まらなくなりますわなぁ。

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★解説2:不遇のゲンバー

 エライアスに唆され,リリスの軍門に降ったゲンバー。リリスの彫像を前に戦ったちょい役感のある村人なのだが,彼にも一応設定がある。ゲンバーの小屋を見れば,彼が彫刻家であることが見て取れるはずだ。

 しかしながら,現在のサンクチュアリはその日の食糧にありつくのも一苦労な世知辛い世界であり,人々に芸術を楽しむような余裕などない。そんな不遇の時代に彫刻家として生計を立てようとしたゲンバーは,とても苦しい状況だったと思われる。しかも頑固者でプライドの高い彼は,同情も施しも受け付けないと,彼のいとこからの手紙に記されていた。

 そんな状況下で自分の才能を認めてくれる存在が現れたとなれば,心を奪われぬほうが難しいというもの。くすぶっていた彼は,エライアスの口車に乗せられ,悪魔召喚の手駒となってしまう。

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★解説3:悪魔マーモンの腹にいたのは恐ろしきオーヴァーシア

 オーヴァーシアといえば,悪魔マーモンの召喚の生け贄になったグールラーンの統治者でおなじみ。メインストーリー上では彼らの死体と対面するのみだったが,サブクエストで語られるオーヴァーシアにまつわるエピソードがなかなかに興味深い。

 彼らは何世代にもわたってグールラーンを統治してきた王族で,“奴隷王”と呼ばれている。物騒な通称から察しがつくかもしれないが,獲物の口に溶岩を流し込んだり,愛するものと永久にともにいるため肉切り包丁で切り刻んだりと,一族にはなかなかにやばいヤツらが揃っている。
 グールラーンで救助したオーユンが言うには,「退廃的で残酷な人たちだったけど,人食いのブロルよりはマシ」らしいのだが……どっちもどっちな気がしてならない。

オーヴァーシアのエピソードは,運命の隠れ家にいるラカーン関連のサブクエストで展開される。メインストーリーとの関わりは薄いが,個人的にオススメしておきたい
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★解説4:人食いと鶴の一族の贖罪

 ブロルが率いていた人食いは,もとはグールラーンの牢獄に収監された盗賊たちだった。もとよりそうだったのか,飢えがそうさせたのか,彼らは人の肉を食らう狂人と化していた。人食いによる被害はグールラーンにとどまらず,渇きの平原一帯を闊歩し,人々の生活を脅かす存在となっている。
 その人食いの中にはかつてバーバリアンだった者もいた。彼らは弱きものの肉を食らうことで強くなれると信じ,長年人肉を食らった影響で残虐な獣に墜ちたという。

 そんな人食いの襲撃を受け,窮地に立たされているのが鶴の一族の集落に身を寄せるバーバリアンだ。彼らは自身を,祖先であるニーラターク(ニーラサック)の恥を背負う部族と呼んでいる。ニーラタークといえば「ディアブロ II」で破壊の帝王バールと取引をした人物で,アリート山崩壊のきっかけを作った一族の裏切り者である。
 地獄の軍勢からハロガスを守るためだったとはいえ,戦いを放棄しバールを手引きした罪は重く,アリート山崩壊から50年以上たった今もなお鶴の一族は許しを得られていない。不憫……。

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★解説5:船からラクダに乗り換えたメシーフ

 「ディアブロ II」でおなじみの彼は,ラット・ゴーレイン,クラスト港を目指すプレイヤーを船に乗せ,大海原を駆けていた水兵だ。今は亡きデッカード・ケインを知る人物だが,老齢もしくは煙を吸いすぎたために,ロラスをケインだと思い込んでいる。
 ケインらと大海原を駆けたメシーフは,その後世界中を巡り,あてもなく放浪したという。戦友との心躍る航海に焦がれ,ラクダにまたがりそのときを待ちわびていた彼は,危険を顧みず砂漠のガイドを引き受けた。少しボケているところはあったが,メシーフは最後までいいおじいちゃんだったと思う。

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<あらすじ>

 ついに四小悪が1人,苦悶の乙女アンダリエルが召喚の時を迎える――。

 放浪者は放棄された教会で<見えざる眼>をのぞき,リリスの狙いがメフィストの精髄であることを突き止める。憎悪の帝王を取り込みその力を我がものとすれば,リリスが三大悪の1人となり,サンクチュアリをも掌握する力を得てしまう。その思惑を阻止するには,ドナンの力を借りソウルストーンにリリスを封じるほかない。

