レビュー
GeForce RTX 30史上最強GPUは,価格に見合ったゲーム性能を有するのか
GeForce RTX 3090 Ti
(Palit GeForce RTX 3090 Ti GameRock OC)
GeForce最強のRTX 3090 Tiは,どれくらいのゲーム性能を発揮できるのだろうか。RTX 3090以上の性能は当然として,どの程度向上したのか,気になる点は多い。今回は,Palit Microsystems製のRTX 3090 Ti搭載カード「GeForce RTX 3090 Ti GameRock OC」(以下,Palit 3090 Ti GameRock OC)をテストする機会を得たので,その実力を検証してみよう。
はたして,RTX 3090 Tiはゲーマーにとって魅力的なGPUなのだろうか。
RTX 3090 Tiはフルスペック版GA102
メモリクロックは21GHz相当に向上
まずは,RTX 3090 TiがどのようなGPUなのか説明しておこう。RTX 3090 Tiは,冒頭でも述べたとおり,GPUコアにはRTX 3090と同じGA102を採用している。そのため,NVIDIA向けにカスタムされたSamsung Electronicsの8nmプロセスルールで製造される点や,ダイサイズが628mm2でトランジスタ数が約280億個である点は,RTX 3090と変わらない。
GA102は,ミニGPUクラスタ「Graphics Processor Cluster」(以下,GPC)を計7基搭載しており,各GPCは12基の「Streaming Multiprocessor」(以下,SM)で構成される。SMは,128基のCUDA CoreとWarpスケジューラ,命令発行ユニット,加えてロード/ストアユニットやL1キャッシュメモリ,テクスチャユニット,そしてレイトレーシングにおける光線の生成と衝突判定を行う「RT Core」を1基と,行列同士の積和算に特化した「Tensor Core」を4基備えている。
RTX 3090では,全体から2基分のSMが無効化され,SM数は82基,CUDA Coreの総数は1万496基となっていた。しかし,RTX 3090 Tiは,何も無効化されていないフルスペックのGA102であり,SM数は84基,CUDA Coreの総数も1万752基だ。
SMが無効化されていないRTX 3090 Tiでは,RT Coreの総数はSM数と同じ84基であり,そのスループットは78 RT-FLOPSに達するという。RTX 3090が69.5 RT-FLOPSであったのに比べると,12%ほど向上している計算だ。
一方,Tensor Coreは,RTX 3090が328基だったのに対して,RTX 3090 Tiでは336基と2%ほど増加した。スループットは,RTX 3090が284.7 Tensor-TFLOPSなのに対して,RTX 3090 Tiが320 Tensor-TFLOPSと,こちらも12%ほど向上している。
なお,後述するテスト環境において,Palit 3090 Ti GameRock OCの動作クロックを「GPU-Z」(Version 2.45.0)で追ってみたところ,2055MHzまで上昇しているのを確認した。ベースクロックやブーストクロックを始めとしてRTX 3090に比べると,RTX 3090 Tiの動作クロック設定は,かなり高めだ。
グラフィックスメモリは,RTX 3090 TiでもGDDR6Xを採用しており,その容量も24GBとRTX 3090から変わりはない。ただ,メモリクロックは21GHz相当まで引き上げられている。メモリインタフェースは384bitなので,RTX 3090 Tiのメモリ帯域幅は1008GB/sと4桁に達しており,RTX 3090比でも11%ほど向上した。
そのほかにPCとの接続インタフェースは,PCI Express(以下,PCIe) 4.0に対応しており,GeForce RTX 3080シリーズにはない「NVLink SLI」にも対応する。なお,後述するテスト環境において,RTX 3090 Tiで仮想通貨のひとつ「Ethereum」(イーサリアム)におけるハッシュレート(採掘速度)を確認してみると,113MH/sだった。RTX 3090のハッシュレートがおおよそ110MH/sなので,少なくともPalit 3090 Ti GameRock OCでは,マイニング制限は施されていないようだ。