 リリス封印に向け動き出したのも束の間,タイッサがエライアスに捕らえられ苦悶の乙女アンダリエルが召喚されてしまう。アンダリエルを打倒するも,またもエライアスに逃げられリリス追跡の手がかりが途絶えてしまった。

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 4章はクエストが少ないうえ,ストーリーもかなり短いが,見どころは多かったように思う。とくに,ドナンが語るホラドリムとソウルストーンにまつわる会話は,ホラドリムが払ってきた犠牲を理解するうえで必読の内容だ。


★解説1:エライアスが信じたかったもの

 語り部たるロラスの見立てでは,リリスの真の目的はサンクチュアリの救済ではなく,父メフィストの力を我がものとし“地獄を支配する力”を得ることだという。地獄に君臨したいがために行動していただけで,エライアスはそれに気付けなかったのだと語っている。

 思い起こせば,リリスは血の儀式のときから「救いではなく力を与える」と明言している。自分は救世主ではないと否定したうえで,救いは人類の力で勝ち取れとエライアスの前でも口にしているのだ。つまり,エライアスは気付かなかったのではなく,その真実を信じたくなかったのかもしれない。

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★解説2:便利アイテムの見えざる眼

 リリスを追跡するため,エライアスの宮殿から盗み出した古の秘宝<見えざる眼>。未来予知のほか,のぞき込んだ相手との交信に使用できるこのアーティファクトは,かつて離れた地で暮らしていたとある天使と人間の連絡手段として使われていたらしい。<見えざる眼姉妹団>というローグ集団が長年にわたり保管していたはずだが,なんらかの経緯でエライアスの手に渡っていた。

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★解説3:壊れた兵士

 ヨーリンの死によって心を病んだドナンは,ホラドリムとしての使命に向き合えずにいた。赦しと導きを求めてイナリウスにすがるも,彼は自身がリリスを打倒する夢物語を口にするばかりで,ドナンに導きを与えることはなかった。
 揚げ句,ドナンがリリス打倒の協力を申し出ても,「将軍は壊れた兵士などに用はない」と突き放したという。自分に益をもたらさない者は斬り捨てる,イナリウスの非情さが浮き彫りになったエピソードだ。

 そんな状況下でロラスからの手紙を受け取ったからか,ドナンは「最低限の配慮もできないのか」と,ロラスに対する苛立ちをあらわにしていた。書かれていないことに対して怒っている様子だったので,おそらく息子や友を失ったことへのお悔やみや,旧友への気の利いた挨拶などを期待していたのだろう。

失意のまっただ中にいるドナンを放り出し,イナリウスは演説にいそしんでいた
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★解説4:ホラドリムとソウルストーンの呪い

 ホラドリムに居続けるということは,“自分の人生を捨てること”と同義だとドナンは語っている。サンクチュアリの守り手として,その使命をまっとうするにはすべてを捧げる覚悟がなければ務まらない。強大な悪魔を追跡し,命を賭して戦い,いかなる犠牲が生まれようとこれを封じる。
 先代の賢者たちがたどった末路がそれを物語っているように,そこに個としての幸福を優先させる余地などない。ホラドリムを去ったドナンには愛する者がおり,個としての幸せを渇望した彼には,愛する者と歩む人生を捨て去る決断はできなかったのだ。

 そんな彼は,ソウルストーンは一種の呪いであるとも語っている。その強大な力によって悪魔を封じられるが,封印が解かれぬよう守護しなければならない。守り手となった者は石に日常も夢も食いつぶされ,封じられた悪魔同様,石に囚われるのだという。ソウルストーンは悪魔に対抗できる便利アイテムではあるが,悪魔封じによってもたらされる平穏は,ホラドリムに属する者たちの人生を犠牲にしていることを忘れてはならない。

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★解説5:なぜ苦悶の乙女アンダリエル?

 三大悪に対抗する戦力として,エライアスは四小悪のアンダリエルを召喚した。四小悪といえば,アズモダン,ベリアル,デュリエルも候補に入るはずだが,あえてアンダリエルが選ばれた理由を考えてみた。
 筆者の推測ではあるが,四小悪の中で一番扱いやすかったのがアンダリエルだったのではないだろうか。そもそも四小悪は三大悪と覇権を争う対立関係にあったため,打倒三大悪を掲げれば召喚相手が誰であろうと徒党を組むことは難しくないと思われる。

 しかし,アズモダンとベリアルは権力への執着心が強く,仮に同盟を結んだとしても無用な権力闘争を起こす可能性が高い。その点アンダリエルは,敗者が極限まで苦しみを味わうのであれば,手を貸す相手を選ばない自由主義者だ。過去には,敵対していたはずのディアブロに力を貸した実績もあったため,ハンドリングしやすい相手だったと思われる。

 余談だが,アンダリエルと6章でリリスによって解き放たれたデュリエルは双子という設定だ。カルディウムでのデュリエル登場は,2人のつながりを意識した人選だったのかもしれない(その昔,アンダリエルがリリスの血縁者という設定があったが,いまもそれが生きているかは不明)。

双子といっても,見た目はほとんど似ていない。嗜好も異なり,デュリエルは物理的な苦痛を喰らい,アンダリエルは精神や感情の苦悩が大好物だ
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<あらすじ>

 囁きの木の助言によって,ラズマの神殿にたどり着いた放浪者はエライアスの不死の術を破ることに成功する。しかしその代償は大きく,ネイレルは片腕を失ってしまう。

 ドナンによって修復されたソウルストーンを手に,サンケクーの呪われた墓を訪れると,石の調律を阻止すべくエライアスが乗り込んでくる。不死性を失ったエライアスをタイッサと放浪者が返り討ちにし,その首はカラスによって回収され囁きの木の一部となった。

 リリス追跡の手掛かりを失った放浪者だったが,ロラスから「地獄の門を襲撃すべく,リリスがカルディウムへと向かった」と知らされる。一刻を争う状況を前に,ロラスは囁きの木と取引をしていたのだ。死後,その首を木に捧げることを条件に――。

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 5章はエライアスの打倒,ドナンの苦悩,ロラスの自己犠牲といった,ホラドリムの3人にスポットを当てたストーリーが多く展開された。ここでは,ロラスとエライアスの関係に触れつつ,何かと謎の多いハウザーに関するトピックに注目してみたい。


★解説1:沼地もサンクチュアリの一部?

 タイッサにザービンゼットについて尋ねると,「サンクチュアリと沼地の狭間にある町」だと教えてくれる。沼地がサンクチュアリの一部であると考えるのが普通なのだが,タイッサにとってはそうではないらしい。ただの世間知らずともとれる発言だが,沼地をテリトリーとする囁きの木の来歴が関係しているように思える。
 現に,ティムエの家にある「湿地帯の伝説」に関するメモ書きに,「木と蛇の“婚姻”。木はサンクチュアリに来られなかったとあるが……どこからだ?」という記述があるからだ。

 あくまで筆者の推測だが,囁きの木はサンクチュアリではない世界からやってきた,もしくは現在もサンクチュアリの外に存在している特異な存在であり,沼地の蛇によってつながりを得ているようにとれる。そういった背景から,タイッサをはじめとする妖術師のあいだでは,沼地がサンクチュアリとは別の土地だという認識なのかもしれない。
 これを前提にすると,妖術師ヴァルサが書き残した「木は永劫の戦いの外にある」というメモも,サンクチュアリのものではない囁きの木にとって永劫の戦いは無関係であると解釈できるが……囁きの木の来歴についてはもう少し情報がほしいところだ。

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★解説2:ティムエの病

 沼地の病に侵されたティムエは,死の恐怖に抗えず囁きの木と契約を交わしている。その病は棘に刺された小さな傷から始まり,傷から沼が流れ込むと体に奇妙な茨と蔓が生えてくるという。痛みとともにゆっくりと進行し,いずれは沼と同化してしまう恐ろしい病だ。

 沼そのものとなると言われてもイマイチぴんとこないかもしれないが,「もつれた記憶」をはじめとしたクレスのサブクエストをクリアすれば,この病の恐ろしさを理解できるはずだ。ティムエ以外にもこの病にかかった者は多く,特異な症状ゆえか彼らの肉体は錬金術の素材として売り飛ばされることもあるようだ。物騒過ぎる。

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★解説3:サンケクーって誰?