そんなRTX 3090 Tiの主なスペックを,RTX 3090,および同じGA102コアを採用する「GeForce RTX 3080 Ti」(以下,RTX 3080 Ti)とともにまとめたものが表1となる。
カード長は実測で約315mmと長め
3.2スロット占有の巨大なGPUクーラー
それでは,Palit 3090 Ti GameRock OCそのものを見ていこう。
まずは,動作クロック設定だが,Palit 3090 Ti GameRock OCのベースクロックは1560MHzで,リファレンス仕様と変わりはない。一方,ブーストクロックは1890MHzで,リファレンスから30MHz引き上げられたクロックアップモデルとなっている。なお,メモリクロックは21GHz相当と,こちらもリファレンスどおりだ。
カード長は実測で約315mm(※突起部除く)と,RTX 3080 Ti Founders Editionが約287mmであったのに比べて30mmほど長い計算になる。ただ,基板自体は208mmほどしかなく,GPUクーラーがカード後方に100mm以上も大きくせり出した格好だ。
カード重量は実測で約1868gと,サイズ相応にかなり重めだ。
Palit 3090 Ti GameRock OCのGPUクーラーは,3.2スロット占有タイプで,100mm角相当のファンを3基備える。マザーボードに装着した場合,垂直方向に31mmほどクーラーがブラケットからはみ出ている点も指摘しておきたい。
ここまでの写真でも分かるとおり,GPUクーラーの表面はクリスタルを模した加工が施されており,LEDの明りがそこを透過することで,かなり派手に光らせることも可能だ。
なおLEDは,GPUクーラー側面にも搭載されており,付属アプリケーションの「Thunder Master」(Version 4.11)で,色や光り方の制御が可能だ。
Thunder Masterは,動作クロックなどのリアルタイムモニタリング機能を備えているほか,ブーストクロックを1MHz刻みで−1000〜1000MHzの範囲内で変更できる。さらに,メモリクロックを2MHz相当刻みで−2.0〜6.0GHz相当の範囲内で変えたり,GPUコアの電圧も1%刻みで0〜100%まで増やすことが可能だ。
さらにThunder Masterでは,3基のファンのうち,カード後方の2基とブラケット寄りにある1基の回転数を,個別に変更できる。設定内容は30〜100%(1%刻み)の範囲で固定したり,GPUの温度と回転数の関係を示したファンカーブから,ユーザーが各温度における回転数を任意に設定したりできるというものだ。
カード背面にあるPCIe補助電源コネクタは,12ピンタイプをひとつ装備している。Palit 3090 Ti GameRock OCには,一般的な8ピン3系統を12ピンに変換するケーブルが付属しており,これをカードに取り付けるため,実質GPU用の8ピン電源コネクタが3本分必要ということになる。
また,映像出力インタフェースは,DisplayPort 1.4a×3とHDMI 2.1 Type A×1という構成で,このあたりは最近のグラフィックスカードでは一般的なものだ。
クロックアップとリファレンスでテストを実施
グラフィックスドライバには512.16を使用
それでは,テスト環境の構築に話を移そう。
今回,比較対象には,同じGA102コアを採用するRTX 3090とRTX 3080 Tiを用意した。RTX 3090 Tiの性能が,既存の最上位モデルであるRTX 3090からどれだけ上昇したのか。そして,ゲーマー向け最上位製品であるRTX 3080 Tiとの性能差はどれくらいあるのかを確認しようというわけである。
なお,RTX 3090搭載カードのPalit Microsystems製「GeForce RTX 3090 GamingPro OC」はクロックアップモデルであるため,Thunder Masterでブーストクロックをリファレンスに揃えてテストを行っている。
Palit 3090 Ti GameRock OCについては,工場出荷時設定のクロックアップ状態と,Thunder Masterで動作クロックをリファレンスまで下げた状態の両方でテストを実施した。以下では,リファレンス状態を「RTX 3090 Ti」と表記する。なお,
また,文字数を短くするため,グラフ内ではPalit 3090 Ti GameRock OCを「Palit 3090 Ti OC」と表記した。
使用したグラフィックスドライバは,「GeForce 512.16 Driver」。これは,NVIDIAが全世界のRTX 3090 Tiのレビュワー向けに配布したドライバだ。そのほかのテスト環境は表2のとおり。