 サンケクーとは,「ディアブロ II」でメフィストが体を乗っ取ったザカラム教の最高権威者だ。メフィスト打倒の後に残されたサンケクーの遺体は,ザカラムの信徒によってラクハト砦まで運ばれた。
 しかし,サンケクーの体からメフィストの残滓は消えず,その遺体はパラディンのカーサスとその従者とともに砦に封印されることになる。サンケクーを敬う彼らは,メフィストの残滓に穢されようと砦を離れることはなかった。

 やがて砦にはメフィストの腐敗の力が立ちこめるようになり,ザカラム教徒でも容易に足を踏み入れぬ地と化した。この敬虔なる者たちのエピソードは,サブクエスト「失われた遺産」で把握できるだろう。

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★解説4:すれ違う師弟の心

 サンクチュアリにリリスを召喚し,混沌をもたらした“エライアス”。憎悪の御子に忠誠を誓い,目的のためなら犠牲もいとわぬ彼は,メインストーリー上において冷酷な狂人として描かれているように思う。しかしながら,エライアスは根っからの悪人ではない。

 少なくとも離別前の彼は,師であるロラスの背を追う純真さと情熱を持った人間だった。残されたメモの中には,いつか師と肩を並べ脅威に立ち向かうために,あらゆる知識を身につけねばならないという,決意じみた一文が記されている。
 師に認められたかった彼は,貪欲に知識を吸収し,真実を究明するためならば火の中にさえ飛び込んだ。

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 彼が学んだ知識の中にはヴィジェレイをルーツとしたものもあり,エライアスはいつからか悪魔を使役する研究に没頭し始める。ヴィジェレイといえば古来から続く魔術師集団として知られ,魔術を用いて悪魔を召喚し,支配する術を研究していた者たちだ。
 悪魔に魅入られた彼らの顛末を知るロラスならば,同じ轍を踏ませたくないと考えるのは必然だったのかもしれない。

 だからこそ,「それ以上愚かな術を研究するならば,ホラドリムを去れ」とエライアスに警告したのだ。そうしたロラスの行動は,サンクチュアリ救済に手段を選ぶべきではないと考えるエライアスにとって,予言から目を背け,課された責務を放棄しているように映った。これが2人のあいだに深い溝を生み,離別のきっかけとなってしまったのだ。

 「ロラスが向き合おうとしないものを解決するために,再びラズマの神殿を訪れた」とエライアスが口にしていたように,彼は予言の解明とサンクチュアリの救済策の探求――ロラスが目を背けたホラドリムとしての責務を師に代わりまっとうしようとしていた。
 彼の言動のすべては「貴様は私を捨て,越えられなかった一線を私に越えさせた」の一言につながっているように思う。方向性が違っていただけで,悪いやつではなかったのだ。

エライアスを演じる土師孝也さんの声が良すぎて,なんというか最高だった……
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★解説5:タイッサとは何者だったのか

 アンダリエル召喚の媒体として,3章で突如として現れた謎の女性“タイッサ”。召喚の儀式から救い出したあともしばらく行動をともにするのだが,彼女自身の口から“タイッサが何者であるか”はあまり語られていない。
 彼女はウェジンハニのはずれに住む妖術師で,囁きの木が交わした取引の代償を回収すべくエライアスを追っていた。エライアスが率いる教団に潜入し首を切り落とす好機を伺っていたのだが,暗殺を気取られた結果,アンダリエル召喚の媒体とされてしまった。

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 アンダリエル撃退後,放浪者と別れたタイッサはウェジンハニの塔へと戻った。5章で再会する彼女は妖術師の装飾を身にまとい,どこかよそよそしい態度で放浪者とドナンを迎えいれる。ソウルストーンの修復に道具は貸すが,手を貸さないと宣言する彼女は,リリスの討伐は自分には関係がないことだと言いのける。恩人相手になんたる塩対応。

 彼女はサンクチュアリを守護するホラドリムでなければ,お人好しの英雄でもない。妖術師たるタイッサは沼地とともに生き,囁きの木の願いを叶えるために命を賭している。
 エライアスの首を回収するために行動をともにすることはあっても,木の願いの外にある事柄(リリスの封印)は無関係であるという考えなのだ。ドライな線引きをしつつも,なんやかんやでドナンを立ち直らせる手助けをしてくれた彼女は,放浪者たちを仲間として受け入れているように思う。