CPU | Ryzen 9 5950X(16C32T,定格クロック3.4GHz, |
---|---|
マザーボード | MSI MEG X570 ACE(AMD X570, |
メインメモリ | G.Skill F4-3200C16D-16GIS |
グラフィックスカード | GeForce RTX 3090 Ti GameRock OC |
GeForce RTX 3090 GamingPro OC | |
GeForce RTX 3080 Ti Founders Edition |
|
ストレージ | Samsung Electronics SSD 850 |
電源ユニット | Corsair CMPSU |
OS | 64bit版Windows 10 Pro(Build 19043.1466) |
チップセットドライバ | AMD Chipset Drivers 2.13 |
グラフィックスドライバ | GeForce:GeForce 512.16 Driver |
テスト内容は,4Gamerのベンチマークレギュレーション25.0に準拠したものだ。それに加えて,「3DMark」(Version 2.22.7334)では,レイトレーシングのテストとなる「Port Royal」と「DirectX Raytracing feature test」,DLSSのテストである「NVIDIA DLSS feature test」を追加した。
NVIDIA DLSS feature testでは,DLSS 2.0を選択したうえで,DLSS modeはQualityに設定している。
なお,「Call of Duty: Warzone」は,「Call of Duty: Warzone Pacific」へと代わったため,「GeForce RTX 3050」などのレビュー記事と同様に,「基本演習」でテストを行っている。
テスト解像度は,いつもどおり3840×2160ドット,2560
RTX 3090が真価を発揮するのは4K
RTX 3080 Tiから10%弱の性能向上
いつものように3DMarkの結果から順に見ていこう。
グラフ1は,DirectX 11世代の「Fire Strike」における総合スコアをまとめたものとなる。
RTX 3090 Tiのスコアは,RTX 3090と比べて4〜11%程度高いものとなった。とくに,解像度が3840×2160ドットでのテストとなるFire Strike Ultraで,その差が最も大きくなっている点は見逃せない。このあたりは,RTX 3090 Tiのメモリ帯域幅の高さが奏功した結果だろう。
RTX 3080 Ti比では,RTX 3090 Tiが4〜11%ほど高いスコアを記録しており,最上位モデルらしい安定した高性能を見せ付けている。なお,Palit RTX 3090 Ti OCはRTX 3090 Tiから1%ほどスコアを伸ばすのがやっとで,クロックアップの効果はあまりない。
続いてグラフ2は,Fire Strikeから「Graphics test」の結果を抜き出したものになる。
ここでは,RTX 3090 TiとRTX 3090との差が低解像度でも顕著となり,6〜11%程度の差がついた。とくにFire Strike“無印”で,RTX 3090 Tiだけがスコア5万台に達している点は,なかなかインパクトがある。RTX 3090 TiとRTX 3080 Tiとの差は7〜11%程度あり,RTX 3090 Tiが格の違いを見せ付けた格好だ。
ただ,Palit RTX 3090 Ti OCとRTX 3090との差は1%ほどで,ブーストクロック差が30MHzだけということもあり,その効果はあまり大きくない。
同じくFire Strikeから,ソフトウェアベースで「Bullet Physics」を実行する事実上のCPUテスト「Physics test」の結果を抜き出したものがグラフ3となる。CPUが共通なので,スコアはおおむね3万8000台で横並びとなっている。
GPUとCPU両方の性能がスコアに影響する「Combined test」の結果がグラフ4だ。
Fire Strike“無印”ではCPU性能の影響が大きく,スコアが17000台で頭打ちになっている。そこで,それ以外の結果を見ていくと,RTX 3090 Tiは,RTX 3090やRTX 3080 Tiに11〜15%程度の差を付けた。Fire Strike Ultraで差が最も開いている点は総合スコアと同じ傾向で,RTX 3090 Tiのメモリ周りにおけるアドバンテージが,うまく発揮されたわけだ。