アンダリエル打倒後も,タイッサはその囁きに悩まされている。サブクエスト「自らへの問いかけ」で彼女に救いの手を差し伸べよう
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<あらすじ>

 リリスによって地獄の門が開かれた。光の聖堂は地獄界へと進軍し,信仰の力で悪魔の軍勢を圧倒する。しかし,リリスによって塔へと誘い込まれたイナリウスは,かつて愛を誓いあった伴侶に胸を貫かれ消滅してしまう。苦悶の尖塔でドナンが瀕死の重傷を負うなか,放浪者はリリスに対抗する術を探るべく<見えざる眼>をのぞき込む。

 その行動が災いし,放浪者はリリスによって出口のない悪夢の中に閉じ込められてしまう。その窮地を救ったのは誰あろうメフィストだった。ネイレルとともに,メフィストのポータルで憎悪の玉座へとたどりつくと,2人はサンクチュアリの命運を分かつ選択を迫られる。
 ソウルストーンでリリスを封じるか,それともメフィストを封じるか――選択を委ねられたネイレルが選んだのはメフィストの封印だった。ネイレルはソウルストーンを手に地獄を離脱し,放浪者はリリスの野望を打ち砕くため武器を手にした。

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 リリスとイナリウスによる夫婦喧嘩の勝敗が決し,メフィストとリリスの親子喧嘩を回避したことで,サンクチュアリ滅亡の危機は去った。ネイレルとともにメフィストを封じ,リリスを打倒する道を選んだわけだが,この選択が本当に正しかったかどうか,現時点では判断がつかない。

 放浪者に人類を救う英雄となる道を提示し,その手助けを申し出たリリスは本当に“悪”だったのか。リリスと手を組み,三大悪に立ち向かう未来でもよかったのではないかと感じたプレイヤーもいたのではないだろうか。リリスが「この愚行の結果を後悔するがいい」と言い残したように,その答えは三大悪復活の時が訪れれば分かることだろう。

ドナンとロラスによる別れのシーンは心を揺さぶられる感動的なシーンだった。だが,ドナンが不意を突かれるシーンはイマイチ納得できていない。あの柱,強すぎない?
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★解説1:ネイレルの胸の内

 ターサラクでネイレルと合流した際,彼女がロラスの作戦に疑念を抱いていると吐露するのだが,その会話の流れで不穏な発言をしている。

「世界が変わらないなら,人間を超えた存在同士がずっと戦い続ける。あたしたちは無視され,ずっと板挟み状態。何て言うか……これでいいのかなって」

 ネイレルはリリスがサンクチュアリにもたらした混乱を振り返り,彼女によって事態が悪化しているのは確かだが,リリスが終結を望む永劫の戦いに囚われたままでいいのかと,自問自答していたのだ。リリスを憎んでいたはずの彼女がその考えに同調する素振りを見せたので,第2のリリスが生まれる未来がちらつき,少しばかり怖くなった。闇落ちしないで!

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★解説2:イナリウスに奪われたソウルストーン

 イナリウスの手を借りなくともリリスに立ち向かえると,カルディウムに降臨した彼に宣言したホラドリムのメンバー。わざわざソウルストーンを見せびらかさなくても……なんて思っていると,案の定イナリウスに石を取り上げられてしまう。言わんこっちゃない。
 その後,カルディウムで奪われたソウルストーンは,プラヴァに託されていた。しかも,ともに地獄の門へと進軍しているときには彼女の手元にあり,その存在を放浪者たちから隠していたというのだから,これまたたちが悪い。

 地獄で重傷を負ったプラヴァからソウルストーンを回収すると,それを見とがめた彼女は怒りをあらわにし,放浪者らを盗人だと非難する。サンクチュアリへ帰還したのちも,地獄の憎悪にのまれた彼女は異端者たるホラドリムに怒りの矛先を向けている。「この世に大いなる悪をもたらしたホラドリムの魂を聖父に捧げ,ソウルストーンを回収せよ」と信奉者らにお触れを出し,懸賞金をかけたのだ。
 八つ当たり的に敵視されるのはいいとして,なぜプラヴァはソウルストーンを欲しているのかが気になるところ。イナリウスに託されたものを取り返したいだけであればいいのだが……。

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★解説3:お前には地獄が相応しいっ!