続いて,3DMarkのDirectX 12のテストである「Time Spy」の総合スコアをまとめたものがグラフ5となる。
Time SpyにおけるRTX 3090 TiとRTX 3090との差は4〜10%程度だ。やはり,テスト解像度が3840×2160ドットとなるTime Spy Extremeで,両GPUの差が開いている。RTX 3080に対しても8〜11%程度の差を付けており,RTX 3090 Tiがワンクラス上の性能を実現しているのが明らかだ。
ただ,Palit RTX 3090 Ti OCはRTX 3090 Tiから1%もスコアを伸ばせておらず,クロックアップの効果は,より少なかった。
次なるグラフ6は,Time SpyからGPU testの結果を抜き出したものになる。
ここでは,RTX 3090 TiとRTX 3090との差は10〜12%程度,RTX 3080 Tiとの差は11〜12%程度あり,RTX 3090 Tiの優位性はハッキリと見て取れる。だが,
Time SpyにおけるCPU testの結果がグラフ7だ。ここではCPUが同じなので,
リアルタイムレイトレーシングの性能を計るPort Royalの結果が,グラフ8だ。
RTX 3090 Tiは,RTX 3090に約11%の差を付けており,RT Core数以上の差を付けた。このあたりは,RTX 3090 Tiにおける動作クロックの高さやメモリ回りのアドバンテージが奏功しているのだろう。RTX 3080 Tiとの差も約12%あり,RTX 3090 Tiがレイトレーシングでも実力を如何なく発揮している。
なお,ここでもPalit RTX 3090 Ti OCとRTX 3090 Tiでは,1%程度の差しかない。
さらに,もうひとつのレイトレーシングテストとなるDirectX Raytracing feature testの結果が,グラフ9となる。
ここでは,RTX 3090 TiとRTX 3090との差は約8%で,若干縮まる結果となった。とはいえ,RTX 3090やRTX 3080 Tiが届かなかった60fpsを,RTX 3090 Tiが超えている点は,インパクトがある。その一方で,RTX 3080 Tiとの差が10%強ある点や,Palit RTX 3090 Ti OCとRTX 3090 Tiとの差が1%ほどである点は,先のPort Royalと同じ傾向だ。
続いて,DLSSの性能を見るNVIDIA DLSS feature testの結果がグラフ10となる。
DLSS On時の結果を見ると,RTX 3090 Tiは,RTX 3090に9〜11%程度の差を付けている。しかし,DLSS OffとDLSS Onを比較して,どれだけフレームレートが伸びているかを計算すると,RTX 3090 Tiは149〜177%程度,RTX 3090は152〜179%程度,RTX 3080 Tiが152〜178%程度と,大差ない結果となっている。つまり,この結果からは,RTX 3090 TiはDLSS Off時のフレームレートがもともと高いので,DLSS On時でも良好な結果になっているだけで,DLSS自体の処理性能は,ほかと変わりはないということになる。
では,実際のゲームにおける性能はどうか。グラフ11〜13は「Far Cry 6」のテスト結果だ。
RTX 3090 Tiは,平均フレームレートにおいて,3840×2160ドットでようやくRTX 3090に約8%の差を付けるものの,それ以外では,ほぼ横並びの結果となった。最小フレームレートでも,両GPUの差は最大で3%ほどで,3DMarkのような勢いは見られない。とはいえ,レイトレーシングを有効にしても,これだけ高いフレームレートで表示できている点は立派だ。
RTX 3090 TiとRTX 3080との差も,平均フレームレートで2〜6%程度,最小フレームレートで3〜4%程度と,こちらも3DMarkほど引き離せていない。
次に「バイオハザード ヴィレッジ」の結果がグラフ14〜16となる。
RTX 3090 TiとRTX 3090との差は,平均フレームレートで2〜12%程度だ。2560×1440ドットまで,両GPUの差は2〜3%程度しかないものの,3840×2160ドットでは約14%まで広がっている点は評価できよう。1パーセンタイルフレームレートを見ても,両GPUの差は2〜9%程度と,解像度が高くなるほど差が開いている。RTX 3080 Tiに対しても,平均フレームレートで3〜14%程度,1パーセンタイルフレームレートでは5〜11%程度の差を付けている点は立派だ。
なお,Palit RTX 3090 Ti OCとRTX 3090 Tiでは,3840×2160ドットの1パーセンタイルフレームレートでやっと1%に達する程度で,有意な差は付いていない。
Call of Duty: Warzone Pacificのテスト結果がグラフ17〜19だ。
ここでも,RTX 3090 TiがRTX 3090に明確な差を付けるのは,3840×2160ドットだ。2560×1440ドットまで,その差は平均フレームレートで4〜6%程度,1パーセンタイルフレームレートで4〜5%程度しかない。それが3840×2160ドットになると,平均フレームレートの差は約9%まで広がり,1パーセンタイルフレームレートの差は約17%に達している。また,RTX 3090 TiとRTX 3080 Tiの差は,平均フレームレートで21〜24%程度と大きく,1パーセンタイルフレームレートでも6〜19%程度と大きく引き離しているのは見どころだ。
なお,Palit RTX 3090 Ti OCとRTX 3090 Tiでは,一部でフレームレートが逆転しているものの,実プレイでのテストを行っている誤差によるものだろう。
続いては,「Fortnite」の結果をグラフ20〜22に示す。
Fortniteの1920×1080ドットでは,CPUがボトルネックになるようで,平均フレームレートは180fps付近で頭打ちになっている。そこで,それ以外の解像度を見ていくと,RTX 3090 Tiは,RTX 3090を平均フレームレートで5〜6%程度しか離せておらず,最小フレームレートも4〜8%程度しか差が付いていない。つまり,RTX 3090 TiにとってFortniteは,負荷が軽くて真価を発揮しきれないわけだ。
ただ,RTX 3080 Ti比で見ていくと,3840×2160ドットにおいて最小フレームレートで約11%の差を付けている点は評価できよう。
「Borderlands 3」の結果がグラフ23〜25となる。
ここでもRTX 3090 Tiは伸び悩み,RTX 3090に平均フレームレートで約6%ほど,1パーセンタイルフレームレートで約5%ほどしか差を付けていない。RTX 3090 TiとRTX 3080 Tiとの差も,平均フレームレートは2〜8%程度しかなく,
Palit RTX 3090 Ti OCも,RTX 3090 Tiから1fpsも伸びておらず,クロックアップの効果はほとんどない。
続くグラフ26は,「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下,FFXIV暁月のフィナーレ ベンチ)の総合スコアをまとめたものだ。
ここでもRTX 3090 TiとRTX 3090との差は2〜7%程度と,あまり大きくない。RTX 3080 Ti比でも4〜9%程度といったところだが,やはり3840×2160ドットで,差が最も開いている。なお,スクウェア・エニックスの指標では,スコア1万5000以上が最高評価となっており,RTX 3090 Tiは3840×2160ドットでも余裕でクリアしている点は評価できる。
グラフ27〜29は,FFXIV暁月のフィナーレ ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものになる。
まず,平均フレームレートを見ていくと,おおむね総合スコアを踏襲した形となっている。RTX 3090 Tiは,3840×2160ドットでも120fps近い性能を発揮し,Palit RTX 3090 Ti OCであれば120fpsに達している点が見どころといえよう。一方,最小フレームレートは,CPU性能の影響が大きくなるため,おおむね70fps弱で大きな差が付いていない。
ゲームテストの最後となる「Project CARS 3」の結果が,グラフ30〜32だ。
RTX 3090 Tiは,平均フレームレートでRTX 3090に6〜7%程度の差を付け,最小フレームレートの差は4〜9%程度となった。一方,RTX 3080 Ti比では,平均フレームレートが9〜11%程度,最小フレームレートが5〜10%程度の差を付けた。
なお,Palit RTX 3090 Ti OCとRTX 3090 Tiとの差は,やはり1fpsも開いておらず,クロックアップの効果はあまりない。
RTX 3090から消費電力が100W近くも上昇
高負荷時のGPUの温度も高め