 苦悶の尖塔にイナリウスを誘い込んだリリスは,「ともに築き上げたものを破壊し,何を望むのだ?」と問う。このシーンで明らかになるのが,サンクチュアリで光の聖堂を率いたイナリウスの本心だ。
 1章の時点から薄々分かってはいたが,地獄の軍勢と戦っていたのは決してサンクチュアリのためではなく,自身が天界へと帰るためであった。人類の未来なんてものはどうでもよいのだ。

 そんな彼の言葉に失望したリリスは「わらわとの過去を天界は決して許さない,こうして天界が沈黙し続けていることがその証左だ」と現実をつきつけ,イナリウスの命を絶つのだった。息子の命を奪ったのも天界のために為したこと,と言ってのけてしまうイナリウスは八つ裂きにされても仕方がないと思う。

 これは筆者の想像だが,わざわざ塔へと誘い込み対話することを選んだリリスは,イナリウスに伴侶としての愛が残っているのを期待していたように感じる。でなければ,息子の死を天界のためだと片付けられても,あの悲しげな表情を浮かべなかったのではないだろうか。

リリスが浮かべた悲しげな表情は,失望,悲しみ,怒り,憎しみといったあらゆる感情を物語るようで,胸を締め付けられる
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★解説4:悪夢に閉じ込められた放浪者

 <見えざる眼>をのぞいたことで,悪夢に閉じ込められてしまった放浪者。この悪夢の中でリリスが突きつけてくるのは,憎悪,破壊,恐怖は決して消えない永遠の存在であり,生き延びるためには戦い続けなければならないという事実だった。リリスを含め,天使と悪魔の手駒である人類は,永劫の戦いの囚人なのだという。

 詳しくは描写されていなかったが,悪夢に閉じ込められているあいだ,現実世界の放浪者は意識を失い無防備な状態だった。悪魔だらけの地獄界において,それは命取りな状況のため,ロラス,ドナン,ネイレルは,放浪者が目を覚ますまで迫り来る悪魔からその身を守ってくれていた。そして,放浪者の目覚めを見届けたドナンは,塔で受けた傷が影響しロラスに見守られながら息を引き取った。

悪夢からの脱出を手助けしたメフィストは,放浪者に同盟を持ちかけてきた。彼の望みはリリスの排除ただ1つだった
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★解説5:リリスは本当に滅びたのか?

 放浪者によって倒されたリリスは,血の花びらが散りゆくなか灰となった。リリスを倒してめでたしめでたしではあるのだが,本当に彼女を倒すことができたのだろうか?
 「三大悪は制することはできても決して消えることはない」と「三大悪の顕現」に記されていたように,高位の悪魔ならば,三大悪と同様に再生の時を経て再び現れるのではと筆者は考えている(なんやかんやアスタロスも地獄にいたし……)。

 また,血の花びらによってリリスが放浪者の一部となったことを考えれば,リリス本体が滅びようとも彼女は放浪者の中で生き続けている線も考えられそうだが,果たして……。

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<あらすじ>

 メフィストを封じ,リリスを打倒したことで,サンクチュアリに降りかかった危機をかろうじて回避できた。ソウルストーンを手にサンクチュアリへ帰還したネイレルと合流するために教会を訪れたが,そこに彼女の姿はなかった。

 ホラドリムの宝物庫を訪ねてみると,そこにはネイレルがロラスに宛てた手紙が残されていた。その手紙には,三大悪に打ち勝つための方法を探すために1人旅立つこと,ともに行きたいと願うかもしれないが,後は追わないでほしいこと,すべてがうまくいけば二度と会うことはないことが書かれていた。
 ロラスと放浪者は彼女の意志を汲み,この地にとどまる決断をしてメインストーリーは幕を閉じる。

教会ではなく宝物庫に手紙を残したのは,光の聖堂からの妨害を警戒したからかもしれない。ルーン文字で手紙を書いているとはいえ,安全な宝物庫に手紙を残し,他者に知られぬよう伝言を残したかったのだろう
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 この終章の展開に,「え? どういうこと?」となった人もいることだろう。正直なところ,筆者もネイレルの思いがけない行動に理解が追いつかなかった。メフィストの影響を受け放浪者を裏切ったようにも見えたが,ソウルストーンの腐敗の影響が出るまでには時間がかかるとロラスが否定している。
 となると,ネイレルの独断で飛び出したというわけだが,彼女は何を思い,旅立ったのだろうか。


★解説1:ネイレルの旅立ちは始まり

 手紙の内容を素直に受け止めるならば,ネイレルは自分の判断によって仲間が死んでしまうことを恐れていた。三大悪に打ち勝つため,無謀ともいえる旅路に最後のホラドリムであるロラスを巻き込みたくなかったのだ。

 ならば名だたる悪魔を打倒してきた放浪者を連れて行くべきであったと思うが,放浪者はリリスとのつながりを得ており,メフィストとは血縁者のようなもの。メフィストの影響を受けやすい可能性も考えるならば,ともに行動するのは得策ではないと考えたのかもしれない。終章では,そんな彼女の決意と人類の運命を背負う旅の始まりを描いたということなのだろう。

ネイレルは一体どこへ? 宝物庫で海図を回収し,船で移動したとなると,双子海の先にある西の大陸へ向かったのだろうか……
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 一方で,黒いフードを被りソウルストーンを手に1人旅立つ姿は,「ディアブロ II」で東の地を目指したエイダンを彷彿とさせる。もし彼女がメフィストの腐敗に負け,三大悪を復活させる手助けに向かったのなら,過去の惨劇が繰り返されることになる。「頼むから石を額に刺さないで……!」と,願わずにはいられない。
 ネイレルのたどった旅路がいつどのように描かれるかは不明だが,今後リリース予定のDLCやシーズンで明かされることを期待したい。

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★解説2:予言には続き(?)がある

 苛まれた廃墟で拾える「焼けた羊皮紙」をご存じだろうか。この羊皮紙には,ラズマの予言に似た文章が書かれているうえ,予言にはなかった言葉が多分に含まれている。仮にこの羊皮紙がラズマの予言そのものだとするならば,今後起きるであろうことが記されているかもしれない。

<焼けた羊皮紙>

永劫の戦いが放つ炎の中で,
とぐろを巻く蛇と…己の死体を見た。
私の口からは憎悪が吐き出され…
弱き者が強くなったのだ。
砂漠の宝石に血の涙が降り注ぎ,地獄は引き裂かれ…
光の槍が憎悪の心を貫く…
7つの腕を持つ賢人…
まやかしの霧…
そしてありとあらゆる災い…
憎悪の太陽が沈み,破壊と恐怖の太陽が昇る中,
母を誕生させる子を見たのだ。

 これは筆者の予想だが,7つの腕を持つ賢人はネイレルを含むホラドリムが集ったことを指し(ネイレルで1本,放浪者,ロラス,ドナンで6本),「憎悪の太陽が沈み」はメフィストの封印,破壊と恐怖の太陽はバールとディアブロの復活を意味しているのではないだろうか。
 最後にある「母を誕生させる子」は,エライアスによるリリスの召喚ともとれるし,再降臨ともとれそうだ。この内容をどのように解釈するか,思考をめぐらせてみるのも面白いだろう。

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★解説3:「ディアブロ IV」で描かれたものとはなんだったのか

 メインストーリーのまとめとして,予言を発端に巻き起こった各々の思惑と行動を振り返ってみよう。本作で描かれたのは創造主たちの衰退の物語であったが,同時に羊飼いなき者たちによる混沌の物語でもあったように思う。

・ラズマ
 先導者を持たぬ人類に対し,サンクチュアリの危機を予言によって知らせようとした。しかし羊飼いに向かない性質である彼の警告は,あらゆる憶測を生み,サンクチュアリに混沌を招いてしまう。

・イナリウス
 ラズマの予言は,偽りのおとぎ話を流布する自身のうぬぼれを強め,羊飼いを求めた人々は彼が説く幻想にすがった。

・ホラドリム
 本来,羊飼いとなるべきホラドリムの者たちは知識の保持者にすぎず,予言が示す真実から目をそらした。その結果,エライアスはリリスが羊飼いとなり,人類を救う未来を信じてしまう。

・リリス
 救いをいくら求められようと羊飼いになる気はもうとうもなかった。だが人類を見捨てることはなく,偽りの幻想から解き放ち,三大悪に抗うための力を与える。それは人類のためではなく,自身が切望する永劫の戦いの終結のためであった。

・メフィスト
 リリスの降臨によって,身に降りかかる危険を察知し。サンクチュアリをさまよう放浪者を大いなる因果に引き込み,リリスの排除を促す。

・放浪者
 運命に引き寄せられるようにリリスとのつながりを得る。その身に悪魔の祝福を受けながらも堕落の力に屈することなく,サンクチュアリ救済のため奔走した。そして最後には,天界でも,地獄でもなく,人類救済のためリリスが描いた未来を否定する。