さて,RTX 3090 TiのTGP(Total Graphics Power,カード全体の消費電力)は450Wで,RTX 3090やRTX 3080 Tiの350Wから100Wも上昇している。実際の消費電力はどの程度なのだろうか。
そこで,NVIDIAが開発した消費電力計測ツール「PCAT」(Power Capture Analysis Tool)を用いて,グラフィックスカード自体の消費電力を計測してみたい。なお,今回は3DMarkのTime Spyにおいて,消費電力が高くなる傾向が出たGraphics test 2実行中の結果を示している。その結果をグラフ33に示そう。
この結果を見ると,350W〜360Wで推移しているRTX 3090とRTX 3080 Tiに対して,RTX 3090 TiとPalit RTX 3090 Ti OCは,450W程度で推移しており,2つのグループにハッキリと分かれてしまった。これだけでも,RTX 3090 Tiの消費電力が高いことはうかがえよう。
このグラフから,中央値を求めたものがグラフ34となる。
RTX 3090 TiとRTX 3090との差は約82Wほどで,RTX 3080 Tiとの差は,約96Wにまで達している。RTX 3090 Tiの消費電力はかなり高めであるが,これはGDDR6Xの動作クロックの高さに加えて,フルスペックのGA102を,より高い電圧で駆動させているためではなかろうか。
また,Palit RTX 3090 Ti OCとRTX 3090 Tiとでは,消費電力に有意な差は確認できない。
念のため,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の最大消費電力も計測してみた。
ここでのテストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。さらに,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点をアイドル時としている。その結果がグラフ35だ。
ここでは,ピーク値を結果として採用するため差がどうしても付きやすい。それでも,各アプリケーション実行時におけるRTX 3090 TiとRTX 3090との差は66〜94W程度もあり,やはりRTX 3090 Tiの消費電力の高さがハッキリと見て取れる。RTX 3080 Tiとの差に至っては,82〜110Wほどにまで達しており,同じGPUコアを使いながら,消費電力は雲泥の差だ。
なお,NVIDIAの資料では,「RTX 3090 Tiを使うには定格出力850W以上の電源ユニットが必要」となっており,電源ユニットに対するハードルも高めだ。
最後にGPUの温度もチェックしておきたい。ここでは,温度を約24℃に保った室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。その結果がグラフ36だ。
GPUごとに温度センサーの位置は異なり,また,温度の制御法もGPUクーラーも異なるため,横並びの評価に意味はない。それを踏まえたうえでスコアを見ていくと,RTX 3090 Tiは,高負荷時で80℃弱と高めだ。もちろん,問題ない温度ではあるのだが,巨大なGPUクーラーを搭載してはいるものの,消費電力の高さゆえに温度も高くなりがちのようだ。
最後に筆者の主観であることを断りつつ,Palit RTX 3090 Ti OCの動作音について触れると,高負荷時にはやはりそれなりの動作音が聞こえてくる。とはいえ,PCケースに入れてしまえば気にならないレベルなので,比較的静か目と言って差し支えないだろう。
国内での市場想定価格は驚きの32万7800円
ワールドトップの性能を備えたGPU
以上のテスト結果から分かるとおり,2022年3月時点で,RTX 3090 Tiがゲームにおいて最高性能を発揮するGPUであることは間違いない。RTX 3090 Tiであれば,4Kでレイトレーシングを有効にしても,プレイに支障がない点に魅力を感じる人は多いだろう。
ただ,RTX 3090 Ti搭載カードの北米市場におけるNVIDIAの想定売価は1999ドルで,
とはいえ,RTX 3090 Tiが世界最高の性能を備えていることは間違いない。ゲーマーにとってのRTX 3090 Tiは,コスト度外視で1fpsでも高い性能を欲するようなエンスージアスト向けのGPUと言っていいだろう。
PalitのGeForce RTX 30シリーズ製品情報ページ
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