……という感じだろうか。英雄として称えられる放浪者が,サンクチュアリの羊飼いとしての役目を担うかどうかは,今後のストーリーでの言及に期待したい。

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 せっかくなので,2023年7月21日から始まったシーズン「厄災のマリグナント」の物語も,簡単にまとめておこう。シーズン1のストーリーは長めのサブクエストぐらいのボリューム感で,リリス亡きあとのサンクチュアリの様子であったり,彼女がもたらした腐敗の影響が描かれている。

 余談だが,ストーリー中でネイレルのその後の旅路は描かれていない。サンクチュアリへの理解を深める分にはそれでもいいのだが,個人的にはネイレルの続報をはやく教えてほしい気持ちでいっぱいだ(メインストーリーは,それぐらい続きが気になる良き物語であった)。

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<あらすじ>

 放浪者は奇妙な悪魔に襲われるコーモンドという男に出会う。放浪者を探していたと打ち明ける彼は,もとはとある村の司祭だったが,現在は聖堂を離れ“マリグナント”の治療法を模索しているという。
 マリグナントとは,“悪魔としての半身に生きたまま食われ悪魔化した者”を指し,コーモンドを襲っていた奇妙な悪魔もマリグナントの腐敗によって生まれたという。彼らは容易に倒せる相手ではなく,その腐敗の力は他者へと感染をひろげていく,いわば疫病のようなものだ。

 束縛の呪籠を用い,腐敗の中核(心臓)を封じることで感染を防げるものの,それは対処療法でしかなく治療法はみつかっていない。コーモンドはマリグナントの完全な治療法を求めており,放浪者にその手助けを求めた。その旅路の中でコーモンドを執拗に追う“ヴァーシャン”という悪魔に遭遇するが,彼らの関係とは一体……?

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★解説1:サンクチュアリの英雄

 各地での悪魔討伐やリリスの打倒といった放浪者の活躍は,サンクチュアリの民に知れ渡っており,民衆から“英雄視”されている。そのため,光の聖堂がかけた懸賞金は見向きもされず,放浪者を捕らえようとする無謀な人間はいないようだ。コーモンド曰く,英雄として称えられる反面,そのレッテルが人々に畏怖を生み,恐怖の対象にもなっているという。

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★解説2:罪の意識から生まれた嘘

 コーモンドは放浪者に大きな嘘をついていた。マリグナントによる悪魔化の原因は,コーモンド自身にあったのだ。彼を追跡していたヴァーシャンは,リリスの影響を受け正気を失ったコーモンドの師。呪籠を手にした彼は師を堕落させた元凶を取り除こうと試みたが,何かがうまくいかず魂が腐敗に飲み込まれてしまう。

 以来,マリグナントの源となったヴァーシャンは,触れたものすべてを腐敗させ,マリグナント化の被害を拡大させていったという。コーモンドは自身の行動によって引き起こされた事実を隠し,放浪者に助けを求めていたのだ。

 それは放浪者を陥れるためではなく,村を見捨てた“罪の意識”からだったとコーモンドは言う。リリスに狂わされた村人を救済すべき立場でありながら,恐怖心を克服できず彼は村を去ってしまった。その罪滅ぼしとして呪籠を使った結果,さらに腐敗を広げてしまったわけなので,正直には言いづらかったということらしい。
 
後出しで判明するほうが印象が悪くなると思うけどね! 嘘はよくない
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 今回解説した物語は,サンクチュアリ全体で繰り広げられるドラマのごく一部だ。サンクチュアリ各地に散らばるサブクエストを注意深く読み進めれば,この数奇な世界に息づく人々の生活や思想,歩んできた歴史,部族の習わしなど,「ディアブロ IV」を形作るダークな世界観への理解をより深められるだろう。

 個人的には,メインストーリーをジックリプレイし直すのもオススメ。物語をある程度知った状態だからこそ,見落としていたキャラクターの心情や,その行動に至った動機,伏線に気付きやすく,初回プレイで理解できなかった展開がより咀嚼しやすくなるからだ。結末を知っていても「ディアブロ IV」の物語は面白い! いや,マジで!
 
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